フランスDassault Systemes社は、3DのメカニカルCADである「Solid Works」やPLM(product lifecycle management)ソフトウエアを提供していることで有名である。同社は、半導体分野に対しては、その設計フローをカバーするDDM(design data managemant:統合設計データ管理)ツール「ENOVIA MatrixOne Synchronicity DesignSync(以下、DesignSync)」を提供している。
DDMツールとは、簡単に言えば「設計データを管理するデータサーバーや、データのリビジョン管理機能、ネットワーク経由での設計データへのアクセス機能などを提供し、多人数、多拠点、多チームによる設計作業を効率化するもの」である。これと同様の機能を提供するものは、ソフトウエア開発の分野でよく使われており、バージョン管理システム(CVS:concurrent versions system)といった名前で呼ばれている。
このようなDDMツールが半導体設計の分野で求められる要因としては、半導体設計が大規模化したことと、各種機能の専門性が高まったことが挙げられる。例えばSoC(system on chip)などでは、モジュールやブロックごとに分割して設計されることが多い。また、分割された1つモジュールやブロックが複数の機能を持つ場合、個々の機能ごとに複数の設計チームがかかわることがある。加えて、IPコアの導入もこの分担作業というスタイルの採用を促す要因となっており、複数の会社による共同作業が必要となる場合もある。さらには、半導体ベンダーの統合/買収などによって開発拠点が世界中に分散するケースもあり、その場合には拠点間でのデータの共有が必須となる。
また、半導体設計において扱うデータの種類の多さも、DDMツールが求められるようになった要因の1つである。半導体設計では、1つの設計データがライブラリ情報、セル構造、物理レイアウトデータ、回路図など複数のファイルやディレクトリなどを含む。また、EDAツールも自動的に多くのファイルを生成する。そのため、サーバー上の設計データを手作業で最新版に更新するのは非効率であり、エラーの発生を招く要因ともなる。そのため、データ構造を自動的に解釈して設計データを統合的に管理するツールが強く求められているのである。
DesignSyncは、米Cadence Design Systems社や米Synopsys社のツールで作成された半導体設計データの構造を認識し、抽象度の高いデータ管理を可能にする(図1)。個々の設計データに含まれる複数のファイルやフォルダを1つの集合体として扱い、階層的なリビジョン管理を可能とする。また、1つの設計データが異なる複数の工程で使用される際に、その関連性を保存することができる。
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半導体設計の複雑化を解消する最新ツールの数々
——「EDSFair2008」から
[2008年03月号]半導体業界でもDDMが必須に
図1 DesignSyncの表示画面
Cadence社の設計データを認識してファイルビューワに表示している。
またCadence社/Synopsys社以外のメーカーのEDAツールで用いられているデータ構造を認識できるようにカスタマイズするCTS(custom types system)機能も提供している。
Dassault社のENOVIA MatrixOne部門でプロダクツマーケティングマネジャを務めるPeter Haynes氏は、「DesignSyncは、世界で130社の半導体/IPベンダーに採用されている。だが、日本では5、6社が小規模なユーザー数で運用しているのみだ」という事実を明かした。この原因として同氏は、「日本では、手作業で履歴を管理することが可能なくらい全般にわたって業務を熟知した人材が長く携わっていることと、設計拠点が分散化していないこと」の2点を挙げた。同氏は「履歴の管理は、設計者がきちんとやっていれば問題はない」としながらも、「半導体業界の再編によって設計者の流動性が増した場合、機械的な手法で履歴を管理できる手法が必須となる」と指摘した。その上で、「今後、さらなるプロセスの微細化によって、設計の大規模化が加速する。日本においても分担作業のスタイルが広まり、遠隔地開発も増えるだろう。また、ブロックの設計を外部業者に発注した際、現在はその設計完了を待った後に、デバイス全体の設計を統合しているようだ。だが、設計の効率化を実現するには、並行開発が求められるようになるだろう。その際には、DDMが必須になる」と述べた。
Dassault社は2008年1月、「ENOVIA MatrixOne 10.8」を発表した。同社が「PLM 2.0」と呼ぶオンラインでの共同作業を、専用ソフトウエアを用いた手法からウェブブラウザベースの手法に置き換えることを可能にするプラットフォームである。これによって、ウェブブラウザさえ用意すれば、誰でもアクセスできるPLMソフトウエアを実現可能になるという。同社はこのプラットフォームをベースとした製品の開発を予定しており、DesignSyncも今後、このプラットフォームをベースにしたものに変更されると見られる。
省電力用の新ツールが日本上陸
PowerPro CGは、Verilog HDLやVHDLで記述されたRTL(register transfer level)コードを解析し、クロックゲーティング回路の挿入をサポートするソフトウエアである。このクロックゲーティング回路の挿入により、デバイスの消費電力を削減できる。例えば、3Dグラフィックスデバイスの内部のあるモジュールでは、約6割も消費電力を削減できた。国内においても非常に多くの引き合いを得ており、「近々大幅に消費電力を削減した日本製品が市場に出荷されるだろう」(同社)としている。
SystemC vs. RTLの等価性検証
Onespin社が国内営業を本格化
ドイツOneSpin Solutions社は、RTLモジュールの検証ツール「OneSpin 360 MV(以下、360 MV)」を更新し、標準アサーション言語である「SystemVerilog Assertions(SVA)」とこれに対応したライブラリ「Open Verification Library(OVL)」のサポートを追加した。モジュール単位でRTLコードを検証するソフトウエアである。新機能によって、RTLコードの動作仕様を表すアサーションを標準言語で記述して検証が行えるようになった。具体的には、RTLコードとアサーションを解析し、いずれかに出力の定義が不明確な部分があればそれを指摘する。その部分に対して新たなアサーションを定義するかRTLコードを修正するかという変更を促し、不明確な部分をしらみつぶしにしていくというものだ。これにより、設計者が意図していない出力や、検証担当者が記載し忘れた定義をなくし、完全なモジュールとすることが可能になる。
360 MVの従来版で利用できるアサーション言語は、OneSpin社独自のものであった。そのため、ほかのツールで作成されたアサーションを利用したり、同製品で作成されたアサーションをほかのツールで利用することができなかった。新版で標準のSVA/OVLに対応したことにより、こうした問題が解消される。
OneSpin社は、2005年5月に設立され、2007年11月に日本オフィスを開設した比較的新しい会社である。同社社長兼CEO(最高経営責任者)のPeter Feist氏は、「すでに海外では10社以上に製品を提供している。日本オフィスはまだ開設したばかりで製品を購入したユーザーはないが、現在、8社で評価してもらっている」と述べた。日本人のフィールドアプリケーションエンジニアを2名採用し、国内における営業活動を本格化している。
(小野 明久)











