ACモーターの制御モデルを簡素化する手法であるパーク変換とクラーク変換が考案されてから相当の年月が過ぎた。現在、これらの変換を利用したACモーター用コントローラはさらに高性能化している。
ACモーター制御の基本原理は固定子の電圧レベルを一定の周波数で増減させ、その周波数を回転速度に追従させることである。開ループ制御を用いる場合は、3相インバータを使用してコイルの電圧を、電圧対周波数の比(V/f)を一定に保ちながら変化させるのが一般的だ。しかし、それはダイナミック特性や効率の面で良好な制御とは言えない。
一方、DCモーターのサーボシステムに関しては、電機子の電流を制御することで良好なダイナミック応答が得られる。そのため、2つの閉ループ制御を用いるのが一般的だ。1つは速度誤差を補償するために必要なトルクを制御する外部ループである。もう1つはそのトルクを得るための電流を流すのに必要な電圧を制御する内側のループだ(図4)。これらの制御ループでは、電機子コイルのインダクタンスと抵抗を補償するようループ特性をチューニングする必要があるので注意したい。
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ベクトル制御
[2008年01月号]
ベクトル制御の実際
ACモーターで良好な特性が得られるのが、ベクトル制御である。ACモーターにベクトル制御を用いた場合の制御システムについて見てみよう。
固定子電流の計測値に対してクラーク変換と逆パーク変換を適用すると、回転座標系におけるトルク生成電流IQと磁束生成電流IDが計算できる。この変換によって、ACモーターモデルの動作は巻線界磁型DCモーターの動作に等価となる。つまり、ACモーターのコントローラは回転座標系におけるトルク電圧VQと磁束電圧VDを制御することにより、トルク生成電流IQと磁束生成電流IDをそれぞれ独立に制御できることになる。
図5に示すコントローラでは、VD/VQを2相のAC電圧に変換して、それから3相に対応するベクトル成分を求めている。さらに、その結果からPWM(pulse width modulation:パルス幅変調)信号を生成し、それにより3相インバータの制御を実現している。この制御方式の主な利点は、電流制御ループ補償が固定子用の電源周波数に依存しないことである。速度制御ループはDCモーターのサーボシステムと同様に動作して、トルク生成電流IQが制御ループへの入力となる。また、磁束ベクトル制御ループの入力は磁束生成電流IDである。この制御ループにより低速回転時の磁束を一定に保って効率を最大にするとともに、固定子電圧が限界に達して弱め界磁制御モードになる、高速回転時における磁極の磁束を減少させるのだ。
回転角度の計測
ベクトル制御によるサーボシステムでは、固定子磁束の回転角度がキーパラメータとなる。
永久磁石型ACモーターにおける回転子磁束の角度は回転子角度に相当するので、この回転子角度を計測すれば回転子磁束の回転角度を知ることができる。AC制御系ではレゾルバや絶対値エンコーダを使用するのが簡単だが、高コストになるという問題がある。また、回転子の角速度を取り込んだ正確なモデルがあれば、磁束の計測結果から角速度の算出が可能になる。だが、回転子コイルの抵抗が周波数と温度に依存して大きく変化するので、その変化に追従するのは難しい*1)。
回転子角度を直接計測するのは高コストであることと、演算処理を行うプロセッサの低価格化が進んだことから、最近では回転角度を知るために回転子角度センサーを用いずにモデルから推定する手法が有利になってきた。
例えば、永久磁石型ACモーターにおける回転子角度の推定には、2相回路モデルで回転子磁束ΨRを表す正弦関数/余弦関数を利用することが可能だ。具体的には、3相モーターへの電流値からクラーク変換を用いて計算できる。
上式の項を入れ替えて積分操作を行うと、下式のような正弦関数/余弦関数が得られる。
つまり、レゾルバ出力をデジタルデータに変換するR-D(resolver to digital)コンバータIC*2)を使用しなくても、この式と制御ループの値を利用して回転角度を得ることができるのである。
脚注
- *1)
Bose, Bimal K, Editor, Power Electronics and Variable Speed Drives, ISBN 0-7803-1084-5, IEEE Press, 1997.
- *2)
"AD2S1200, 12-bit R/D Converter with Reference Oscillator," Analog Devices. http://www.analog.com/UploadedFiles/Data_Sheets/AD2S1200.pdf











