第2部:国/地域によって異なる「リファレンス設計」の意義

リファレンス設計:アジア地域の相違点

Global Report4 Web限定記事8

[2007年12月号]

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 アジアの先端技術開発は発展しているにもかかわらず、低コストに向けた設計/開発にのみ適しているというのが、いまだに業界関係者の認識である。こうした状況の主たる要因は、ほとんどの企業が安価で短期間に生産できる製品の開発に注力しているという、アジアの市場環境にある。このような背景があり、アジアで行われるリファレンス設計を使った製品開発は、米国または欧州と大きく異なる。

 アジアの技術者は、ICの設計にリファレンス設計を使用しており、この点が西洋の技術者とは違う。シンガポールXilinx Asia Pacific社のゼネラルプロダクト部門シニアアプリケーションエンジニアであるJack Chen氏は「アジアの顧客の多くは、製品開発の期間短縮や設計リソースの不足を理由に、すぐに使えるリファレンス設計をターンキーソリューションとして利用する」と語っている。

 オランダのNXP Semiconductors社でアプリケーションマネジャを務めるJerald Tatel氏も同意見で、「ローテクで大量生産が求められる市場では、安くて短い期間で生産できるマスマーケット向けのリファレンス設計が好まれる。この分野は品質に対する要件がほとんど規定されていないか、全く存在しない。リファレンス設計では、必要とされる機能のみを搭載し、誰よりも先んじて製品化することが求められる」と指摘する。

 アジアでリファレンス設計を使用する最大の理由は、製品を開発するための期間の短さであると考えられる。リファレンス設計では、必要な基本情報が提供されるため、技術者は製品設計のための時間を短縮できる。NXP Semiconductors社の販売・マーティング部門のアプリケーションマネジャであるLai Chong Yeap氏は「リファレンス設計により、主なデバイスの機能と価値提案が示される。これに加えて、顧客は製品化までの期間をより短くすることが可能となる。なぜなら、リファレンス設計で行われた開発作業の約70%を顧客は再利用できるためである」と述べている。さらにYeap氏は、アジアとほかの地域におけるリファレンス設計のもう一つの明らかな相違点について、それぞれの市場によって使われる外付けの周辺機器や部品の種類の多さを挙げる。「欧州と比較して、アジアではさまざまなチップベンダーや部品ベンダーからのサポートを受けやすいと考えられる。そのため、アジアのリファレンス設計では、さまざまな部品が使用される傾向が強い」と話す。

技術者が目指すもの
アジアの技術者は、リファレンス設計において機能面でもしっかりとした対応を求めている。Chen氏は「効果的なリファレンス設計は実際の製品に適用でき、技術的課題を克服する上で鍵のとなるアイデアを提供してくれる。特に、詳細な文書、クリティカルパスのタイミング分析、多数のIPコアが整っていなければならない」と述べる。

 リファレンス設計を効果的なものとするこのような要因に加え、Yeap氏はハードウエアおよびソフトウエア開発を行うときの使いやすさ、正しいフォームファクタの利用、BOMコストを挙げる。さらに、将来的な機能の拡張性は、リファレンス設計を効果的に利用するための要因の一つだとしている。「リファレンス設計は、メインとなるIC以外でも、目標とするアプリケーションの市場および顧客の要求を満たすように設計された機能について、あらゆる価値提案を示すべきである」と彼は指摘している。

 Yeap氏は、メインとなるICがリファレンス設計の全機能の中で最も重要な部品であると説明しており、その比重は全体の80%ということである。「例えば、メインのICがポータブルAV用途向けである場合、そのICには、音声および映像コーデックとその処理に必要とされる性能のサポート、パソコンとの通信において許容されるファイル伝送速度、音声および映像再生に必要な性能などが要求される。リファレンス設計では、メインとなるICの主要機能を示すことができ、実際の製品要件に近いものでなければならない」と語っている。

 Xilinx社のChen氏は、UARTコントローラを介してFPGAをデバッグしたときに、技術的な問題に直面した。「リファレンス設計の可用性は、短期間で目的を達成するのに役立った」とChen氏は述べている。「私のチームは1つのビデオ信号処理用DSPを使って新しいアプリケーションを開発し、2つのビデオストリームを並行して処理できるようにした。ビデオデマルチプレクサまたはスプリッタとして構成されたFPGAと組み合わせることで、ユーザーは新たな『デュアルビデオ』を体験することが可能となった」とTatel氏は語っている。同氏は、リファレンス設計は検証とテストの面でも重要であると考えている。「私はかつて製品開発者として働いていた。その部門では、リファレンス設計に実装する前に、デバイスの性能を検証することが重要だった。また、開発サイクルが短くなるにつれ、最初から機能的である設計を行う必要が生じた。開発中、量産段階、またそれ以降に問題が発生した場合に、リファレンス設計は実装後であっても性能のベンチマークとして機能した」と述べている。

リファレンス設計の拡張性
リファレンス設計メーカーは製品の開発期間を短縮することに加え、リファレンス設計の拡張案を考案する必要もある。顧客から電話がかかってきて、「現在のリファレンスプラットフォームに、検討中の新しい機能をどのように実装するかを研究しているところだ」と言われた場合、ハードウエアとソフトウエアの『拡張案』を用意できていなければならない。顧客をさらに囲い込むためには顧客に協力することだ。これによって、特定の要件に合わせてカスタマイズしたソリューションを提供することができる、とTatel氏は語っている。

 Yeap氏は「リファレンス設計を開発するための専門チームを結成することにより、顧客は、製品を発売する前に多くの重要な変更を行うことなく、製品化までの期間を短縮することができる」と語っている。さらに、「リファレンス設計を顧客にとって評価しやすく、制約条件の少ない使いやすいものとするために、チップ企業は詳細な文書とテストレポートを提供するべきである」とChen氏は話す。

 文書と開発キットが提供されれば、顧客は独自のニーズに合わせて設定を行い、アプリケーションをセットアップして実証、評価、カスタマイズができる、とTatel氏は言う。そして「ここで鍵となる要素は、顧客が非常に簡単で取り扱いが楽だと感じられるように、開発キットがシンプルで完全であることだ。もちろん、顧客が支援を求める場合には、そのためのあらゆる情報と手段を提供する」と続けた。

Denice Cabel/ Stephen Las Marias
EDN Asia

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