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「実験と思考の繰り返しが
新たな発見を生む」
——二宮 保氏 九州大学 大学院
[2007年12月号]電源はあらゆる電子機器に内蔵されている。しかし、電源が最終製品として一般消費者の目に触れることはない。電源回路の研究には情報工学やロボット工学のような華やかさはないが、重要な技術の1つである。電源の役割を人間に例えれば心臓に当たり、からだ全体に血液を循環させる働きをする。スイッチング電源の研究の第一人者、九州大学の二宮保氏に、電源回路研究の現状などを語ってもらった。
(聞き手/構成=馬本 隆綱)
九州大学 大学院 システム情報科学研究院 副研究院長、教授。
1967年に九州大学工学部電子工学科卒業、1969年同大大学院修士課程修了。2000年に同大大学院システム情報科学研究院教授。IEEEフェロー。
研究室のプロフィール
スイッチング電源の回路とシステムに関する研究に取り組んでいる。特に、スイッチング電源システムの低ノイズ化と電磁環境両立性(EMC)は大きなテーマの1つとなっている。研究室では、「アイデアを実験で実証する」ことを基本姿勢として貫く。
電源分野での中国の台頭
かねて、世界中で技術者を目指す人材が減少していることが問題となっている。電源分野においても同じことがいえる。そうした中で、電源回路の研究に関しては大きな特徴が生まれている。研究者の多くがアジア人であることだ。米国への留学生を見ると、工学部の中でコンピュータ分野を除けば、研究者の70~80%はアジア人だと思われる。特に中国人が多い。
電源回路に関する技術論文の発表件数を見ると、日本は1980年ごろまで米国と一緒になって研究していたこともあり、米国に次いで件数が多かった。しかし、最近の学会などでは中国人の研究論文発表が圧倒的に多く、韓国からの発表件数も増加している。米国の大学などで電源回路を研究してきた留学生が自国に帰り研究成果を上げてきたことによるものだ。
最近、日本人の電源技術者の中には、会社を定年退職した後に、中国で働いている人が多いとも聞いている。優れた技術者がグローバルに流動することは、世界的に見れば良いことかもしれないが、それによって日本の開発力が弱くなるようでは困る。
一方で、日本において企業に勤めている技術者が目的を持って大学院に入学し、より専門的な知識を身に付けようとするケースが増えている。しかし、日本では電源回路の技術者が苦労して学位を取得しても、企業や社会からその学位を正当に評価されていないという現状もあるようだ。
電源回路に関する技術論文の発表件数を見ると、日本は1980年ごろまで米国と一緒になって研究していたこともあり、米国に次いで件数が多かった。しかし、最近の学会などでは中国人の研究論文発表が圧倒的に多く、韓国からの発表件数も増加している。米国の大学などで電源回路を研究してきた留学生が自国に帰り研究成果を上げてきたことによるものだ。
最近、日本人の電源技術者の中には、会社を定年退職した後に、中国で働いている人が多いとも聞いている。優れた技術者がグローバルに流動することは、世界的に見れば良いことかもしれないが、それによって日本の開発力が弱くなるようでは困る。
一方で、日本において企業に勤めている技術者が目的を持って大学院に入学し、より専門的な知識を身に付けようとするケースが増えている。しかし、日本では電源回路の技術者が苦労して学位を取得しても、企業や社会からその学位を正当に評価されていないという現状もあるようだ。
産学官の連携
米国では、バージニア工科大学を中心として、5大学が共同で電源回路技術を研究するプロジェクト「CPES(center for power electronics systems)」が活動している。このプロジェクトは米国科学財団(NSF)から開発費の支援も受けている。CPESではパワーエレクトロニクスシステムを含めたスイッチング電源技術、モーターコントロール技術などが研究テーマとなっている。
日本にもこうした大型プロジェクトを作る必要性を強く感じている。危機感を持っている関係者が動き出したが、大学を超えてプロジェクトを立ち上げようというところまでにはまだ至っていない。
日本にもこうした大型プロジェクトを作る必要性を強く感じている。危機感を持っている関係者が動き出したが、大学を超えてプロジェクトを立ち上げようというところまでにはまだ至っていない。
シミュレーションの弊害
組織的な問題ももちろんあるが、個人のレベルにも課題があると考えている。最近、学生による研究成果の発表を聞いて感じることだが、思考が浅くなっているように思う。実験を行わず、コンピュータによるシミュレーションに安易に頼り過ぎているのではないだろうか。それで結果が出れば満足している風潮がある。シミュレーションに用いるデータとしては、本人が理解できていることしか入力されない。それが電気回路シミュレータを使う場合の問題点だ。
これに対し、実験では本人が理解していないことや、気付いていない現象が起きる場合がある。もし実験で自分の予想と異なる結果が出れば、そこで思考を働かせることができる。ここが重要なところである。
私がこれまで発見した多くの現象は、実験を通じて得られたものだ。学生が偶然に見つけた現象もある。実験と思考を繰り返して問題の発掘に努めてほしい。そこに新しい発見が生まれるのではないだろうか。
2006年夏には九州大学に新しい校舎が完成し、新たな実験設備として電波暗室を構内に設置することができた。電波暗室は放射ノイズの研究には不可欠なものだ。現在、放射ノイズの研究者を育成中で、人材がそろえばいずれはこの施設を「ノイズ測定センター」と位置付けて研究を進めていきたい。
これに対し、実験では本人が理解していないことや、気付いていない現象が起きる場合がある。もし実験で自分の予想と異なる結果が出れば、そこで思考を働かせることができる。ここが重要なところである。
私がこれまで発見した多くの現象は、実験を通じて得られたものだ。学生が偶然に見つけた現象もある。実験と思考を繰り返して問題の発掘に努めてほしい。そこに新しい発見が生まれるのではないだろうか。
2006年夏には九州大学に新しい校舎が完成し、新たな実験設備として電波暗室を構内に設置することができた。電波暗室は放射ノイズの研究には不可欠なものだ。現在、放射ノイズの研究者を育成中で、人材がそろえばいずれはこの施設を「ノイズ測定センター」と位置付けて研究を進めていきたい。











