現在、16人いる大学院生には、人とのコミュニケーションの大切さを訴えている。自分が伝えたいことが伝わっていないのに、相手が理解していると錯覚しないように心掛けなければならない。逆に、相手の意見を自分自身が十分に理解できていないケースもあるだろう。これからは海外の組織と共同開発プロジェクトを手掛けることも多くなる。ちょっとした行き違いが失敗につながることもある。
日本の企業には、製造業ではなく、製品開発業という視点でビジネスを考えてほしい。製品作りを可能にするのは人であり、人材は財産、資産である。企業はそのための人材育成戦略を持っていただきたい。人材育成戦略を伴わない、単なる実力主義は有能な人材をつぶすことにもなりかねない。
MAGAZINE ARTICLES
このページをホームページに登録
「製品作りを支える
組み込み技術者を育てる」
——大原 茂之氏 東海大学 専門職大学院
[2007年11月号]組み込み技術者を育成する大学院が2007年4月に開校した。「東海大学 専門職大学院 組込み技術研究科」である。同校は日本経団連から「高度ICT人材育成」における協力拠点校として認定を受けている。日本の企業に対して「製造業」から「製品開発業」への転換を訴える東海大学の大原茂之氏に、大学院を開設した狙いなどを語ってもらった。
(聞き手/構成=馬本 隆綱)
東海大学 専門職大学院 組込み技術研究科 教授、研究科長。
1971年に東海大学大学院工学研究科修士課程電子工学専攻修了、同年東海大学助手。現在、IPA SECリサーチフェロー、組み込みシステム技術協会理事。経済産業省による組み込みスキル標準(ETSS)の開発リーダーなども務める。
専門職大学院のプロフィール
研究対象とする主な分野は、技術論と社会経済学、組み込みソフトウエア、コンピュータアーキテクチャ、システムLSIおよび論理設計、技術戦略論と製品戦略論など。「組み込み技術にかかわる理論と実践」を総合的に習得することを目指している。
製品の機能はソフトで作る
組み込み技術は、製品の機能をソフトウエアで実現するためのものだ。よくいわれるようなマイコン応用技術ではない。組み込み技術は、「ものづくり(製造)」というよりは、「製品開発」に必要な技術と理解すればよい。
一般的に「製造業」は、ハードウエア技術をベースとする。高品質かつ大量の製品を作るには良いが、機能の拡大に伴って部品(ハードウエア)が増えてくることが問題である。これに対して、「製品開発業」はソフトウエア技術をベースとしており、機能のソフト化を考えた時点で製造工程の重要度は相対的に下がる。
デジタル化の進展に伴って、ソフトウエア技術者の不足は深刻な問題となった。2006年の時点で国内には組み込みソフトを開発する技術者(以下、組み込み技術者)が24万人いるが、現状では需要に対して9万9000人が不足しているといわれている。
このために企業では、ソフトウエアの開発が追いつかずに製品受注ができないか、エンジニア1人当たりの開発負荷が大きくなっている。「製品作り」の将来性に対して日本は決して悲観することはないが、楽観も許されない。人材不足をこのまま放置することはできない。
一般的に「製造業」は、ハードウエア技術をベースとする。高品質かつ大量の製品を作るには良いが、機能の拡大に伴って部品(ハードウエア)が増えてくることが問題である。これに対して、「製品開発業」はソフトウエア技術をベースとしており、機能のソフト化を考えた時点で製造工程の重要度は相対的に下がる。
デジタル化の進展に伴って、ソフトウエア技術者の不足は深刻な問題となった。2006年の時点で国内には組み込みソフトを開発する技術者(以下、組み込み技術者)が24万人いるが、現状では需要に対して9万9000人が不足しているといわれている。
このために企業では、ソフトウエアの開発が追いつかずに製品受注ができないか、エンジニア1人当たりの開発負荷が大きくなっている。「製品作り」の将来性に対して日本は決して悲観することはないが、楽観も許されない。人材不足をこのまま放置することはできない。
「組み込み大学院」の役割
日本の企業は海外企業に比べ、製品の企画力とアーキテクチャの開発力の面で弱いといわれてきた。組み込み技術者向けの専門職大学院は、これからの製品開発業を支えていくために必要な能力を備えた人材を育成する目的で、2007年4月に開校した。不足する組み込み技術者を、すべて日本人でまかなうのは無理である。そうなると、プログラム開発などは海外のエンジニアに頼るしかない。これからの組み込み技術者には、専門的な技術知識に加えて、開発プロジェクトをマネジメントする力も必要となる。当大学院では、そうした面も含めた指導を行っていく。
基幹科目に現代文明論
大学院のカリキュラムはIPA(情報処理推進機構)の組み込みスキル標準(ETS)に準拠している。例えば、「物事を正しく観察して分析し、問題点や課題を抽出して解決する」という考え方を理解してもらうために、現代文明論を基幹科目としている。これをマスターすることによって正しいマーケティングやリサーチなどの手法が身に付く。
技術要素科目ではプロセッサの設計開発や組み込みOS、デジタル信号処理理論など組み込みシステムに作り込む要素を理解してもらう。総合教育科目ではプロジェクト管理などを勉強する。さらに、管理技術科目には製品戦略論や、必要な技術/スキルを学ぶ技術戦略論などのカリキュラムを用意した。これらの科目を履修してもらうことで、新たな時代に対応できる人材を育成していきたい。
技術要素科目ではプロセッサの設計開発や組み込みOS、デジタル信号処理理論など組み込みシステムに作り込む要素を理解してもらう。総合教育科目ではプロジェクト管理などを勉強する。さらに、管理技術科目には製品戦略論や、必要な技術/スキルを学ぶ技術戦略論などのカリキュラムを用意した。これらの科目を履修してもらうことで、新たな時代に対応できる人材を育成していきたい。











