オペアンプの
新・SPICEマクロモデル

データシートの値に基づくシミュレーションが可能に

[2007年11月号]

本稿では、SPICEシミュレーションで用いるオペアンプのマクロモデルを紹介する。これを利用すれば、製品のデータシートに記載されたパラメータの値を用いて、新たに使用するオペアンプでもモデルを容易に作成できる。


By Ray Kendall 米Intuitive Research and Technology社
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従来のモデルの課題

 SPICEによってオペアンプを使用した回路のシミュレーションをしようとすると、モデルに関連する2種類の問題に苦労させられることになる。1つは、必要とするオペアンプのモデルがSPICEライブラリに存在しないこと。もう1つは、ライブラリにモデルがあったとしても、それを使用して行ったシミュレーションの結果が必ずしも正確ではないことである。

 新たに使用するオペアンプのモデルがSPICEライブラリに存在せず、メーカーからも入手できない場合には、モデルを新たに作成しなければならない。しかし、それは実に困難なことである。多くのSPICEシミュレータにはモデル生成用のユーティリティプログラムが用意されているが、それらを使いこなすのは容易ではない。ほとんどのモデルは、その構成要素であるトランジスタをトランジスタとして表現するのではなく、単純化した回路と関数を利用するマクロモデルとして実現されている。今日使用されているオペアンプのマクロモデルのほとんどは、Boyleモデルをベースとしている*1)。Boyleモデルに使用されるパラメータを、オペアンプ製品のデータシートに記載されたパラメータと関連付けるのは容易なことではない。そのため、新しいモデルを作成するのは難しい作業となるのだ。

 現在、入手可能なオペアンプのモデルは、個々に構成が大きく異なっている。また、シミュレーションの条件によっては正確な結果が得られないこともある。例えば、多くの場合、電源電圧/電源電流に対するモデル化が不正確で、中には、電源端子に電圧が印加されていなくても何らかの電圧を出力するものもある。こうした問題に対する解決策も提案されているが*2)、ライブラリが備えるモデルを使用するにしろ、ユーティリティプログラムを用いて新たにモデルを生成するにしろ、広範囲の条件で検証を行わなければ、それが所望の条件における特性を正確にモデル化できているとの確証は得られない。オペアンプのモデルに対する検証の必要性や、検証のための方法については、米EDN誌にもこれまで何度となく掲載されている*3~7)ように、一筋縄でいくものではない。

 本稿ではオペアンプの新しいSPICEモデルを紹介する。そのモデルは、オペアンプ製品のデータシートに記載されたパラメータ値を用いることで機能/特性を表現する。このような方法をとるため、どのようなオペアンプのモデルでも容易に作成できる。

新マクロモデルの概要
 本稿で紹介する新マクロモデルは、Boyleモデルではなく、数学関数を利用したものである。データシートに記載されるパラメータを使用してモデルパラメータを定義する仕組みとしており、データシートに記載される特性のほとんどをモデル化できる。言い換えれば、データシートに記載されたパラメータ値を入力するだけで新たなオペアンプのモデルを生成することが可能であるということだ。また、このモデルはモジュール構成をとっているので、新しい機能や特性項目をモデルに追加するのも容易である。さらに、このモデルは、従来のライブラリモデルに見られる精度限界の多くを解決している。このマクロモデルの動作を「PSpice」によって広範にテストした結果、さまざまなタイプのシミュレーションや回路条件に対して良好な収束性と精度が得られることが確認できている。制限事項もいくつかあるが、それらについては本稿の後半に述べる。

 図1の回路図は、高入力インピーダンスのオペアンプのPSpice用マクロモデルを表している。このモデルは、FET入力のオペアンプに良く適合する。図2(a)(b)は入力段のマクロモデルであり、前者がnpnトランジスタ入力に、後者がpnpトランジスタ入力に対応している(図1、図2の関係に関しては後述する)。図1、図2に対応するサブサーキットであるOPAMPMODH、OPAMPMODN、OPAMPMODPのPSpice用ネットリストはhttp://a330.g.akamai.net/7/330/2540/20070104160558/www.edn.com/contents/images/ms4218listing1.zipからダウンロードできる。これらのマクロモデルは、アナログビヘイビアモデリング機能を有するものであれば、PSpice以外のSPICEシミュレータにも適合させることが可能である。

 図1のマクロモデルは、現実のオペアンプと同様のステージ構成を持つ。数学関数ブロックのABM2I4は、通常のオペアンプの入力段と同様に、差動入力電圧を電流出力に変換する。関数H2は、オペアンプのゲイン段(増幅段)に対応し、入力段からの電流入力を電圧に変換して増幅する。数学関数ブロックABM48は、オペアンプの出力段をアークタンジェント関数によってモデル化している。コンデンサCCはオペアンプ内部の位相補償容量と主極をモデル化する。これら4個の素子が相互に関連して作用することにより、オペアンプの重要な特性のほとんどを模擬できる*8)

図1 マクロモデルの構成(高インピーダンス入力のオペアンプ)
図1 マクロモデルの構成(高インピーダンス入力のオペアンプ)


図2 オペアンプ入力段のモデル
図2 オペアンプ入力段のモデル
(a)はnpn入力に、(b)はpnp入力に対応する。


脚注

*1)

Boyle, GR, BM Cohn, DO Pederson, and JE Solomon, "Macromodeling of Integrated Circuit Operational Amplifiers," IEEE Journal of Solid-State Circuits, December 1974.

*2)

Alexander, Mark and Derek F Bowers, "Spice-compatible op-amp macromodels," EDN, Feb 15, 1990 and March 1, 1990.

*3)

Mancini, Ron, "Validate Spice models before use," EDN, March 31, 2005.

*4)

Mancini, Ron, "Understanding Spice models," EDN, April 14, 2005.

*5)

Mancini, Ron, "Verify your ac Spice model," EDN, May 26, 2005.

*6)

Mancini, Ron, "Beyond the Spice model’s dc and ac performance," EDN, June 23, 2005.

*7)

Mancini, Ron, "Compare Spice-model performance," EDN, Aug 18, 2005

*8)

Kendall, Ray, "Modular macromodeling techniques for Spice simulators," EDN, March 7, 2002.

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