また韓国半導体産業協会(KSIA)とKOTISによる統計では、2007年の韓国内の半導体生産規模は、481億米ドルに上る見込みで、その生産量の86%は輸出に向けられると予想される(図2)。売り上げ規模で世界第2位のSamsung社と第8位のHynix社が圧倒的な存在感を持つ市場だが、とりわけ両社が世界をリードするメモリー領域では、世界のDRAMの48.1%、NAND型フラッシュメモリーの63.0%を韓国勢が生産している(2006年 KSIA、米Gartner社調べ)。
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経済危機から10年、
たくましさ増す韓国半導体ベンチャー
[2007年10月号]
韓国経済が危機に瀕した1997年末から10年が過ぎようとしている。この間に韓国産業界は、目覚しい回復と成長を遂げてきた。韓国政府は経済構造改革を推進する中で、財閥を中心とする産業構造から、財閥に代わる「知識基盤経済」の担い手としてベンチャービジネスの育成を促進。経済危機勃発から10年を経て、新興ベンチャーは着々と成長を見せるも、新市場の開拓や製品の多角化などの面で、次なる成長に向けた課題に直面している。
IMF危機後の潮流
「IMF危機」から10年。韓国の産業界は数度の荒波を経験する。韓国では1997年末に起こった経済危機とその後のIMF(国際通貨基金)管理下における政府の一連の経済構造改革によって、現代、三星、大宇、LG、SKの5大財閥の解体と再編、財閥傘下の系列社数の半減策などが次々と断行された。
この一方、1997年制定の「ベンチャー企業育成に関する特別措置法」をテコに、あたかも大手財閥から砕け散ったガラス片のように、優れた人材と技術力を核とした新興ベンチャー企業の設立が急増した。その後の急激な景気回復と、携帯電話機やブロードバンドネットワークなどの情報通信分野における韓国産業界の躍進が追い風となる。韓国産業資源部によれば、ベンチャー企業の数は1999年の4900社強から2000年には約8800社に増加し、2001年4月末には1万社を超えた。ベンチャー企業の産業別構成では製造業が6割、情報処理産業が3割強を占めた。
この一方、1997年制定の「ベンチャー企業育成に関する特別措置法」をテコに、あたかも大手財閥から砕け散ったガラス片のように、優れた人材と技術力を核とした新興ベンチャー企業の設立が急増した。その後の急激な景気回復と、携帯電話機やブロードバンドネットワークなどの情報通信分野における韓国産業界の躍進が追い風となる。韓国産業資源部によれば、ベンチャー企業の数は1999年の4900社強から2000年には約8800社に増加し、2001年4月末には1万社を超えた。ベンチャー企業の産業別構成では製造業が6割、情報処理産業が3割強を占めた。
ベンチャー企業を巡る環境の変化
韓国ベンチャー企業協会によれば、2006年に1万2200社強、2007年も約1万3100社と、その後もベンチャー企業の数は増加傾向にある。この一方、ベンチャーが依存する韓国内大手企業からのコスト削減要求は年々強まる傾向にあり、消滅した企業も多い。ベンチャー企業の世界では激しい淘汰が繰り広げられているのだ。
ベンチャーが事業を立ち上げる際に抱える課題は多い。半導体業界では、エンジニアが大手のSamsung Electronics社、Hynix Semiconductor社(現代電子がLG半導体を合併して設立)からスピンオフしてベンチャー起業家となった後も、元の事業部、人脈との連携を維持しながら、会社設立時の受注を確保するビジネスモデルが続いてきた。
大手企業がメモリー領域での技術開発にしのぎを削る間、ベンチャーは独自のIPコアをベースとしてSoC(system on chip)のソリューション提供力を磨き、あるいはディスプレイ用ドライバICの設計に特化/専業化するなどの手法で、大手の事業との差異化を図ることに成功してきた。
しかし、例えば携帯電話機市場では、国際競争力を維持したいSamsung社やLG社から部品サプライヤへのコスト削減要求は毎年厳しさを増している。ファブレスのIC設計企業も、多忙だが収益は伴わない状況に陥るケースが少なくない。淘汰の第1段階を生き延びたベンチャー企業も、高機能化に対応したIPライブラリの拡張に加え、新規事業領域への進出、海外セットメーカーへの販路拡大などに活路を見出そうとしている。
ベンチャーが事業を立ち上げる際に抱える課題は多い。半導体業界では、エンジニアが大手のSamsung Electronics社、Hynix Semiconductor社(現代電子がLG半導体を合併して設立)からスピンオフしてベンチャー起業家となった後も、元の事業部、人脈との連携を維持しながら、会社設立時の受注を確保するビジネスモデルが続いてきた。
大手企業がメモリー領域での技術開発にしのぎを削る間、ベンチャーは独自のIPコアをベースとしてSoC(system on chip)のソリューション提供力を磨き、あるいはディスプレイ用ドライバICの設計に特化/専業化するなどの手法で、大手の事業との差異化を図ることに成功してきた。
しかし、例えば携帯電話機市場では、国際競争力を維持したいSamsung社やLG社から部品サプライヤへのコスト削減要求は毎年厳しさを増している。ファブレスのIC設計企業も、多忙だが収益は伴わない状況に陥るケースが少なくない。淘汰の第1段階を生き延びたベンチャー企業も、高機能化に対応したIPライブラリの拡張に加え、新規事業領域への進出、海外セットメーカーへの販路拡大などに活路を見出そうとしている。
韓国の輸出をリードする
半導体業界
ここで、韓国の産業構造における半導体の位置付けを大まかに見よう。2007年韓国貿易協会データベース(KOTIS)によれば、韓国輸出産業のトップは半導体産業で、1992年以降連続して1位の座を維持している(図1)。自動車、携帯電話機などの移動体通信機器、石油化学、機械、造船、鉄鋼、エレクトロ二クスなどの分野がこれに続く。
図1 韓国における2007年の主な製品分野別輸出高(出典:KOTIS)
図2 韓国における半導体生産規模の推移(出典:KSIA、KOTIS)
2003年以降大きく膨らんだ韓国半導体産業の設備投資は、2007年、世界的なメモリー需要の過剰感を背景に冷え込んだ。投資総額は、2006年を4.6 %下回る見通しだ(図3)。しかし、2007年第1、第2四半期で凍結状態だった設備投資も、第3四半期から稼働開始するHynix社の新工場が好材料となったこともあり、次第に復調する見通しだ。2008年には20%台の拡大基調を取り戻すとの予測がなされている。
図3 韓国半導体産業の設備投資額の推移(出典:Gartner社)
韓国ファブレス市場は続伸
大手IDM(integrated device manufacturer)企業がメモリー需要の大波を構成するのに対し、ファブレスによる半導体設計の市場を立ち上げたのは、1998年以降に大手企業をスピンオフして数十人規模で開発技術を頼りに独立したベンチャー起業家たちだった。政府の手厚いベンチャー支援に加え、2003年以降、年率平均54%の高成長を支えたのは、何といっても韓国製携帯電話機の世界市場での躍進だった(図4)。携帯電話機に組み込まれるIC製品としては、マルチメディアプロセッサ、CMOSイメージセンサー、ディスプレイドライバICなどがある。
韓国のファブレス企業によるIC売上高は2006年には世界の3.9%の規模となり、ファブレス業界の拡大とともに有力ベンチャーの売り上げは2億米ドル規模に達している。KSIAが2006年に発表したファブレス企業トップ10のリストには、Core Logic社、MtekVision社、EXA E&C社、Fidelix社、EMLSI社、Telechips社などの韓国企業が名を連ねる。
韓国のファブレス企業によるIC売上高は2006年には世界の3.9%の規模となり、ファブレス業界の拡大とともに有力ベンチャーの売り上げは2億米ドル規模に達している。KSIAが2006年に発表したファブレス企業トップ10のリストには、Core Logic社、MtekVision社、EXA E&C社、Fidelix社、EMLSI社、Telechips社などの韓国企業が名を連ねる。
図4 拡大する韓国ファブレスIC企業の売上高(出典:KSIA、McCLEANレポート)
トレンドを読み人材を蓄える
上に挙げた中で最も成功を収めた企業の1つがCore Logic社だ。メモリー中心の韓国半導体業界で、1998年にファブレスベースのマルチメディアSoC開発設計ベンチャーとしてスタートした同社だが、立ち上がりは苦難の連続だった。Samusng社、LG社、Hyundai Semiconductor社(現在のHynix社)などを経て同社を創設した現CEO(最高経営責任者)の黄秀氏は「ある時はスタッフに給料を払うのにも窮するありさまだった」と当時を回顧する。
当時、ファブレスという考え方自体が韓国では未知のビジネスモデルだったことは、同じ1998年にASIC設計企業協会(ADA。現在のIT-SoC協会の前身)が産声を上げたことからも想像できる。黄氏は「関連業界からの認知度の低さ、海外企業による市場の独占、優れた人材のリクルートや教育の難しさ、さらに激しさを増すグローバルな競合関係などといった要因から、ほとんど手詰まりの状態だった」と当時の状況を語る。
しかし、携帯電話機に小型カメラが組み込まれ始めたころから、Core Logic社の事業は波に乗る。同社の成長は、韓国のファブレスビジネスの拡大と軌を一にする。同社は韓国内でファブレス半導体事業の啓蒙に努め、認知度の向上と優れた人材の確保を図りながら次々と製品を出荷して地歩を固める。事業基盤の弱いベンチャー企業の浮沈を経験した黄氏は「業界のトレンドを的確に読む能力と、人材の管理/育成が成功には不可欠だった」と語る。
経済危機からほぼ10年がたったことを期に、淘汰期を生き抜いたベンチャー企業の現状を探るため、2007年7月にソウル市を中心に半導体関連企業7社を訪問取材した。
7社のうちCore Logic社、Pointchips社、Tomato LSI社、Dynalith Systems社、Radiopulse社の5社は1998年から2003年までの間に設立された技術開発主導のベンチャー企業。独自のIPライブラリをベースに携帯電話機向けSoC設計ソリューション事業などを展開している。10年前には存在しなかった企業群だ。
また、残りの2社、1987年設立のSeoul Semiconductor社と1980年創業のHANMI Semiconductor社はいずれも経済危機を乗り越え、それぞれLEDと半導体組み立て装置の市場で世界屈指のシェアを持つ中堅企業だ。中堅企業層が薄いといわれる韓国産業界で頭角を現してきた存在として注目されている。
(甲斐 真一郎 Design News Japan編集長)
当時、ファブレスという考え方自体が韓国では未知のビジネスモデルだったことは、同じ1998年にASIC設計企業協会(ADA。現在のIT-SoC協会の前身)が産声を上げたことからも想像できる。黄氏は「関連業界からの認知度の低さ、海外企業による市場の独占、優れた人材のリクルートや教育の難しさ、さらに激しさを増すグローバルな競合関係などといった要因から、ほとんど手詰まりの状態だった」と当時の状況を語る。
しかし、携帯電話機に小型カメラが組み込まれ始めたころから、Core Logic社の事業は波に乗る。同社の成長は、韓国のファブレスビジネスの拡大と軌を一にする。同社は韓国内でファブレス半導体事業の啓蒙に努め、認知度の向上と優れた人材の確保を図りながら次々と製品を出荷して地歩を固める。事業基盤の弱いベンチャー企業の浮沈を経験した黄氏は「業界のトレンドを的確に読む能力と、人材の管理/育成が成功には不可欠だった」と語る。
経済危機からほぼ10年がたったことを期に、淘汰期を生き抜いたベンチャー企業の現状を探るため、2007年7月にソウル市を中心に半導体関連企業7社を訪問取材した。
7社のうちCore Logic社、Pointchips社、Tomato LSI社、Dynalith Systems社、Radiopulse社の5社は1998年から2003年までの間に設立された技術開発主導のベンチャー企業。独自のIPライブラリをベースに携帯電話機向けSoC設計ソリューション事業などを展開している。10年前には存在しなかった企業群だ。
また、残りの2社、1987年設立のSeoul Semiconductor社と1980年創業のHANMI Semiconductor社はいずれも経済危機を乗り越え、それぞれLEDと半導体組み立て装置の市場で世界屈指のシェアを持つ中堅企業だ。中堅企業層が薄いといわれる韓国産業界で頭角を現してきた存在として注目されている。
(甲斐 真一郎 Design News Japan編集長)











