TALES FROM THE CUBE

ノイズの問題を解決した
技術者の「目」

[2007年09月号]

By Jerome Johnston氏  米Cirrus Logic社
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 1970年代の半ば、筆者は米LI-COR Biosciences社に入社した。同社の事業は、植物の研究に用いる機器の設計/製造であった。当時、同社は植物の葉を茎から取り除くことなくその面積を測定することが可能な世界唯一のポータブル測定器などを提供していた。

 筆者に与えられた最初の仕事は、量子放射計という新たな光測定器を開発することであった。その核となるのは、トランスインピーダンス構成に用いられるチョッパ安定化アンプである。当時、このような処理に利用可能なモノリシック型のICは存在しなかった。そのため、抵抗やコンデンサに囲まれたモノリシックアンプとともに、MOS FET/JFETトランジスタをチョッピングスイッチとして使用することにした。

 その設計は困難なものであった。最初に生じた問題は、1つのアンプの稼働時間が100時間を超えると、オフセットの値が変動してしまい、機器の長期的な安定性が得られないというものであった。この問題の原因は、ICメーカーにおけるイオン注入工程にあった。その問題を解決したことで、そのアンプの入力電流は約50pA、オフセットドリフトは50nV/℃未満、出力ノイズは約30nV/√Hzとなった。

 LI-COR社は、フォトダイオードの前段に色の異なるフィルタガラスを用いたさまざまな光センサーを製造していた。そのフォトダイオードの出力を、トランスインピーダンスアンプ回路に入力する構成をとった。同アンプ回路のゲイン設定には、ロータリスイッチを用いた。これにより、約1kΩから50MΩ以上までのいくつかの値を設定できるようにした。このアンプ回路の出力を精密アナログメーターに入力し、値を表示するようにした。このような構成で、同アンプ回路を実装する基板の設計が完了した。

 量産開始後、ある製造技術者から、テストに合格しなかった基板のトラブルシュートを手伝ってくれないかと頼まれた。そのとき、問題の原因を特定することができなかった約40枚もの基板が箱の中に積み重ねられていた。

 最初に手にとった基板では、アンプ回路の動作がほかの基板とは異なっていた。10kΩを超えるフィードバック抵抗によってゲインを設定すると、アンプの出力が電源レールの上限に達してしまうのだ。その原因は、アンプ回路の正負入力の間に、微細なはんだショートが存在したことだった。

 これ以外の基板の不具合は、ほとんど同じ症状であった。一見、正しく動作しているように見えるのに、ノイズが大きすぎるという問題を抱えていたのだ。回路内のすべてのノードにおける信号を調べると、すべて正常であるようにも見えたが、測定器の表示が不安定だった。平均値は正しいのだが、表示値が異常に大きく変動するのだ。

 筆者は、欠陥のある基板を正常な基板と並べて目視検査を行った。その結果、問題のある個所を特定することができた。ある抵抗が、正常な基板のそれとは異なる向きに取り付けられていたのだ。

 この基板では、面積を削減するために、1/8Wアキシャルリード型抵抗のほとんどを立てた状態で取り付けることにしていた。抵抗片端のリードのみを折り曲げ、基板上方に伸びるかたちで実装していたのである。アンプ回路の初段には、ゲイン設定用の抵抗が2つある。不具合のあった基板では、アンプの負入力からグラウンドへの抵抗が、アンプ入力へのリード線が上方を向く形で取り付けられていた。このようにすると、リード線がアンテナとなり、初段のアンプにノイズ成分が直接入力される可能性がある。これが過剰なノイズが発生する原因であった。

 筆者らは、不具合のあるすべての基板を検査した。その結果、ほとんどの基板で抵抗の向きが逆になっていた。筆者らは、電気的テストを開始する前に、この抵抗の向きをチェックするよう、基板のテスト担当部門に指示を出した。

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