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過電流/過電圧保護用のブレーカ回路

[2007年09月号]

By Anthony H. Smith
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 図1の回路は、過電流/過電圧に対するブレーカとして機能する。少数の低価格な部品で構成されているが、電流/電圧のいずれかが設定条件を超えると的確に電源を遮断する。負荷回路の故障による過電流や、過渡的な高電圧が発生しやすい自動車分野などの用途に適している。

図1 過電流/過電圧保護用のブレーカ回路
図1 過電流/過電圧保護用のブレーカ回路
電流/電圧の異常の有無を検知している際、回路の消費電流はR3、R4を流れる電流とD2のカソード電流だけとごくわずかである。


図2 シャント型電圧レギュレータの内部回路
図2 シャント型電圧レギュレータの内部回路
リファレンス端子への入力電圧が内部の基準電圧2.5Vと比較される。

 回路の心臓部は、D2のシャント型電圧レギュレータである。このD2としては、英Zetex社製の「ZR431」を使用した。その内部回路を簡略化したものを図2に示す。3端子のパッケージに、基準電圧源とコンパレータ、出力トランジスタを内蔵しており、その動作は以下のようになる。

 まず、リファレンス端子(Vref端子)への入力電圧が内部の基準電圧VREF(2.5V)と比較される。例えば、リファレンス端子への入力が0Vの状態では出力トランジスタはオフになり、カソード端子(VZ端子)を流れる電流(以下、カソード電流)は0.1μA以下になる。リファレンス端子への入力がVREFの値に近くなるとカソード電流はわずかに増加する。さらに入力が高くなり閾(しきい)値である2.5Vに達すると、出力トランジスタが完全にオンの状態になる。その結果、カソード端子の電圧が約2Vに低下する。このときカソード電流は、50μAから100mAの範囲で許容される。

 続いて、図1の回路の動作を説明する。まずは過電流保護動作から見ていく。図1の回路において、電源(VS)の挙動に異常がなければ、D2の出力トランジスタはオフの状態にある。そして、pチャンネルMOS FETであるQ4は、抵抗R9を介して印加されるゲート電圧によりオンの状態にある。その結果、電源から抵抗R6を経由して電流ILOADが負荷に供給される。このR6は電流検出抵抗として働き、負荷電流ILOADによるR6での電圧降下(ILOAD×R6)がトランジスタQ2のベース‐エミッタ間電圧VBEとなる。これによってILOADの値がモニターされることになる。ILOADの値が正常であればVBEは0.6V以下になるので、Q2はオフする。そのため、抵抗R3とR4を接続している点の電圧(以下、R4端子電圧)には影響しない。D2のリファレンス端子に流れる電流は0.1μA以下なので、抵抗R5による電圧降下は無視でき、リファレンス端子電圧はR4端子電圧とほぼ等しくなる。

 一方、ILOADが、設定された許容値を超えて過剰に流れると、電流検出抵抗R6での電圧降下(すなわちトランジスタQ2のVBE)が増大し、Q2はオンになる。その結果、R4端子電圧(すなわちD2のリファレンス端子電圧)が電源電圧VS側に引かれて上昇し、D2の出力トランジスタがオンになる。それにより、D2のカソード端子電圧が約2Vに低下する。それに伴い、D2の出力トランジスタが抵抗R7とR8を経由する電流を引き込み、その電流によってトランジスタQ3のベース電圧が高くなってQ3がオンする。これにより、出力MOS FETであるQ4のゲート電圧がQ3を介して電源電圧と等しくなる。その結果、Q4がオフする。同時に、Q3とダイオードD1を経由して抵抗R4に電流が流れ、その結果、R4端子電圧が電源電圧VSからD1による電圧降下分だけ低い値になる。これに伴い、Q2はベース‐エミッタ間電圧VBEが0Vとなってオフし、R6を経由する電流が0になる。D2の出力トランジスタはこの状態を維持するように働く。抵抗R6を適正な値にすることによって、最大負荷電流におけるQ2のベース‐エミッタ間電圧VBEを0.5V以下にできる。

 続いて、過電圧保護動作について説明する。この回路は、上記の過電流保護に加え、電源電圧が異常に高くなったときにもブレーカとして機能する。負荷電流が正常な範囲にあってQ2がオフしている場合、D2のリファレンス端子電圧は電源電圧が抵抗R3、R4によって分圧された値になる。電源電圧が異常に高くなったときには、R4端子電圧(すなわちD2のリファレンス端子電圧)がD2内蔵の基準電圧VREFよりも高くなるため、D2の出力トランジスタがオンになる。これに対応してQ3がオンになり、次いでQ4がオフになって負荷は異常な高電圧から遮断される。

 回路はいったんブレーカとして動作すると、リセットされるまでその状態を保持する(リセットについては後述する)。ブレーカとして動作した状態では、Q3がQ4のゲート‐ソース電圧をほぼ0Vに保持しているので、Q4自体もゲート‐ソース電圧が過電圧になることなく保護される。

 R5による電圧降下は十分小さいので無視すると、D2のリファレンス端子電圧はVS×R4/(R3+R4)となる。このリファレンス端子電圧が2.5VになったらD2の出力トランジスタがオンになることを考慮すると、R3=[(VST/2.5)-1]×R4という関係式が得られる。この式におけるVSTがブレーカ動作に移行する電源電圧レベル(トリップ電圧)である。例えば、R4を10kΩとし、トリップ電圧を18Vにしたい場合には、R3を62kΩにすればよい。このようにして、トリップ電圧が所望の値となるようにR3とR4の値を決定することになるが、その際には、両抵抗を流れる電流が過剰にならないよう十分大きい値にする必要がある。その一方で、これらの抵抗の値はリファレンス端子を流れる電流による誤差が問題にならない程度に小さくしなければならない。

 負荷が容量性である場合、あるいは電球やモーターなどのように突入電流の大きいものである場合には、回路に初めて電源を投入する際に大電流が流れてブレーカ動作に入ることがある。この問題を避けるために、図1に記載しているコンデンサC2を追加する方法がある。このようにすれば、リファレンス端子電圧が変化する速度を抑えることができる。この方法は簡単だが、過電流に対する応答速度も同時に低下させてしまうという問題がある。

 この方法の代案となるのが、図1に記載しているコンデンサC1、抵抗R1、R2、トランジスタQ1を追加する方法だ。これにより、電源の投入時にはまずC1が充電される。次いでQ1がオンになり、リファレンス端子電圧が0Vにクランプされて、突入電流によるブレーカ動作を防止できる。最終的にはC1はQ1がオフになるまで充電され、その時点でリファレンス端子電圧のクランプが解除されて正常な過電流対応動作になる。C1、R1、R2が図示した値である場合、約400ms後には突入電流対応動作を脱して通常動作となる。ほかの部品の定数を適切に選定すれば、任意の値の突入電流に対処できる。

 回路がブレーカ動作した後のリセットは、電源の再投入かスイッチS1の操作によって行う。突入電流対策を必要としない用途では、C1、R1、R2、Q1は不要であり、S1はリファレンス端子とグラウンドの間に挿入すればよい。

 使用する部品は、定格電圧/電流が使用条件を満足するように選定しなければならない。各バイポーラトランジスタは一般的なものでよいが、Q2とQ3については電流ゲインの高いものが望ましい。Q4のMOS FETはオン抵抗が小さく、ドレイン‐ソース間およびゲート‐ソース間の最大許容電圧が、使用する電源電圧以上のものでなければならない。

 D1としては、一般的な小信号用ダイオードを使用できる。極度に高い過電圧が予想される場合には、D2を保護するためにツェナーダイオードD3とD4を適切に選択する必要がある。

 この回路ではD2としてZR431を使用したが、これに相当する製品は多くのメーカーから供給されている。ただし、それらの動作は完全に同じだとはいえないので注意を要する。例えば、米Texas Instruments社製の「TL431CLP」とZetex社製の「ZR431CL」を用いて動作確認を行ったところ、両者ともにリファレンス端子電圧が0Vのときにはカソード電流が0Aになった。しかし、リファレンス端子電圧を2.2Vから2.45Vまで徐々に昇圧させたところ、カソード電流はTL431CLPでは220~380μA、ZR431CLでは23~28μAとなり、約10倍もの差があった。R7、R8の抵抗値を決める際には、このようなカソード電流の違いを考慮しなければならない。

 また、D2として用いる製品や、R7とR8の抵抗値によって応答速度が変わることにも注意を要する。例えばD2としてTL341CLPを使用し、R7を1kΩ、R8を4.7kΩとしたところ、過電流に対する応答時間は550ns以下であった。それに対し、TL341CLPをZR431CLに置き換えた場合の応答は約1μsとなり、さらにR7とR8をそれぞれ10倍の10kΩと47kΩにすると、応答時間は約2.8μsになった。注意すべきは、TL431CLPのようにカソード電流が大きくなる場合には、R7とR8の抵抗値を小さくする必要があるということだ。

 R3、R4をそれぞれ62kΩ、10kΩにすることで、トリップ電圧は18Vに設定される。この条件の回路で評価を行ったところ、実際の過電圧判定値は、D2がTL431CLPの場合には17.94V、ZR431CLの場合には18.01Vとなった。このように、過電圧の判定は正確に行われる。それに対し、過電流の判定はQ2のベース‐エミッタ間電圧の影響を受けるため正確さに欠ける。精度を良くするには、R6とQ2の部分を電流検出アンプに置き換えればよい。ここでいう電流検出アンプとは、ハイサイドの負荷電流に比例してローサイドの電流信号を出力するものだ。こうした製品は、米Linear Technology社、米Maxim Integrated Products社、Texas Instruments社、Zetex社などから供給されている。



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