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情報通信研究機構、電界をリアルタイムに
撮像できるカメラの原理を実証

[2007年08月号]

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写真1 電界カメラの原理を使用した試作機
写真1 電界カメラの原理を使用した試作機

 情報通信研究機構(NICT:national institute of information and communications technology)は2007年6月、電界をリアルタイムに映し出すカメラ(以下、電界カメラ)の原理を実証したと発表した。電気光学結晶方式の電界観察技術と信号処理技術を用いて試作された装置によって、電界の分布を30フレーム/秒、100×100画素の解像度で撮影/表示することが可能だという(写真1)。

 従来、電界の分布測定は、測定対象に対して測定点を走査することによって行っていた。しかし、この方法では1秒間に100画素程度の撮影しか行えず、電界の変化をリアルタイムに観測することはできなかった。それに対し、今回発表された技術であれば、大きな電気光学結晶や高速なCMOSイメージセンサー、DSPによる画像処理などを用いることにより、電界分布をリアルタイムに観測できる。この技術を応用することによって、マイクロ波回路における動作状態の確認や不要電界分布の解析、波源位置/侵入経路の特定などが可能になるという。

 電界カメラの概念図は図1のようになっている。センサーの役割をする電気光学結晶は、測定物から約1mm程度の近い位置に配置する。これは、測定の対象となる電磁波の周波数が例えば1GHzであっても波長は30cmと長いため、近接しないと像がぼやけてしまうからだ。この電界カメラで測定できる電磁波の周波数は10MHz~10GHzである。

 電気光学結晶は、電界の強度によって屈折率が変化する素材である。言い換えれば、電気光学結晶は電界と光をミキシングする。この電気光学結晶に場所によって異なる電界を印加すると、それぞれの位相差が変化する。この位相差を観測すれば電界の像が得られることになる。しかし、実際には位相差を直接観測するのは難しいため、入力する特殊光源に変調をかけたレーザー光を用いている。これはフォトニクスヘテロダインと呼ばれる手法であり、観測しやすい低周波のビートに位相差を変換することが可能になる。低周波のビートといってもその周波数は数キロヘルツであるため、高速なCMOSイメージセンサーが必要になる。実証に用いたCMOSイメージセンサーは、1万フレーム/秒の性能を備える。

図1 電界カメラの概念図
図1 電界カメラの概念図
(a)は従来の電界測定手法の概念図。走査によって電界の観測を行う。(b)は電界カメラの概念図。走査ではなく2次元的かつ並列に処理を行う。


 画像処理系は、図2のようにDSPとパソコンを用いて構成した。CMOSイメージセンサーから得られるデータのレートは、1.6ギガビット/秒(1万フレーム×16ビット×100画素×100画素)と非常に高い。そのデータをいったんDSPで処理することで、10メガビット/秒以下のデータレートに変換しているという。このデータをパソコンで処理することによって、電界の撮像を実現した。

図2 電界カメラの画像処理系
図2 電界カメラの画像処理系
イメージセンサーで観測された画像はいったんDSPで処理される。その後、USBポートを介してパソコンに転送されモニターに表示される。


図3 電界カメラによる電界の測定例
図3 電界カメラによる電界の測定例
左は電界カメラによる電界分布イメージで、右が実イメージ。実イメージでは、金属板が右方向に移動することによって回路透過光が変化している。それと並行して裏面の金属板の影響による電界の変化が左図に現れている

 以上のような技術を用いた電界カメラにより、図3のような電界の撮影に成功した。これは、T字型高周波回路の裏面で金属板を右方向に移動させたときの結果である。金属板の移動によって高周波回路の電界強度が変化している様子が見てとれる。

 今回実証された電界カメラによる電界測定の利点の1つは、リアルタイムで観測できることである。もう1つのメリットは、コイルを用いたほかの測定技術と比較すると、電界カメラの測定部分に金属を用いていないため、電界への影響が小さいことだ。これによって、本来の電界に近い状態を観測することができる。

 NICTの次世代ネットワーク研究センター 光波量子・ミリ波ICTグループ 専攻研究員である笹川清隆氏は、「現時点では、電界カメラで観測できる範囲が電気光学結晶のサイズである25mm×25mmによって制限されている。これを拡大することができれば、さらに大きな測定物を対象にすることが可能になる。また、解像度もCMOSイメージセンサーの性能である100×100画素によって制限されている。より高解像度で高速なCMOSイメージセンサーを使えば、より鮮明な画像が得られる」と高性能化への可能性について説明した。

 また、同センターのアドバンストコミュニケーションテクノロジーグループのグループリーダーを務める土屋正弘氏は、電界カメラのメリットを以下のように説明する。

 「近年、無線技術の利用が拡大しており、携帯電話機には多数の無線機能(GPS、Bluetooth、RFID、Wi-Fiなど)が集約されている。このような機器で電界の影響を抑えるのは非常に困難であり、従来のトライ&エラーに頼る手法では多くの時間を要することになる。例えば、携帯電話機と人間の頭や手との間に、電界の観点でどのような関係があるのかを把握するのは非常に難しいが、電界カメラであれば容易に把握することができる。電界カメラを用いることにより、そうした機器の開発期間を短縮することが可能になる」。

 さらに同氏は、「試作機を改良し、より一層の小型化を実現するつもりだ」と今後の展望を述べた。

(小野 明久)

連絡先:総合企画部 広報室、042-327-6923



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