Design Ideas

バラストICを使用して多数のLEDを駆動

[2007年08月号]

By Christian Rausch
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 小型蛍光灯(電球型蛍光ランプとも呼ばれる。以下、CFL[compact fluorescent lamp])の安定器(駆動回路)にはバラストと呼ばれるICが使用される。これはフィラメントの加熱、ランプの点灯、定常点灯時の電流制御などに使用される。このバラストICは2米ドル程度の低価格で入手できる。例えば、米International Rectifier社製の「IR53HD420」などがある*1)。本稿では、この種のバラストICを利用したLEDの駆動回路を紹介する。

 バラストICの本質は、自励発振式のハーフブリッジ回路である。320VのDC電圧を電源として使用した場合、電圧が320Vppで周波数が数十キロヘルツの矩形波出力が得られる。通常、この出力は直列に接続した電流制限用インダクタを経由してCFLに入力する。コンデンサを用いてLC共振回路を構成することにより、CFLのフィラメントが予熱され、次に放電が促され、定常点灯に至るという動きになる。この回路構成によって、起動時には高く、定常時には低くなるCFL特有のインピーダンス特性に対処できる。CFLの駆動電圧は典型的には150Vppである。

 このバラストICにより、CFLではなくLEDを駆動することができる(図1)。今回試作した回路では、電流制限用のインダクタL1として2.7mHのものを使用した。LEDの場合、起動過程を必要としないため、CFLの起動時に行われる本来の回路動作は重要ではない。RTとCTの値を調整し、バラストICのハーフブリッジ動作の周波数を70kHzとする。この回路では、64個のLED群に対し、80mAの電流を供給可能である。例えば、マシンビジョンシステム用CCDカメラで撮像視野を照らすLED群に適用できる。

図1 バラストICにより多数のLEDを駆動する回路
図1 バラストICにより多数のLEDを駆動する回路


 この回路から供給されるLED駆動用のDC電流はリップルが重畳されたものとなる。このリップル電流を小さくすることが、LED駆動の高効率化、LEDの長寿命化において重要である。LEDメーカーが推奨するリップル電流は通常数%程度だ。このような低リップルを実現するには、C5の電解コンデンサ1個では不十分な場合がある。そのため、通常はC4としてフィルムコンデンサを追加する。

 電流制限用のインダクタに流れる電流波形は三角波であり、EMC(electromagnetic compatibility:電磁環境適合性)ノイズは小さい。その平均電流は、次式で求められる。



 ここで、VDCは電源電圧、Nは直列接続されるLEDの数、VFLEDはLEDの順方向電圧、fは発振周波数、L1は電流制限用インダクタのインダクタンスである。

 図1の回路でも狙い通りに動作するが、いくつかの欠点がある。それを改善したものが図2の回路だ。この回路では、図1の回路に対してコンデンサC6、ダイオードD5とD6、トランスT1を追加している。T1としては、EP13型でギャップなしのフェライトコア(ドイツEPCOS社製。材料はT38でインダクタンスは7000nH)を使用した。巻線は1次、2次ともに0.2mm径で90ターンとしており、2次巻線は1次巻線の上に巻いた。1次巻線と2次巻線のインダクタンスはいずれも50mHで、寄生インダクタンスは問題にならない。

図2 LEDの数や配置上の制限を解消した回路
図2 LEDの数や配置上の制限を解消した回路


 図2の回路には図1の回路と比較していくつかのメリットがある。例えば、図1の回路では主電源(VDC)が抵抗R1を経由してバラストICのVCC端子に入力され、それが15.6Vにクランプされて内部電源となる。このとき、R1には6mAの電流が流れ、約2Wの電力を消費する。一方、図2の回路では、R1には起動時にわずかな起動電流を流すだけでよい。そのため、R1の値は図1の場合よりもはるかに大きくすることができる。起動後には、C6とD5、D6で構成される回路(チャージポンプ)からVCC端子に十分な電流が供給され、その電流によって、ICが内蔵するツェナーダイオードが電圧を15.6Vにクランプする。チャージポンプによる電流は、以下のようにして決まる。



 この結果、抵抗R1での消費電力は0.25Wに抑えられる。

 また、図1の回路では、各LEDに加わる電圧の総和は電源電圧の約1/2より小さくなる。それに対し、図2の回路の場合には、トランスT1の巻線比を適切に設定することによって、使用部品の定格範囲内で全LED群に加わる電圧を高くして構わない。例えば、電源電圧VDCより高くもできる。このことは、LEDの数を必要に応じて増やせるということを意味する。

 さらに、図1の回路では、バラストICからの電圧がフルスイングでLED群の両端に加わるという問題がある。このことは、LED群を構成する素子のすべてが互いに近接し、全体としてバラストICの近くに配置されている場合には大きな問題とはならない。しかし、照明系の用途では、多くの場合、LEDはバラストICから遠い位置に配置される。そのため、寄生容量が大きくなり、それらに対する充放電電流が増大する。その結果、効率が低下し、EMCの問題が浮上することとなる。

 一方、図2の回路ではトランスを使用した効果によって、LED群のいずれか一方の端子をグラウンドに接続できる。つまり、図2のように、LEDの一端を直接グラウンドに接続するか、またはコンデンサを介して接続することが可能である。その結果、バラストICからLEDまでの間を長いケーブルで接続することも可能になり、配置上の制限がなくなる。

脚注

*1)

"Compact, 1.5 A Linear Charger for Single-Cell Li+ Battery," ADP2291, Analog Devices, 2005.

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