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「第2回 パワーマネジメントセミナー」から
幾重もの“網”が2次電池の安全確保の決め手


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 2007年4月25日、本誌主催の技術セミナー「第2回 パワーマネジメントセミナー」が東京都内(千代田区のベルサール神田)で開催された。「バッテリマネジメントの最適解」のサブテーマの下、リチウムイオン電池の事故事例や事故を防止するための最新管理技術などが5つの講演によって紹介された。ここでは、同セミナーの内容を俯瞰することで、2次電池管理の最新技術動向をまとめてみたい。

当初は「過放電」が盲点に
写真1 富士通テクノリサーチの小澤秀清氏
写真1 富士通テクノリサーチの小澤秀清氏

 基調講演のスピーカを務めたのは、富士通テクノリサーチ 調査本部 第一統括部 担当部長の小澤秀清氏(写真1)。小澤氏は、富士通/富士通VLSIで、ノート型パソコンの電源設計やインテリジェント電池パック、リチウムイオン電池用の保護IC、残量監視ICなどの開発を通じ、2次電池の管理技術に深くかかわってきた。「ノートPCに見るバッテリマネジメントの要点」と題した講演により、小澤氏は、氏が直接的/間接的に経験してきた課題やそれを解決する各種技術などについて語った。

 「怖いのは充電時。しかし、実際には過放電が盲点となった」——小澤氏が過去に発生したリチウムイオン電池の事故事例の原因について分析した結果からは、このような傾向が見てとれたという。リチウムイオン電池にかかわる事故は、1990年代の半ばごろから、毎年のように繰り返し発生している。2006年6月に国内で起きたノート型パソコンの発火事故は記憶に新しいところだろう。

 2次電池に対して、電源から大量の電流を流す充電時が危険なのは明らかである。そのため、過充電の防止を目的とし、インテリジェント電池パックには当初から充電時の電流制御、電圧制御、電池温度の管理、充電完了の検出といった基本的な管理機能が盛り込まれていた。しかし、それでも事故は起きた。例えば、インテリジェント電池パックに内蔵されるマイクロコントローラの電源は、多くの場合、リチウムイオン電池から供給される。ある事故は、この構成が原因で発生した。過放電によってその電源が供給されなくなったことで、マイコンが動作しなくなり、管理機能が働かなくなってしまったのである。あるいは、過放電が起きた結果、充電時のMOS FETの正常動作が妨げられてしまったという例もある。当初は想定していなかった過放電が原因でいくつかの事故が発生したのだ。

 定格外の電圧でリチウムイオン電池を充電したことにより事故が発生したケースもある。一般に、充電電圧を高くすれば、電池容量は増加する。ある電池では、充電電圧を100mV高くすることで、電池容量が10%アップした。小澤氏は、電池容量を増やすために充電電圧を上げた結果、事故が発生した例を示した。電池工業会が提示している電池の安全性の評価項目には、釘刺試験や角棒での圧壊試験などがあるが、小澤氏自身、充電電圧を50mV上げたことで、こうした試験によって電池が発火に至るケースがあることを確認している。

加速する標準化の動き
写真2 Intersil社のMichael L. Coletta氏
写真2 Intersil社のMichael L. Coletta氏

 このような事故が続いたことを受け、安全性に関する標準化の動きもより活発になってきている。そうした例として、米Intersil社プリンシパルエンジニアのMichael L. Coletta氏(写真2)は、IEEE 1725-2006、CTIA/System Certifi-cation Requirements、IEEE p1825を紹介した。

 IEEE 1725-2006は、リチウムイオン電池の品質/信頼性の基準を定めたもの。電池パックとそれを使ったシステムの充放電にかかわる電気的/機械的設計のベストプラクティスモデルを提示している。一方、この規格への適合性を確認するためのテスト/検査/監査方法を定めるものがCTIAである。CTIAは現在策定中で、Coletta氏もその策定メンバーを務めている。IEEE p1825もIEEE 1725-2006と同様の規格だが、デジタルカメラやデジタルビデオカメラをターゲットとしている。

 国内でも、2007年4月に電子情報技術産業協会と電池工業会から、「ノート型PCにおけるリチウムイオン二次電池の安全利用に関する手引書」が公開された。この手引書には、電池セル/電池パックの設計指針や、安全性の面での評価基準などが示されている。

保護機能の多重化
写真3 日本テキサス・インスツルメンツの恵美昌也氏
写真3 日本テキサス・インスツルメンツの恵美昌也氏

 標準化の動きを待つまでもなく、すでに多くのベンダーがさまざまな電源管理ICを提供している。本セミナーでも、多くの技術/製品が紹介されたが、ここでいくつかの例を示しておく。

 2次電池管理のキーワードの1つとなるのは、保護機能の「多重化」である。電池の異常は、電池自体の製造過程から、実使用時までの各段階でさまざまな要因により起こり得る。そうした問題に対処するには、いくつもの“網”を張っておく必要がある。Intersil社のColetta氏は、バッテリチャージャICと過電流/過電圧保護ICの2つを利用して構成したシステムの例を示し、その特徴を「ダブルフォルトトレランス」という言葉を用いて説明した。両ICとACアダプタ、2次電池の4つの構成要素のうち、2つの要素に問題が発生しても、最低限の保護機能が働くようにするということだ。

 一方、日本テキサス・インスツルメンツ 営業・技術本部 アナログ ビジネス ハイパフォーマンス アナログパワーマネージメントBD部の恵美昌也氏(写真3)は、過電流検出用の1次保護IC、過電圧検出用の2次保護IC、過電圧/過電流/過熱の検出機能を備えた残量監視ICを用いる例を示した。図1のような構成により、異常発生時の条件に応じてMOS FETのオフ、ヒューズの切断などを行う。

 この例において注目すべきは、残量監視ICに履歴保存機能を盛り込むという考え方だ。これは動作時の電圧、電流、温度の値を継続的に測定し、データとして記録しておくというものである(「Impedance Track」技術)。もちろん、ヒューズの切断で対処するしかない復帰不能な異常が発生した場合にも、それらのデータを記録しておく。これらのデータは異常検出条件の最適化や、不具合が発生した電池パックの解析に活用することができるという。

図1 3つのICによる保護の多重化
図1 3つのICによる保護の多重化


 さらに、恵美氏は電池管理ICに対する昨今の要求項目として、バッテリ認証機能とセルバランス機能の2つを挙げた。

●バッテリ認証機能
 バッテリパックの市場には、サードパーディ製の安価な製品が数多く出回っている。そうした非純正の製品は、純正品とはセル特性が異なることが多い。また、コスト削減のために保護機能を簡略化しているケースもある。そうした理由から、非純正品であることを検出するための認証ICが求められている。

 認証の仕組みとして主流といえるのは、IDを用いる手法である。最も単純なのは、機器本体から固定値を送出し、それを受けた電池パックの認証ICから固定値が返されれば純正品だと判断する方法だ。しかし、この方法では盗聴/改ざん/成りすましといったセキュリティ上の問題が発生してしまう可能性がある。そのため、CRC(cyclic redundancy check)やSHA-1といった、より高度な手法をID認証に適用可能な製品もある。

●セルバランス機能
 2つ以上のセルを直列に接続して使用する場合には、充放電中に各セルの電圧がばらつくという問題が生じる。この状態が続くと、あるセルでは早く充電が終了し、あるセルでは早く放電が終了するといった現象が起きる。これを避けるためのものがセルバランス機能である。例えば、セルごとに電流バイパス回路を設け、電圧の高いセルへの充電電流はバイパスし、電圧の低いセルのみ充電するといった制御を行うことになる。

 しかし、この種の方法では、バイパス動作時にエネルギ損失が生じたり、セル間のインピーダンスの差分によって誤差が生じたり、充電状態の差が大きい条件では補正の限界に達してしまったりといった問題がある。こうした問題への対処策として、恵美氏は残量監視ICで各セルのインピーダンス情報を取得しておき、それを利用して、充放電中、放置中にも連続してバランス補正処理を行う手法も紹介した。

(飴本 健)

パワーMOS FETの進化
 DC-DCコンバータを構成するパワーMOS FETの進化も著しい。パワーマネジメントセミナーでは、東芝 セミコンダクター社首席技監の中川明夫により、パワーMOS FET技術に関する従来の取り組みと将来展望が紹介された。

 DC-DCコンバータでは、高いスルーレートと小型化を実現するために、制御系の高周波化が進んでいる。高い周波数でスイッチングするMOS FETでは、オン抵抗を下げつつ、スイッチング動作による充放電電流を削減する必要がある。そのため、従来はオン抵抗とゲート‐ドレイン電荷量の積(RonQgd)をMOS FETの性能指標としていた。このRonQgdを下げるために、ゲートとドレインのオーバーラップを小さくする横型MOS FET(LDMOS)などのプロセス技術が用いられる。また、可能な限りオン抵抗を下げる必要があるということは、パッケージと素子をつなぐワイヤーの抵抗も無視できないということを意味する。そこで、通常のボンディングワイヤーの代わりに、アルミのリボンを用いる手法(アルミストラップ技術)も考えられた。加えて、MOS FETのセルフターンオンを抑えるためにゲート-ドレイン間容量とゲート‐ソース間容量の比を小さくするようにしたり、チップ内部の配線による寄生インダクタンスを抑えたり、といった回路面での工夫も行われてきた。さらに、寄生インピーダンスの影響を抑えるために、MOS FETとドライバをMCM(multi-chip module)方式で1つのパッケージに含める方法もある。

 こうした従来の技術に加え、中川氏は、新たな技術をいくつか提示した。1つは素子の特性限界を探るための新しい性能指標である。従来の性能指標はRonQgdであったが、ゲート電流を十分に流せるような条件下では、Qgdに依存しない高速性を実現できる。その場合、RonQgdの代わりに、RonQstrという評価指標を導入できる。ここで、MOS FETの場合、Qstrはドレイン‐ソース間容量に等しい。30V系のMOS FETの場合、ゲート電流が十分大きければ、ターンオフ時間は2nsにすることができるという。中川氏は、こうした指標を用いて、IGBT、GaN FET、SiC MOS、SJMOSなどの各種材料で評価を行った。その結果、「30V系のパワー素子の材料としては、シリコンMOSの地位は不動」(中川氏)との結論を得ることができたという。

 また、中川氏は入力電圧12V、出力電流10AのDC-DCコンバータの試作例を示した。これはMOS FETとドライバを1チップ化したもので、寄生インダクタンスの影響が抑えられ、MCMに比べて組み立て工程の簡略化が行えるというメリットがある。この試作品には、デバイス構造として5V系/25V系のパワー段を構成可能な新プロセスを適用した。また、このような大電流化を実現するためには素子面積が大きくなり、パッドまでの配線長が長くなる。それによって生じる配線抵抗の問題に対しては、表面にバンプを設けたフリップチップとし、PCB基板の銅配線を利用する構造とすることで対処した。さらにドライバ回路の構成の工夫なども加えたことで、結果として出力電圧1.3V、周波数780kHz、出力電流5Aの条件で、88.9%の効率が実現できたという。

燃料電池の事業化にらむベンダーのアプローチ
 パワーマネジメントセミナーでは、次世代の電源として期待を集める燃料電池に関する講演も行われた。米MTI MicroFuel Cells社(以下、MTI社)のバイスプレジデントJuan Becerra氏は、燃料電池の動向を示す事例として、事業化へ向けた同社のアプローチを紹介した。

 MTI社はメタノールと水の反応を利用した燃料電池技術「Mobion」の開発を行っている。リチウムイオン電池と比較した場合の同技術の特徴として、Becerra氏は、2~10倍程度のエネルギ密度を実現できること、電源アダプタを使うことなく充電できること、小型/軽量であること、重金属を使用しないため、環境に優しいことを挙げた。同社は、1セルで0.4V~0.45Vの電圧を生成し、それをDC-DCコンバータで4.2V程度まで昇圧する方法をとる。それによってリチウムイオン電池の充電用カートリッジとして機能させる。1Cレートで1000mAhの電池の充電が可能になるという。

 MTI社は、最も事業性が高いと見られているMP3プレーヤ、デジタルカメラ、ゲーム機、携帯電話機などのポータブル機器用途を一番のターゲットに置いている。米Frost and Sullivan社によれば、民生向けポータブル機器における燃料電池の市場は、2011年には1億2000万台、2013年には3億台を超える規模だという。MTI社は、第1世代として機器の電池の充電用カートリッジを製品化する。第2世代では機器のオプション付属品となる外付けの充電池を製品化し、最終的にはポータブル機器に燃料電池そのものを充電池として組み込む。その後、据え置き型の機器や、自動車などの輸送機器に用途を広げていくつもりだという。

 MTI社は、充電用カートリッジを米Procter&Gamble社(DURACELL)と共同開発している。これに対応したOEM先メーカーとして、携帯電話機についてはすでに韓国Samsung Electronics社と提携を行っている。2007年中には設計完了、2008年に製造パートナを定め、2009年には出荷を始める計画だ。それ以外の民生向けポータブル機器市場についても、OEM先を探しているところである。PDA端末やGPS端末、リモートセンサーなど、軍事用途のポータブル機器もターゲットとしている。

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