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なぜインドのIT産業は成功したか?
-日本との結びつき、今後の課題

[issued: 2005.08.29]

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「なぜインドでIT産業が成功したのか、インドにおける今後の課題は何か」について、国際基督教大学の準教授 近藤正規氏がセミコンダクターポータル主催のインドセミナーで講義した。

なぜインドでIT産業が成功したか?
 近藤氏はインドでIT産業が成功した理由について、「インド人の資質が高いことは言うまでもないが、政府の果たした役割は大きい」という。インド政府はこれまで特に高等教育に力を注いできた。日本の高等教育では文科系、理科系に分かれそれぞれの専門に従って大学に進学するのが一般的であるが、インドでは優秀な生徒の大半が理科系に進むシステムが構築されているという。10億人を超えるインドの中で優秀な人材がITエンジニアとして市場で活動している。
 もう一つの理由として、近藤氏は米国との地理的関係を挙げている。米国とインドには時差が約12時間あり、米国が夜の間に、インド側で作業を進めることができる。インドのIT産業に占める対米の比率は輸出の6~7割と高く、この背景には効率的に仕事を進められる地理的関係も影響していると同氏は指摘する。

IT産業がインドの経済成長に何をもたらしたか?

 IT産業の成功により、インドは外貨を獲得することに成功した。インドにおいて、物の貿易以外の収支である「サービス収支」は毎年3~4%と安定的な成長を続けている。そのサービス収支の大部分を占めるのがIT産業である。日本とインドの貿易において、基本的には日本の輸出量が多いことに変わりはないが、IT分野に関してはインドからの輸入が前年比で60%増と、大幅な伸びを示している。インドのIT産業は日本や米国などの対外貿易において外貨の獲得に貢献した。そのことはインドルピーの安定につながり、現在ルピーは米ドルに対して強含みの状態だ。
 また、IT産業はインド社会にも大きな影響を与えた。現在インドでは、中産階級の家庭を中心に受験戦争が激化しており、その勢いは日本をはるかに上回るという。「かつては裕福な家庭に育つか、よほど運がよいかしなければ裕福になれない風潮があったが、最近では違う。優秀な工科大学に入り、一流のIT企業に入社できれば裕福な家庭が築ける。頑張ればお金持ちになれるというような流れに社会全体が変わってきている」とIT産業が与えたインド社会に対する影響について近藤氏は指摘する。



インドのIT産業が抱える課題は何か?
 インドの人口は11億人に迫る勢いで増加しているが、そのうち現在IT産業に携わる人の数は100~200万人にとどまっているという。このことから、インドでIT産業が発展したといっても国全体に与える影響はまだ限定的なものではないかとの見方もある。もっとインド経済全体にインパクトを与えるためには、今後まだまだ産業の規模を広げていく必要があると近藤氏は指摘した。  また、今後はもっと付加価値の高い製造業にも力を入れていくべきだという。これまではローエンドのソフトウエア開発が主流であったが、最近では付加価値の高い開発も行うようになってきている。今後もその流れを加速していく必要があるであろう。  また、ハードウエア産業の育成も今後より重要になる。インドは最近中国と比較されることが多いが、ハードウエアではまだ中国に及ばない。日本製のパソコンもほとんどインドでは売られておらず、今後日本製のパソコンをインドで広げるにあたっても、ハードウエア産業の育成は不可欠なものになるであろう。

どこまで成長できるのか?
 好調なインドのIT産業はどこまで続くのかという問いに対し、近藤氏は「アウトソースビジネスが頭打ちしない限り続くであろう」という。それではいつアウトソースビジネスが頭を打つのか?近藤氏は、5年や10年たってもその時期は来ないであろうとコメントし、インドのIT産業はまだまだ成長し続けるとみている。

日本との結びつき

 インドと日本の間のソフトウエア貿易は毎年伸びている。インドにとって日本はまだまだ今後拡大を期待できるマーケットだ。ただ、日本の場合、言葉の問題がある。アメリカ人とインド人の間のように英語で自由に議論を交わせる状態には無い。インド人に日本語を習得してもらうか、片言の英語でコミュニケーションをとっているのが現状だ。この壁をどう越えるかは両国のビジネスで大きな課題となる。  インドのIT産業では米国流のビジネススタイルが定着しつつある。ビジネスをはじめる際には、まず何をどこまでどう行なうかの契約を徹底的に取り決める。その後は契約に沿って粛々と作業を進めて行く、というのが主流だ。一方日本の場合、「まず大まかなところを決めて、作業を進め、顧客の要望に応じて機能を追加していく。納期は厳守で、もし赤字が出れば次の契約で回収してもらおう」というケースが多く、この日本的ビジネススタイルを理解できるインド人は少ないという。今後両国がビジネスを広げていくためには、どちらかが片方のスタイルに歩み寄る必要があるだろう。  新生銀行が、銀行業務向けパッケージの開発をインドi-flexソリューションズ社に委託ししたことは、インド企業とのビジネスで成功した事例として挙げられる。新生銀行によると、開発期間は従来に比べ1/3と短く、開発コストは1/10と安く出来たという。インド企業と取引をする日本企業の多くは、「大きなプロジェクトのうちのごく一部分だけをインド企業に任せる」という方式をとりがちだが、そのやり方に問題があるのだと近藤氏は言う。「新生銀行のようにプロジェクトの大部分を任せてしまうやり方のほうが、はるかに効率的であることに気づいていない企業が多い」と指摘した。最近では米Intel社や Nokia社など、欧米諸国の大手企業のインド進出が相次いでいる。 (伊藤 達哉)


    


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