デジカメ設計の“次の一手”

画素数競争の先には何があるのか

[2007年07月号]

デジタルカメラが極めて広範に普及した結果、消費者は、画素数が多いことだけに重きを置くことはなくなった。それでは、メーカーはどこに差異化要因を求めればよいのか。デジタルカメラの売り上げ減少に歯止めをかけるものは何なのか。


By Brian Dipert
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画素数競争の終焉、訪れた価格破壊

 筆者は2004年に、米EDN誌において当時としてはいくぶん議論を呼びそうな主張を展開した*1)。それは次のようなものだ。「イメージセンサーの画素数(ピクセル)数が増加するスピードはそのうち衰えを見せる。メーカーは画質と機能を向上させるためのほかの手段によって、デジタルカメラを差異化する必要に迫られる」——果たしてこの予測は当たっていたのだろうか。

 2004年半ば、筆者が上記記事の執筆に当たって調査を行っていたときは、8メガピクセルのDSLR(digital single lens reflex cameras:デジタル一眼レフカメラ)が主流であった。その前身である6メガピクセルのカメラはそれより約1年前に登場していたが、10メガピクセルのモデルが出現するまでには約2年半を要した。現在では、多くのアナリストが2004年当時の筆者の予測に同意している。

 EDN誌のエグゼクティブエディタであるRon Wilsonは、2007年度の「International CES(Consumer Electronics Show)」におけるオンラインレポートで、以下のようにコメントしている。

 例えば、パソコンの売り上げとクロック周波数の向上には相関がある。それと同様に、デジタルカメラの売り上げと画素数との間には同様の関係があるかもしれない。たとえそうだとしても、今日でも画素数がデジタルカメラの主な差異化要因だといえるかどうかについては議論の余地がある*2)」。

 デジタルカメラとパソコンのビジネスに類似性があるとするWilsonの説は、いくつかの理由で妥当だといえる。米AMD(Advanced Micro Devices)社とIntel社は、90nmプロセスにおいてリーク電流の問題に直面した。それにより、両社は以前のようなペースでCPUのクロック速度を上げることができなくなった。また、消費者も以前のようなペースでパソコンを新しいモデルにアップグレードする必要はないと考えている。現在使っているシステムでも、おそらく多少のお金をかけてハードディスクドライブやメモリーを増強しさえすれば、数世代分のソフトウエアの追加/アップグレードに十分対応できるだけのパフォーマンスが得られるからである。

 以前からあったコンピュータ機器の需要減に加え、消費者の気を引くコンピュータ製品が登場することも少なくなった。それにより、コンピュータ機器市場には変化が起きている。今日では、デスクトップ型パソコンが500米ドル未満で売られ、フル装備のノート型パソコンでも、それに少しお金を足せば買えるようになった。

 最近発表された統計によれば、DSC(デジタルスチルカメラ)市場も同じように飽和状態となっている。市場調査会社の米IDC社は、2006年第4四半期のDSC出荷台数は前年同期比で3%減の1210万台となり、同社がDSCの調査を開始して以来初めて減少すると報告した*3)。同社は2006年度の米国での市場成長率はわずか5%であったと見積もっている。これは前年度の21%と比べてはるかに低く、同社の予測していた8%すらも下回る数字だ*4)

 IDC社はまた、DSCを初めて購入する人による販売台数が全体の販売台数に占める割合は、2006年度にはわずか15%程度にすぎなかったと報告している。つまり、大半はDSCをすでに所有している人々の買い替えや買い足しであったということだ。IDC社は2007年度のDSC出荷数の伸び率を「0%」と予測しており、2008年の初めには出荷数が減少するとしている。

 消費者は徐々に、4×6インチ程度の写真として印刷したい場合、200万~300万画素を超える解像度の画像である必要はないことに気付き始めている。面白いことに、米NVIDIA社でハンドヘルドグラフィックプロセッサの製品マーケティングディレクタを務めるGeoff Ballew氏は、「200万画素が4×6インチの印刷には理想的」と自ら述べることでこの事実を認めてしまった。また、大判プリントを作成するときでも必ずしも画素数は重要ではなく、画像処理ソフトによる画素の補間機能を使うことで大抵の場合は十分にまかなえると考えている消費者もいるだろう。

 メーカーはすでに価格を下げることで需要の減少に対応している。本稿の執筆に当たり、筆者は驚くような価格が付けられたDSCをたくさん見てきた。割引後の価格で、3メガ、4メガ、5メガ、8メガピクセルのDSCが、それぞれ50米ドル、55米ドル、91米ドル、100米ドルで売られていたこともあった。これらのDSCのすべてが有名ブランドのものというわけではない。しかし、どの製品もある程度の微光撮影が可能な広角ズームレンズなどの基本機能は備えている。過去には、仕様書に記されている解像度が、実はキャプチャ後のカメラ内の補間機能に依存していた可能性もあるが、最近調査したすべてのケースでは、カメラが内蔵しているイメージセンサーの解像度が示されていた。

 また、価格破壊が起こっているのはコンパクトカメラに限ったことではない。数千米ドルをはたいてもローエンドのDSLRしか買えない時代は終わった。筆者が価格調査を行ったところ、エントリレベルの18mm~55mmズームレンズ付き6メガピクセルのDSLRは400米ドル、レンズ2枚付き8メガピクセルのDSLRは700米ドル(レンズ1枚のモデルは500米ドル)、10メガピクセルのDSLR本体は800米ドル以下で売られていることが分かった。

脚注

*1)

『技術の競演、イメージセンサー』(Dipert Brian、EDN Japan 2005年1月号 p.32)

*2)

Wilson, Ron, "Cameras in hand: Image quality takes on new meaning for chip architects," EDN, Jan 12, 2007.

*3)

BetaNews Staff, "Digital Camera Sales Fall for First Time".

*4)

Williams, Martyn, "Kodak loses out in US camera market," Macworld, Feb 5, 2007.

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