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携帯機器向けソリューション事業に注力、メモリーベンダーから脱却を図るSamsung社

[2007年05月号]

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 韓国Samsung Electronics社は、携帯機器向けのソリューション事業に注力する考えだ。これまでのメモリーベンダーとしての優位性を確保しつつ、ソリューションベンダーとしての新境地も目指す。2007年3月27日に台湾で開催された「Samsung Mobile Solution Forum 2007(以下、SMS2007)」では、この姿勢が鮮明に打ち出された。

携帯型端末の進化を支援
写真1 Samsung社のHwang氏
写真1 Samsung社のHwang氏

 SMS2007は携帯機器分野向けの国際フォーラムであり、同社の新製品や新技術の情報が数多く示された。その基調講演には、同社半導体部門プレジデントのChang-gyu Hwang氏(写真1)が登壇し、携帯機器のトレンドとして「コンテンツの高容量化」、「カメラ、ナビゲーションシステム、テレビやメディアプレーヤなどに対応した多機能化」、「演算能力の高速化」と「携帯型端末の軽量化と設計の簡素化に向けたデバイスのチップの統合」を挙げた。その上で、これらのトレンドに対応する5つの発表を行った。

写真2 複合メモリーの新製品「Flex-OneNAND」
写真2 複合メモリーの新製品「Flex-OneNAND」

●新複合メモリー「Flex-OneNAND」

 チップの統合を推し進める製品として発表されたのが、「Flex-OneNAND」(写真2)である。同製品は複数のメモリーを1つのチップに集積する、いわゆる複合メモリー(Fusion Memory)の最新製品で、メモリーセルをSLC(single level cell)とMLC(multi level cell)のどちらとして使用するかを選択できるNAND型フラッシュメモリーである。SLCは高速アクセスが可能なので、プログラムの保存に適する。一方のMLCは、セル当たりに保存できるビット数が多いため、コンテンツデータの保存に適している。同製品では、用途に合わせてこれらSLCとMLCの容量を変更できる。

 従来の携帯機器は、プログラムとコンテンツをそれぞれ別個に保存する。つまり、用途に応じた保存先として2つのデバイスが必要であった。それに対し、Flex-OneNANDではメモリーデバイスが1つで済み、省スペース化と低コスト化を図ることが可能である。データ容量は4Gバイトで、2007年4月からの量産を予定している。

 同社は、今回発表されたFlex-OneNANDを含む複合メモリーの製品群だけで、2011年までの5年間に累計100億米ドルの売り上げを達成することを計画している。

写真3 APとOneDRAMを1パッケージ化した製品
写真3 APとOneDRAMを1パッケージ化した製品

●携帯機器向けシステムLSI

 高速化とチップの統合を推し進めるソリューションとして「AP(application processor:アプリケーションプロセッサ)+OneDRAM」を発表した(写真3)。これは、携帯電話機でアプリケーションの処理に用いられるAPと「OneDRAM」をPoP(package on package)によって1パッケージに積層したもの。ここで、APは「ARM1176」をコアとするプロセッサであり、デジタルカメラ、液晶パネル、無線LAN、GPS(global positioning system)やデジタルテレビ用のインターフェースを備える。

 一方のOneDRAMは、2006年末に発表された同社の複合メモリー製品の1つだ。モデムプロセッサ(以下、MP)とAPの間に用いられるデュアルポートDRAMで、APとMP間の通信帯域を拡大できるというメリットがある。

 このソリューションは、従来の携帯電話機の構成においては4個のデバイスを必要とした機能を1個のデバイスで実現する。それにより、実装面積/消費電力/ノイズの削減というメリットが得られる。

 また、同ソリューションではAPと組み合わせるメモリーをOneDRAMに限定していない。つまり、OneDRAMの代わりにNAND型フラッシュメモリー、OneNAND、SDRAMのいずれかをAPと積層したデバイスを実現することができる。それによって携帯電話機だけなく、携帯型メディアプレーヤ、携帯型ナビゲーション端末などの用途に用いることも可能になる。

写真4 容量が64GバイトのフラッシュSSD
写真4 容量が64GバイトのフラッシュSSD

●容量が64GバイトのフラッシュSSD

 高容量化に対応する製品として、「64GバイトフラッシュSSD」(写真4)を発表した。同製品は、1.8インチサイズで64Gバイトのデータ容量を備えるSSD(solid state drive)であり、複数の8GビットのNAND型フラッシュメモリーとコントロールデバイスをケースに収めたものだ。同社従来品の32GバイトフラッシュSSDから容量を2倍にしている。また、データ容量を増やしただけではなく小型化とアクセス速度の高速化が実現されている。加えて、従来のハードディスクドライブ(HDD)よりも軽量、低雑音、低消費電力であるという特徴もある。主にノート型パソコンやパーソナルナビゲーションシステム、デジタルビデオカメラなどの用途に向ける。量産出荷は、2007年第2四半期を予定している。

 同社は、SSDの市場規模が2010年まで毎年40%ずつ増加し、2007年の2億米ドル(173万ユニット)から2010年には68億米ドル(9000万ユニット)に達すると期待している。

写真5 840万画素のイメージセンサー
写真5 840万画素のイメージセンサー

●高解像度のCMOSイメージセンサー

 「840万画素のCMOSイメージセンサー」(写真5)は、多機能化に対応する製品である。このCMOSイメージセンサーでは、画素サイズが1.4μmで、840万画素という高い解像度を実現している。また、高い信号対雑音比(S/N比)によりCCDイメージセンサーに匹敵する画質を備え、さらに従来のCCDイメージセンサーに対して消費電力が1/10であるという。これらの特性を生かし、携帯電話機、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどにおけるCCDイメージセンサーからの置き換えを狙う。なお、今回、画質を改善できた要因は、独自構造のフォトダイオードを採用したことだという。

 同社は、携帯電話機のカメラの画素数が2009年に800万画素に達すると予想しており、その用途を狙って画素/チップサイズの縮小を図る考えだ。

写真6 2.1インチのQVGA液晶パネル
写真6 2.1インチのQVGA液晶パネル

●自動調光機能付き液晶パネル

 「2.1インチQVGA液晶パネル」も多機能化に対応する製品である(写真6)。液晶パネルのサイズは2.1インチで、画面解像度はQVGA(quarter VGA:解像度320×240)。その特徴は周囲の照度に応じて表示画面の明るさを自動的に調整する機能を備えることだ。この自動調光機能は、周囲の明るさを感じるフォトセンサーと読み取った明るさをLEDバックライトにフィードバックする回路で構成され、液晶パネルに組み込まれている。この機能により、画面サイズ/画面解像度が同じである従来品に対して20~30%の消費電力を削減することが可能だという。また、同製品の厚さは約1mmと薄く、携帯電話機、携帯型端末、携帯型メディアプレーヤなどの用途に適している。量産は2007年後半の予定だ。

 この製品以外にも、SMS2007では外部センサーを使用せずに液晶への画像を解析することにより、バックライトの明るさとガンマカーブをコントロールして消費電力を削減する技術が紹介されていた。

携帯機器に注力する背景
 Samsung社が携帯機器に注力する背景としては、いうまでもなく携帯機器の市場が拡大傾向にあることが挙げられる。それ以外の要因として、携帯電話機や携帯型メディアプレーヤなどの製品が半導体技術のけん引役となっていることが挙げられる。そしてもう1つが、同社の強みを生かすことが可能な分野であることだ。Hwang氏はSMS2007の基調講演で、「Samsung社だけが、トータルモバイルソリューションプロバイダである」と述べている。確かに、同社は携帯機器向けのキーパーツ(液晶パネル、プロセッサ、NAND型フラッシュメモリー、モバイル向けDRAM、OneNANDなど)を他社よりも豊富にそろえているといえる。市場背景に加え、同社の強みを最大限に生かすために携帯機器に注力する考えのようだ。

 また、Hwang氏は「近い将来、液晶パネルと充電式電池、1チップのデバイスによって携帯機器を簡単に設計できるようになるだろう」とも述べている。それに向けて、今後も継続的に携帯機器向けの技術開発を行う考えを示した。

(小野 明久)

連絡先:日本サムスン(問い合わせページ)、http://www.samsung.com/jp/contactus/contactus.htm

Samsung社のHwang氏に聞く
「新技術の投入で、当社は今後も『ファンの法則』を維持していく」
 Samsung社のHwang氏は、「フラッシュメモリーの記憶容量は1年ごとに倍増する」という「ファンの法則」でも知られる人物だ。そのHwang氏に、プロセス技術に対する同社の考え方やファンの法則の今後について話を聞いた。

Q:ファブレス企業が増えている中、Samsung社は今後、どう立ち振る舞うのか
A:自社でプロセス技術を開発するためには莫大な投資が必要だし、技術的にも難易度が上がってきた。こうした理由から、ファブレス企業が増えることは理解できる。しかし、ファブレス企業には問題がある。それは、プロセス技術を持たない会社の競争力は低下してしまうということだ。
 確かに、台湾TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)社などはファウンドリ企業として成功を収めている。しかし、半導体製品の実現において特に重要なプロセス技術が他社に完全に依存してしまうことには問題がある。特に、20nm以降のプロセスを採用するような製品では、新プロセスを使いこなすためのDFM(design for manufacture)のような技術や、アプリケーション寄りのパッケージング技術などにおいても他社に秀でている必要がある。例えば、米IBM社のように総合的な技術力を持っていることが重要になるはずだ。
 プロセスに関しても例外ではない。われわれは、より革新的な製品を開発するためには、自社で優れたプロセスを開発する必要があると考えている。さらに、今後市場を制する企業には、技術の優位性、市場を作り出す能力、新たな需要を創出する能力を持たなければならない。この条件を満たすために、Samsung社は今後もプロセス開発を継続的に行っていく。

Q:自社プロセスの開発と、IBM社らとのプロセス技術の共同開発への参加はどのように関係してくるのか
A:当社は、IBM社、シンガポールChartered Semiconductor Manufacturing社などとの協業により、プロセス技術の共通プラットフォームを開発している。大部分のプロセス技術は単独で開発するが、ハイエンドのロジックに関してはこの共通プラットフォームを用いるという位置づけだ。現在、この協業によって共同で45nmプロセスの開発を行っている。

Q:「ファンの法則」は今後も継続可能か
A:プロセスの微細化に頼るだけでは、ファンの法則には限界がある。そのため、2006年に発表した32GビットのNAND型フラッシュメモリーに用いたCTF(charge trap flash)のような新規技術を継続的に開発していく。また、パッケージング技術、メモリー多値化技術、3D配線技術、3D構造技術、などの複数の技術を組み合わせることによって「ファンの法則」は継続させていく考えだ。

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