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2007.3
低Gタイプ3軸加速度センサーの開発競争が拡大
Boschグループが本格参入、携帯電話機向けにチップ厚1mm以下の製品を投入
 次世代技術として期待されるMEMS(micro electro mechanical systems)。現在これを量産レベルで用いている製品の代表例に加速度センサーがある。1990年代初頭にエアバッグ用に採用されて以降、自動車の安全系を中心に市場を拡大してきたが、最近になって携帯電話機やゲーム機などの民生電子機器分野での需要が伸びつつある。主な用途はハードディスクドライブを搭載するモバイル機器の落下検知、携帯電話機のGPS(global positioning system)機能、ゲーム機のコントローラなど。自動車の安全系に必要な2軸以下で重力加速度が±数十G〜250G程度の高Gタイプではなく、±10G以下の低Gタイプ3軸加速度センサーが採用されている。その需要は2007年から2010年までで累計15億個に達するという予測もある。
Bosch Sensortec社の3軸加速度センサー「SMB380」
写真1 Bosch Sensortec社の3軸加速度センサー「SMB380」
  携帯電話機やモバイル機器に主眼を置いて開発を行うならば、3軸加速度センサーの小型化、薄型化、低消費電力化が最大の課題となる。2007年からは、小型化の要求が最も厳しい携帯電話機メーカーの求める、厚さ1mm以下での開発競争が加熱しつつある。
  この市場で本格展開を始めたのが、ドイツの車載機器大手Robert Bosch社の子会社Bosch Sensortec社である。2007年1月から、3.0mm×3.0mm×0.9mmで、消費電流が200μA(電源電圧2.5V時)のデジタル出力式3軸加速度センサー「SMB380」のサンプル出荷を開始した(写真1)。パッケージ内部のMEMSセンサー部とASIC部をシュリンクすることで、同社従来品と比較して面積を約44%、厚さを25%削減した。測定範囲は、±2G、±4G、±8Gの中から選択できる。
  量産出荷は2007年7月からを予定している。国内販売代理店のグローバル電子によると、10個購入時のサンプル単価は700円で、量産開始後の大量出荷時には大幅に価格が下がる見込みだという。
  Bosch Sensortec社は2007年1月下旬に国内記者発表を行った。同社CEO(最高経営責任者)のFlank Melzer氏(写真2)は「当社は2005年の設立から、Boschグループの持つ世界トップのMEMSセンサーの開発力と生産規模を生かして、民生機器向けの製品展開に注力している。SMB380は携帯電話機を中心に、競争力のある価格で、大量に、短納期で製品を供給していく。まだ量産前の段階だが、あるメーカーの携帯電話機への採用もすでに決まっている」と語った。
Bosch Sensortec社CEO、Flank Melzer氏
写真2 Bosch Sensortec社CEO、Flank Melzer氏

  SMB380の最大の特徴は、動作検出に使用できるプログラマブルな割り込み信号の出力機能である。この割り込み信号を受け取ることにより、プロセッサはSMB380が実装された機器の落下や運動、傾きなどを判別できる。加速度センサー自らが動作の種類を判別/通知する機能を備えるため、判別アルゴリズムを開発する工数や外部プロセッサの処理を削減できるという。さらに割り込み信号の出力機能を応用した「セルフウェイクアップ機能」を使えば、平均消費電流を10μA以下に抑えることも可能だ。
  Boschグループは、ディープエッチング技術として知られるボッシュプロセスをはじめMEMS開発で18年以上の歴史を持つ。1993年から、自動車の安全系向けに、圧力センサー、エアバッグセンサー、ジャイロスコープなどの製品を投入し、2006年までで累計6億個以上を生産している。「これまで、出荷のほとんどは自動車向け」(Melzer氏)だが、SMB380をはじめとする民生機器分野での今後の製品展開に注目が集まりそうだ。


競合他社も薄型化に注力

  一方、STマイクロエレクトロニクスは、低Gタイプ3軸加速度センサーの新製品として、厚さ0.92mmの「LIS302シリーズ」の量産出荷を2006年12月に開始した。これまで同社で最小だった5.0mm×5.0mm×1.5mmの製品と同じLGA(land grid array)パッケージだが、内部のMEMSセンサーとASIC部の製造プロセスを微細プロセスに移行することで、3.0mm×5.0mm ×0.92mmの小型化を実現した。
  製品仕様は、アナログ出力式の「LIS302ALB」と「LIS302ALK」の測定範囲が±2G、消費電流が動作時で650μA。デジタル出力式の「LIS302DL」は、測定範囲が±2G、±8Gから選択可能で、消費電流が動作時で300μAである。LIS302DLは、自然落下と急降下という2種類の落下に対する割り込み信号を持ち、落下と回転の識別など、柔軟なアプリケーション設計および設定が可能だ。価格は1万個購入時で、LIS302ALBが4.5米ドル、LIS302DLが5米ドル。
STマイクロエレクトロニクスの加速度センサーのMEMS構造
写真3 STマイクロエレクトロニクスの加速度センサーのMEMS構造
ThELMAプロセスにより、他社比3倍以上となる15μmものポリシリコン厚を確保している。

  同社の加速度センサーは、MEMSセンサー部を製造するプロセスに独自の「ThELMA」プロセスを採用、ポリシリコンの厚さを他社品比で3倍以上の15μmとした(写真3)。これにより、センサーのコンデンサ容量が大きくなり良好な感度が得られるようになるという。
  そしてパッケージングでは、MEMSセンサーチップとASICチップを別々に製造してから行う「2チップソリューション」を採用している。その理由は、「MEMSセンサーの製造プロセスには1200℃に達する高温アニールが必要だが、ASICとMEMSセンサーを同じウェーハ上に形成するとASICのほうに悪い影響が出る。別々に製造してからパッケージングすればその影響がない上に、顧客の細かな仕様要求に柔軟に対応できる」(同社インダストリアル&マルチセグメント部門プロダクトマーケティング課長の坂田稔氏)からだという。
  2006年11月には、イタリアミラノ近郊のアグラテ工場内に、MEMSデバイス用としては世界初となる200mmウェーハの製造ラインが完成した。これにより、今後の製品単価引き下げが期待できるのみならず、現時点で加速度センサーだけとなっているMEMSセンサー製品のラインアップも拡大できるようになる。現在サンプル出荷中の圧力センサーは2007年中に量産に入り、2007年6月までにはジャイロセンサーのサンプル出荷も開始する計画だ。
  アナログ・デバイセズも厚さ1mm以下の製品開発を進めているベンダーの1つだ。同社は1993年のスウェーデンSaab社による初採用以来、自動車向けに高Gタイプの加速度センサーを展開してきた。低Gタイプの3軸加速度センサーは2004年に初めて発売しており、最新の製品は2005年2月に発表した4.0mm×4.0mm×1.5mmの「ADXL330」。その仕様は、アナログ出力式で、測定範囲は±3G、消費電流は200μA(電源電圧2V時)、パッケージはLFCSP(lead frame chip scale package)である。
  同社マイクロマシンテクノロジーグループディレクターの片野豊氏は「携帯電話機を中心に、顧客が厚さ1mm以下の製品を求めているのは事実だ。当社も厚さ1mm以下の製品を開発中であり、できるだけ早期に市場投入できるようにしたい」と語る。具体的には、ADXL330と同じLFCSPで厚さ1mm以下に仕上げた「Thin LFCSP」の製品化に向けて、評価作業を加速しているという(図1)
アナログ・デバイセズの低Gタイプ3軸加速度センサーの製品ロードマップ
図1 アナログ・デバイセズの低Gタイプ3軸加速度センサーの製品ロードマップ


  同社はさらなる小型化開発も進めている。WSP(wafer scale package)の採用により、ADXL330比で面積が1/4、厚さが半分以下のチップの試作に成功している。
  価格については「現在ADXL330の量産出荷価格は2米ドル以下だが、2〜3年後には民生機器分野の顧客が求める1個当たり1米ドルを実現したい」(片野氏)と考えている。
  フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンも、低Gタイプ3軸加速度センサーに取り組んでいる一社だ。同社は2005年から製品展開を行っており、最新製品はアナログ出力式の「MMA7260Q/7261Q」。サイズは6.0mm×6.0mm×1.45mm、消費電流は500μA(電源電圧2.2V〜3.6V時)。MMA7260Qでは±1.5G、±2G、±4G、±6Gなど、加速度範囲の選択幅が広いのが特徴だ。
  厚さ1mm以下の製品については「具体的なことは言えないが市場の要求は認識している」(同社CEポータブルグループ、センサー・アナログ・パワーマーケティング、マーケティングマネージャー岡田耕太郎氏)という。機能面については「当社独自の半導体混載技術のSMARTMOSを応用すれば、制御部のASICにさまざまな機能を盛り込むことが可能だ」としている。
(朴 尚洙、小野 明久)


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