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2006.7
電子回路をインクジェットで形成、低温での熱処理が可能
 低温で、しかも短時間に熱処理(キュアリング)が行えるインクジェット用銀導電材料を開発した米Cabot社*1)は、2006年5月31日〜6月2日に東京ビッグサイトで開催された「JPCA Show 2006」において、韓国DGI社*2)と共同で実演デモを行った。
 これまで開発されてきたインクジェット用導電材料の多くは、基板との接続性を高めるために、300℃以上の高温条件下で熱処理する必要があった。これに対し、Cabot社が開発した銀導電材料「AG-IJ-G-100-S1」は、100〜300℃と低い温度範囲で熱処理ができる。このため従来は熱で変質してしまっていた、紙やプラスチックを使ったフレキシブル基板などにも使うことができる。
 低温での熱処理を可能にした技術の詳細は明かさなかったが、同社のセールス・マーケティング部門でディレクタを務めるJames Caruso氏によると、「粒径がおよそ40nm〜50nmと小さい銀ベースの粒子の表面に、当社が独自に開発したポリマー系の材料をコーティングした。これにより基板との密着性が高くなり、低い温度でのキュアリングが可能になった」という(図1)。
図1 熱処理前後の顕微鏡写真
図2 熱処理時間と抵抗率の関係

 熱処理に必要な時間はアプリケーションにより異なるが、1〜30分程度だという。バルク抵抗率は、300℃で1分間処理した場合が4μΩcm、100℃で30分処理した場合が22μΩcm(図2)。熱処理後の膜厚は500dpi時で0.4μmと薄い。密着性を検証するテープテストにおいては、4+〜5と高い値を得ているという(5が最高値)。
 JPCA Show 2006の会場では、DGI社が開発したインクジェットプリンタ「NANO JET」にCabot社のインク材料を採用し、フレキシブル基板上に回路パターンを塗布するデモを行った。基板上をプリントヘッドが通過すると、2〜3秒程度で回路パターンが塗布される様子を実証した。
図3 NANO JETOによるデモ
インクジェットによる回路形成例

NANO JETには512個のノズルが設置されており、出力解像度は360dpi×720dpiまたは500dpi×500dpi。出力できる面積は500mm×600mm。配線幅は50〜75μmと細くすることができ、着弾精度(インクジェットを塗布した際の設計寸法と実寸法の誤差)は、±5nm以下で制御が可能。James氏によると、「着弾精度は、プリンタ本体のステージの安定性、ソフトウエアの性能、プリントヘッドの性能などに依存する。DGI社のNANO JETはそれらの観点から信頼性が高い」という。
 DGI社はCabot社と業務提携し、Cabot社の銀導電体を使ったインクジェットプリンタを販売する。参考価格は20万米ドル。2006年秋ごろには、ロールツーロール方式のインクジェットプリンタも発表する予定である。
 今回のデモでは実演しなかったが、銀導電材料を塗布した後の工程では、日本の化学メーカーであるチッソが開発した絶縁材料(ポリイミド)を塗布し、絶縁層を形成する。この工程を繰り返し、電子回路を形成する。
 インクジェット方式で電子回路を形成する技術が使えるようになると、大がかりな製造装置を使ったリソグラフィ工程が不要になる。また、300℃以上の熱処理に耐えうるようなプラスチック基板を使わなくて済む。Caruso氏によると「インクジェット方式で電子回路を形成する技術は、低コストで短期間に回路を形成できる。その上、少量多品種に対応しやすいことからも携帯機器の部品メーカーを中心に注目を集めている」という。
(伊藤 達哉)

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用語解説 / 会社情報
連絡先)
キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ・インク、03-6820-0262
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*1)
Cabot社 http://w1.cabot-corp.com/index.jsp
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*2)
DGI社 http://www.DGI-NET.COM/
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