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2006.7
PFC用インターリーブ型昇圧コンバータの利点

昇圧段をインターリーブすることにより、力率補正プリレギュレータの電力変換入力および出力リップル電流を減らすことができる。これにより昇圧インダクタのサイズを小さくし、出力コンデンサの電気的ストレスを低減できる。

Michael O'Loughlin 米Texas Instruments社

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 PFC(power factor correction:力率補正)プリレギュレータに最もよく使われる回路構成は、昇圧コンバータである。昇圧コンバータでは、連続する入力電流に対して平均電流モード制御の技術が適用され、ライン電圧の変化に従って入力電流を変えることができる。図1に、従来の単一段の昇圧回路を示す(回路の動作を簡潔に説明するために、ここではDC入力とする)。インダクタのリップル電流の変化ΔIL1は、コンバータに直接入力するので、EMI仕様を満たすためにフィルタリングが必要な場合がある。ダイオードの出力電流I1は連続的ではないため、フィルタリング出力コンデンサCOUTを要する。この構成では、出力コンデンサのリップル電流ICOUTは大きく、I1と出力電流IOUTの差となっている。
図1 入力のリップル電流によってPFC昇圧コンバータのインダクタのサイズが決まる。このインダクタはEMIフィルタリングをも容易にする。また、従来の昇圧コンバータは出力電流が不連続なため、出力コンデンサに加わる電気的ストレスが大きい。


昇圧コンバータのインターリーブ

 図2は、インターリーブを適用した2相の昇圧コンバータの機能図で、2つの昇圧コンバータが180度逆位相で動作する。入力電流は、2つのインダクタ電流IL1およびIL2の和である。インダクタのリップル電流は逆位相であるため、互いに打ち消しあい、インダクタによる入力リップル電流は小さくなる。デューティ比が50%のとき、インダクタのリップル電流が最も打ち消しあうことになる。出力コンデンサの電流は、2つのダイオード電流の和I1+I2からDC出力電流IOUTを引いたものである。このため、出力コンデンサのリップル電流は、デューティ比の関数で表され、その値は小さい。デューティ比が0%、50%、および100%に近づくと、2つのダイオード電流の和はDCに近づく。この場合、出力コンデンサに加わる電気的ストレスは小さくなる。
図2 インターリーブ型昇圧コンバータは、180度逆位相で動作する2つの昇圧コンバータからなる。


入力リップル電流の低減

 以下の等式と図3は、インダクタリップル電流に対する入力リップル電流の比率K(D)が、デューティ比Dの変化に伴って変動する様子を示す。インターリーブ型昇圧コンバータにおいてインダクタを選択する際には、この変化の様子を覚えておくことが重要である。

 図4は、単一段の昇圧コンバータにおける正規化された出力コンデンサRMS電流ICOUT_RMS_SINGLE(D)と、2相のインターリーブ型昇圧コンバータにおける正規化されたRMS電流ICOUT_RMS(D)を、デューティ比の関数として表したものである。図から、出力コンデンサのリップル電流は、2相のインターリーブ型昇圧コンバータにおいて、従来の単一段のコンバータのおよそ半分となっており、出力フィルタコンデンサの電気的ストレスが低減されていることがわかる。

図3 インダクタリップル電流に対する入力リップル電流の比率K(D)は、デューティ比Dに伴い変動する。
図4 2相のインターリーブ型PFC昇圧プリレギュレータにおいて、出力コンデンサのリップル電流のピークは、従来の単一段の昇圧プリレギュレータのおよそ半分となる。
インダクタの値を評価する

 PFCプリレギュレータをインターリーブすることにより、インダクタの値がどれだけ縮小可能かを評価するために、単一段および2相の昇圧プリレギュレータの数値的な比較を行った(図5)。設計要件は、最大出力電力POUTが約350W、最小ライン入力VINMINが85Vrms、最大ライン入力265Vrms、推定コンバータ効率95%とした。インダクタのスイッチング周波数fSは100kHzである。インダクタの入力リップル電流要件は30%で、どちらの構成におけるインダクタも入力電流が最小および最大のときに、インダクタリップル電流が最大となる。
図5 350Wの2相プリレギュレータをインターリーブした場合の効果を評価する回路。

図6 PFC昇圧プリレギュレータのデューティ比はライン電圧VIN(t)に伴い変化する。デューティ比の時間関数D1(t)は、入力が85Vrmsの場合の、デューティ比がラインの変化に伴って変化する様子を表す。関数D2(t)は、最大入力265Vrmsの場合にデューティ比が変化する様子を表す。
 いずれの設計においても、リップル電流が最悪の場合に基づいてインダクタを選択した。ユニバーサル入力のコンバータでリップル電流が最大となるのは、最小デューティ比0.67で動作している場合に、ピークライン電圧においてAC入力が最小になるときである。図6は、ライン電圧VIN(t)の変化に伴い、デューティ比が変動する様子を示したものである。関数D1(t)は、入力が85Vrmsの場合に、デューティ比がラインの変化に伴いどのように変化するかを表す。関数D2(t)は、最大入力265Vrmsの場合に、デューティ比が変化する様子を表す。コンバータが最大入力265Vrmsで動作している場合は、入力電圧が出力電圧の半分となるときにインダクタリップル電流が最大となる。ライン電圧が出力電圧に近づくにつれ、デューティ比は減少し、インダクタリップル電流は小さくなる。

 単一段PFCプリレギュレータのインダクタリップル電流は、コンバータの入力において顕著である。ユニバーサル入力の単一段PFCインダクタはおよそ450μHとなる。これは入力85Vrms、最小デューティ比0.67において、インダクタリップル電流が最大となった場合に基づいて計算した結果である。

 2相のインターリーブ型プリレギュレータの入力電流リップル要件は、従来のプリレギュレータと同じである。インターリーブした昇圧段の1つにおけるインダクタ電流の変化は、約3.4Aである。最小RMS入力電圧における可変最小デューティ比に必要なインダクタンスは約245μHとなり、同じ電力レベルにおける単一段PFCプリレギュレータが必要とするインダクタンスの約半分となる。


実験結果

図7 このオシロスコープ画面において、Ch1は整流ライン電圧、Ch2はL1インダクタ電流、Ch3はL2インダクタ電流、Ch4は入力電流を表す。電流変換比率は約4A/目盛である。
 L1、L2、および入力電流に対して200μHのインダクタを用いた2相インターリーブ型昇圧コンバータの評価を行った。インダクタリップル電流が最大となるのは、コンバータがピークライン電圧において低い入力電圧で動作する場合である。
 図7は、入力85Vrmsの場合のL1およびL2のインダクタ電流を示している。Ch1は整流ライン電圧、Ch2はL1のインダクタ電流、Ch3はL2のインダクタ電流、Ch4は入力電流である。電流変換比率は約4A/目盛である。
 図8(a)および図8(b)は、負荷が最大の場合の入力ライン電流およびインダクタリップル電流を示す。両者のオシロスコープ画面のチャンネルは、図7と同様である。図8から、Ch4のきれいな入力電流波形がはっきりと見てとれる。この2相のインターリーブPFC設計では、220μFの出力コンデンサを使用している。単一段の350W PFCプリレギュレータでは、最大負荷における出力コンデンサリップルは約33.5Vである。2相のインターリーブPFCでは、出力リップルは単一段の場合の半分よりも小さくなるはずである。プロトタイプの最大負荷における出力リップル電圧は約13Vである(図9)。

(a)
(b)
図8 (a)のオシロスコープ画面は、入力85Vrmsの場合のL1およびL2のインダクタ電流を示す。(b)の図は、入力265Vrmsの場合のL1およびL2のインダクタ電流を示す。オシロスコープの各チャンネルは図7と同様である。

図9 350Wのプロトタイプにおける出力リップル電圧を示したオシロスコープ画面。
 プロトタイプが高調波電流規格EN 61000-3-2を満たすかどうかを調べるには、プロトタイプの入力高調波の最大負荷における電力を測定する必要がある。最初の高調波は60HzにおけるRMS入力電流である。それ以外の高調波は、十分にCH61000-3-2クラスD規格の範囲内にある(図10)。
 PFCプリレギュレータのインターリーブにより、電源設計におけるインダクタの値を低く抑えることができる。コンバータの入力におけるインダクタリップル電流の打ち消しあいにより、インダクタの値を約半分にして設計することが可能となる。また、インターリーブにより、昇圧コンデンサのリップル電流も小さくなり、出力コンデンサの電気的ストレスが緩和される。フィルタリングを施していないプロトタイプ回路において、この設計がEN61000-3-2クラスDを満たすことを確認した。部品数が増加すると制御スキームは多少複雑になるが、それでも高電力の用途では、有用であると考えられる。
図10 入力高調波は、EN61000-3-2クラスD規格を十分に満たす。(a)は、低電圧ライン最大出力電力におけるRMS高調波電流成分を示す。(b)は、高電圧ライン最大出力電力におけるRMS高調波電流成分を示す。

 
 

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