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2006.5
カナダOctasic社、インフラ向け
高品質エコーキャンセラ技術を民生機器に適用
 VoIPの音声処理やエコーキャンセラ技術を開発するファブレス半導体企業のカナダOctasic社は、通信インフラ向けに加えて、今後は車載用のスピーカフォンやハンズフリー機能を持つ携帯電話機など、民生機器の分野にも積極的に進出していく考えだ。
 その第1弾として開発したのが、エコーキャンセル・ミドルウエア「SoftEcho」。同社がインフラ向けに開発したアルゴリズムをベースに、携帯機器向けに機能を絞り、最適化し、IPとして提供する。
 SoftEchoには、ハンズフリーフォン、IPフォンなどに向けた「Soft Echo AEC(Acoustic Echo Cancellation)」、家や事務所で使うターミナルアダプタなどに向けた「SoftEcho LEC(Line Echo Cancellation)」の2種類がある。対応チャンネル数は共に1〜4チャンネル。Soft Echo AECを採用したハンズフリーフォンでは、エコー遅延が100msで、1チャンネルあたりに必要なプロセッサの処理能力は8MIPSと低く、メモリー容量は10kバイトと小さくて済む。車載用は必要な処理能力やメモリー容量は同じで、エコー遅延が50ms。Soft Echo LECは、エコー遅延が16msあるいは128msで、12MIPS、メモリー容量は20kバイトである。
 SoftEchoは、米Freescale社のPowerPCなど、主要なプロセッサ上で動作する。また、ルネサス テクノロジのSH-4シリーズもサポートする予定だ。同社がインフラ向けに開発したチップ「OCT6100」の高品質の音声技術をIPとしてライセンス供与することで、民生機器の分野で圧倒的なシェアを持つ米Texas Instruments社など競合他社に挑む。
Octasic社はSoftEchoで民生市場に進出を狙う
 SoftEchoに関する同社の戦略には3つのビジネスモデルがある。1つ目は、エコーキャンセラ用カスタムASICを製造している半導体メーカーにライセンスを供与するというもの。2つ目は、マイクロコントローラメーカーに対し、外付け部品が不要になるよう、エコーキャンセラ機能を実装したマイコンの実現を提案するというもの。これらの顧客に対して同社は、開発用ソースコードを提供し、ライセンス料を受け取る。
 そして3つ目は、現状の機能に満足していない、他社製品を使っているシステムインテグレータに対し、それぞれのユーザーがもつプラットフォーム向けに最適化し、ライセンスを供与するというもの。これらの顧客に対しては、ソースコードはオープンにしない。同社がポーティング作業を含めたサービスを提供する。社名は明かさなかったが、既にある顧客との間でポーティング作業を行っているという。
 同社によると、エコーキャンセラ技術では、一般にLMS(least mean square)法というアルゴリズムが広く使われているというが、Octasic社はLS(least square)法を採用した。LS法を使ったアルゴリズムでは、メモリーサイズが大きい、高いDSP処理能力が必要、コストが高い、という欠点があるため、これまでこの方式を採用するメーカーは無かったが、この市場において後発となるOctasic社では、「敢えて誰も選ばなかったLS法を採用し、高品質を追求した」という。民生機器市場に対しては、「ミドルウエアを用意して、従来のLS法がもつ問題点を解決した」(同社)。

図1 LS法を用いたエコーキャンセラ技術イメージ図。周波数ごとに測定する。

 LS法とLMS法の大きな違いは、そのエコー測定方法にある。LS法の場合、アダプティブフィルタで各エコーポイントのエコー状態を測定する際に、周波数帯ごとに残留エコーを測定することができる(図1)。このため、問題がある周波数だけにホワイトノイズを入れることが可能。ノイズが大きい環境の中でも、逆相にしたホワイトノイズを入れることで、周囲のノイズを打ち消し、高品質な音声を得ることができる。
 これに対し、LMS法の場合では、周波数ごとの測定ができないため、エラー率が分からずある程度決め打ちした測定しかできない。
 LS法を使ったインフラ向け半導体チップ「OCT6100」は、パッケージサイズが16mm×16mmと小型ながらも16〜672チャンネルに対応する。現在、世界各国で採用されており、主なユーザーには米AT&T社、英BT(British Telecom)社、中国移動通信社、そして日本のNTTなどがある。
(伊藤 達哉)
連絡先:日本窓口 丸文、03-3639-8951

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