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2006.5
特別取材
ミネソタから世界中へ電子部品を届ける
――謎のディストリビュータDigi-Keyの素顔に迫る
Digi-Key社長のMark Larson氏。「Digi-Keyはバーチャル・アキハバラだ」と言う。
 「1ヵ所から世界中に電子部品を届ける」。電子部品のディストリビュータである米Digi-Key社の社長を務めるMark Larson氏(写真)は信念を曲げない。このために、「幅広い製品の種類、常に豊富にある部品点数、ユーザーに対する責任へのこだわり、と3つがわれわれのビジネスのカギとなる」(同氏)。
 これによって、ユーザーは文字通り、ワンストップショッピングで電子部品を購入できる。2005年の同社の売上高は6億2000万米ドルを超えた。1987年以来、平均成長率22%という驚異的な伸び率を誇り、2000年バブルの時でさえ落ち込みが少なく、現在まで成長し続けている。

謎のディストリビュータ

表1 Digi-Keyひとくちメモ
 日本にはセールスマンや支社も置いていない。この状況は他の国でも同じで、どの国あるいは米国内のどの州にもセールスオフィスや支社を置かない。すべての注文を、ミネソタ州チーフリバーフォールズ(Thief River Falls)で受け付け、数時間後にここから世界中に向けて出荷する。ここは、米国大陸北部で東西の中心にあたる。
 日本での露出は、EDN JapanやDesign News Japanなどで見かける広告しかない。日本にはカスタマセンターが奈良県にあるだけ。部品供給に関してトラブルが発生した時に対応する機能しか持たない。このため、日本のエンジニアからはDigi-Keyは謎の企業と見られている。
 創業者のRonald Stordahl氏が学生時代にアマチュア無線仲間にデジタル電子キーのキットを販売したことからDigi-Keyという名前を付けた話は有名だが、実際に電子部品の販売を始めたのは1972年。当初はハム仲間などアマチュアの電子回路マニア向けに販売しており、企業向けに本格的に販売し始めたのが1982年である。現在ではユーザーの98%がビジネスユーザーだ。
 建物は60万平方フィート(5万5741m2)と広く、オフィスと部品倉庫をすべてここに集約している。注文を受け付けると、部品倉庫の担当者が相当する製品を集め、かごに入れるか、部品を直接ベルトコンベアに載せる。光センサーで各部品の袋に印刷しているバーコードを読み取り、コンピュータで自動的に指定の配送業者へ仕分けされる。部品の入力は二重に管理しておりミスは極めて少ないという。
 ベルトコンベアは一様に平坦ではなく、幅70〜80cmごとに区切られている。その各部分はベルトコンベアの流れに対して仕分けしやすいように横方向(流れに対して垂直方向)にも動く。このベルトの各部分は500カ所もあるため、同時に500種類の注文がベルトに乗って動くことができる。ベルトコンベアの上部にはバーコードを読み取るための光センサーがあり、データの内容に応じて行き先を仕分けている。
 静電破壊対策も万全だ。MOSなどの静電破壊に弱い高入力インピーダンス部品は、静電対策を施された袋に詰められ倉庫内の特別地区の棚に置かれている。この棚の前には進入禁止の黄色い線が引かれている。棚の列への接近は静電破壊防止用の器具を身につけた作業員しか許されない。

図1 右肩上がりで成長を続ける。(単位は100万米ドル、2006年は見込み)
出典:Digi-Key社


海外に積極に展開

Digi-Keyオフィス・倉庫の全貌。手前の長方形のビルがオフィス、奥の正方形の建物が倉庫である。周りは畑ばかり。
 米国中心だった販売活動を、新たにカナダ向けに始めたのが1997年からと、世界を相手にし始めた時期はそれほど古くはない。2002年に日本向けをはじめ、2003年には英国へ、2004年はドイツなど欧州へ、2005年から中国、香港、シンガポールなどアジアにも売り始めた。注文は米国内は電話が多いが、海外ではインターネットやファックスが使われることが多いという。
 特に海外からの注文の50%はインターネットからで、日本の顧客には日本語で対応できる。日本語のカタログがあるように各国ごとに例えばドイツ語、フランス語などのカタログもある。
 エンジニアがリファレンスデザインなど設計に必要な情報を望む場合にはウェブサイトに最新情報を掲載し、オンラインセミナーなども開催して深い情報を提供しているという。ちなみに毎日のオンラインのヒット数は800万ヒットと高い。オンライン注文、コンピュータ仕分けなど、ITを駆使した事業を展開しているため、オフィスにはコンピュータルームがあり、ここに巨大なサーバーを設置している。
 製品を供給するサプライヤの選択に関しては極めて慎重だ。品質を重視するため、部品業者を簡単には認定しない。現在320社のサプライヤの製品を扱っている。2005年は30社を追加しただけだが、それでも320社は多い。
配送業者ごとの最後の仕分け。電子部品を詰めた段ボールを配送業者ごとに自動で分けている。
 日本から、パナソニック エレクトロニックデバイスや村田製作所、TDKなどの受動部品、米国からIntel社のプロセッサ、Texas Instruments社のDSP、Analog Devices社のオペアンプなど、世界中の電子部品を一度に注文できることが強みだ。ユーザーから要求される部品の90%以上を取り扱えることをコミットしている。米国のミネソタ時間で午後8時までに受け付けた注文はその日の内に出荷する。
 東京で午前10時(ミネソタ時間午後8時)に受け付けると東京時間の正午(同10時)には出荷するという。米国内はUPSやFedexなどの運送業者を使う。日本ではUPSがヤマト運輸と提携しており、ヤマトから日本の各ユーザーに配送される。パナソニック エレクトロニックデバイスなど日本の 製品は米国から逆輸入される形だが、ユーザーは日本にいても外国からきたとは感じない。納入期間は平均72時間(3日)だという。米国内では36時間だとしている。
同時に500ユーザー分を載せられるベルトコンベア。
 一方で、要求される部品の品切れ対策も怠らない。部品が手薄になる6週間前にはサプライヤに発注する。大量の注文には、例えば、1000個の部品はすぐに届け、残りはリードタイムを考慮して何週間かかるかを前もってユーザーに知らせておく。
 サプライヤの認定は慎重だが、認定されているサプライヤが発売する新製品に対してはすぐに対応する。サプライヤの担当者から連絡を受けると、オンラインのウェブサイトやカタログにもすぐ載せる。汎用品だけではなく、プログラム書き込みなどのカスタマイズにも対応する。そのためのテクニカルサポート要員、技能者も確保している。

日本市場に大きな期待

 2005年の地域別売上高実績は、北米向けが90%、欧州が4%、日本2%、その他のアジア3%、その他1%となっている。Larson氏は日本市場を重視しており、2005年の1400万米ドルが2006年は2100万米ドルになると期待している。日本は製造拠点として安定しているからだという。設計されるシステムの数は他の国よりも多いため日本市場は成長し続けると見ており、今後5年間で8000万米ドル〜2億米ドルの成長を見込んでいる。
 一般に成長が期待されている中国に対しては、「指数関数的な伸びはもうしないと考えている。というのは、中国だけではなくインドやメキシコ、東欧などへ生産工場が拡散しているためだ。加えて政治問題やジェンダー問題などが潜んでいるため、もはや中国一辺倒ではなくなる。中国ビジネスはハイリターンかもしれないがリスクも大きい」と同氏は冷静だ。
 製品別では、2005年の売上高ベースで半導体デバイスは34%、受動部品は35%、機構部品は9%、コネクタやケーブルなどの配線部品が15%を占めている。その他の7%は開発ツールやテスト装置などであるという。この比率は世界でも日本でもほとんど変わらない。これからは、「半導体デバイスは製品価値が高くなってきているため、半導体デバイスの売上高比率を上げていく」とLarson氏は成長戦略を熱く語る。
(津田 建二)
連絡先:Digi-Key社、+1-218-681-6674

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