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DESIGINIDEAS
2006.5
低域ベッセル・フィルタでオーディオ性能を向上
Troy Murphy 米Analog Devices社
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 ベッセル線形位相フィルタは、カットオフ以下の周波数すべてに対して遅延が等しいという特性を持つことから、帯域内信号の位相関係を悪化させずに帯域外雑音を除くことが求められるオーディオ・アプリケーションに使用される。ベッセル・フィルタはまた、ステップ応答が高速で、オーバーシュートやリンギングがないため、オーディオD-Aコンバータ出力のスムージングフィルタやオーディオA-Dコンバータ入力のアンチエイリアスフィルタとして最適である。さらに、D級アンプの出力解析や、各種アプリケーションにおけるスイッチング雑音の除去にも適しており、歪み(ひずみ)やオシロスコープ波形の測定精度改善に用いられる。
 ベッセル・フィルタの通過域内の応答は、振幅特性が平坦で線形位相、つまり、群遅延が均一であるものの、同次、つまり構成段数が等しいバターワースまたはチェビシェフフィルタよりも選択度特性の切れが悪い。このため、必要な阻止域減衰量を実現するには、ベッセル・フィルタをより高次にする必要がある。したがって、雑音と歪みを最小にするにはアンプと部品の選択が重要になる。

図1 2つのデュアルオペアンプと受動部品少々で、高性能の8次、30kHz低域ベッセル・フィルタが実現する。

 図1は、高性能の低域8次ベッセル・フィルタ(遮断周波数30kHz)の構成である。この設計では、標準部品である誤差1%の抵抗と同5%のセラミックコンデンサを使用している。通過域内の群遅延変動が大きくてもよければ、同10%のコンデンサを使える。さらに良い性能を得るには、温度特性の優れたコンデンサを使うとよい。
 このベッセル・フィルタは、アースを挟んで正負に振れるオーディオ信号を処理し、アンプの電源として±2.5Vを使う。レール・ツー・レール出力機能により、電源電圧が低くても、最大出力電圧振幅が得られる。高品質オーディオサービス用に高いSN比を得るには、各アンプの単一利得特性が安定していることと固有雑音の少ないことが要求される。例えば、米Analog Devices社の「AD8656」は低雑音・高精度のCMOSデュアルオペアンプで、これらの要件をすべて満たす。
 アンプを逆相利得段として接続すると、入力コモンモード電圧を一定に維持することができ、歪みを最小にできる。抵抗をすべて1kΩ未満のものにすれば、その熱雑音を減らすことができる。各AD8656アンプが発生する雑音は、30kHz帯域幅において3nV/√Hz未満であり、総雑音は3.5μVrms未満と少ない。入力信号が1Vrmsの場合、SN比は109dB以上、入力信号が1kHz、1Vrmsのときは、THD+N(全高調波歪+雑音)は0.0006%以下となる。
図2 図1の回路の周波数対振幅特性。右の垂直軸の目盛に注意されたい。
 図2は、1Vrms入力に対するフィルタの振幅応答特性である。フィルタの通過域利得偏差は、20kHzまでで1.2 dB以内と平坦である。30kHzにおける−3dB付近で、8次ベッセルの300kHzで−110dBという理論減衰が現れ、それ以上では−160dB/decadeで減少していく。スイッチング電源などが発生する繰り返し雑音は通常、300kHz以上なので、この特性は十分である。
図3 直流〜 30kHzの通過域内では、このベッセル・フィルタの位相偏移と群遅延特性は、きわめて安定している上に、線形性にも優れている。
 図3は、このフィルタの位相偏移と群遅延である。群遅延は、40kHzという高周波数においてもほぼ17μsecで、比較的一定している。図3では、周波数軸の線形目盛に着目されたい。フィルタの通過域内における線形位相特性を明確に示しているのである。次式では、周波数に対する位相偏移の負の偏微分として、群遅延を定義する。

 群遅延=−δΦ/δf

 直流では、抵抗R1がフィルタの入力抵抗を383Ωに設定する。アプリケーションによって、これより高い入力インピーダンスが必要なときは、単一利得のバッファをフィルタの前に挿入すると、歪みと雑音は増加するが、入力インピーダンスは高くなる。±15V電源動作が必要なアプリケーションでは、AD8656を、より高電圧のアンプ、例えば、低歪み・低雑音(3.8nV)デュアルオペアンプであるAnalog Devices社の「AD8672」に替えるとよい。
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