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2006.5
ノイズ・歪みを考えた高速アンプの賢い選択法

電圧フィードバック、電流フィードバック、バイポーラ、CMOS――どのタイプにも利害得失がある。ここでは、用途に最適なアンプを選ぶ手順を示す。
Jeffrey Lies, Tamara Papalias, Mike Wong 米Intersil社
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 高速アンプはギガヘルツの壁を克服し、多くの用途で使えるようになった。市場に出ているアンプには、基本的に大きく2つの分類方法がある。プロセス(バイポーラまたはCMOS)と、フィードバック(電流または電圧)である。電流フィードバックおよび電圧フィードバックアンプはいずれも、高速アプリケーションによく使われる。それぞれのノイズ特性や、特長、限界に焦点を当ててみよう。回路構成の違いと、基本的なノイズおよび歪(ひず)みの特性を理解することが、最適な製品を選択する重要な鍵となる。
 VFA(voltage-feedback amplifiers)は、オペアンプの最も一般的な回路構成である。差動入力段と、ゲイン/レベルシフト段、出力段の3つの段階に分かれている。図1に、普及型のVFA「EL5157」の簡略化した構成図を示す。

図1 「EL5157」は電圧フィードバックアンプ回路構成の例である。

 入力段では、npn差動対がpnp対と並列になっている。2段目は、プルアップ電流源で構成される。信号パストランジスタの電流に差(信号またはエラー)が生じると、それが、高インピーダンスノードにおける電流源の出力インピーダンスを通して現れる。出力段は、高インピーダンスノードと出力との間にバッファを設けている。

CFA回路構成

 CFA(current-feedback amplifiers)とVFAは、入力構造が違う。入力段には、反転入力と非反転入力の間にユニティゲインバッファがあり、それがCFA回路の顕著な特長となっている。完全相補型バイポーラプロセスが実現するまで、CFAはVFAほど利用されていなかった。幸いなことに、今日ではこのプロセスが広く普及し、CFAは、バイポーラ回路の電圧スイッチングよりも高速の電流スイッチングを実現できるようになった。
 図2のCFAでは、非反転入力のインピーダンスは高く、非反転入力と反転入力段との間にバッファが入っている(点線枠内参照)。反転入力の入力インピーダンスは非常に低く、その信号は、カレントミラーを通って高インピーダンスノードZに伝わる。高インピーダンスノードZは、バッファを通して出力される。

図2 この電流フィードバックアンプでは、非反転入力はインピーダンスが高く、反転入力にはバッファがある。

 このCFA構造を、もう少し高いレベルでとらえると、その長所が明らかとなる(図3)。フィードバック抵抗RFにおいて電圧差が生じると、反転入力にエラー電流が流れる。反転入力におけるインピーダンスは低いため、このフィードバックは電流となる。CFAは、別名トランスインピーダンスアンプと呼ばれる。反転入力電流の変化が、必ず出力電圧の変化を引き起こすからである。反転入力は高い過渡電流を流したり引き込んだりできるため、バイアス電流の制限を受けない。カレントミラーは必要に応じて電源から高インピーダンスノードへ電流を供給し、これがCFAの高スルーレートを実現する。回路の終段にはユニティゲインバッファがあり、フィードバックエラー電流を抑えるのに必要な出力電圧を駆動している。

図3 電流フィードバックアンプは、反転入力電流が少しでも変化すると出力電圧が変化するので、トランスインピーダンスアンプとも呼ばれる。

 RFの値により、反転入力にフィードバックする電流の量が決まる。したがって、CFAのゲインを変化させる場合は図3のRGの値を調整する必要がある。また、VFAではゲインとバンド幅のトレードオフが必要であるのに対して、CFAのバンド幅はRFの値に反比例する。

オペアンプノイズの計算

 図4は、フィードバックのあるオペアンプの典型的なノイズモデルを示している。図には、外部のフィードバック抵抗およびゲイン抵抗のジョンソン・ノイズ電圧を含めて、ノイズ源となる可能性のあるものすべてが含まれている。抵抗ノイズ源が周波数によって変化しないのに対し、オペアンプの電圧および電流ノイズ源は周波数に依存する。そのため、オペアンプのデータシートには、入力電圧ノイズおよび入力電流ノイズのグラフが示されている。

図4 このフィードバックのあるオペアンプの典型的なノイズモデルには、外部のフィードバック抵抗およびゲイン抵抗のジョンソン・ノイズ電圧を含め、ノイズ源となり得るものがすべて含まれている。

表1 オペアンプにおける代表的なノイズの種類
 オペアンプの最も代表的な2つのノイズは、フリッカノイズとホワイトノイズである。フリッカノイズは、その影響が周波数に反比例することから、1/fノイズとも呼ばれ、低周波領域で発生する(CMOS設計では数MHz未満、バイポーラ設計では数kHz未満)。ホワイトノイズは、バイアス電流によるショットノイズと、デバイス内の抵抗や他の回路構成によるジョンソン・ノイズの影響からなる。ホワイトノイズは周波数に対する振幅特性が平坦なため、中および高周波領域で発生する。表1に、ノイズの種類と、その数式を示す。
 通常、ノイズ量は入力換算値で示される。つまり、提示された値は、入力に対して回路出力にノイズを引き起こす量である。例えば、ノイズ源がアンプの出力側に存在する場合は、その値を閉ループゲインで除算し、入力値に換算する。同一ノードにすべてのノイズを換算することで、いろいろなノイズの影響の比較や合成が容易になるというわけだ。

表2 ノイズ量/ノイズ源

 図4のアンプの例についてノイズ源を計算できる(表2)。比較のため、すべてのノイズ源を電圧で表している。表の3列目には、個々のノイズ源の電圧ゲインが示されている。
 ノイズはランダムに変動する。ノイズ源の平均電圧は、正弦波と同様にゼロである。しかし、平均電力はゼロとはならない。したがって、複数のノイズ源の影響を求めるには、各ノイズ源の電力を加算して総電力を得る。以下の式に示すように、ノードにおいて、電力Pは電圧Vの二乗に比例し、抵抗Rに反比例する。
 P=I・V=(V/R)・V=V2/R
 すべてのノイズ源を同一ノードに換算すると、回路全体で同じインピーダンスが得られる。その値を用いて総ノイズ電力を算出することができる。総電圧を求める場合は、この方程式を逆にすればよい。つまり、Pと、IまたはRを与えて、Vを求める。
 表2のノイズ源には相関関係がないため、前述のように合計できる。同一ノイズ源からのノイズや、独立した異なるノイズ源であっても互いの動作に関連がある場合には、相関ノイズが生じる。相関のあるノイズ源からのノイズの動作は互いに関連するので、単純にノイズ源の電力を加算するわけにはいかない。

VFA、CFAのノイズ解析

 VFAとCFAのノイズの違いは、入力段(図1および図2)の構成上の違いを比較すれば理解できる。VFAの入力構造は差動対である。したがって、バイポーラ技術では、入力は、pnpまたはnpnトランジスタ、あるいはその両方のベースに接続する。これらのノードを流れる電流は小さなベース電流である。ノイズ電流はベース電流に比例するため、VFAでは入力ノイズ電流が低くなる。
 一方、CFAでは、2つの入力が全く異なる構造に接続される。非反転オペアンプ入力は、バイポーラ・トランジスタのベースに接続しているため、そのノイズ電流はVFAの入力と変わらない。逆に反転オペアンプ入力は、バッファ出力、通常ではnpnおよびpnpエミッタとなる。エミッタ電流は、ベース電流よりもかなり大きいため(電流ゲインβ倍となる)、ノイズもそれに比例して高くなる。VFAの入力ノイズ電流の範囲が通常1p〜5pA/であるのに対し、CFA反転入力ノイズ電流は、通常20p〜30pA/の範囲となる。

表3 VFA、CFA、CMOS回路のノイズ量の標準値

 フィードバック抵抗RFは、この大きなノイズ電流を電圧に変換する。入力換算ノイズ電圧はより複雑なパラメータである。入力トランジスタ(主にトランジスタのベース抵抗とコレクタ電流)だけではなく、入力段が駆動する負荷の種類に依存した関数となる。一般的に、CFAの入力ノイズ電圧は、少なくとも低ノイズに最適化されていないVFAと同じくらい低いといえる。表3に、VFA、CFA、さらに比較のためにCMOSアンプの典型的なノイズ電流および電圧を示す。
 VFA回路は、入力電圧差に対する感度に関して最適化されている。そのため、3つの中で電圧ノイズの影響は最も低い。各端子へのベース電流が小さいため、2つの入力における電流ノイズはいずれも低い。CFAでは、フィードバックノードに、ベース電流ではなくエミッタ電流が流れる。この電流が大きいため、その電流ノイズも当然大きくなる。

図5 この簡略化したCMOSオペアンプでは、両方の入力がMOS FETゲートに接続しているため、電流は実質的にゼロとなる。したがって、電圧のみで出力信号が決定するため、アンプの入力電流ノイズのレベルは低い。

 CMOSの入力は、純粋に容量性である(図5)。ここでも入力は差動対である。入力は両方ともMOS FETゲートに接続されるので電流は実質的にゼロとなる。そのため、電圧が出力信号を決めるため、CMOSアンプの入力電流ノイズレベルは低い。CMOSの入力電圧ノイズはやや高いが、それでも他の2つの場合と同じ桁数の範囲内に収まっている。したがって、トランスインピーダンスアンプのように電圧ゲインが低い場合は、ノイズの高さは問題にはならない。CMOSアンプの欠点は、1/fノイズのコーナー周波数がデバイスチャンネルの長さに反比例する点である。つまり、プロセスが微細になるほど、1/fノイズのコーナー周波数は高くなってしまう。

VFA、CFAの歪み特性

 低周波領域ではVFAの歪みが最も小さい。差動対入力段がシーソーのような働きをするからである。オペアンプが負のフィードバックを受けた場合は、シーソーを水平にするように働く。図6に、典型的なCFAおよびVFAのデータシートから歪み値を示す。もちろん、市場に出ている製品がすべてこの曲線通りというわけではない。機器に適用する前にアンプのデータシートを参照してほしい。

図6 (a)はCFA、(b)はVFAの典型的な2次および3次高調波歪み値のグラフ。

 CFAにおいて、非反転入力では電圧、反転入力では電流を入力する。シーソーの効果はここにも存在するが、それはVIN+が電流に変換されてから後のことである。この変換は十分ではなく、エラーが2次高調波歪みとして現れる。さらに高い周波数領域では損失はほとんどスルーレートの制限によるものである。CFAのスルーレートはVFAよりも高いため、高周波領域における歪みは少ない。また、CFAでは、ゲインの設定を変えても歪みが比較的一定に保たれる。
 xDSLシステムでは、通信信号は2万フィート(約6.1km)もの長さの電話回線を伝送する。受信信号は、バンド幅4MHzで30mVというほど小さい場合もある。この信号を増幅するには低ノイズアンプが必要となる。低周波送信信号から高周波ノイズを除去するためのフィルタリングも必要である。
 回線の受信側の閉ループゲインは少なくとも30V/Vでなければならず、ドライバのフロントエンドのA-Dコンバータの分解能は14ビット必要である。14ビットA-Dコンバータを最大限に活用するには、入力SNR(信号ノイズ比)が84.3dBより大きくなければならない。例えば、入力信号が20mVの場合は、ノイズレベルは1.2μV未満である必要がある。アンプの入力電圧ノイズの上限値は、バンド幅4MHzに対して0.9nV/である。この場合は、VFAが最適である。それは、入力電圧ノイズが低いからだけではなく、VFAがアクティブフィルタをより柔軟に構成できるからだ。

A-Dコンバータを駆動

 特にパルス入力の場合、CFAは高速で高分解能なA-Dコンバータの駆動に適している。この応用において、CFAの顕著な利点は、出力ステップの大きさに関係なく、出力の立ち上がり時間がほぼ一定だという点である。立ち上がり電流は過渡時の反転入力電流に等しく、RFを横切る電圧差の関数となる。したがって、実際には、CFAのスルーレートはステップが大きくなると高くなる。VFAにおいては、1V未満の電圧幅でスルーレートの限界に達してしまうのに対して、CFAでは通常、数V未満のステップに対してはスルーレートの限界に達することはない。
 スルーレートに関する長所に加え、CFAはバンド幅(バンド幅が総ノイズに影響することには変わりがないので注意)や歪み、セトリング時間に優れている。また、供給電流が比較的低いため、A-Dコンバータのドライバには最適である。例えば、「EL5166」は、バンド幅1.4GHz、スルーレート6000V/μs、20MHzにおける2次高調波歪み70dBで、14ビットA-Dコンバータの駆動に適している。通常、A-DコンバータのドライバではCFAフィードバックネットワークの負荷は問題にならない。この特性を利用して、安価なフィードバック抵抗で、ノイズを極力抑え、ドライバの性能をできる限り上げることができる。

トランスインピーダンスアンプ

図7 フォトダイオードに利用される高速トランスインピーダンスアンプの重要な要素の1つは、反転入力における容量(ダイオードや、アンプ入力、寄生容量を含む)である。
 バンド幅が広く、入力バイアス電流および入力ノイズ電流が低いことから、最新の高速CMOSアンプは、フォトダイオード・トランスインピーダンスアンプに理想的である。トランスインピーダンス設計における重要な要素は、反転入力の容量(ダイオード、アンプ入力、および寄生容量を含む)や、RFにより設定されるトランスインピーダンスゲイン、広いダイナミックレンジを得るための低入力電流ノイズ、十分なゲインバンド幅をもつことである(図7)。これら4つの変数を設定した上で周波数応答を制御し、安定性を確保するためにRFと並列にフィードバック・コンデンサが必要となる。
 アンプがレール・ツー・レールで、単一電源の場合は、非反転入力をグラウンドに接続すると、フォトダイオードに全く光があたっていない時には出力を真にゼロすることができる。これにより、回路において、出力が負レールを通らなければならない場合の遅延をなくすことができる。
 最適な性能を得るためには、以下に挙げるガイドラインに従って部品を選択するとよい。
・システム全体のノイズを低くするためには、適当なRFを選択し、必要なトランスインピーダンス段のゲインを得るようにする。
 CMOSアンプでは実質的には電流ノイズがないのでトランスインピーダンス段のノイズを下げるためRF値を低くする。このためゲイン段が必要となり、全体としてのノイズ性能は低下してしまう。信号値は線形に増えるのに対し、RFが生成するノイズは抵抗値の平方根に比例して増える。したがって、必要なゲインをトランスインピーダンス段に持たせると、SNRは向上する。
・反転入力における容量を極力小さくする。
 この容量はオペアンプの電圧ノイズを増幅してしまう。フォトダイオードに逆バイアスをかける低ノイズ電圧源を利用すれば、その容量をかなり減少させることができる。フォトダイオードは小さいものほど容量も小さい。光学系を利用して光を集め、フォトダイオードを小さくするとよい。
・バンド幅が増加するとノイズも増えるため、回路のバンド幅を必要最小限にする。
 バンド幅を制限するには、安定性に問題がなくてもフィードバック抵抗をコンデンサと並列にするとよい。
・上手な設計のアンプでも、プリント回路基板上のリーク電流は、性能劣化につながる。
 基板をていねいに拭くとよい。プリント回路基板のガード用配線で加算接続部(反転入力)を囲み、加算接続部と同じ電圧で駆動するとリーク電流を減らせる。
 CFAもVFAも、高速アプリケーションでよく利用されている。回路構成の違いと、基本的なノイズおよび歪みの特性を理解することが、最適な製品を選択するための重要な鍵となる。表4は、上述の内容と例をまとめたものである。

表4 オペアンプの回路構成/特長/用途の概要

 
 

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