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2006.5
高速オシロスコープを使いこなす

最近のデジタルオシロスコープは、かなり高精度な測定や解析が可能である。しかし、このような高度な機能をうまく使いこなすには、入念に準備しなければならない。
Dan Strassberg
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 オシロスコープ(以下、オシロ)は電子回路やシステムの内部動作を観測できる。基本的には見ることのできないプロセスを見るツールがあること自体、電子技術者は細かすぎる、という人がいる。確かに、他の分野にはこれほど細部を観測するツールは存在しない。オシロはすでにユーザーが求める性能以上に高精度だが、メーカーはさらにその価値を高める工夫を続けている。「高速」(帯域幅およびサンプリングレートの双方)、「大容量」(データを取り込むメモリーの容量)および「低価格」は今でもオシロ設計者の目標である。これに加え、オシロをさらに便利にするための工夫が著しい。その勢いは、帯域幅、サンプリングレート、メモリー容量の増加に劣らぬほどだ。
 ここ数年間、オシロの解析および計算能力の向上は著しい。しかし、解析能力を加えることは、大量の計算を行うオシロの設計課題の一部にすぎない。また一方で、高度な新しい機能を付加したところで、ユーザーは驚きもしないと思われていた。おそらくオシロは、ユーザーが使うのをためらうほど複雑な操作を必要とする機能は備えない方がよいのだろう。オシロの設計者は、新製品が登場すると、その操作性に関する話題全体を、自動車にたとえて、「オシロの運転方法」といった見出しで紹介したりする。
 オシロは、電子技術者の仕事の中でとても重要な部分を占めているが、それでもオシロを単なるツールとしてしか認識していないエンジニアは多い。つまり、作業を行うための付随物であり作業の対象ではない。そのような認識に応えて、使用方法はさらに容易になり、またそれが、オシロはただのツールだという認識を大きくする。技術について考えることなく測定ができれば、その処理手順については何も考える必要がないように感じる。スケジュールや予算が縮小されている今の時代には、作業以外の問題について考える時間はほとんどない。そのようなことを考えることは危険なことである(別掲記事「オシロの高周波振幅精度の正確な校正は、思ったよりも難しい」を参照)。現在のオシロは、本質的に困難だと思われていた測定が容易にできるようになったが、その測定は見た目よりも複雑になってきた。この事実を認識し、オシロやその技術を理解していないと、意味のない誤った測定結果になる。また、最悪の事態になって修正するにはコストがかかりすぎて、不可能な状態になるまで結果が無効であることに気づかない可能性もある。

直感的でなじみやすさを優先

 アプリケーションに最適なオシロを選択し、それを最善の方法で使用できるほどの専門家になるには、努力が必要だ。実際、最適なオシロを見つけ出し、それを最も効果的に使用するための努力を無駄足だと言う人もいる。第一に、オシロの選択や使用に関して、何が「最適」で、「最善」であるかという定義は、エンジニアによってそれぞれ異なる。次に、オシロを選択する際にエンジニアが参照するデータシートは、量が膨大で、脚注や細目がぎっしりつまっており30ページ以上もある場合がある。3つめに、市場におけるミッドレンジのオシロの多くと、ハイエンドのオシロのほとんどすべてが、今やパソコンベース、つまり通常はWin-dowsの標準バージョンに基づいている。したがって、Windowsベースのソフトウエア・アプリケーションにより、オシロの多様な機能にアクセスする方法が決まっている。
 オシロのアプリケーションの複雑さは、少なくともマイクロソフト(www.microsoft.com)のWordやExcelといった、パッケージ化されたオフィスソフトウエア・アプリケーションに匹敵する。オフィスアプリケーションのユーザーの多くは、そのソフトウエアの機能のなかでほんの一部しか利用していない。オシロユーザーも同様である。さらに、多くのオシロユーザーに共通する問題は、オシロを毎日使用するわけではないのに、その前に座ったら直ちに被測定物のシステムやデバイスに関する測定結果を得たいと思う点だ。つまり、オシロの機能を使うための方法は、直観的で、ユーザーがよく知っている従来の慣習にできる限り従ったものでなければならない。
 オシロメーカーは、少なくともハイエンドのオシロを、正しく選択したり有効に利用する上で最も大切なことは、オシロを販売するフィールド・エンジニアであると指摘している。彼らは、購入前に他の機器と細かく比較する手助けと、オシロを有効に利用するためのアドバイスや周辺機器を提供してくれる。販売代理店のセールスマンも同じようなサービスを提供してくれるだろう。また、販売代理店で購入てもメーカーと購入したモデルによっては、工場がサポートを提供している場合もある。多くのオシロベンダーが、自社製品を有効に利用するための情報を記載したアプリケーションノートを、ウェブサイトに準備している。表 1(http://www.edn.com/contents/images/6305348t1.pdf)および 表2(http://www.edn.com/contents/images/6305348t2.pdf)に、主要4社のリアルタイム・サンプリングオシロの主な仕様をまとめた。

まずはプローブから

 現在のオシロに関する議論は、プローブから始めるのが適切である。オシロはプローブの先端で被測定物であるデバイスと接触する。過去には、ほんの数MHzが高周波だと思われていた時期があった。今では、ギガヘルツの信号の測定は普通であり、シリアルバスは通常3Gビット/秒以上の速度で信号を伝送する。オシロメーカーは、オシロとプローブの帯域幅を−3dBで、合わせて少なくともビットレートの1.8倍以上とすることを推奨している。つまり、公称ビットレートが3.125Gビット/秒のバスならば、オシロとプローブの合計帯域幅は少なくとも5.625GHz必要となる(公称ビットレートが3.125 Gビット/秒のバスは通常、2.5Gビット/秒で情報を伝送する。なぜなら、データストリームに8ビット/10ビットクロックが埋め込まれて、情報レートは公称ビットレートの80%になるためである)。5.625GHzに最も近いオシロメーカーが公表する帯域幅は、6GHzである。5.625GHzに6.67%のマージンがあれば、プローブにより帯域幅が減少しても大丈夫である。
 ここで重要な点がいくつかある。1つめは、このような高速シリアルバスの測定には、差動アクティブプローブが必要である点だ。この速度では、ほとんどすべてのバスが差動方式であり、次のような要因から、信号振幅は小さい。つまり、単一終端回路とは異なり、差動レシーバはコモンモードのノイズを排除する傾向があるため、信号振幅を小さくすることができる。また、差動回路はノイズの輻射が少なく、単一終端回路よりも電力供給線の過渡負荷を少なくすることができる。しかし、信号振幅が小さいと、パッシブプローブに対しては不利に作用してしまい、容量性負荷を減少させるために、通常は入力信号を減衰させてしまう。また、1つの差動信号を見るために2つのオシロ入力を使用することなどは問題外である。そのようなことをすると、オシロのチャンネル数を半減させるだけでなく、周波数に不適切な入力端子対を提供していることになる。その結果、存在しない波形が画面に表示されることになりかねない。
 数GHzの帯域幅の差動アクティブプローブは、かなり優れており、数年のうちにさらに高性能になることが予想される。これらのデバイスを設計し特徴を持たせるための最適な方法については、メーカーによって見解が異なるが、次の事実に関してはどのメーカーも同じ意見であると思われる。つまり、数GHzの信号を取得するには、測定する信号にある程度の負荷をかけて、被測定物にプローブを接続しなければならない、ということである。
 しかし、負荷をかけることが常に、意味のある観測波形が得られるのかどうか、という点に関しては、メーカーによって意見が分かれる。プローブが最大限の注意を払って設計されていなければ、負荷の影響に意味があるかどうかだけでなく、問題のある波形でもきれいに表示してしまう可能性がある。あるいは、問題のない波形を問題のあるように表示してしまう可能性もあることは否めない。その逆はどうかということに対して、例えば、プローブに起因する誤りがあると、実際には正しい波形でもアイパターンを正しく表示しなかったり、逆にアイパターンが正しくても誤った波形が表示されたりすることがある。
 プローブが被測定物に容量負荷をかけることはよく知られている事実である。しかし、プローブの直列インダクタンスもまた、数GHzにおけるプローブの応答を決定する重要な要素である。さらに、プローブの並列容量と直列インダクタンスの共振は、被測定物への負荷と、プローブの周波数および過渡応答の双方により深刻な影響を及ぼす可能性がある。

プローブがさらに高性能に

図1 Tektronix社のDPO7000シリーズの3製品は、画面サイズ12.1インチ型、解像度XGA(1024×768画素)の表示画面を持つ。最上級機である2.5GHz帯域幅のオシロは、400Mものサンプルを格納できるメモリーを持ち、そのすべてを1つのチャンネルに割り当てることができる。
 すべての主要なオシロメーカーによる現在のプロービングシステムに、オシロとプローブ間の双方向通信の機能が含まれている。現在のアクティブプローブは、プローブ先端における波形を増幅あるいはバッファリングした複製を、単にオシロに送ること以上の機能を持ち、また、オシロもこれらのプローブに電力を供給する以上の役割を果たす。例えば、米LeCroy社の最新のプローブは、動的なプローブ校正データを保存する。このデータには、プローブのオフセット電圧やDCゲイン以上の情報が含まれる。つまり、高周波ゲイン、および位相(遅延)に関するデータが含まれている。LeCroy社の製品管理ディレクタであるMike Lauterbach氏によると、超広帯域オシロはすべてのメーカーおよび機種が、DSPに基づく技術を利用して、プローブ一体化アンプの高周波ゲインおよび位相特性を補正している。補正により応答は、4次ベッセルローパスフィルタと同程度にまで改善され、未補正のアンプ応答よりも望ましい応答に近いものとなっている。
 しかし、Lauterbach氏が知る限り、LeCroy社のWaveLinkプローブ製品ファミリのみが、現在、補正アルゴリズムによるプローブ応答をもつという。WaveLinkプローブを、互換性のあるLeCroy社製オシロに接続すると直ちに、補正ルーチンがプローブから校正データをアップロードし、プローブのAC特性(工場で測定された値、または最後にLeCroy社製のプローブで特性を測定したときの値)に対するチャンネルの応答を補正する。プローブを校正に含めることにより、LeCroy社は、11GHzのオシロで米Agilent社や米Tektronix社(図1)の競合モデルよりも狭い−3dB帯域幅を提供し、10GHz以上のリアルタイムオシロにおいて、最も高精度な高周波ACおよび過渡応答を実現することができた。LeCroy社(図2)はまた、競合する少なくとも1社とは異なり、現時点ではオシロの帯域幅を拡張するためにDSPを利用していないことを指摘している。

図2 今日のオシロでは、指定すれば異常な波形も観測できる。LeCroy社はその機能をエクスクルーション・トリガーと呼ぶ。他社も呼び名は異なるが同様の機能を提供している。

 念のために言及しておくが、現在の広帯域オシロは、TR=0.35/BW(ここでTR=10から90%の立ち上がり時間で、BW=−3dBの帯域幅)という昔ながらの数式による、10から90%の立ち上がり時間に関する周波数応答を持たない。また、以下の式によりオシロとプローブの合計立ち上がり時間を求めることはできない。


 まずひとつには、各立ち上がり時間の定義が、信号が入力ステップ振幅の10から90%を伝わる時間に対応するのか、それとも20から80%なのかを、データシートの注釈から注意深く調べておくことである。メーカーによっては、両方の立ち上がり時間を指定している場合がある。バスの物理層の規格には、20から80%の値のみを使用しているものもある。この場合に10から90%の値を使用すると、混乱が生じてしまう。また、「どの立ち上がり時間を使用するのか」という問題に加え、新しいオシロの高周波特性の低下が、古い法則のベースとなったアナログオシロのものとは異なるため、古い数式が新しいオシロやプローブには適用できない。大容量メモリーと長い波形記録データにおける暫時的な変則性の検出については、「取得メモリーの容量に関する考察」を参照してほしい。

点集合のパーシスタンスモード

図3 アナログパーシスタンスモードでは、出現回数により画面の各画素の輝度や色彩を変えて、アナログオシロスコープの蛍光体応答のシミュレーションを表示する(LeCroy社提供)。

 パーシスタンス(重ね書き)モードは、多くの人が考えるようには動作しない(図3)。誤解を防ぐために、ここに一般的にすべてのメーカーのオシロにあてはまる簡単な説明を示す。パーシスタンスモードでは、リアルタイム・サンプリングレートの限界のために、オシロがリアルタイムで取得できない高周波波形を、たいていの場合正しく取得することができることに注意してほしい。そのような波形を取得するには、ランダム等価時間サンプリングが必要だと誤って信じているユーザーは多い。このモードには、あまり知られていない落とし穴があるため、使用上の注意が必要だ*1)
 パーシスタンスモードを使用するには、取得したい波形に関する時間においてトリガーが安定していなければならない。波形の特性でトリガーを用いるか、他のトリガーソースを用いることができる。トリガーの度に、オシロは波形のサンプルを取得し、トリガー時間ごとに画面上に点を配置していく。しかし、点と点の間に線は描画しない。初期設定で、sine x/x補間点を追加するオシロもあるが、何も追加しないオシロもある。オシロは単に点を画面に配置していくだけである。正確には、表示プロセッサIC内の配列に点を配置していき、表示プロセッサICがそれらの点を画面に描画する。しかし、オシロは点と点の間に線を描画せず、入力信号の形を再現しようとはしない。そのようなことをすると、ナイキスト基準に反することになりかねないからである。
 その後、オシロは通常、数100回、または数1000回も繰返しトリガーをかける。各トリガーにおいて、サンプルを取得し、画面に点を配置する。しかし、「軌跡を描画する」ことは決してしない。オシロは、トリガー時間ごとに取得したサンプルを単に表示していく。トリガーと入力波形が安定していれば、点の集合は、信号を表す線を描くように埋まっていき、波形に似た形になっていく。垂直ノイズやタイミングジッタにより、トリガー時間または波形が安定していない場合は、パーシスタンス表示は、雲状の点集合となる。信号波形が時々大きく断続的に変形する場合は、大部分の点が通常の信号波形に沿っている中で、その波形からはずれた個所にいくつかの点が存在する状態が表示される。

更新速度が遅い

 オシロメーカーは、オシロの高速な画面更新速度と、制御設定の変更に対する応答性を重要視している。このような特性を、「アナログオシロのような使用感」と表現するメーカーもある。オシロを使用するにあたっては、この表現は正しく、かつ重要なことだが、少し考えてみると、誇張ではないのかと疑わずにはいられない。ほとんどすべてのデジタルオシロが、画面を1秒間に30または60回しか再描画しない。しかし、1秒間に表示される波形は数1000にも及ぶのである。再描画間の画面ビットマップにおける複数の変化を集合化し、次の再描画でその集合を表示することにより、この応答性を実現している。
 オシロ処理のこの部分は、オシロが、例えば1024画素の画面に、ユーザーに無限にスクロールさせることなく、100万点もの記録データを水平に表示する方法と、その考え方が似ている。相違点は、拡大表示できるという点である。100万個のサンプルを、各画素が1000サンプルを表す、1000画素の列に圧縮する最も簡単な方法は、各1000サンプルのグループにおいて、最小および最大の信号値を検出し、その列における最小値に対応する画素から最大値に対応する画素までの間のすべての画素を明るく表示することである。このアプローチをとると、軌跡は「太く」なり、その幅の中の照度は均一である。より詳細に信号を表示するには、最後の画面更新から、信号レベルが何回、画面の画素マップ内の各点に対応したかをオシロが算出し、各画素の輝度または色をその点に「合致」した回数に合わせて変える方法がある。
 大画面を活用するメーカーも出現してきている。居間を占領する高品位テレビの画面サイズではなく、ラップトップ型パソコンのようなアスペクト比の大きい画面でもないが、従来のオシロよりはかなり広い表示面積をもつ。画面が大きければ、波形の詳細を表示するにも便利である。床面積の小さいオシロに関しては、LeCroy社が数年前に発表して、この流行の先駆けとなった。WaveSurferファミリの製品は、奥行き6インチの筐体に、画面サイズ10.4インチ型、SVGA対応(800×600画素)の画面をもつが、その床面積は、画面サイズがわずか6.4インチ型のTektronix社のTDS3000Bよりも小さかった。WaveSurferの画面サイズは、Tektronix社のオシロの2.5倍以上もある。現在LeCroy社は、その安定した大画面で床面積の小さいオシロに、より高性能な装置を追加している。WaveRunner Xiシリーズの3つの製品価格は7500米ドルからであるが、WaveSurfersと同じサイズで、10.4インチ型SVGA画面をもつ。
 Tektronix社は、新しいDPO7000シリーズでこれに対抗し、画面サイズと解像度においてLeCroy社をリードしている。DPO7000の画面サイズは12.1インチ型である。その面積は6.4インチ型画面の約3.6倍で、XGA対応(1024×768画素)の解像度を提供する。奥行き約12インチの筐体は、LeCroy社の小型筐体オシロのほぼ2倍だが、それでもほとんどのオシロに比べて薄型である。DPO7000シリーズの最上級機は、400Mものサンプルを格納できるほどの大容量メモリーを備え、そのすべてを1つのチャンネルに割当て可能である。LeCroy社が長期にわたって優位に立っていたメモリー容量の大きさに関しても、LeCroy社を超えることになった。
 大画面および小さな床面積のオシロは歓迎するが、例えば製造ラインでのテスト向けに、オシロをより大規模なシステムに組み込む技術者にとって、この新しい筐体の形状は望ましくはない。彼らにとっては、ラックの占有面積を最小とするシステムコンポーネントを選択することが最も重要である。新しい筐体は従来のオシロよりも背が高い。この高さの問題を解決する鍵は、システムコンポーネント機器の新しい標準であるLXI(LAN extensions for instrumentation)にあるようだ。通常は画面が上向きに収容されていて、オペレータがスライド式ラックの前面に引き出し、画面を垂直に起こして使用するような、目立たないLXIオシロを想像することができるだろう。

20GHzを超えて

図4 LeCroy社のWaveExpertは、NROおよびSDA100Gサンプリングオシロで、4チャンネルに対して100GHz帯域幅を提供するサンプリングヘッドを搭載することが可能なシリーズである。リアルタイムではサンプリングを行わないが、シーケンシャル・サンプリングオシロの50倍の速度でサンプリングし、何倍もの記録データを格納できる。帯域幅が同程度に大きい唯一のオシロである。
 デジタルオシロ技術を語るうえで、かつてシーケンシャル・サンプリングオシロと呼ばれていた、超広帯域オシロに関する議論なくして終えるわけにはいかない。1年前のLeCroy社のWaveExpert(図4)およびSDA100Gシリーズの出現までは、「シーケンシャル・サンプリング」と呼ばれており、Agilent社とTektronix社の2つのベンダーのみがそれを提供していた。
 LeCroy社のオシロは、超広帯域機器(メーカーにより70から100GHz)の設計方法を本質的に書き直したといってよい。LeCroy社は製品紹介の中で、そのオシロを単にサンプリングオシロと呼んでいる。「シーケンシャル」という表現が当てはまらないからだ。しかし問題は、デジタルオシロはすべてサンプリングオシロであるのに、「サンプリング」という表現に当てはまらないという点である。その年、LeCroy社は、「NRO」(near-real-time oscilloscope)という新しい用語を生み出すことによってこの問題を解決し、NROシリーズを製品ラインに加えた。
 このカテゴリに分類されるオシロはすべて、LeCroy社のオシロも含めて、信号が繰り返し出現することが前提である。一定の間隔で再現する必要はないが、本質的に一定の遅延ごとにトリガー信号に従って出現する必要がある。従来のシーケンシャル・サンプリングオシロでは、入力波形の各繰り返しの間に、サンプルを1つだけ採取し、新しいトリガーごとにサンプリング点を1つ進めて更新していた。したがって、帯域幅が非常に広いにもかかわらず、オシロの波形取得は遅かった。この速度がネックとなって、この種の機器は、多くのオシロアプリケーションで使うには対象外となっていた。
 これらのオシロの中で、アナログサンプラはオシロの主流から区別されている。このサンプラは、いわゆる0次ホールド回路というもので、入力信号をフェムト秒のアパーチャの不確定性で取得し、取得した電圧を数10μs間維持する。これにより、サンプラ出力は、数GHzの信号を、比較的低周波に複製したものとなる。このサンプラ出力から、オシロが扱うアナログ信号は比較的周波数が低くなる。通常、このようなオシロ内のA-Dコンバータは、高分解能(14ビット以上)で、変換レートが数kHz以下の逐次比較型コンバータである。従来のシーケンシャル・サンプリングオシロでは、メモリー容量が100kサンプルを超えることはめったにない。

100GHzの帯域幅

図5 測定を全く無効にしてしまうような負荷をかけることなく数GHzの信号を取得するには、細心の注意と、プローブの物理的構造に関する理解と、高度に特殊化されたプローブが必要である。これらのAgilent社の10GHz Infiniimax装置は、同社のDSO 80000シリーズのオシロと共に使える。
 サンプリング技術の進歩によりLeCroy社のオシロは、適切なサンプリング・プラグインを使用すれば、業界をリードする100GHz帯域幅が実現可能である。加えてA-Dコンバータおよびメモリー技術の進歩により、そのアーキテクチャはシーケンシャル・サンプリングオシロとは全く異なるものとなった。入力波形の各繰り返しの間にサンプルを1つだけ採取するのではなく、LeCroy社のオシロは多くのサンプルを採取する。同社によると、サンプリングレートは最速の競合機器の50倍であるという。さらに、数億ものサンプルを格納可能なメモリー容量を持ち、ビルトインのクロックリカバリ機能により、オシロは多くの場合外部トリガーなしで動作することができる。また、オシロには通常、リアルタイム・サンプリングオシロにしか存在しない解析機能が内蔵されている。このため、LeCroy社のオシロならば対応することができるのである。これが競合機器では多くのアプリケーションでデータ取得に時間がかかり、必要長のデータを採取することができないか、信号のトリガーのために外部機器を必要とするか、または安価な解析機器への複雑なインターフェースを持たせなければ扱うことができなかった。
 Agilent社(図5)やTektronix社と同様に、LeCroy社も、超広帯域オシロを光ファイバ通信システム測定に使用できるように、光電気変換器を提供している。しかしLeCroy社は、競合他社と異なり、これらのオシロ用の差動入力プラグインを現時点では提供していない。そのため、20GHz以上の差動信号を4つ同時に表示するには、他社のオシロでは1台で済むところが、LeCroy社の製品は2台必要となる。
 
オシロの高周波振幅精度の正確な校正は、思ったよりも難しい
Steve Sekel 米LeCroy社

 オシロの振幅精度に関して、ユーザーから質問や苦情を受けることがよくある。ユーザーは、信号発生器からの掃引正弦波の精度を測定しようとする。ユーザーはこのような作業を自分で行ってはならない。その測定には何も問題がないように思われるが、周波数が数GHz以上の場合、その結果は必ずといってよいほど誤っている。
 最初の問題は、発生器の出力レベルをケーブルの出力端に合わせなければならない点である。ケーブルが、1000米ドル以上もする最高級品であっても、数GHzの範囲に達すると振幅損失が生じる。信号発生器を用いて振幅精度を測定する唯一の方法は、オシロに接続するケーブルの端に、高品質で校正された電力分配器を使用することである。
 電力分配器の出力の1つは、測定している周波数範囲と電力レベルに校正されたRFパワーメーターのパワーヘッドに直接接続する。すべてのV/目盛りの範囲で測定を行う場合は、複数のパワーヘッドが必要となることが多い。パワーメーターの測定値は、各周波数ステップの出力レベルを正規化したものである。自動校正システムでは、この処理はコンピュータ制御により実行される。この処理を手動で行うのは、可能ではあるが面倒な作業である。

反射
 第二の問題は、オシロ入力の反射に関するものである。これも多くの場合に間違いなく生じるが、実際にユーザーは、重なった反射信号を測定することになる。オシロ入力は完全な50Ω終端ではない。いろいろ異なる減衰器がリレーや電子スイッチングを用いてスイッチングを行うため、経路が不完全になってしまうことは避けられず、異なる周波数における反射が生じてしまうのである。
 オシロのベンダーは、このような反射を最小限にするための努力をしているが、どれもほぼ同程度の性能しか達成できていない。つまり、通過域におけるVSWR(電圧定在波比)は完全な1対1から約1.35対1にまでなり得る。終端が回線にエネルギーを反射すると、その反射により、ケーブル長に応じてある周波数において定在波が発生する。定在波はそれぞれ異なる周波数で反射するため、異なる種類のオシロで測定すると、発生器とケーブルが同一であっても、異なる振幅となる。
 ユーザーは、オシロの入力で高品質な6dB減衰器を使用し、電力分配器の出力を減衰器に接続することにより、反射損失を6dB改善することができ、ケーブルにおける反射の影響を減少させる。
 上記のとおり、周波数に対してオシロの振幅精度を正確に校正するための方法はかなり複雑である。オシロメーカーはみな、設計者がオシロを校正する際に用いるこの複雑なシステムの設計、検証に多大な労力を注いでいる。この大変な校正を、信号発生器とケーブルだけを用いて手動で模倣しようとしても、望ましい精度での結果を得ることはできない。
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用語解説 / 会社情報
*1)
Pupalaikis, Peter J, Random Interleaved Sampling, November 2005, www.lecroy.com/tm/library/registerPDF.asp?wp=577.
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