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2006.5
取得メモリーの容量に関する考察
Kaustubh Wagle氏、米National Instruments社
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 デジタルオシロの大きな課題の1つは、より大容量なデータ取得メモリーへの際限のない要求である。主要メーカーのうち、Tektronix社のみが、1チャンネルあたり2500から1万サンプルという比較的小さなメモリーのオシロ・ビジネスを続けている。これらは、TDS3000B以下のシリーズで、軽量で弁当箱サイズのオシロであり、価格も魅力的である。これらのオシロのFISO(fast-in/slow-out)アーキテクチャは、CCD(電荷結合素子)のようなICにアナログ形式でリアルタイムサンプルを高速に格納するため、アナログシフトレジスタと呼ばれることもある。サンプリングされたデータはこれらのICから中速のA-Dコンバータに転送される。Tektronix社は、自社と競合他社すべてが製造する他のアーキテクチャによるオシロ全体よりも多くの数のFISOオシロを製造しているかもしれない。FISOは、その制約が問題にならないなら、コスト効率がよい。Tektronix社は、今後も引き続き、これらの、または類似のオシロを多く販売していくだろうが、設計エンジニアの研究室の実験台に置かれるFISOオシロの台数は、販売されるオシロ全体の台数に対して、相対的にどんどん減少していくことになるだろう。その代わりにFISOオシロは、今でもよく使われているメンテナンスや修理作業において、今まで以上に一層普及していくと思われる。
 Tektronix社のFISOオシロシリーズ以外では、大容量メモリーへの要求は非常に高く、その熱はしばらく収まりそうにない。その理由は、オシロの帯域幅の増加に伴い、そのデータ取得レートを高速にする必要が生じ、また、サンプリングレートの増加に伴い、ある一定期間のデータに含まれる記録量も増加するためである。15GHzの信号を取得するためには、実際には40Gサンプル/秒の速度が必要である。つまり、20msの記録データ(その期間は50Hzにおける1サイクルに相当する)には、少なくとも800Mのサンプルが含まれる(20×10-3秒×40×109サンプル/秒=800×106サンプル)。このデータ長を4チャンネルで実現するには、オシロに合計3.2Gサンプル分の取得メモリーが必要ということになる。このメモリーはパソコンのメモリーよりもかなり高速でなければならず、したがって、非常に高価であることを忘れないでほしい。40Gサンプル/秒では、オシロは各チャンネルに対して25psごとに新しいサンプルを保存していかなければならない。そのようなオシロを販売しているメーカーは今のところ存在しない。そのような機器が現在あるとしたら、その販売価格は優に25万米ドルに達するだろう。とはいえ、数年のうちにそのような製品が出現するとは考えられない。また、そのような製品が出現するころには、その価格は2006年の25万米ドルよりはかなり安くなっていることであろう。
 2006年1月4日、Tektronix社はDPO7000シリーズを発表した。このシリーズには、4チャンネル、500MHz、1GHz、および2.5GHz帯域幅の機種があり、米国での価格は1万4000から2万4900米ドルである。帯域幅をこのように選択した点から、増収の期待できる市場をターゲットとしてTektronix社が今回のリリースを行ったことがうかがえる。性能の低いオシロは、販売台数は多くなるが、価格は安くなる。高性能オシロは、1台あたり10万米ドル以上するが、販売台数は限られる。すべてのチャンネルがアクティブの場合、このシリーズの最高性能機種である2.5GHz帯域幅のDPO7254は、チャンネルあたり最大10Gサンプル/秒でデータを取り込むことが可能である。1万5000米ドルの価格で、1チャンネルあたりのメモリーが100Mサンプルもあるオシロが購入できるのである。さらに、1チャンネルのみを使用する場合は、そのアクティブチャンネルに400Mバイトすべてを割り当てることができる。ただし、過去数年間において事実上業界標準であった手法とは異なり、未使用のチャンネルのメモリーをアクティブチャンネルに割り当てても、これらのチャンネルのA-Dコンバータを、アクティブチャンネルのA-Dコンバータとインターリーブすることはしない。このため、DPO7254は10Gサンプル/秒で2.5GHz帯域幅の信号の40ms分のデータを取り込むことができるのである (「高いサンプリングレートが必要だが8ビット分解能では足りない場合の対処法」を参照のこと)。

瞬時の変化を捉える

 大量のデータを取り込めることは喜ばしい半面、同時にやっかいなことでもある。長い記録データの中で、重要な部分はほんの一部だけ、という場合はしばしばある。例えば、試験対象の装置が重要な誤動作をする瞬間のデータだ。その波形は確かに求めていたものである。しかし、数億ものサンプル点からなる記録に、たった数個または数10個の異常な波形が含まれている場合、視覚スキャンでその重要な部分を見落とす可能性は100%に近い。近い将来、少なくとも目を通した方がよい部分と無視しても大丈夫な部分を、オシロが切り出してくれるようになるかもしれない。しかし、現時点では、何を無視してよいのかではなく、何を検出するのかを、こちらからオシロに指示しなければならない。しかし、この問題を考えると、オシロに何を無視するかを指示すること、またはオシロに何を無視するかを決定させることの方が、ユーザーにとってはありがたいように思われる。
 現在のオシロのマスクテスト機能が、欲しいデータを探すのにある程度は役立つだろう。この機能を持つオシロでは、合否マスクを定義することができる。まず、測定対象において正常だと思われる波形を取り込む。次に、その波形を表示し、急速に上下する波形の部分における時間変化の幅、水平(またはほぼ水平)な部分における電圧変化の幅という上下限値を設定する。つまり、正常波形の幅を太くしたものを生成するのである。オシロにはマスク幅を初期設定する機能があり、この作業を簡単にしてくれるかもしれない。オシロをマスクテストモードで操作する場合は、マスクの外側に位置する波形を検出した際のオシロの動作を、数種類から選択することができる。例えば、オシロは、その後の波形の取り込みを中止したり、アラームを鳴らしたり、電子メールでメッセージを送信したりすることができる。
 Agilent社およびLeCroy社では分割メモリーモード、Tektronix社では高速フレームモードと呼ばれるモードでオシロを操作しながら、マスクテストを実行すると、より効果的だろう。このモードでは、長い取得メモリーを小さい領域に分割することにより、オシロが高速に、トリガー条件を満たす複数の瞬時波形を取り込むことを可能にしている。例えば、オシロの取得メモリーが220(1M)サンプル分である場合、214(16k)サンプルごとの64セグメントに分割することができる。このモードで操作しても、1秒間に取り込むことができる波形の最大数が変わらないオシロもある。波形を取り込み、マスクテストを行って、マスク内に入っていれば、つまり、正常波形の範囲内であれば、次に取り込んだ波形でその正常波形を上書きする、というようにオシロを設定できると便利である。そうすれば、オシロのメモリーがいっぱいになるとか、テストを手動で停止した場合に、異常な波形の集合が得られ、それぞれが取り込まれた順序がわかる。オシロで1つの波形をマスクテストするのにどのくらいの時間がかかるか、次のトリガーへの準備にはどれだけかかるかを決めていれば、種々の異常な波形の形だけでなく、波形全体のうちのおよそどのくらいが異常かを知ることができる。さらに、複数の異常モードがある場合は、各異常波形の発生の相対的な類似性を知ることができる。このような「異常波形のみを取り込む」モードは、頻繁には生じない異常波形を探すのに大変便利である。
 10年近く前、Tektronix社は、同様の作業を行うための別の手法を開発した。Tektronix社は現在、このモードをFastAcq、その基盤技術をDPX (デジタルフォスファ) と呼んでいる。これにより、デジタルオシロが、蛍光体を使ったアナログストレージオシロの動作を、長い減衰時間でエミュレーションすることができる。他のメーカーも、アナログストレージオシロをエミュレーションするデジタルオシロモードを開発している。これらのパーシスタンスモードでも、FastAcqに似た表示を得ることが可能だが、両者が表示画面を作成する方法は全く異なる。
 FastAcqは比較的短い記録データしか扱えない (最新バージョンで1000サンプル)。FastAcqは、取り込む正常の波形を時系列サンプルの記録データとしてバイパスし、その代わり、直ちに3-Dピクセルマップを作成する。ここで色のグラデーションによって画面に垂直な方向の大きさを表す。この手法により、FastAcqの最新バージョンは1秒あたり25万もの波形を取り込むことが可能で、これは他社のパーシスタンスモードよりも多い。しかし、パーシスタンスモードではより長い波形データを扱うことができる。また、元の時系列の記録データを保持しておき、取り込んだデータを後で解析することが可能なオシロも存在する。FastAcqが詳しく調べたい異常波形を表示した場合は、オシロのいずれかの標準モードを使って異常な瞬時波形を別に取り込まなければならない。異常波形が頻出しない場合には、この手法では時間がかかってしまう。

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