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2006.5
RoHSに準拠
『グリーン』宣言は容易でない

欧州の環境保護指令が間もなく施行され、多くの企業がRoHSに準拠した設計を行うために、課題の克服に追われている。
Richard A Quinnell
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 2006年7月1日から、EUで販売される電子機器にはRoHS(特定有害物質の使用制限)指令への準拠が義務付けられ、違反すれば販売禁止と罰金のペナルティが課される。しかし、いくつかの免除措置がとられていることから、部品サプライヤがRoHS準拠部品と非準拠部品の両方を販売する可能性がある。この状況は設計エンジニアにとって、準拠製品にするための適切な部品を探しては確認するという面倒な作業を増やすことになる。
 RoHS指令は、最終的にゴミとして埋め立てられた時に地下水を汚染する恐れのある電子機器から有害物質を取り除き、環境破壊を防止することを目的として制定された(別掲記事「RoHS指令の概要」参照)。指令準拠を徹底させるため、EU加盟国には非準拠製品の販売を禁止し、製品メーカーに罰金を課すことが許されている。したがってRoHS指令への準拠を怠ったメーカーは、約4億人の見込み客が存在する数10億米ドル市場から締め出される恐れがある。
図1 すずの含有率が高いメッキ材料は、短絡の原因となるウィスカを発生させてシステムの信頼性を損なう可能性があるため、RoHS指令の適用外となる設計には、メーカーは今後も鉛を使い続けるだろう。 (提供:NASA Goddard Space Flight Center)
 使用が制限されている物質の1つは、メーカーが50年以上にも渡ってはんだメッキに使用してきた鉛である。残念ながら、すず含有率が高い鉛フリーはんだには、従来のはんだ合金よりも扱いにくくコストがかかるという欠点がある。溶融温度が高く、剛性があり、流体時の表面張力が低いため、表面実装部品を位置合わせするためのはんだの張力が落ちる。すずを使用したメッキの主な弱点は、処理後の表面上にウィスカと呼ばれる微細な金属のひげが発生しやすいことだ(図1)。ウィスカは高密度パッケージ内で短絡回路を形成するほどに長くなったり、折れてプリント基板を汚損したりする可能性がある。
 これらの欠点を考えると、エレクトロニクス業界が規制による圧力を受けるまで鉛フリーはんだへの移行をちゅうちょしていたのも不思議ではない。問題は、この規制による圧力が、業界全体に平等にいきわたっていないということだ。RoHS指令の主な焦点は民生電子機器にある。そのため、ネットワーク機器や製造施設で使用される産業用製品など、一時的あるいは永久的に準拠義務が免除される製品がでてきた(別掲記事「RoHSの免除措置」参照)
 こうした規制の不公平さが、鉛フリーはんだの欠点と相まって、鉛含有部品と鉛フリー部品が混在する市場を作りだしている。カドミウム、水銀、6価クロム、難燃剤などの物質に対するRoHSの規制も、ワイヤーやケーブル、シャシーメッキ、パッケージの材料に同様のばらつきを生み出している。
 このような混在市場が存在することで、RoHS準拠製品の開発を迫られている設計エンジニアは、部品を探し出し、その準拠を保証しなくてはならないという2つの課題に直面している。設計チームは、新しいRoHS準拠設計の部品を評価するために必要な時間と労力が予想をはるかに超えていることに気付き始めた。加えて免除措置に関する混乱もあり、RoHS指令への対応に遅れをとった設計チームもある。
 マシンビジョン機器メーカーの米Cognex社はその典型例である。「最初にRoHS指令を調べたとき、当社は免除対象だと思った」とCognex社ハードウエアエンジニアのReza Vahedi氏はいう。「しかし確信がもてなかったため、準拠設計への変更を18カ月前に始めた。その後、エンドユーザーが準拠する必要があるために自分達のシステムも準拠させなくてはならないという顧客からの問い合わせが数多く寄せられるようになった」。Vahedi氏によれば、Cognex社が部品を調べ始めたとき、部品がRoHS準拠であることを示すナンバリングまたはID体系がベンダーによってばらばらであったという。部品の準拠を実証する書類も統一されていなかった。
 多くの設計チームから同様の問題点が報告されている。米Bear Power Supplies社エンジニアリングディレクタのMichael Allen氏は、「部品の調達が本当に難しい。RoHS部品番号を記載している企業があっても、まだ製造に着手しておらず、在庫はないということが後になって判明することもある」と語る。免除と非免除の両方のアプリケーションで使用される多くの基本部品は、今になってようやくRoHS準拠品が入手できるようになってきたが、メーカーは他の非準拠部品を製造し続けている。「お気に入りのヒューズなど、16年間にわたって使い続けてきた部品のRoHS準拠品がやっと出回りつつある。しかし、2006年7月1日のデッドラインに合わせるためには生産ラインを今の時点で準拠させる必要があるため、設計エンジニアは代替品の特定と設計に大わらわだ」(Allen氏)。
 結果として、設計チームは全部品の準拠を再確認するか、RoHS準拠品が入手不可能な場合は代替品を探すという非常に手間のかかる作業を強いられた。「まったく骨の折れる作業だ」とAllen氏はこぼす。RoHS準拠品が入手できる場合でも、特定のパッケージ仕様に限られ、プリント基板の設計をやり直さなくてはならないこともあるという。
 さらにAllen氏は、サプライチェーン内のいたる所で準拠品と非準拠品が混在しており、それらを分けさせることは難しいだろうと指摘する。「RoHS準拠品をつくっていても、それに使用する新しい部品番号を持っていないメーカーもある。1つの工場でのみRoHS準拠品をつくっているメーカーもあれば、特定の日付以降に製造し始めたメーカーもあるため、暗号のような表示を頼りに準拠しているかどうかを確認しなくてはならない」。
 表示の問題はベンダーにとっても悩みの種だ。「当初、我々には部品番号を変更する考えはなかった」と、米Fairchild Semiconductor社品質管理マネジャーのKirk Olund氏はいう。「RoHS準拠品と表示しても、部品の電気的あるいは機能的性能に影響があるわけではないので、単にリードフレームの仕上げが変わるだけと考え、材料仕様変更通知を行うことで対応した。しかし顧客からの要望があり、今では新しい部品番号を使用している」。

温度の問題

 鉛フリー部品の電気的性能は鉛部品の性能と変わりないが、設計者がRoHS準拠の代替品を探すときに注意しなくてはならない問題があるとOlund氏はいう。設計者は製造プロセスの変更も考慮する必要がある。最大の問題は、鉛フリーはんだの溶融温度が高いということだ。
 鉛フリーはんだの典型的な温度プロファイル(図2)は、鉛はんだより20〜40℃も高い。製造中のこの熱が、高密度で集積された部品を破損する可能性がある。また、場合によってはパッケージのMLS(moisture level sensitivity:水分感度)が高温になるほど高くなるため、はんだ付け段階での破損原因となりかねない水分の吸収を防ぐためには、倉庫内の部品やあるいは製造中の部品の取り扱いに関して特別な対策を講じる必要がある。通常、製造条件を指定する責任は設計者にあるため、部品を評価するときはこうした細々としたことも調査する必要がある。

図2 鉛フリー材料ではんだ付けされるパッケージの表面温度は、有鉛はんだを使用するパッケージより最大40℃も高くなることがある。この温度差が基板レイアウトと材料の取り扱いに影響を及ぼす。(提供:Toshiba America Electronic Components社)

 さらに微細な設計変更もある。鉛フリーはんだは鉛はんだよりも硬いため、設計者はRoHS準拠設計を作成するときに振動耐性と衝撃耐性を再評価しなくてはならない。プリント基板メーカーが表面実装部品のセルフアライメント形成に利用するはんだの吸い上げ効果も、鉛フリー代替品では低くなる。そのため、機械的干渉と短絡を防ぐには、部品を配置するときの許容誤差を大きく見積もっておく必要がある。プリント基板の材料を見直す必要すらある。鉛フリー代替品のはんだ付け温度が高いために、有鉛はんだ付け用に設計された基板に剥離が生じる可能性があるからだ。
 最初のうちは、RoHS準拠のための設計変更は短期間で済むという印象を抱くかもしれない。設計ルールと認定部品の変更に取りかかってみると、新しいガイドラインにもすぐに慣れて、永久に苦労が続くことはないように思えるだろう。しかし問題は、環境保護に関する規制の範囲が広がりつつあることだ。
 RoHS指令は始まりにすぎない。中国や日本をはじめとする国々では、RoHSを見本とした独自の環境法案の策定が進められている。これらの法案は規制内容も異なり、RoHS指令よりも厳しいものもある。また、RoHSの免除措置も規格団体によって最終的に廃止される可能性がある。現在の免除措置のいくつかには期限が設定されている。そのため部品の準拠問題は絶えず発生し、設計者はそれに追いつくために設計ルールと認定ベンダーを常に再評価しなくてはならない。
 製造受託会社の米Celestica社でグローバルデザインサービス部門ディレクターを務めるBlair Davies氏は、今後設計エンジニアは認定部品リストを常に更新する作業に追われるだろうという。「設計者は以前よりも多くのことを知っておかねばならない。部品の選定にも注意を払う必要がある。設計だけして、あとは製造サイドに任せるということはもうできない。規制も、入手可能な部品も変わっていく中でそのようなことをしていれば、使いものにならない製品を設計するリスクを背負うことになる」(Davies氏)。
図3 製品ライフサイクル管理ツールを使用して関連文書を格納し、サプライヤのデータベースをエンジニアリングツールにリンクさせることで、設計者は部品の準拠問題に対応することができる。(提供:Ominify Software社)
 この変化に対応する1つの方法は、規制が変更されるたびに部品の準拠性を追跡するPLM(product life cycle management:製品ライフサイクル管理)(図3)ツールを使用することだ。米Omnify Software社のPLMツールは、必要に応じて部品を再検証するためのドキュメントとデータを格納するリポジトリ(格納庫)を提供する。OmnifyのChuck Cimalore最高技術責任者は次のように語る。「設計者は次々と出てくる新しい規制をすべて把握しておかなくてはならない。そして、部品リストを最新の状態に保つための製品データとそれを処理するツールが必要だ」
 残念ながら、情報設計者はルールの変更が分かる前に準拠を決定しなくてはならない場合がある。Cimalore氏によれば、Omnifyのツールは準拠レポートや他のドキュメントを格納できるほか、規制が変更されたときに部品データと設計ガイドラインを自動的に比較することもできるが、ベンダーから提供される情報の種類とフォーマットにはばらつきがある。材料仕様ではなく準拠認定書だけを送ってくるベンダーもあれば、部分的な情報しか提供しないベンダーもあるという。「設計チームは必要な情報をベンダーに提供させる必要がある」とCimalore氏は語る。
 時が経てば、エレクトロニクス業界内にも環境問題に対応するための慣例と標準が確立されるだろう。しかし、ほとんどの設計チームは、そこに行き着くまでにあと数年はかかると見ている。それまで設計者は、部品の検証とプロセス変更の影響評価に注力することで適応していくしかない。なぜなら、好むと好まざるとに関わらず、グリーン設計がエレクトロニクス業界に残された唯一の道だからだ。
 
RoHSの概要

 欧州議会RoHS(特定有害物質の使用制限)指令2002/95/ECは、EU内で販売される電気・電子機器のメーカーに、有害物質の使用制限を義務付けたものである。鉛、水銀、カドミウム、6価クロム、PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)の使用が禁止されている。修正案2005/618/ECでは、これらの物質の最大含有率がカドミウムで0.01%、その他で0.1%と明確に規定されている。
 これらの物質は広く使用されているため、この指令は電子機器の設計と製造に様々な影響を及ぼしている。たとえば、鉛は長年にわたってはんだとメッキの主要材料として使用されてきた。水銀はリードリレーや蛍光灯など多様な製品の材料となっている。カドミウムは電池やフォトセンサ、ワイヤーやケーブルなどに使用されている。6価クロムはシャシーのメッキ材料として、PBBとPBDEは難燃繊維や他の材料に広く使用されている。
 EU内で製品を販売するメーカーは、2006年7月1日時点でこの指令に準拠していなくてはならない。EU加盟国は準拠を怠ったメーカーに対して任意のペナルティを課すことが認められている。
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RoHS免除項目

 RoHS(特定物質の使用制限)指令では、数多くの免除項目と、準拠の必要がない機器のカテゴリが規定されている。例外としては、特定種類の蛍光灯に使用される水銀、CRTと蛍光灯管ガラスに使用される鉛、サーバー、ストレージ、ストレージ・ディスク・アレイシステムのはんだに使用される鉛(2010年まで)、ネットワークインフラ機器のはんだに使用される鉛などがある。また、大型の固定産業用工具、修理機器のスペア部品、車載用ラジオなど異なるカテゴリの機器の部品として使用されている電子機器にはこの規制は適用されない。電池にはまた違う規制が適用される(別掲記事の「グリーン電池」を参照)。軍事機器に対する免除措置についてはまだ結論がでていない。
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グリーン電池

図A バッテリパック内の電池にRoHS指令は適用されないが、パック内の充電回路やその他の構成要素には適用される。(提供:MicroPower社)
 電池と蓄電池にはRoHS(特定有害物質の使用制限)指令は適用されない(図A)。これらのデバイスにはEU電池指令91/157/EECが適用される。この指令は、鉛、水銀、カドミウムのいずれかを含んだ電池の回収・再利用を規定したもので、機器に内蔵されている電池は再利用のために取り外しが可能でなくてはならないとしている。
 しかし、電池パックはRoHSによる規制の完全な除外項目ではない。ブラジルMicroPower社のエンジニアリングマネジャー、Todd Sweetland氏によれば、電池パック内のプリント基板と充電回路はRoHSガイドラインに準拠している必要がある。電池指令が適用されるのは電池そのものだけだ。
 電池指令も変更されつつある。EU技術委員会はこの指令を更新して、規制をさらに厳しくしようとしている。新たな指令では、医療・軍事・航空機器を除き、ほとんどの製品で水銀とカドミウムを含む電池の使用が禁止されると見られている。緊急・警報システムのほか、動力工具は4年間の期限付きでカドミウムの使用が許されている。
 まだ討議中の議案には、ユーザーが機器から電池を簡単に取り外せることや、リサイクルを促すための啓発キャンペーンにメーカーが出資することを要件とする案がある。リサイクルに関するガイドラインもまだ決定されていない。電池重量の25〜45%をリサイクルすることを目標とした提案もある。
 EU技術委員会は、新しい指令の最終結論を2006年6月までに提出し、加盟国で2年以内に実施されることを予定している。
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RoHS特集

 EDNの姉妹誌「Electronic Business」の3月号に掲載されているRoHSの特集記事では、OEMにかかってくるコスト、サプライチェーンへの影響、準拠免除項目のほか、優れた顧客サービスを通じてRoHSのコストを埋め合わせようとする一部企業の戦略が取り上げられている。詳しくはwww.eb-mag.com/RoHScosts(英語)を参照のこと。

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