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Signal Integrity
2005.11
ESD対策への3つのアイデア
Howard Johnson*1)
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頑丈で信頼性の高い製品はESD対策を何重にも施している

 アルミニウム製のカヌーに乗って湖に漕ぎ出しているあなたが恐ろしい雷雨に遭遇している。雷の直撃による破滅的な危険を感じて、岸に向かって急いで引き返すとき、3つの選択肢がある。すなわち、「カヌーに座ったままでいる」、「カヌーを捨てて岸まで泳ぐ」、「カヌーをひっくり返して一種の粗製のファラデーケージを作りその下に潜る」の3つである。
 IEEE EMCソサエティの元会長であるTodd Hubing氏は、ソサエティの講義においてこの難問の解決法を紹介した。「雷はあまりに強力であり、直撃すれば何をしようとひとたまりもない」と指摘する。雷は全体で300Mジュール級のエネルギーをもっている。これは、1トンの水を沸騰させ、かしの木の幹を引き裂き、または珪土を溶融してガラスに変えたりするのに十分なほどのエネルギーである。
 このため、生き残る方法については、雷からの距離という観点からしか議論できない。落雷とのニアミスを避ける能力を上げれば、生き残る能力を高めることになる。
 Hubing氏は、雷がカヌーの近くではあるが直接ではない場所に落ちる場合を想定する。雷が落ちると、数100万ジュールのエネルギーが水を貫通する。もしそのとき体を水に浸していたら、雷のエネルギーの一部は最終点への通り道としてあなたを貫通する。雷のほんの一部のエネルギーだけでも命を奪われてしまうので、Hubing氏はカヌーに座りつづけることが最良の選択であると提案する。そうすれば通過電流はボートの船体へ流れてしまうため、あなたの体には伝わらない。雷が近くに落ちればあなたはおそらく聴力を失うだろうが、命までは失われない。
 ボートを逆さにしても、水を通して流れる過渡電流に対して有用な防御とはならない。このシナリオはひょうがたたきつけるような状況では有効だが、雷に対しては有効ではない。カヌーの中にとどまるべきである。
 デジタル製品におけるESD(Electrostatic discharge)対策も同様の知恵を必要とする。強力なESDがチップを直撃した場合、ダメージを避けることはできないが、ニアミスした場合に生き残れるようなシステムを設計することはできる。最も一般的なニアミスのシナリオは、製品の筐(きょう)体、筐体に接続される入力または出力ワイヤ、またはこれらのワイヤの近くにある金属物体に放電することである。
 また水の話で例えると、もしプロセッサチップが「水の中」、すなわちESD過渡電流の通り道にある場合、ESDが起こると、システムは故障してしまう。製品の外部筐体付近のESD過渡電流を、デジタル回路のグラウンドプレーンに流すのではなく、グラウンド(もしくは電流が流れ出そうとするところ)へ流れるように仕向けることによって、プロセッサを水の中から出さなければならない。
 強固で信頼できる製品は何重にもESD対策を組み込んでいる。それぞれの保護動作でESDによる過渡電流の影響を減衰し、プロセッサや他の内部回路を故障から保護する。保護動作には主に次の3つのアイデアが採用されている。
高電圧過渡電流を製品の筐体に流すスパーク・ギャップ、バリスタ、およびコンデンサなどの分流素子。
高速過渡電流の進入を防ぐトランス、光カプラ、コモンモードチョーク、GMR(巨大磁気抵抗)カプラ、または厚い絶縁体によって形成される直列インピーダンス。
例えば、すべてのコネクタを製品の片側に移動させることで、電流がシステムを通過せずに、あるワイヤから流入した電流が別のワイヤへとすばやく通り過ぎるような構造に変更。
 もし製品のESD試験を行っていないなら、その道に詳しい専門家を探し、アドバイスを頼んだ方が良い。IEEE EMC 部門の各支部は製品をどのようにして保護するかを知るESD対策の専門家を探すのに最適な場所である。
 そうしなければ、あなたのプロジェクトを水の墓場へと追いやるリスクを犯すことになる。
用語解説 / 会社情報
*1)
Howard Johnson氏は「High-Speed Digital Design」と「High-Speed Signal Propagation」の著者。オックスフォード大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次の電子メールアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com
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