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DESIGINIDEAS
2005.11
外付け部品が少ない、低コストのピーク検出器
Anthony H Smith 英Scitech社
 図1に回路、図2に特性を示す正側ピーク電圧検出器は、整流ダイオードが不要で、Texas Instruments社の「TLC372」高速コンパレータIC1のオープン・ドレイン出力を活用している。この検出器は、正負電源タイプ(図1)・正電源タイプ(図2)ともにシンプルかつ低コストで、バッファ付き低インピーダンスの出力を提供する。
図1  この正側ピーク電圧検出器の正負電源タイプは、コンパレータとデュアル・オペアンプという、わずか2つの能動デバイスで出来上がる
図1 この正側ピーク電圧検出器の正負電源タイプは、コンパレータとデュアル・オペアンプという、わずか2つの能動デバイスで出来上がる
図2 ピーク信号レベルと出力電圧を3つのピーク・レベルに対してプロットした周波数特性
図2 ピーク信号レベルと出力電圧を3つのピーク・レベルに対してプロットした周波数特性

 しかも、TLC372は、標準値が1012Ωという高入力インピーダンスのため、入力バッファは不要である。図1のように、オペアンプIC2Aから得られるピーク検出器の出力電圧は、コンパレータに帰還信号として印加され、入力信号の振幅を比較する基準レベルを提供する。最初に入力信号VINを印加したときには、ピーク電圧保持容量C1の電圧は0Vで、VOUTAも0Vである。
 入力電圧が出力VOUTAよりも正側になると、コンパレータ内部の出力MOS FETがオンになって、R1を通してシンク電流を引き込む。R2が比較的大きいとすると、充電電流がIC2Aの出力からC1に流れ込む。入力信号の何サイクルかにわたって、C1上に電荷が蓄積され、VOUTAが上昇して、VINのピーク・レベルを若干超える点まで達する。VOUTAがVINよりも若干大きい限り、IC1の出力MOS FETはオフ状態に留まり、C1にそれ以上の電荷パケットが蓄積されることはない。
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 その結果、C1の蓄積電荷が、R2を通り、さらにバイアス電流パスを通って、IC2Aの逆相入力に向かって放電する。それにつれて、C1上に蓄積された電荷が放電し始める。VOUTAは、VINのピーク・レベルよりわずかに低くなるまで、徐々に低下していく。そこで、VINの次の正側ピークがコンパレータIC1を始動し、IC1がR1を通して電流を引き込み、C1に電荷を「補給」する。
 このプロセスにより、入力電圧の正側ピーク値にきわめて近い直流電圧が、VOUTAに発生する。R1、R2、C1は、VOUTA上に現れるリップル電圧を抑える。
 IC2Aの逆相入力は仮想グラウンド電位に保たれているので、IC1の出力MOS FETがオン状態のときは、R1にかかる電圧は負電源電圧-VSにほぼ等しい。このため、R1の値が小さければ、比較的大きな電流パルスがC1に注入され、回路は入力電圧が突然増大しても迅速に応答することができる。つまり、「高速アタック」応答が得られるのである。しかし、R1が小さすぎると、VOUTA上の正方向に変化するリップルが過剰になり、VINのピーク値付近で発振してしまうことがある。
 R2に対して、C1は回路の「遅延時間」を決定する。比較的大きな容量を用いれば、VOUTA上の負側に変化するリップルが最小化され、低周波パルス列や、低デューティ・サイクル・パルス列、あるいは両者を取り扱うのに好都合である。
 しかし、C1を大きくしすぎると、入力電圧が急減したときに、検出器の応答が鈍くなる。C1もまた、高速応答に影響するのである。例えば、容量を2倍にすると、回路が入力電圧のピーク値をキャッチするのに要する時間は2倍になってしまう。
 コンパレータIC1の帰還パスにオペアンプIC2Aが入っているため、IC2Aのオフセットと誤差は検出誤差に影響しない。低周波から中程度の周波数では、ピーク検出の総合誤差は、コンパレータの入力オフセット誤差だけで決まる。高周波では、コンパレータの応答速度が重要なファクターになって、VOUTAの低下を発生じ、周波数が高くなるほど著しくなる。
 このような制約があるものの、このピーク検出回路は、約50Hzから500 kHzまでの何桁にもわたる周波数範囲で良好に機能する。図2と表1は、この回路の対正弦波入力の周波数特性で、最終出力電圧VOUTBの誤差を入力電圧VINの3つのピーク・レベルに対してプロットしている。
表1 正弦波に対する周波数特性
表1 正弦波に対する周波数特性
 
図3 500mVの400kHz正弦波入力電圧波形と、それに対する出力電圧波形のオシロスコープ写真
図3 500mVの400kHz正弦波入力電圧波形と、それに対する出力電圧波形のオシロスコープ写真

 図3はオシロスコープによる波形写真で、500mVピークの400kHz正弦波に対するこの回路の応答を示している。出力電圧は488mVで、入力電圧の正側ピーク値よりわずかに低いだけである。この回路は、良好な正弦波応答特性を示すのに加えて、デューティ・サイクルが最小5%までの矩形波に対しても良好な結果を示している。
 注意すべき点は、IC2Aの逆相入力の仮想グラウンドが、VOUTBを正電圧だけに制限していることである。したがって、この回路は、真の正側ピーク、つまり、0Vよりも上に振れるピークに限って応答する。入力信号が0Vよりも完全に下の場合には、VOUTBは単に0Vを保つことになる。
 この回路の動作にとって本質的ではないが、R3、C2、IC2Bで形成される低域通過フィルタとバッファは、VOUTBに現れるスイッチング・ノイズをも最小にすることができる。その一方で、オペアンプIC2Bに固有のオフセット誤差がフィルタの出力電圧に影響を及ぼす。
 図4は、この回路の正電源タイプである。RAとRBはIC2Aの正相入力の基準電圧VREFを設定するもので、逆相入力の仮想電位をVREFに等しく保つようにしている。
図4 正電源タイプでは、基準電圧を抵抗RAとRBによって設定する
図4 正電源タイプでは、基準電圧を抵抗RAとRBによって設定する

 VINがVOUTよりも正になると、コンパレータの出力MOS FETがオンになり、出力が0Vになって、VREFに等しい電位をR1に印加する。そして、VREF/R1に等しい電流パルスをC1に注入する。この回路はほとんどの点で、図1と同じように動作する。図1の正負電源タイプと同じように、VOUTは、オペアンプの正相入力の電位より下になることはできない。このため、VINの中心電位がVREFに等しい必要はないものの、VINの正側ピーク電圧はVREFより高くなければならない。
 VREFの値を選定するには、オペアンプIC2AとコンパレータIC1の入力と出力同相モード電圧範囲、入力信号の最大ピーク間振幅を調べる。例えば、正電源電圧+VSを10Vに、RA=RBに設定すると、VREF=5Vとなる。このピーク電圧検出器は0Vから約8Vまでの入力に対応することができ、5Vから8Vの正電圧ピークを検出する。R1は、選んだVREFによって決まることに留意されたい。
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