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2005.9
MathWorks社に聞く「モデルベース・デザイン」
――米ブロードコム、日産、トヨタも採用
仕様書レベルで検証ができる

 
米MathWorks社フェロー、Jim Tung氏
米MathWorks社フェロー、Jim Tung氏
米MathWorks社と日本での技術サポートをするサイバネット システムは、「Matlab/Simulink」を使った「モデルベース・デザイン」という開発手法を推奨する。 設計の初期段階からモデルを使い、シミュレーションをしながら効率良く設計開発を行なう手法だ。
 「モデルベース・デザインは、業界や地域に関係なく、世界中の幅広い分野で利用されてきている」と米MathWorks社フェローのJim Tung氏は言う。 高画質の画像処理システム、通信機器、車載向け電子機器の制御など、複雑化する多様なシステムの開発を行なう際に、「設計の最終段階になってようやく問題が発覚し、 スペックを最初から見直さなければならない」というケースが良くあるが、モデルベース・デザインによりこのような問題を防ぐことができるという。
 例えば、米ブロードコムは3G携帯電話端末に使うチップの開発にモデルベース・デザインを採用したが、これにより、開発時間を従来の半分に低減できたという。 また、日産自動車のサニー(米国名セントラ)は「ゼロ排出ガス車」として米国カリフォルニア州において初めてPZEV(Partial-Credit Zero Emission Vehicle)規制の認定を取得したが、この開発にモデルベース・デザインを採用した。 モデルを使うことで初期の段階から検証が行えるため、「設計の最終段階になってスペックを見直す」というような無駄な作業を無くすことができるという。

仕様書レベルで検証ができる

 自動車のパワーウインドウの開発を例に挙げる。 仕様を決める際には、「ウインドウの開閉時間を何秒に設定するか、センサーからの指令を受け、モーターの動作応答速度を何秒にするか、また障害物を検知した際にすぐウインドウを下降させられるか」、など様々な要求を検討する必要がある。 これらの要求に対し、モデルを使いMatlabでアルゴリズムを作成すると、簡単にシミュレーションができるため、仕様を確認しながら同時に検証を行える。
 図1はMatlabの「State flow」というツールで作成した制御アルゴリズムのイメージ画面である。

図1 State Flowイメージ画面
図1 State Flowイメージ画面

これを使いパワーウインドウのコントローラ部分の仕様を作成する。 ウインドウの停止状態、終端停止状態、動作状態、緊急状態、それぞれのアルゴリズムをモデルベースで作成する。 作ったアルゴリズムはシミュレーションできるため、問題があればその場ですぐに仕様書を書き換えられる。
図2 SimMechanicsイメージ画面
図2 SimMechanicsイメージ画面
モデルを使いシステム環境全体を考慮に入れながら、設計、シミュレーションを行う
 図2は設計検証ツール「SimMechanics」で作成した制御アルゴリズムのイメージ画面である。パワーウインドウのコントローラ部だけでなく機構部を含めたシステム全体の仕様とアルゴリズムを作成する。これも作成したモデルをシミュレーションできるため、設計の最終段階になって仕様決めをやり直すという作業が発生しない。
 机上でのシミュレーション後は、実機での検証がシームレスに行なえる。自動的にコードが作成されるため、工数が削減でき、更にヒューマンエラーを防ぐこともできる。
 最近では、アイシン・エィ・ダブリュが「モデルベース・デザインを採用して車両設計を行った」と発表した。車両、タイヤ、ギア、クラッチなど、あらゆるパラメータをSimlink上でモデリングし、シミュレーションによるテスト、検証を行った。シミュレーションの結果は、実車での検証結果に近く、「シミュレーション精度は高い」とコメントしている。また、トヨタ、デンソーも2005年8月に採用することを発表している。

急成長するMathWorks社

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 Matlab/Simulinkを開発する米MathWorks社の2004年度売上高は、前年度比24%増の30億米ドルと同業他社と比較しても好調だ。 中でも組み込みソフトウエア業界では前年度比35%増、また通信や民生機器向け半導体業界では43%増を達成し、高い伸びを示す。 これらは特にモデルベース・デザインが重要視されている分野である。
 「例えば、携帯電話機の端末が強い信号を受信できるように設計開発を行う場合、PLL回路(Phase Locked Loop:位相同期回路)の設計だけではなく、送信局からの信号のモデル、障害物などにより発生する干渉波のモデルなども取り入れることで、環境全体を考慮に入れながら設計できる」とJimTung氏は具体例を挙げた。
 米MathWorks社とサイバネット システムは、「モデルベース・デザイン」に強い自信を見せる。 日本では毎年「JapanMatlab Expo」と題したセミナーを行なっており、2004年は2000人が参加した。 同社には300社ものパートナ企業があるが、その中から40社が出展し、デモ実演も行った。2005年12月にも開催を予定している。 また、サイバネットシステムではMatlab/Simulinkに関するセミナーを随時行なっている。
(伊藤 達哉)
 

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