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leadingedge
2005年7月号
満を持してコアとなる
最先端電子部品・材料を見せたTDK


 TDKが創立70周年を迎え、5年に一度開催するTDK TechnoForumにおいて、同社がコア技術とする電子部品・材料の粋を集めた技術を公開した。電子部品の小型化に対しては、執念ともいえるほどの熱意を持って技術開発を進めている。フェライト事業から70周年にまでこぎ着けたTDKのコアである磁性体技術でも、大容量の次世代磁気ディスク技術を実際に展示して見せた。
100μFの小型積層コンデンサ

 今回、大きさが2.0mm×1.2mmと極めて小さいながら容量が100μFと電解コンデンサ並みの積層チップコンデンサ「C2012」を開発、展示した。同時に、3.2mm×1.6mmという小型の「C3216」で、容量が100μFの積層コンデンサを秋口に量産開始する。耐圧は4.5V、温度特性はX5R*1)
 安価だが寿命や信頼性が積層コンデンサよりも劣る電解コンデンサの置き換えを狙う。
 既存品「C3225」からの小型化は、誘電体膜0.5μm、電極膜0.6μmという厚みを実現したことによる。0.5μmという厚さは不透明な誘電体シート(焼成前)が透けて見えるほどの厚みだ。
 誘電体膜を薄くするため、チタン酸バリウム(BaTiO3)といった強誘電体の粒径を小さくし、粒度分布を狭くした。一般に強誘電体は粒径を小さくすると凝集しやすくなり、不均一になる。これを防ぐため、従来はベッセルによる撹拌(かくはん)でばらばらにしていたが十分ではなかった。今回、高圧分散という粒子同士をぶつける方法により均一化を図った。
 電極も薄く加工するため乾式転写という方法を使った。従来のNiペーストを印刷パターンで形成する工法では厚さ1μmが限度だった。これ以上薄くするとムラができ、均一なパターンが形成できないからである。乾式転写製法は、予め電極を印刷パターンなどで形成しておき、それを誘電体のグリーンシートに押しつけて転写する。これによって電極の厚さ0.6μmを実現した。
 電極に使う粉末も細かく分散処理した。ただし、このままでは使えない。チタン酸バリウムよりも焼成が早く進むからである。このため、チタン酸バリウムの誘電体グリーンシート*2)とパターニングされたNi電極をこのまま同じ焼成炉に入れられない。そこで、同社は電極に焼結抑制用セラミックスをまぶすことでNiの焼結を抑え、同時焼結を実現させた。

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誘電率を上げる新材料の開発

 同社は、材料開発にも力を入れる。例えばチタン酸バリウムの場合、水熱合成法を使って粉末を作る。BaとTiの水溶性化合物をそれぞれ混ぜて熱し、圧力を加える方法だ。粉末の粒径が小さければ小さいほど誘電性を示す異方性が崩れてくる。この異方性は、誘電体の長軸と短軸の寸法の比で決まる。加熱温度や圧力などのパラメータを最適化することで、粒径が小さくても異方性をできるだけ崩さないように工夫している。
 さらに同社は、誘電率を上げるため、組成変調の試みも始めている。2種類の方法を検討している。1つは、チタン酸バリウムの粉末の周囲にチタン酸ストロンチウムを被覆するというもの。これは、2つの材料の違いにより歪みが生じることを利用して異方性を高めようという狙いだ。
 もう一つの方法は、イットリウム(Y)をドープしたチタン酸バリウムのY濃度を内部から外部へと上げていこうとするものである。
 さらには、水熱合成法ではなく、CVD法を使って粒径を10nm、20nmと小さくしようという試みも検討している。いずれも小さな粒径すなわち薄い膜でコンデンサを形成することを狙っている。

垂直磁気とTMRヘッドでデモ

 磁性体技術でも新しい技術を展示した。まず、垂直磁気記録ディスクと次世代ヘッドTMR(tunnel magneto resistive)を組み合わせた(図1)高密度磁気記録の実演を行なった。記録密度は150Gビット/平方インチ。
 日立製作所が以前発表した230Gビット/平方インチよりは密度が低いものの、実演してみせたのは今回が初めてだという。
 磁気記録の高密度化が進むにつれ、トラック幅が狭くなり、隣接するトラックの磁気干渉の影響で信号品質が劣化するという問題が生じる。更なる高密度化には素子の感度を上げる必要があり、TMRヘッド(図2)は次世代のヘッドとして開発された。
 今回のデモではTMRヘッドを読み出しに、垂直磁気記録用PMR (perpendicular magnetic recording)ヘッドを書き込みに使っている。従来のGMR (giant magneto resistive)ヘッドはCIP型(current in plane)で、電流は水平方向に流れるが、今回デモで実演されたTMRヘッドはCPP型(current perpendicular to plane)で、電流は垂直方向に流れる。磁性体のスピンは磁気ディスク面に垂直に並んでいるため、検出電流も垂直方向に流れるような構造にした。バリア層は絶縁材料を使用しているので、通常は電極間に電流は流れないが、フリー層が漏れ磁束の影響をうけると、トンネル効果を利用して電流が流れる。TDKはバリア層に酸化アルミニウムを使っている。バリア層形成の際、磁性層にいかにダメージを与えないかが重要なプロセスのポイントとなるという。
 技術的にはTMRヘッドで250〜300Gビット/平方インチも可能だとしている。

超小型3軸加速度センサー

 磁気ヘッドに使われていたGMR素子の新しい応用を同社は提案している。GMR素子を利用して大きさがわずか3.6mm×2.5mm×0.8mmの全方位落下検知センサー(3軸加速度センサー)を開発した(図3)。最近、商品化が活発な全方位(X、Y、Zの3軸)MEMS*3)センサーは5.0mm角品がほとんどである。5.0mm角のセンサーはカーナビゲーションシステムに使われ始めている。
 TDKが今回開発したセンサーは、MEMSセンサーの約半分の大きさしかない。このためHDD内蔵の携帯機器などへの応用を狙っている。HDDが着地する前に落下したことを検知し、ヘッドをディスク近くからはずし固定することで破損を防止する。
 同社の主力製品の1つであるHDD用GMRヘッドで培ったスピンバルブGMR膜の技術を応用した。磁化のスピンを電流のバルブに見立てた技術で、磁化方向が固定されている磁性層(ピン層)と、外部からの磁力の変化を受けて磁化の向きを変える磁性層(フリー層)の間に非磁性層(スペーサ)が挟まれており、フリー層が受けた磁化の変化によってGMR効果が得られる。
 弾性部材によって固定された磁性体の動きを、スピンバルブGMR層で検知するしくみ。落下時は磁性体が無重力状態となり、スピンバルブGMR層に対して一定の位置に固定されることで検知できる(図4)。微細な動きに対応するため、弾性部材はゴムを特殊な形に加工したものを使用し、精度を左右する磁性体の大きさを調整した。2006年中の量産化を目指す。

レンズ駆動圧電アクチュエータ

 少ない消費電力で動く圧電アクチュエータ「Helimorph Actuator(ヘリモルフアクチュエータ)」を展示した(図5)。Helimorphは、英1Ltd社の商標で、TDKは1Ltd社からライセンス供与を受けている。このアクチュエータは、2層の圧電セラミック(PZT)と1層の電極からなる積層シートを短冊状に切断し、細い棒の回りに螺旋(らせん)状に巻き、それを円状に加工した構造を持つ。このアクチュエータの先端部分が上下に動くようになっている。その消費電力は、今日オートフォーカス・カメラモジュールやズームカメラモジュールで使われているステッピングモーターの1/10以下という。
 このアクチュエータにかける電圧が±80Vのとき、先端の動く幅は、アクチュエータ単体(無負荷の状態)で0.8mmとなっている。試作したオートフォーカス・カメラモジュールでは、カメラのレンズを最大幅0.5mmまで動かして自動で焦点を合わせ、PC画面に静止画およびムービーを表示した。
 圧電セラミックの積層シートを半円状の軸に巻き付けた構造にしたのは、動作範囲を広げるためである。積層シートだけなら動作範囲を広げるとすると長くせざるを得ない。小型のアクチュエータにするためには、長いシートを巻き付けて実効的に長くした。
 円状に加工することで、先端が上下に動くようになっている。ただ螺旋状に巻いた2層の圧電セラミックに電圧を加えれば、回転方向に動いてしまう。そこで、この螺旋状に巻いた圧電セラミックを円状に加工することで、コイル先端を上下に動かせるようにした。
 この圧電セラミックの長さや厚みなどを変えることで、アクチュエータの変位量やブロッキングフォース、印加電圧を変えることができ、いろいろなバリエーションが考えられるという。
 このアクチュエータの外形は11.2mm、内径は8.55mm、電圧が±80Vのときのブロッキングフォースは60mNとなっている。

UWB向け電波暗室を販売

 フェライトはノイズを吸収するためのクランプフィルタにも使われ、TDKの得意とすることではあるが、同社はノイズを測定・評価する電波暗室も開発している。このほど、UWB(Ultra Wide Band)方式の無線通信機器の測定と評価を行うシステム(図6)を2005年6月より発売した。UWBは、7GHzを超える広帯域(3.1GHz〜10.6GHz)の周波数を利用することで、100Mビット/秒以上の高速近距離無線通信を行う技術である。販売地域は日本国内および米国。
 システムは米国のFCC(Federal Communication s Commission:米国連邦通信委員会)の定める規定「FCC Rule Part15 Subpart F」に対応しており、評価用アンテナ、電波暗室および関連ソフトウエアから構成される。アンテナは2軸回転機構と偏波面自動切り替え機能を備えているため、電波の放射パターンの3次元測定・表示ができる(図7)。さらに、制御ソフトウエアとの連動で、評価対象物を動かさずパソコンによる操作により計測を行うことができるなどの測定の自動化がなされている。これにより測定時間の短縮が図れるという。また、システム制御ソフトウエアは、各種通信規格に対応しており、今後の通信規格の標準化動向に合わせ、機能を向上させることができる。
 電波暗室には、同社独自のピラミッド型斜入射角電波吸収体を採用した。斜入射角電波の反射を減衰させられるために暗室の大きさを小型化できるという。
(本誌=川村祥子、伊藤達哉、渡辺二之、津田建二、Design News Japan誌=大村泰憲)



用語解説 / 会社情報
*1)X5R
温度範囲:−55〜85℃、静電容量変化率:±15%
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*2)グリーンシート
焼成前の誘電体膜
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*3)MEMS
Micro Electro Mechanical System
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