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signalintegrity
2005年4月号
回路を守るために

 今まで、差動回路のリターン電流の経路や高速シリアル通信における理想的な測定プローブの実現方法、スター結線の信号配分など、いろいろな回路における信号伝達について述べてきたが、今回は静電気から回路を保護するIC内蔵の保護ダイオードについて述べる。
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 通常、CMOSチップのI/Oパッドには、それぞれ2個の保護ダイオードがクランプ用として接続されている。これらのダイオードによって入力電圧には制限がかかっており、VCCよりはるかに高くなることも、グラウンドよりずっと低くなることもない。これによりゲート酸化膜の破壊や全チップのラッチアップを防ぐことができる。もしも制限がかかっていなければ、これらの故障はESD*過渡時に容易に発生してしまうだろう。ESD保護ダイオードは、回路構成的には高速バスのオーバーシュートやアンダーシュートを抑えるために用いられているダイオードと似ているが、1つ大きく異なる点がある。それは求められる寿命である。オーバーシュート制限ダイオードはESD保護ダイオードに比べると非常に大型である。それゆえに、オーバーシュート制限ダイオードは高電力の過渡電流パルスを次から次へと吸収することができる。そして、そのパルス数には本質的に限りが無い。それに対してESD保護ダイオードは小型で、強度には限界があり、しかもその寿命内で目的としている作動回数はほんの数回である。
 もし高速バスの過渡現象のクランプに、ESD保護ダイオードを用いたならば、焼き切れてしまう可能性が高い。焼き切れたダイオードはオープン状態になり、クランプ効果は完全になくなってしまう。従って、次にESDのインパルスが発生したならば、システムは致命的なダメージを受けることになるだろう。


 それではESD保護ダイオードの強度を測ることは可能だろうか。確かに、かなり有効な加速寿命試験方法があるが、もっと良い方法は過渡ピークを制限することであり、そうすればそもそもこのようなことを懸念する必要はない。
 ESDダイオードの加速寿命試験はメタル配線のMTTFに関するブラックの式の応用である*1)。保護ダイオード自身ではなく、ダイオードにつながるメタル配線の方が、非常に細く繊細なため簡単に焼き切れてしまう。従って加速寿命試験は、この細い配線の断線を評価することになる。ここで、保護ダイオードの配線を細くしてあるのは、寄生容量およびチップ上に占める面積を抑えるためである。
 このブラックの式において、Aは実験的に決められる定数、Jは電流密度(A/cm2)である。Jの乗数2はアルミニウム配線のエレクトロマイグレーションによるESD保護ダイオード配線の故障において近似的に成り立つ値、Eはアルミニウムの結晶粒界活性化エネルギーで約0.6eV(EIA/JEDEC Publication No.122規格を参照)、kはボルツマン定数(8.616×10−5eV/K)、Tは絶対温度(K)で表した接合温度である。
 ESD保護ダイオードに意図的に直流電流を注入して故障を起こさせた場合、ブラックの式によれば、MTTFは電流の2乗に反比例して短くなるはずである。実験によって2乗に反比例の関係を観測できれば、逆方向に外挿することにより、はるかに小さな直流電流でのMTTFを決定することができる。ただしあまり大きな電流を印加してしまうと、発熱などほかの要因の影響でブラックの式に従った結果は得られなくなることになる。
 正確な遷移が繰り返されるようなパルス電流の場合は、そのピーク電流に関係した速度で故障を誘発し、そのパルスのデューティ・サイクルにより故障発生の速度は低下する。例えば、50nsごとに起きる1nsの30mAの過渡電流は、直流電流30mAのMTTFの50倍で故障を誘起するはずである。
 重要なのはCMOSチップにESDダイオードを組み込むための標準規格は存在しない、という事実である。組み込む手法はいくらでもある。しかしあるメーカーのICプロセスで収集したデータは、そのメーカーのほかのチップ・プロセスにも、ほかのメーカーのチップにも適用できないのだ。
(Howard Johnson*2)

用語解説 / 会社情報
【ESD】
electrostatic discharge
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*1)参考文献
Black, James R, "Electromigration Failure Modes in Aluminum Metallization for Semiconductor Devices," Proceedings of the IEEE, 57, No. 9, September 1969, P.1587 to 1594
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*2)ハワード・ジョンソン
Howard Johnson氏は「High-Speed Digital Design」と「High-Speed Signal Propagation」の著者。Oxford大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は次の電子メールアドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie03@sigcon.com
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