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2005年4月号
実用化が進む
風力発電


  風の力を通して太陽エネルギーを利用することは古くから行われてきた。しかし工業的に重要なエネルギー源として利用できるようになったのは、ごく最近である。地球に優しいエネルギー源を確保することに、欧米諸国は積極的に取り組んでいる。そんな技術の第一候補、風力タービン発電システムの発展の背景には、電力用半導体とシステム制御技術の進歩があるのだ。

Davit Marsh
 多くの太陽エネルギー利用技術の中で、風力タービン発電システムは大規模な「緑の電力」時代のトップランナーとして注目されるようになってきた。
 現在、米国政府と欧州連合(EU)は、地球に優しいエネルギー源を開発するための政策を強化している。米国政府は2003年、風力発電プラント建設のために約16億米ドルの投資を行い、2020年までに米国の総電力需要の約6%に当たる10万MW相当の風力発電設備の建設を目指している。その一環として、米国政府は既に米カリフォルニア州にあるMojave(モハーベ)砂漠のTehachapi(テハチャピ)に世界最大の陸上風力発電所を建設している。一方、2002年の統計によると、新しい風力発電所建設の90%がヨーロッパで行われている。

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風力発電システム設計が抱える問題

 まずは風力発電において設計者を悩ませている問題がどこにあるのか、また過去の先駆者たちがどこまでそれらの問題を克服してきたかを振り返ってみたい。最大の難問は、風力が極めて変動しやすい不安定なエネルギー源であることだ。一般的な蒸気タービン発電には、発電機の速度と出力を調整するために、大きく分けて次の4つのメカニズムが存在する。すなわち蒸気を発生させるための原エネルギー供給量の制御、タービンへの蒸気吹き付け速度の制御、発電機の電力発生レベルの制御、およびローター負荷角度の制御だ。
 このような発電機は、ローターが送電周波数の正確な倍数に同期して回転する同期マシンとなっている。ゼロ位相差のアイドル位置に対するローターの相対的角度を変えることにより、送電網への電力供給または送電網からの電力吸収ができる。つまりそれぞれ発電機またはモーターのいずれかの動作を行わせることができるのだ。典型的な動作状態におけるローターと送電網との位相差は約30度であり、ローターが位相をリードしている。電力出力端子は送電網に直接接続されるため、送電網のしっかりした状態が発電機のシャフト駆動トルクの回転速度を制御し、一定の送電網周波数を維持する。
 それでは風のエネルギーとはどの程度のものなのだろうか。理論的には、ある空気の密度が与えられた場合、利用可能な風力エネルギー(1m2当たりのワット数)は、風速の3乗に比例するとされている。従って、風力タービン設計のあらゆる局面においてローターの性能が重要になってくる。その中でも重要なパラメータは、回転羽根の先端の速度と自由空間における気流の速度比を表すTip速度比(tip-speed ratio)である。
 このパラメータは、1919年にドイツの物理学者Albert Betz(アルバート・ベッツ)氏により、「その数値は0.593を超えることはない」とされたローターの出力係数のことである。実際の標準的な性能はTip速度比が7のとき、最大値0.4を若干超える程度である(図1)。ローターの速度を固定し、ロスを無視した場合、風力タービンの出力電力は以下の式から求めることができる。
  電力=Cp×ρ/2×vw3×A 
 Cpはローターの出力効率、ρは空気の密度(kg/m3)、vwは風速(m/sec)、Aはローターの掃引面積(m2)を表す。従って、風力タービンの性能を議論する場合には、電力容量(kW/h)と同時に、ローターの掃引面積も含めることが必要である。製品を続けて製造をするために、妥当な価格になるローターの構成と発電機の概念の最適な組み合わせを見いだし、総合的な出力係数を最大にすることが設計者の仕事である。

ローター制御で発電効率を高める

 出力電力が20kWから30kWの間で、最大4.5MWまでの風力タービン発電機では、一般に3枚羽根のローターが使われている。理由は、この構造が効率や動的性能および建設コストのバランスをとるのに最適であることが経験的に示されているからである。風力タービン発電機の主な構成要素は、ローターや発電機のシャフト回転速度を増幅させるギアボックス、発電機、電気的インターフェース、および制御ループである(図2)。最も重要なのは、ローターの回転速度をいかに安定させて発電効率を最高に維持するかということである。風力タービンは重要な要素をそれぞれ切り離して考えることができないメカトロニクスシステムであるが、ローター回転速度の制御が最も重要なポイントとなっている。風力タービンの制御システムは風向きの変化や、ベタなぎの状態から100年に1度起きるかどうかという強風までの広範囲な風速変動にも耐えられるような、安全な制御ができなければならない。風力発電システムの大きさを表す例として、デンマークのVestas Wind Systems社製の「V90シリーズ3.0MW風力タービン(V90-3.0MW)」が挙げられる。それは、カーボンファイバを積極的に使用して軽量化を図っているにもかかわらず、総重量は40トンにも達しているのだ。

設計のキーポイントは失速制御

 強風時にローターや発電機が破壊されないように発電量を制限する方法の1つが、ローターアセンブリを風の向きからそらすことである。通常はローターを常に風に正対するように制御するヨー(首振り)システムは、風速・風向センサー、電動または油圧モータードライブ、インターフェースの電子回路およびナセル(機械室)を回転させるギアとベアリングから構成されている。センサーアセンブリの多くはナセルの後部に設置され、伝統的に風向計付きの3カップ風速計が使用されている。
 センサーの代替技術としては、Vestas社のV90-3.0MWで使用している超音波素子がある。実際には、センサーが設置されるローターの後方の風速は、回転翼により発生する局部的な低圧効果によって真の風速より、若干減速する。この不一致はそれほど重要ではないが、特性を把握することによってそのような誤差を補正できる。しかし、ヨーによる速度制御では、良い結果が得られないことが経験で分かっているため、一般的な設計では、ナセルを風に正対した最大風力の得られる位置か、受ける風力を最小にしてシャットダウンさせるような位置のどちらかに設置している。
 風力の変動があっても発生する電力を安定に保つための最も簡単な空気力学的方法は、回転ブレードのピッチ角度を固定したパッシブストール(失速)制御方式である。あるローター速度の下での風速の増加は、空気の流れを翼の両面で分離させ、失速現象を発生させる。この空気流の分離の程度は、空気密度と翼の表面仕上げの品質によって左右される。しかし、いずれにせよ自動的に風力の捕捉効率を低下させる。この技術はまた、安定性を維持するために強力な送電網の条件と発電機を必要とする。送電網との接続が失敗したり、電気的な故障が発生したりした場合に、ローターの回転が速度超過になるのを防止することが不可欠であり、入力シャフトに取り付ける通常の機械的なディスクブレーキに加え、ローターの上部に流体力学的なブレーキを装備する必要がある。またローターはピッチ角度が固定されているため、起動のための最大トルク位置まで回転させることができない。そのため発電機をモーターモードで動作させることにより、送電網の周波数と同期する速度まで、ローターを加速することが必要になることもある。最後に、この構成は失速制御の概念を象徴するような、非常に高い動的な負荷に耐えられる堅牢さが必要であることは言うまでもない。

軽量・単純な風力タービン例

 それにもかかわらず、この原理を使用した風力タービン発電機の成功例もいくつか存在している。単純で軽量な風力タービンの例として、スウェーデンのNordic Windpower社の1MW発電機「Nordic 1000」を挙げることができる。このモデルは掃引面積2290m2で、2枚羽根の失速制御付きローターを使用している。タービンはセルフスタートが可能であり、初期のいくつかの失速制御型タービンが示していたピークのある発電量曲線を平坦化するために、ブレード上に失速制御用ストリップを装着し、上部が平坦な発電量曲線を実現した。ローターはグラスファイバーで強化されたポリエステル樹脂製のブレードを2枚装備しており、巨大な負荷を容易に吸収できる柔軟な構造を備えている。ヘリコプターのローターからヒントを得て採用されたそのほかの要素としては、相対運動を±2度まで許容することによって、回転羽根と入力シャフト間の風の剪断力(せんだんりょく)を緩和する弾性ベアリング付きのシーソーハブがある。また、発電機およびヨー制御システムに緩衝機構を追加したことにより、構造上の柔軟性が一段と改善されている。
 独WEIER Electric社製の風力発電機は、4極の単一速度誘導発電機であり、そのローターは回転する電磁界よりも若干高速に回転する。このスリップ(回転速度の差)が、電気機械的振動を抑制するのに有効な緩衝効果を与える。発電機のローター回路内にあって、励起電流を制御している抵抗の値を切り替えることにより、スリップの量を1〜10%まで変えることができる。誘導発電機のトルクはスリップ値に直接比例するため、この機能により非同期マシンでは実現が難しい速度制御が可能になる。0%スリップの場合、発電機は送電網周波数と同期した状態であり、電力の発生も消費も行っていない(ローターが消費する無効電力を除いて)。同様に、発電機が送電網周波数よりも低速で回転している場合、発電機はモーターモードに入っており送電網から逆に電流を引き出している。この電流の引き出しを制限するために、入力シャフトに取り付けたディスクブレーキによって4m/秒〜5m/秒以下の低風速(タービンのカットイン速度と呼ばれている)でのローターの回転を原則として停止させている。

Vestas社の「OptiSlipシステム」

 ローターに取り付けられた電子回路とステータ(固定子)に取り付けられたコントローラ間を光で結合するVestas社の「OptiSlipシステム」は、上記と同様のスリップ制御を採用している。このシステムの場合、スリップ制御の値は約10%、荒れた風速条件の下で電気出力を平滑化し、構造体にかかる負荷を軽減する動作時間は、約10msとなっている。スリップの値は発電効率にも影響する。MW級の発電機の場合、通常は1%のスリップで動作し、約95%の効率が得られる。ローター回路は無効な電力を消費するため、本来の力率(Power factor)は一般に悪く、0.87程度である。このため、力率を向上させる目的で電力用電子回路が多く用いられるようになっているが、一般に使われているシステムではスイッチド・キャパシタ・バンクが使われている。Nordic社のNordic 1000の場合、スイッチド・キャパシタがタービンの動作範囲全体にわたって、出力の力率を1に維持している。
 ヨーシステムの制御ループにダンピングファクタを挿入することで、タワーの軸周辺である程度の揺れを許容できる。これによって乱気流の影響を吸収することが可能となる。結果として、Nordic 1000の構造体は、55m/秒の強風に耐えることが可能となり、4m/秒〜25m/秒までの風速の範囲で、安定的な電力を発電できる。この風力発電機は風速17m/秒のときローターの回転速度は25rpm、ローター先端速度は71m/秒となり、最大1MWを発電する。ローターの回転速度が上がりすぎると、遠心力による油圧の作用で圧力開放弁を起動し、羽根の先端を制動位置まで回転させる。さらに、空気力学的ブレーキと機械的ブレーキの効きを補強するために、風力発電システムの専門メーカーであるデンマークのMita-Teknik社のSCADA*システムが使用されている。この発電機は3相690Vの交流電力を発電する。電力は柔軟なケーブルを通してタワー基部に送られるが、ケーブルのねじれが蓄積されないようにSCADAシステムが制御する。SCADAシステムと中央制御システム間の通信は、モデムと電話回線を通じて行われ、パソコンによってそれぞれを独立に監視すると同時に、タービンの動作状態を記録する。

制御でエネルギー捕捉問題を解決

 風力タービンの設計者の多くがローターのピッチ制御を好んで使用している。その理由は、この技術が風速の変動とシステムのエネルギー捕捉の問題解決に大きな効果を与えるからである。最新の製品には2つの流れがある。第1の方法は、空気の流れに対する回転羽根の迎え角を最大電力の位置から最小電力の位置まで小刻みに減らしていく方法である。第2の方法は、迎え角を空気力学的に失速が起こる位置まで増加させる方法である。デンマークの技術者であるMB Pedersen氏やP Nielsen氏は、1980年に実験タービンNibe-AおよびNibe-Bを使って、これら2つの方法をテストした*1)。その結果、フル・ブレードピッチ・コントロールは滑らかな出力特性を有しており、速い風速領域で高いローター推力を低減する能力のあることが示された(図3)。今日では、より洗練された回転羽根の空気力学および制御アルゴリズムによって、これらの差はもっと縮められている。
 デンマークのBonus Energy社の製品である「CombiStalls」はアクティブストール方式で設計された代表例である。そのデンマーク式タービンは、一定の速度で回転する3枚羽根ローターと、送電網に直接電力を供給する発電機、および二重安全機構システムから構成されている。同社の最大規模の製品である2.3MWの「Type B40」は掃引面積が5330m2のローターを装備している。このローターには、グラスファイバーで強化されたエポキシ樹脂製の回転羽根が取り付けられている。羽根の角度は80度からシャットダウンの位置まで変えられる。通常動作時には、ローターが失速しないよう、マイクロプロセッサで制御されたサーボループが回転羽根の角度を維持している。発電機を二重にした設計は11rpmもしくは17rpmのいずれかでのデュアルスピードで動作し、これによって部分負荷がかかったときの発電効率を改善している。低風速時には小型の6極発電機に切り替えることで、通常の風速時の2/3の発電量を確保する。一方、風速が速くなれば4極発電機に切り替えて、通常風速での動作を行う。
 タービンは平均風速が5m/秒〜6m/秒に達すると、自動的に動作を開始する。ローターが送電網と同期する回転速度まで加速されると、サイリスタのソフトスタート回路が発電機を送電網に接続する。接続してから2〜3秒後にメーンの接触器がサイリスタを迂回させることで、半導体素子での損失を排除する。風力タービンの出力は、その後ほぼ直線的に増加し、約14m/秒〜15m/秒の風速で最大値に達する。
 それと同時に制御ループが一定出力を維持し、発電機が過負荷状態に陥らないように一定出力モードに移行させる。ここで平均風速がタービンの動作限界を超えると、制御システムは回転羽根の角度を風に平行にして、ブレーキをかけてタービンをシャットダウンするようになっている。その後、再スタートできるまで風速が遅くなると、安全システムが自動的にリセットされ、故障が起きていない限り、タービンが動作を再開するのだ。もし故障が発生すると、タービンはそのままオフライン状態を維持する。二重安全機構は、大きな故障がある場合に、タービンの制御システムより優先される遠心力装置を含む冗長なシステムで構成されている。

インバータが動作を単純化

 可変速度運転によって最も柔軟なエネルギー捕捉および制御能力が可能になる。なぜならタービンのローターは、その最大Tip速度比で理想的に動作するからである。ほとんどのタービンが採用している固定速度用の遊星歯車ボックスを自動ギアボックスに置き換える初期の試みは、費用と信頼性の問題から失敗に終わった。スリップ制御は誘導機における速度制御能力に限界があるため、これに代わるもう1つの方法が提案された。それが1980年代に3MW級のGrowian風力タービンでまず試用され、現在多くの風力タービンに採用されている二重供給誘導発電機「DFIG*」技術である。この技術はサイクロコンバータを用いて交流電流をローターに注入する(図4a)。サイクロコンバータはサイリスタアレイで構成された、3相の周波数をサンプリングして低周波の制御波形を生成するAC-ACコンバータである(図4b)。電磁界の大きさと位相を制御して発電機の力率を調整すること、同期型発電機の有効電力または無効電力を供給する能力をエミュレートすることなど、この制御波形をローターの電磁界に重ねることにより、発電機の出力周波数を安定化させることができる。この手法の問題点は、ほかの方法に比べて発電効率が送電網の故障に影響されやすいことである(p.49の囲み記事「風力タービンの最大の問題は電力の品質」参照)。
 比較的単純な可変速度技術として、周波数インバータにAC-DC-ACリンクを使用する方法がある。この方法では、発電機の出力周波数を送電網周波数に転換する前に、その交流出力を一度整流する。この技術により、発電機を負荷から切り離せ、より効率的な同期運転が可能になる。そして直流リンクの条件を変えることによって、発電機のトルクを制御できる。この技術を用いた製品の例として「Vestas V90」という3MW級風力タービン発電機が挙げられる。このシステムには完全なブレードピッチコントロールとVestas社独自の「OptiSpeed」技術が採用されており、掃引面積6362m2のローターを制御している。OptiSpeedシステムはローターの回転速度と発電機出力を最大60%変化させ、構造体にかかる負荷を軽減しながら送電網への出力変動を最小限に抑えることができる。このシステムの心臓部は、発電機から送電網変圧器への出力を制御する電力供給回路を構成しているVMP-Topコントローラとインバータである。この点以外は通常の型と同じであり、ローターの回転速度が9〜19rpmの間で、発電機の回転速度をさらに高めるためのギアボックスを装備している。

最も簡単な構成例、直接駆動型

 概念的に最も簡単な構成をとった例として、独Enercon社が開発の先陣を切った一連の直接駆動型風力タービン(歯車なし)が挙げられる。この方式では現在、4.5MW級の発電量のシステムが開発されている。この設計ではローターを発電機に直結させることで、多数のドライブトレインベアリングを排除し、わずかに2つの低速に回転する部品だけにできる。問題はそのような低回転速度でいかに十分な電力を発生させ、送電網周波数に変換するかである。Enercon社はこういった発電機の問題を例えば84極というように、多数の極を持たせ、電気的に励起される同期マシンを用いることによって解決した。同社では、直径4.8mのローターを採用した600kWの「E-40」を製造している。この機械のローター回転速度は18〜34rpm、掃引面積は1521m2である。産業用インバータドライブの設計・製造の専門であるEnercon社は、独自の電子回路技術を採用している。
 対照的に、Enercon社同様の直接駆動発電機を装備しているオランダのZephyros社製2MW級モデル「Z72」は、スイスのABB社製「ACS1000」という可変速度モーター駆動コントローラの改良版を使用している。そして単一のドライブシャフトベアリングがABB社製の永久磁石発電機を支えている。発電機損失の低減、優れた部分的負荷効率、および低い故障確率などをセールスポイントとするZephros社は、永久磁石を使った設計の有利性を強調している。短所としては、ネオジウム−鉄やサマリウム−コバルトのような高透磁率材料の使用による費用の高さが挙げられる。また永久磁石発電機は力率性能が悪いため、インバータ電子回路で補償しなければならないことも不利である。
 しかし、多くの専門家は、永久磁石を使った機器は有望なアプローチであり、特に巨大な直接駆動型を設計する場合に有利であるとみている。英NaREC*で電気技術スペシャリストを務めるAdrian Wilson氏は、「この手法は重量の低減を主目的としている現在の研究調査プロジェクトの中核になる」と報告している。風力タービンの理論的出力電力は、ローターが捕捉する空気の体積の3乗に比例して増加するため、構造上も重量がそれに比例して増加する傾向にある。
 Wilson氏は「現在の設計アプローチでは、発電量を、将来の需要予測から必要とされる20MW〜30MWは言うに及ばず、10MWのレベルまで増大することすらできないため、NaRECでは、重いギアボックスを必要としない直接駆動による設計を研究している」と語っている。しかしこれは一方で直径が大きな発電機を必要とする。このプロジェクトが考えている大きさを実現するための1つのアプローチは、従来の方式から外れて、発電機の極の対を支持するスポークを持つ自転車の車輪に似た構造に置き換えることだ。出力を送電網に接続するためには、複数の並列動作インバータを必要とするフルパワーのAC-DC-AC周波数インバータリンクを使用しなければならない。

IGBTがサイリスタを駆逐する

 風力タービンシステムが求める電力用半導体は、弱電を専門とする技術者にとってはなじみが薄い。むしろ、サブミクロンの線幅よりも、ヨーロッパ標準の設置面積34×94mm2〜140×190mm2である単一の半導体モジュールを検討するとよい。そのような半導体は数千Vで数千Aという大電力を取り扱う。過去数十年間にわたる大電力半導体素子技術の進歩は、風力タービン発電機の進展に大きく貢献している。Growianの時代の大電力の適用例にはサイリスタ技術が使用されていたが、伝導損失が大きく、スイッチング特性も貧弱で、しばしば100μsもかかっていた。従って、周波数変換では、一般に正弦波のエネルギー分布を6または12ステップの波形で近似しており、結果として特に5次や7次といった奇数次高調波が強く残った。そのため高調波フィルターを使用しなければならないという問題があった。
 Growianの第一世代のサイリスタをIGBT*で置き換えることにより、PWM*制御が可能となった。そして高調波抑圧性能の弱点が克服された。またこの技術によって有効電力と無効電力の発生を容易に制御できるようになった。このIGBTは頑丈だし、三菱電機の「FT1500AU-240」のような最新のIGBTでは、12kVで1.5kAの電力を15μsでスイッチするが、従来のサイリスタでは保持している電流値以上の電流が流れている状態では、電流を遮断できない。三菱電機の「FG6000AU-120D」のようなGTO*サイリスタは、6kVで1.5kAの定常電圧・電流を処理しながら約30μsで電流を遮断できるが、作動させるのが難しい。さらによくないことには、すべてのサイリスタには、風力タービンへ応用する際必要な電力レベルでは時々不可欠となる並列接続が難しいという欠点がある。

大電力IGBT技術を採用する

 大電力IGBTは1μsという高速な切り替えと、運用が簡単であり、電流の分流が可能というMOS FETの特徴とを組み合わせた半導体である。送電周波数に変換するために必要なPWM周波数が数kHと低いにもかかわらず、高速な切り替え動作によって、半導体がリニアな動作領域を横切る際の導電損失の最小化を図れる。独eupec社の「FZ600R65KF1」のような半導体は、6kV×1.2kAの電力を1μs以下でオンにし、約6μsでオフにできる。また同社の「FZ3600R12KE3」のようなより低電圧の半導体では、1.2kV×3.6kAの電力を切り替えることが可能である。結論を言えば、IGBTは大電力インバータやソフトスタートコントローラのためのスイッチング素子として適したものであるといえる。このほかに、大電力半導体メーカーとして、ABB社、英Dynex Semiconductor社、富士電機デバイステクノロジー、米Powerex社、独Semikron社を挙げることができる。
 出力電力が660kW〜2MWの領域に展開しているスペインのGamesa社の風力タービンシステムは、可変速度および周波数制御機能のためにIGBT技術を積極的に使用している。可変ピッチローターブレード制御による最適な風力を捕捉するための連続的な調整や、発電機の回転速度が900〜1900rpmにおけるDFIGシステムへの直接結合が可能となっている。このローターブレード制御技術は発生電力のピーク値、フリッカー、および高調波成分を最小化でき、これによって接続ライセンスの問題が緩和される。ベクトル制御システムは精密な力率制御を可能とし、同時に無効エネルギーの発生や消費によって、送電網電圧の安定化に寄与している。またGamesa社の風力タービンは大電力電子回路により、送電網内のどこかで停電事故が発生してもオンライン状態を維持できる。これらの問題は特に、高品質な接続に対して税制上の優遇措置があるスペインでは重要である。
 フランスの発電機メーカーCegelec社で風力エネルギー事業部長を務めるIvan Novikoff氏は、風力タービン発電機とその技術の選択は、設置場所とその地域の技術基盤の整備状況によって大きく左右されると指摘する。彼はまた、ケーブル敷設や起動時の流入電流、短絡電流の挙動などの問題はシステムのトポロジーに依存すると述べている。同社では、ある適用例に最適な風力タービン発電機を決定する際には、許容可能なローターの高さおよび音響雑音の発生から、タービンメーカーの現場でのサービス内容に至るまで副次的ではあるが不可欠な多数の問題を検討している。Novikoff氏は「投資家の視点から見れば、経済的配慮の中には風力エネルギー供給の安定性や機械の信頼性はもちろん、保守経費や電力生産に対する税制の相違なども含めなければならない」と語っている。


風力タービンの最大の問題は電力の品質

 風力タービン発電機の高電流、低電圧出力は、通常中電圧送電網とインターフェースを取る変圧器と接続される。典型的な3MW級風力タービンの設置費用が450万米ドル程度であるのに対して、高電圧変圧器にかかる費用は、約150万米ドルもかかるため、電力事業者は一般に風力発電プラントへのみ高電圧送電網と接続させている。しかし、ナショナル・グリッド(国の高圧送電網)への接続は、電圧および周波数の安定性、無効電力の供給安定性、および故障時の即応性などをはじめとした国のグリッド・コード(送電網規格)に適合していなければならない。
 Chinook Windの風力発電コンサルタント会社の技師長John Vanden Bosche氏は、相互接続規格と故障回復能力や無効電力の供給能力のような送電網信頼性は、現在、電力事業者の大きな問題となっていると述べている。これらの問題は、タービンが1つでも故障すると、送電能力を弱めたり送電を停止させたりするという連鎖的な効果を引き起こすため、設備が大規模になればなるほど大きくなる。彼は標準的なDFIG(Doubly Fed Induction Generator:二重供給誘導発電機)の場合、フィードバックループは発電機の出力電力の約40%しか処理できないにもかかわらず、電力のサージから電子回路を保護する必要性は、電力用半導体の節約のメリットを帳消しにしてしまっていると説明する。故障条件の下では、クローバー(かなてこ)保護回路がローターを数msで短絡させて、一般的な誘導機器を形成する。この動作はシステムの不安定性を引き起こし、同時に主回路のブレーカを起動させ、タービンをシャットダウンさせる可能性がある。
 このシーケンスがタービンに関連した障害から送電網を保護するとしても、タービンが瞬時にオフラインとなるため、送電網障害からの回復には何の役にも立たないことを意味している。
 このような偶然の事故に対処するために、ドイツの送電網事業者であるE.ON Energie社は、米国風力エネルギー協会(American Wind Energy Association)や米連邦エネルギー規制委員会(Federal Energy Regulatory Commission)のような機関が、国の環境のために検討しているのと類似した一連の送電網安定化標準を作成した。また別の動きとして、国際電気標準会議(IEC:International Electrotechnical Commission)では送電網に接続する風力タービン発電機の電力品質を測定し、評価するための統一的な方法を規定するIEC 61400-21規格を作成している。一方、英マンチェスター科学技術大学(UMIST: University of Manchester's Institute of Science and Technology)のような研究機関でも、電力品質問題に関する多くの研究が行われている。これらの問題は、今後、風力発電がエネルギー供給に大きな役割を果たすようになるに連れてますます重要性を増すだろう。
 このように関心が高まってきた結果として、独Enercon社、スペインのGamesa社、および米GE Energy社といった企業から供給されている最近の風力タービンの多くは、電圧や周波数の変動に耐えられるように、また一時的に短絡状態が発生しても電力の発生を安定して継続できるように設計されている。
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用語解説 / 会社情報
【SCADA】
Supervisory-Control-And-Data-Acquisition
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1)参考文献
Pedersen, MB and P Nielsen, "Description of two Danish 630 kW wind turbines Nibe A and Nibe B, Copenhagen," Third British Hydromechanics Research Association International Symposium on Wind Energy Systems, 1980.
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【DFIG】
doubly fed induction-generator
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【NaREC】
New and Renewable Energy Centre
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【IGBT】
insulated-gate-bipolar transistor
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【PWM】
pulse-width-modulation
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【GTO】
gate-turn-off
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