先日10Gビット/秒シリアルリンク・アプリケーション向けプローブの仕様を調査する機会があった。しかし、どの製品も私の要望を満たしていないという結論に達した。求めるレベルが高すぎたとおっしゃるかもしれない。だが、私は当たり前のレベルだと思っている。以下に私が考えている理想のプローブへの要望を述べる。
まず、プローブは信号の品質に一切影響を及ぼさないこと。プローブが対象のシステムに触れていようが触れていまいが、信号の状態は常に同じでなければならない。
次に、そのプローブはレシーバーの帯域幅にきちんと整合した帯域幅を備えていること。プローブは、こちらのデータスライサーと同じ帯域幅のレンズを通して、信号を見なければならない。スライサーの位置でのアイ開口率がX%であれば、プローブもX%のアイを示すこと。
さらに、そのプローブは外来ノイズを一切拾わないこと。その回路の中に実際にあるノイズだけを示し、それ以外の外的要因による無関係なものを含んではならない。
この一見信じられないような性能を実現することは可能だろうか。確かに困難かもしれない。しかし不可能ではない。プローブをトランシーバーの内部、すなわちチップ上に組み込めばよいのである。このシナリオを実行するためには、測定プロセス(さらには試験機器の製造自体)について、今までとは違った視点で考え直す必要がある。
現在、ほとんどのデジタル技術者はプローブと箱物計測器というアプローチを用いてシステム内の信号を観察している。まずプローブが、システムから生のデータを集める。次に計測器がデータを蓄積して、そのデータのフォーマットを整え、技術者が利用可能なフォーマットで表示するのである。しかし高速シリアルリンクにおいて信号を観察する場合には、そのアプローチをもっとチップ中心のものに変えていく必要がある。
まず、生データのキャプチャーはチップ内部のちょうどスライサーのところで行うようにする。そのためにまず、スライスする基準レベルを自由に変更してプログラムすることのできるもう1つの可調整スライサー機能(コンパレーター)を付け加える。さらに、この可調整スライサーからデータをサンプリングするタイミング可変のクロック位相機能も追加する。これら2つの機能を組み合わせて搭載することで、原始的なサンプリングスコープが構成できる。この回路がキャプチャーするデータと、通常のデータ・スライサーからのデータを収集できれば、われわれが解析しようとしているアイパターン表示、およびジッタ・ヒストグラム、その他シリアル・リンク解析に必要な多くのツールの生成が可能となるのである。
次に、収集したこれらのデータを計測器に移す処理を行う。この転送処理については、いくつかの方法が考えられる。データ転送に必要なスピードに応じて選択すればよい。特殊な高速I/Oピンが必要となってしまう場合もあれば、もっと単純なJTAG的な制御構造で十分な場合もあるだろう。
最後に、収集したデータの解析を行う。このステップは完全にソフトウエアの問題である。スコープおよびジッタ解析装置のメーカーは近い将来、高速シリアルリンク解析の主要な価値が、それらの計測器のハード内ではなく、チップインターフェースが収集するデータを解釈して表示する能力にあることをいつか認めることになるであろう。
このシナリオは実現可能であろうか。私の答えはイエスである。私は、複数のシステム設計において(10 Gビット/秒という)その動作速度を超えて、それを実現した事例を見てきた。自動適応イコライザーと比較すると、アイパターンをサンプリングする回路の設計はそれほど難しくない。また電力や無駄なスペースの増加もない。技術はすでにあるのだ。われわれがなすべきことは、それをごく当たり前のことと考えるよう意識を変えることである。
スコープベンダーの方々に対して、またそうでない方々にも、ここで注意を喚起しておきたい。将来、高速リンク設計を行う技術者は、箱物計測器ではなく、組み込みサンプリングスコープに関するIP(知的財産)のカタログを調べるようになるだろう。収集データをチップから取り出すために標準インターフェースとプロトコルの選定を行い、そしてポータブル・ソフトウエアツールを用いてそれらのデータを解析するようになる。彼らは大規模システムの各リンクで、そのシステムが動いている状態で、リアルタイムに、チップ上で、全レシーバーのアイパターン解析を実行することになるであろう。
(Howard Johnson*1))
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