雑誌無償購読申込み 最新号 バックナンバー 広告資料請求 EDN Japanについて お問合せ
雑誌無償購読申し込み
メールニュースレター登録
登録内容変更
アナログ IC/ディスクリート
電源/電池/コントローラー
PLD / メモリー
組み込みシステム
コンピュータ&ボード
EDA/IP/CAE/ソフトウェア
電子部品
計測器
ディスプレイ
デジタル家電
通信・ネットワーク
カーエレクトロニクス/産業機器
EDN Japan 記事検索
検索方法の詳細
雑誌無償購読申込み ニュースレター登録 この記事に対する感想/ご意見
designfeature
2005年2月号
設計初期から
EMC対策をとる


複雑化かつ高密度化する電子製品。設計サイクルもますます短期化が進んでいる。設計のリードタイムを短縮し、費用の低減を図るためにも、初期段階でEMC設計のためのシミュレーションを行うことが重要だ。それを実行することで、設計の最適化が可能になる。

Fred German*  英Flomerics社
 電子製品はますます複雑化と高密度化が進む一方で、設計サイクルの短期化が進んでいる。そのため、設計サイクルの下流段階でEMC*に対処することは、ますます困難になりつつある。EMCを計算するためのこれまでの経験則は、高周波では役に立たなくなっており、誤用する可能性も高まっている。その結果、新たな設計の70〜90%が最初のEMC試験で不合格となり、上流段階に戻って再設計を行うため、大きな費用がかかっている。さらにはメーカーの製品出荷時期が遅れることにもなり、販売の機会損失、費用の増大を招いてしまう。設計者は費用が膨らまないよう問題を特定し解決するために、設計の初期段階で協調的かつ概念的なEMC解析を基本としたシミュレーションの使用を検討すべきである。
  クロック周波数の高速化により、EMCの要求を満足することは、より困難な課題となっている。ギガヘルツの世界では、筐体(きょうたい)の共振個所が増えると放射が高まる。すき間や継ぎ目が問題になり、ASICのヒートシンクもまた放射電磁波を悪化させる可能性がある。さらに、規制当局はより高い周波数での適合性を確実にするために、規制を策定している。そして、Wi-Fi、Bluetooth、WiMaxおよびUWB(ウルトラワイドバンド)などの無線機能との統合が進むことで、技術者はシステム内にいくつもの電磁波発生源があることを意識して設計する必要性が高まっているのだ。


EMC設計に対する従来のアプローチ

 通常、ハードウエア設計者と機構設計者は、お互いEMC設計を別々に並行して行っている。しかし、それに関する双方のやりとりはあまり行われていないのが実情。彼らは装置設計の際、「これで十分だろう」という期待をもって、経験則を使うことが多い。EMCについての経験則の多くは、設計周波数がより高くなるにつれて時代遅れのものになりつつある。
Advertisement
  設計が終わると、設計者はプロトタイプを組み立て、EMCに適合しているかどうか試験を行う。EMCの問題が浮上するのは、たいていこの過程だが、その時点で、EMCに適合した設計に直すのではすでに遅すぎる。費用をかけて修正をするしかほとんど選択肢がなくなっているからだ。一般的に、設計変更は設計が概念設計から詳細設計、検証という下流工程に移るにつれ、大幅に増加するものである。従って、変更にかかる費用は、概念設計の段階ではわずか100ドルだったものが、試験段階では何万ドルにもなる可能性を秘めている。しかも、市場への投入時期にも悪影響を与えることになる。


EMCシミュレーションの課題

 テストチェンバーでの適合性試験を初回でパスするため、また予算内で納期どおりに間に合わせるため、製品サイクルに、EMC設計を含めることは不可欠となっている。設計者は電磁相互作用の数学的表現を簡潔に提供するマックスウェル方程式の3次元解析で、この目標を達成することができる。しかし、EMCシミュレーションは、コンピューター電磁気学の分野だけに限らない別の課題をも提示している。
 代表的な問題は、EMC特性にとって重要な要素となるスロットや穴、ケーブルなどの形に大きく影響を受ける筐体にある。正確なモデリングには、大小さまざまなモデルの詳細が必要となる。その結果、大きいアスペクト比(最大要素と最小要素の比)が生じ、最詳細部を解明するため、徐々に細かく追いつめて行くことが求められる。コンパクトなモデルテクノロジーにより、極端に長いシミュレーション時間をかけずに、一度のシミュレーションで大小さまざまな構造を含めることができる。
 もう1つの課題は、広い周波数帯域でのEMCの特徴付けを行う必要があることだ。各サンプル周波数における電磁界を計算するのには、膨大な時間がかかる。TLM(Transmission-line method:伝送線方式)などの時間領域方式は、広帯域の励磁を行い、時間領域での電磁界ソリューションを実行する。これにより1回のシミュレーションで、全周波数帯域でのデータを取得できる。空間は直交する伝送線の交点でモデル化されたセルに分割。そして電圧パルスが伝送され、各セルに分散される。時間ごとに伝送線上での電圧と電流から電界および磁界を計算することになる。
 EMCシミュレーションでは、正確な結果が取得できる。図1は、バックプレーンに取り付けられたモジュールの3通りの構成(それぞれ、(a)、(b)、(c))について、放射電力の計算値(赤線)と実測地(青線)を比較したものである*1)。これは1nWを基準にデシベル(dB)値で表されている。
 マルチモジュールのケースに見られる共振ピーク位置の微妙な違いは、測定時にモジュールの精密な配列が困難であるためだろう。興味深いことに、入力電力はすべて同じなので、放射電力の共振ピークと振幅の違いは、単にシステムのレイアウトによるものだと考えられる。


潜在的なアプリケーションの範囲

  EMCシミュレーションは、グラウンド技術やヒートシンクの形状、そのほかの要因などの影響を評価するだけではなく、例えば接地しているヒートシンクの周波数に対する放射プロファイルというコンポーネントやサブシステムの試験にも適用できる。通気孔の大きさや形状、および金属板の厚さにおけるシールド効果も比較できる。最近のこの分野の適用には、連続した2枚のパネルを近接して配置してシールドを効果的に実現し、EMCの制御をしたり、空気が流れる大きな通気孔を使用したりすることを評価する研究も含まれている。
 EMCシミュレーションは、システムレベルでのEMCの設計と計算に最適化されている。例えば、広帯域のシールド効果や広帯域の放射性電磁波、3次元ファーフィールド(far-field)の放射パターン、ターンテーブル型の測定シナリオを模したシリンダー状のニアフィールド(near-field)の放射性電磁波、およびEMCの問題個所を特定するための電流、電界、磁界の分布状況の可視化などである。典型的なシステムレベルのアプリケーションには、最高のシールド効果を確保する筐体の設計、筐体内のコンポーネント位置におけるEMCの派生効果の評価、システムの内部と外部を接続するケーブル配線の計算およびケーブルからの放射の影響の試験などが含まれる。EMCシミュレーションはまた、シャーシやサブシステムを介した不要な電磁気の伝送メカニズムの特定にも使える。例えば空洞共振、穴、スロット、継ぎ目、通気孔、そのほかのシャーシの開口部を通じた放射やケーブルを介した伝導性放射やヒートシンク、それ以外のコンポーネントとの結合、光部品、ディスプレイ、LED、そのほかシャーシに取り付けられた部品に固有の意図しない導波管などがその対象となる。


結合のタイプによるEMCの影響

  継ぎ目の構成について設計トレードオフを実行するためには、簡単かつすばやく動作する筐体モデルを使用する。図2は重ね合わせによる筐体の継ぎ目と、密着させた継ぎ目の双方からの放射を評価した結果を示している。相対的なシールドレベルを比較することにより、技術者は筐体のためのEMCの予算と特定の構成の設計を実装する費用に基づいて、決定できるようになる。内部コンポーネントをシミュレーションに追加しても、シミュレーション時間にはほんのわずかな影響しか与えないので、設計者は実際の環境、例えばスロット共振、空洞モードおよび内部構造の相互作用間の結合などによる継ぎ目のシールド効果について簡単に評価できる。スロット漏えいに対する設計の経験則では、これらの要因を明らかにしておらず、費用的に過剰な設計あるいは過小な設計につながりかねない。
 EMCシミュレーションの代表的なアプリケーションは、通気パネルのシールド評価だ。EMCの漏えいに関する通気パネルの規則はあるが、EMCシミュレーションでは、熱や費用の制約を考慮した上で、例えば大きな穴の開いた連続したパネルや導波管アレイなどを用いた風変わりな構成でも正確に予測できる。図3に示す適用例は、丸い穴と四角い穴という形状と厚さの異なるパネルにおける、シールド効果を示している。左は厚さ、右は穴の形状の違いによるものだ。


ヒートシンクからの放射を評価する

 図4は、EMCシミュレーション適用例としてヒートシンクからの放射を試験したものだ。この簡単なモデルでは、ヒートシンク直下の広帯域の信号源がヒートシンクを励磁している。これは、ICとそれに接合しているヒートシンクとの電磁結合を表しており、グラフは、3種類の構成の違いによる放射電力のスペクトラムを示している。この放射レベルは、形状や周波数に明らかに依存していることが分かる。接地された小型のヒートシンクでは、低い周波数で改善効果が見られるが、周波数が中位になると放射が増大する。


ケーブル結合問題を解決する

 図5は、EMCシミュレーションを使って、システムレベルでのケーブル結合の試験を行った結果を示したものだ。幾何学的な配置は19インチラック内にある3台のネットワークハブで構成されている。4本のワイヤーのリボンケーブルが、上段と下段のハブ内のプリント基板と中央のハブを接続している。このモデルでは中央のハブにのみ、EMCの発生源がある。EMCシミュレーションは、中央のハブから上段ハブのプリント基板の接続部への流れを計算する。結合電流は600MHzと800MHzに強い共振を示している。この種の問題に対する共通のアプローチは、影響を受けたケーブルにフィルターを追加し、その影響をシミュレーションで測定することだ。下側のグラフは、ローパスフィルターを追加したことで共振周波数での結合電流の振幅は減少したものの、すべて取り除くまでには至らなかったことを示している。これでは根本的な問題の解決ではなく、単なる「応急処置」にすぎない。
 EMCシミュレーションでは、問題の根本原因を見つけ出すため、ケーブル結合の物理的過程を可視化する。600MHzで中央ハブ内部の電界分布を見ると、ケーブルの近くで高い電界レベルを生成している空洞共振を示す電界のホットスポットを特定できる。ハブに金属製のパーティションを追加すると、空洞共振モードが抑制され、結合を除去できる。(図6)
 またEMCシミュレーションでは、熱による設計変更から生じる問題を特定し解決できる。この技術について、本来、エンタープライズ・ストレージ・システム用に開発したデュアルプロセッサー搭載のペンティアムコンピューターで、コントローラー・ノードのモデルに基づく技術を例に考えてみよう。この設計をハードウエアに取り入れると、標準のペンティアムのヒートシンクは、接地面積が同じで、垂直ではなく水平のフィンを備えた背の高いヒートパイプに置き換えられることになる。
 広帯域シミュレーションは、システムの放射電磁波を計算する(図7)。技術者がこの例を見ると、システム内の120MHzの発振信号による放射を遮断することに関心をもつはずだ。と言うのも測定結果は問題があること示しているからだ。広帯域でのレスポンスを計算した後、技術者は後処理の中で間接的な励磁を使い、求めるソース信号へのレスポンスを引き出す。その結果は図のように離散的な高調波となる。放射は、発振周波数120MHzの基本波で約40dB増加している。熱設計では害のない変更でも、EMCの適合性に非常に大きく、かつ驚くほどの影響があることを覚えておこう。
 原因が特定できたら、費用に効果のある選択肢を検討できる。この場合の低費用でかつ優れた解決策は、ヒートパイプの最上部と筐体のふたの間でグラウンド接続を行うことにより、容量性の結合パスを除去することである。ヒートパイプの最上段のフィンに、導電性の接着剤で小片のEMIガスケットをつければ実現する。このように、ふたと接触することでガスケットを圧縮し、電気的なグラウンド接続が形成される。図8に、ヒートパイプを接地した結果を含んだ放射電磁波のグラフを示す。この対策の結果、ベースラインの場合とほとんど同じレベルの放射になり、放射に悪影響を与えることなく熱性能を向上させることができる。
 設計プロセスの早い段階でシミュレーションを使用することにより、主要なEMCの現象を調べ予測できる。そのため、プロトタイプを組み立てる前にEMC要件に基づいた電子製品の設計やシールド効果を最適化できる。最新のシミュレーションツールにより、設計者は実用レベル以上の設計の評価が行える。さらにEMCの観点からも、過去には不可能だったレベルで製品の試作・最適化が行える。また、EMCを理由とする設計変更は熱管理と同様、ほかの設計問題に影響を与えることが多いので、EMC設計を分離して行えないということも覚えておきたい。設計者は、EMCシミュレーションツールにより、EMCをほかの重要な制約とともに設計時に考慮できるようになる。そしてシステム全体の費用と性能を最適化できる。その意義は大きい。

用語解説 / 会社情報
Fred German*
Fred German氏は、英Flomerics社のEMC製品マネジャーで、エレクトロニクス製品のための統合設計環境の一部およびEMC設計を容易にする電磁シミュレーション・ソフトウエアの定義と開発を担当している。米Auburn大学(アラバマ州)で電気工学の博士号を取得。トライアスリートで熱心な読書家、熱狂的なアマチュア無線家でもある。
▲本文へ戻る
【EMC】
Electromagnetic Compatibility
▲本文へ戻る
*1)参考文献
Li, K, et al, "FD-TD Analysis of Electromagnetic Radiation from Modules-on-Backplane Configurations", IEEE transactions on EMC, August 1995.
▲本文へ戻る
雑誌無償購読申込み ニュースレター登録 この記事に対する感想/ご意見
Reed Electronics Group
Electronic BUSINESS Japan | Design News Japan | Semiconductor INTERNATIONAL | DETAIL JAPAN
EDN Japanについて | 広告掲載について | サイトマップ | お問合せ
 Copyright (C) 2000-2007 Reed Business Information Japan K.K. 
個人情報に関する方針 | 著作権・リンクについて | 会社情報