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2005年1月号
技術の競演、イメージセンサー

デジタルカメラやビデオカメラに使うイメージセンサーの目まぐるしい機能・性能の向上が続いている。急速に進化する高画質化やセンサーの小型化により、CCDとCMOSの主導権争いが活発化してきた。果たして勝利するのはどちらの技術なのか。また、これから新たな技術革新は生まれてくるのだろうか。イメージセンサーの現状を探る。

Brian Dipert
 町の写真現像ラボが次々と廃業している。筆者の近所の写真ラボもついに店じまいしたため、中判フィルムが入手しにくくなった。昨年デジタルカメラに転向したカメラマンから、数十本のフィルムを譲り受けて、冷蔵庫に入れておいたのだが、それを使い切った後は、通信販売で取り寄せるしかなさそうだ。35mmプロ仕様のフィルムについても、近所では手に入らなくなったが、昨年夏にデジタル一眼レフカメラを購入したので、もうあえて入手するつもりはない。もはや銀塩フィルムで写真を撮る時代ではなくなっているのだ。


フィルムカメラを駆逐するデジカメ

 従来のフィルムカメラ市場が、デジタルカメラに駆逐されようとしている。つい先日、私の電子メールにキヤノンの「EOS Digital Rebel」という入門レベルのデジタル一眼レフカメラの広告が届いた。これは18〜55mmの「EF-Sズームレンズ」を装着したキヤノンの中級デジタル一眼レフカメラを、850米ドル以下で購入することができるという優れものである。フル装備の300万画素デジタルカメラは200米ドル、入門レベルのデジタルカメラは100米ドル以下だ。リッツカメラ(米国のカメラの安売りチェーン店)のLCD付き単用途デジタルカメラは10米ドルと低価格で買うことができる。今は、CIF*およびVGA*解像度のカメラ付き携帯電話機が広く普及している時代だ。韓国Samsung社は最近300万画素のカメラ搭載機を市場投入している。500万画素のバージョンも今年末に発表する予定。デジタルビデオカメラも高品質な数百万画素の静止画撮影能力を備えるようになってきた。
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 多くの専門家たちは、従来のアナログ写真からデジタル写真への転換に長い間否定的だった。しかし、その転換点をとうに過ぎた今では、システムおよびイメージセンサーのメーカーは、DSPや不揮発性メモリーのような、ほかの撮像用部品のサプライヤーと共に利益を上げている。だがその雲行きも怪しくなってきた。
 米Conexant Systems社、米Freescale Semi-conductor社、韓国Hynix Semiconductor社、米Intel社、および米National Semiconductor社といった有名ブランドを含む多くのセンサーメーカーが事業売却や事業撤退を続けている。革新的な技術改良をせずに単純に解像度を高めるだけでは生き残れず、余儀なく撤退することになってしまったのだ。さらにデジタルカメラだけでなく、多機能電話機、PDAおよびビデオカメラが旧型のフィルムカメラを脅かす要因となっている。


CCDとの技術の差を縮めるCMOS

 半導体業界では、10年以上基礎的な技術開発を続けても、革新的な製品に結び付かないことがよくある。1997年後半に米EDN誌はイメージセンサーを取り上げているが、そこではセンサーテクノロジーの解説に加えて、1990年代後半のCMOSセンサーが、CCDイメージセンサーと比較して低品質の画像しか提供できなかった理由を詳しく述べている。だが、この品質の偏差が、何年かたち変化してきた。着実に高まる産業界の期待から、CMOSセンサーテクノロジーの改善は進められ、CMOSセンサーとCCDセンサー間のギャップは、定量化可能な品質尺度、例えば感度、ダイナミックレンジ、SN比、量子化効率および画素均一性など、広範囲にわたって狭まってきている(図1)。CMOSセンサーのサプライヤーは、CCD並みの性能であることを長年にわたって主張してきているが、それが正しいことは市場が証明している。例えば、キヤノンは内製したCMOS撮像素子を搭載した解像度、価格およびセンサーサイズが異なる一連のデジタル一眼レフカメラを開発した。また、米Kodak社が現在、自社のCMOSセンサーではなく米Cypress Semiconductor社のCMOSセンサーを使用した、ハイエンドのプロ仕様1400万画素デジタル一眼レフカメラを製品化したのも見逃せない。


CCDとCMOSセンサーの比較

 1990年代後半、当時のアナリストは、CMOSセンサーはCCDセンサーをたちまちのうちに陳腐化させるだろうと予想していた。しかし、両者はいまだ共存し、この状態は当分続くとみられている。その理由は、技術面に加え、ビジネス面の要素が関係している。これまでいわれていたCCDセンサーに対するCMOSセンサーのコスト有利性が疑わしくなってきたのだ。その名前が意味するのとは異なり、CMOSセンサーは標準のCMOSプロセスを使用しているわけではない。例えば、通常のCMOS素子がラッチアップ問題を緩和するのに使われる浅いエピタキシャル層の堆積ステップは、フォトダイオードに対する長波長帯(赤)の光伝達を阻止してしまう。また、高集積、短ゲートの通常のCMOS素子を形成する浅い高濃度接合も、緑色の光に対する感度を下げ、大きな暗電流を発生させる。そのため、CMOSセンサーでは用いられない。
 コストがかかるマイクロレンズの集積化工程は、CCDセンサーとCMOSセンサーの両方に共通しており、センサーの前にアンチ・エイリアシング・ブラーフィルター(blur filter)*1)を置く必要性についても同様だ。CCDは、メーカーが最初に半導体メモリーへの応用を考えた1970年代初めから約30年の歴史を持ち、現在も、シャープやソニーのようなメーカーが、今後も継続した利益を生み出すと期待する強力ビジネスである。
 CCDの優れたコスト効率はさておき、聞くところによれば、日本のCCDサプライヤーはCMOSセンサーの代わりにCCDセンサーを採用するように、他社のシステムパートナーと共に、自社のカメラおよび携帯電話機部門に大きな圧力をかけているらしい。
 ベンダーは、「CMOSセンサーの方がCCDセンサーよりバッテリーを長持ちさせる」というキャッチフレーズをよく使う。確かに正しい一面もあるが、バッテリー寿命が長いかどうかはデバイス単体で決まるのではなく、より高レベルで全体的な要素が組み合わされた結果で決まる。CMOSセンサー自体は、CCDセンサーより著しく消費電力が少ないというわけではない。CMOSセンサーは、CCDセンサーで必要なアナログプロセッサー、複雑なバイアスの処理、クロッキングおよびA-D変換のステップなどを必要としないために、システム全体として消費電力が少なくなっているのである。
 例えば、米NuCore Technology社の「SiP-1280デジタルイメージ・プロセッサー」を用いれば、CMOSセンサーを使ったカメラを構成することができる。ただしCCDセンサーを用いる場合は、NuCore Technology社の「NDX-1260アナログフロントエンド・チップ」も使用する必要がある。CMOSセンサーの比較的高い集積化能力により、ボード面積の縮小や、部品コストの低減といった副次的効果も得られる。
 そのほかの高電流カメラサブシステムの消費電力は、CMOS対CCDセンサーの消費電力比較をさらに複雑なものとしている。例えば、カメラに光学的ビューファインダーを付ければ、センサーを使用する時間の割合を小さくすることができる。しかし、電子的なファインダーまたは液晶ディスプレイを選ぶとすれば、センサーはより電力を消費する。また、ユーザーが撮った写真を、液晶ディスプレイを使って何度も確認する場合、液晶ディスプレイの消費電力はセンサーの消費電力を大きく上回るようになる。そのほかの要因として、設計・開発者は一般にCMOSセンサーの方がCCDよりも設計しやすく、多機能化が容易だと考えている。CMOSデバイスは、画素情報を抽出するための複雑なクロックが不要であり、複数の非標準バイアス電源を使用する必要もない。システムはメモリーのように任意の画素データにアクセスすることが可能であり、低解像度の液晶ディスプレイ上で、画像をプレビューするためのサブサンプリングを、より簡単な方法で実現することができる。それにより、複数位置へのウインドウ表示や、デジタルズーム機能を持たせることが容易になる。また、CCDセンサーとCMOSセンサーは、どちらもミラー撮像、画像の90度および180度回転およびインターレースとプログレッシブ・スキャン出力の切り替えなどの機能を、容易に実現することができる(高品質なスチル画像の撮影もサポートするビデオカメラではプログレッシブスキャン出力の切り替えが必要である)。


ムーアの法則に従わない

 スタティックな電力消費が、厄介な問題として取りざたされている。つい最近まで、ほとんどの半導体製品はムーアの法則の副次的効果であるコスト低減、速度向上、および電源電圧の低減などのメリットを大いに享受してきた。だがCCDセンサーとCMOSセンサーは、どちらもムーアの法則とは別の法則で進歩している。基本的には、イメージセンサー内のフォトダイオードやフォトキャパシターは、フォトンの衝突とそれにより発生する電子・正孔対の量を検出する。画素あたりの集光面積が小さくなればなるほど、光検出感度は小さくなる。メーカーはコスト低減のためにセンサーチップのサイズをできるだけ縮小し、センサーにできるだけ多くの画素を詰め込む。そして高機能化のために、画素ごとのオンチップ・オーバーヘッドを増加させる努力を続けてきた。オーバーヘッド回路の増加は、画素の「フィルファクター(Fill Factor)」、つまり各画素の面積に対する有効集光面積の割合を小さくする。
 フィルファクターの減少による本質的な光検出感度の低下は、ある程度まで画像処理技術の工夫で補ってきた。米Foveon社の副社長Eric Zarakov氏は「計算してみればよい」と語る。
 日本のカメラレンズ専業メーカーであるシグマが発売しているデジタル一眼レフカメラ「SD10」で使用されているチップサイズが20.7mm×13.8mmのFoveon社「F7X3-C 9110」センサーと、米Polaroid社が発表した簡易型カメラ「x530」で使用されている、チップサイズが7.1mm×5.3mmのセンサー「FO18-50-F19」を比較してみよう。それぞれ3つの光検知器を含む画素を340万個搭載したF7X3-C9110センサーの画素サイズは9.12μm×9.12μmであり、フィルファクターは67%となる。これに対して150万個の画素を搭載したFO18-50-F19センサーの場合、画素サイズは5μm×5μmとなり、フィルファクターは50%となっている。有効集光面積は前者が約55μm2、後者が約12.5μm2となりFO18-50-F19がF7X3-C9110のわずか4分の1と小さい。現在の最先端CCDセンサーの画素ピッチは約2.5μm、また同じく最先端CMOSセンサーの画素ピッチは、約3.2μmと産業界全体の傾向はFoveon社独自のセル縮小のアプローチとは異なり、依然として単純な小型化に向かっている。この画素サイズ縮小の傾向は、価格と解像度規格を昔からの銀塩フィルムカメラのISO-ASA*規格と、さまざまなセンサーサイズで同等のものにしようという努力の表れである。画像処理が複雑化すればするほど、ショットとショット間の時間的遅れが大きくなり、バッテリー電流の消費も大きくなる(画像処理が複雑化すればするほどフレーム処理速度が低下するビデオの動画処理の場合と同様のアナロジー)。SD10の場合、カメラはイメージセンサーからの生情報であるロー・フォーマットファイル(raw format file)のみを出力し、画像処理の大部分はパソコン側で行うことになる。一方、x530の場合は一般にカメラ内ですべての画像処理が行われている。


画像処理における対策

 画像処理の作業は、測定した信号のみを処理する場合は比較的単純である。しかしあいにく現実の状況では、多かれ少なかれ必ず雑音が存在する。光検知器それ自体が、1つの顕著な雑音発生源でもある。
 光検知器は画素に蓄積された電荷の量を測定するが、その電荷が電子・フォトンの衝突で発生したものか、熱的効果によるもの、つまり暗電流を生成する雑音電荷なのかを、区別することはできない。熱雑音を抑えるために長時間露出を行う天体写真撮影用のカスタム設計カメラや、そのほかの特殊なアプリケーション用カメラでは、よく低温度で動作させるために冷却サブシステムが使用されている。光検知器では増幅器によって振幅を増強するため、その出力は信号と同時に雑音も増えている。アンプのCCDおよびCMOSセンサーのテクノロジーが成熟するに従い、メーカーは雑音低減のために、より多くの改良努力が要求されるようになった。増幅器を用いてアナログ的に信号を増強するにしても、A-D変換器の後でデジタル的に増強するにしても、雑音も増幅されるのは避けられない。画素サイズの縮小が進み、信号レベルが小さくなるに従い、画素およびセンサーのサイズにも限界が見えてくるだろう。
 この限界を少しでも遅らせるために、できるだけ多くの光を検知器に入射させるように画素ごとにマイクロレンズを配置するという方法をとるセンサーメーカーも出始めている。例えば、ソニーは最新の8μmピッチのCCDセンサーでDIL*というレンズを使用している(図2(a))。だがマイクロレンズ方式をとるか、別の方式をとるかの判断は微妙だ。マイクロレンズはセンサーコストをかなり押し上げるからである。また、マイクロレンズは光が隣接した画素に入って干渉を起こすことがないように、入射経路を正しく設定するための光学的設計が難しい。ベイヤーフィルター(発明者であるKodak社のBryce Bayer博士の名前が付けられている)またはそのほかのマトリクス・フィルター・パターンを含む光経路の最適設計がうまく行われなければ、正確な輝度測定が不可能になる。もともと光経路の最適設計が行われていない安価なレンズを使用すれば、正確なカラーの再現は望むべくもない。
 2002年に米Photobit社の買収を発表した米Micron Technology社は、マイクロレンズが発生する光路のずれを補う低背高、つまり奥行きが浅い光検知器を開発している(図2(b))。別の方法として、画素サイズ可変のFoveon社の製品では、センサーが複数の近接した画素サイトの光を自動的に合計することが可能だ。これによって解像度を犠牲にして必要な光感度を確保するという方法もある。場合によっては、可変画素サイズVPS*のような手法は、コスト高の原因となるマイクロレンズの必要性をなくすことも可能となる。そのため多くのセンサーメーカーは、要求に応じてレンズなしのセンサーを供給している。例えば、シグマの第一世代のデジタル一眼レフカメラ「SD9」で使用されているFoveon社のイメージセンサーは、マイクロレンズを使用していない。センサーの高解像度化が進むにつれ、人間の目には区別がつかなくなってきた。そのため、従来はアンダーサンプリングに起因するモアレパターンや、斜め方向のエッジに現れる、階段状のギザギザのパターンを始めとした画像欠陥を補正するために、必要とされていたアンチ・エイリアシング・ブラーフィルターを省略することができ、コストダウンが可能になってくるだろう。


急速に進むシャッターの品質改善

 いろいろな技術的努力によって、イメージセンサーの改良はさらに進んでおり、解像度以外の改善も始まっている。さまざまなアプリケーションに適合した機能・性能の改善要求がイメージセンサーと装置メーカーを常に活気づけている(これは、最近CPUメーカーが、クロック速度以外の要素に、改善努力を向け始めている状況に似ている)。
 電子シャッターとメカニカル・シャッターのトレードオフは、これらのアプリケーションに適合させるための改良努力の好例だ。一般的なフルフレームCCDセンサーは、センサーに光を当てると次第に電子が蓄積して、センサーが完全なリセット状態に戻らなくなることがある。この場合、露光したくないときはいつでも光を遮断できるようにメカニカルなシャッターが不可欠だ。一方、コスト低減やカメラ付き携帯電話機のモジュールの厚みを抑えるためにシャッターを省略する必要がある場合もある。電子シャッターの手法には2通りある。1つはフレーム転送CCD方式だが、あまり一般的とはいえない。この手法は露光を行う前に集められた光サイトの電荷を転送する分離された光シールド・ストレージ・アレイを使用する。チップ面積を必要とし、コスト増となる。高歩留まりでの製造も難しく、アレイ間転送の遅延のために、実用性が制約される欠点がある。
 もう1つは、光検知器間で蓄積電荷を数μsで転送できる予備の光シールド・ストレージ素子を光検知器の各行に沿って配置した、より一般的なインターラインCCD方式である。こちらは直前の露光で画素にたまった電荷をセンサーから除去するのと並行し、次の露光を開始させることが可能だ。CMOSセンサーの場合、メモリーベースのアプローチとA-D変換器を置いて、各画素位置でフィルファクターとのトレードオフを図るというアクティブ画素の手法を使用することができる。その例として、Micron Technology社の「TrueSnap」と米Pixim社の「Digital Pixel System」の2つがある。逆に極力複雑性を取り除いた手法が、すべての画像処理機能を外部に任せるパッシブ画素CMOSセンサーである。両者の中間の複雑さを備えた例が、センサーからのイメージデータを1回に1行ずつ取り込み転送するMicron Technology社の「ERS(Electronic Rolling Shutter)」である。この方法は外部シャッターの使用を要求してはいないが、外部シャッターを使用しないと、動きの速い物体の場合にぼやけや、ゆがみが発生する可能性がある。概念的には、インターレース・タイプのセンサーを使ったビデオカメラが表示する動きの不自然さと同様であるが、程度はもっとひどいこともある。


画像の明暗を明確に表現する

 米SMaL Camera Technologies社の「オートブライト」技術は、一般的なセンサーの輝度に対する信号強度の応答特性を、直線から人間の目の特性に合わせて、対数的応答曲線に変えるものである。これは撮影する画像の明るい部分と、暗い部分のできるだけ忠実な画像を得るように、必要に応じて応答曲線を自動補正する(図3(a))。このメーカーはセンサーだけでなく、センサーを搭載した撮像モジュールや、カメラのデザインに直ちに適用できる製品までを一貫して手掛けている。その点で撮像用ビルディング・ブロックのサプライヤーとしてユニークな存在となっている。
 富士フイルムの「スーパーCCDハニカム」は、センサー表面の利用効率を一段と高めることができるハニカム型の画素形状だ。この技術の第4世代は、画素ごとに2つの光検知器を持っており、画像の暗い部分の表現を、すべてを完全な黒または雑音による汚いグレーに平均化するのではなく、忠実に表現することが可能である。富士フイルムの説明によれば、2wayのスピーカーにおけるウーファーのようにメインの光検知器は暗い部分から中間調の部分の撮像を受け持つ。また、第二の光検知器はツイーターのように比較的低感度レベルでの光を記録するために使用され、明るい部分の忠実な撮像を可能にしている(図3(b))。だが富士フイルムはスーパーCCDハニカムの「クロスオーバー・ネットワーク」の特性については詳細を発表していない。


色のコントラストを鮮明にする

 Foveon社の「FoveonX3」は、スーパーCCDハニカムの画素に複数光検知器を使用するという概念を拡張し、平面的アプローチから垂直方向のアプローチをとっている。さらに、単一色の処理から複数色の処理へと発展させた。この技術を理解するには、まず基本に戻って考えるとよい(図3(c))。イメージセンサーは、それ自身では色の識別を行う能力はない。フォトンが十分なエネルギー、つまり光のスペクトラムの一部に対してセンサーが感ずることができるエネルギーを持っていれば、フォトンが光検知器に入射して電子・正孔対を発生し、その電子が蓄積される。センサーに光の特定の波長または波長範囲を検出させるためには、その波長か、もしくは波長領域でセンサーを照射させるためのフィルターを外部に追加しなければならない。
 その解決法は、第一世代のカラーテレビや、シングルホイールDLP(Digital Light Processor)が採用しているテクニックに似ている。センサーの前に高速で回転するRGB(レッド、グリーン、ブルー)またはCMY(シアン、マゼンダ、イエロー)の3原色の円板を置いて3つの色に対応する波長信号をシーケンシャルに取り込むというものである。
 また、最近のDLPおよびインクジェット・プリンターのように、3つ以上の色フィルターを載せた回転板を使用することによって、色の再現性を高めることも可能である。サイズ、重量、消費電力、およびそのほかの問題を考慮すれば、このようなシステムは静止物体の撮影にしか向いていないことは明らかである。動く物体を撮影する場合は、複数カラー、複数露光を行っている間に物体が移動してしまい、画像品質は著しく劣化してしまうからである。
 光のスペクトラムをレッド、グリーン、ブルーに分離して3つの光を3つのセンサーに出力するために、回転板の代わりにプリズムを使用することもできる。ハイエンドのDLPやプロ仕様のデジタルビデオカメラは、この手法を採用している。だがやはり、サイズ、重量、および消費電力のトレードオフが要求され、本質的にはシングルセンサーのものよりもはるかに高価になることは避けられない。センサー自体のコストに加えて、3つのセンサーという構成は大きなメモリーと限られた時間内に大量のデータを処理するために、高いDSP処理能力を必要とする問題もある。
 最も一般的なのは、センサーの上にカラーフィルターアレイを取り付けるという第三の方法である。ベイヤー配列はRGBの3原色のセットを採用している。人間の視覚がグリーンの光に対して感度が高いため、忠実なカラー再現のためには、可視スペクトラムの中で緑色部分が最も重要なのだ。そのことからブルーとレッドに対してグリーンのフィルターを2倍多く設けている。カラー情報を取り込んだ後、グリーンでフィルターされた各画素に対して、ブルーとレッドでフィルターされた画素に対する可視スペクトラムの残りと合わせて、レッドとブルーのデータの近似値が生成される。相補的に使用されるCMYG(シアン、マゼンダ、イエロー、グリーン)のフィルターパターンもまれに使用されることがあるが、最終的にスクリーン表示や印刷のためにRGBに変換しなければならない。日本ビクターのビデオカメラは、クリア、グリーン、シアン、イエローの各フィルターの補色および原色マトリクスのハイブリッド構成を採用している。また、ソニーの800万画素CCDはRGBE(RGBとエメラルド)のカラーフィルターアレイを使用している。
 Foveon社のX3 CMOSセンサーは、カラー情報の取り込みおよび変換方法として、グリーンのスペクトラムの精度を高めたことで、特に注目すべき膜厚の制御による代替手法を採用している。各画素位置で、シリコン基板内部の異なった深さに3つの光検知器が構成されている。つまり、最も浅いところにブルー、中間位置にグリーン、そして最も深い位置にレッドの感度を持つ光検知器が埋め込まれている。最も多いX3に対する不満は、シリコン内部への光の浸透がハードカットオフではなく連続的であること、つまりブルーのスペクトラム成分の光検出層がグリーンやレッドの光にも反応し、結果として少数のブルーおよびグリーンのフォトンが浸透してシリコン格子を抜け、レッドスペクトラム成分を検出するフォトディテクタにも影響を与える可能性があることである。
 Foveon社のZarakov氏はこれに異議を唱えていない。だが、マトリクス・フィルターアレイで生ずる状況と理論的には変わらないと語っている。X3の場合に各フィルター層の応答曲線の形が異なっていても完全にほかの光を遮断できない。同様に、マトリクス・フィルターアレイでも、各フィルターはそれが意図するスペクトラム以外の光を完全にはブロックできない。だが実用的観点から、オーバーラップによる影響は、これに引き続く画像処理のステップで簡単に補償することができるとも述べている。
 現在Foveon社は、スーパーCCDハニカムを持つ富士フイルムと同調し、センサーの仕様をセンサーが持つ画素用地の数ではなく、光検知器の数をベースとして規定している。この手法はセンサーの解像度の定義に影響し、一般的なフィルター・マトリクスベースの光センサーとの比較を複雑なものにしている。これはFoveon社の手法が誤解を招く恐れがある一連の理由と考えられるが、Foveon社も同様に、自社の主張は筋が通っているとする一連の理由を持っている。画素ごとに3色の光検知器を持つセンサーは、同じ程度の画素用地数を持つマトリクス・フィルター型のセンサーが提供する解像度よりも、優れた解像度で撮像できるという見た目の結果は納得できるものである。また、センサーに鋭角に入射する光によって生成されるカラーエイリアシングの不正確さは、マトリクス・フィルターアレイよりもX3の方が、問題が小さいということも同様である。また、Foveon社のX3センサーは、カラーフィルターアレイを持つ一般的なCMOSセンサーよりも製造が難しかったり、コスト高になることはなくなったと主張する。この点における同社の最大のハードルは、テクニカルな問題ではない。米国のシングルソースであり、シングルファウンドリーのセンサーテクノロジーに対して、顧客がどれだけの関心を払ってくれるかというビジネス上の挑戦にあるとしている。


センサーの未来を明るくする技術

 カメラの手ぶれ防止は歴史的に、レンズ系に対するメカニカルなアプローチ(設計が難解でコスト高な光学系を購入する必要がある)か、電子的な画像安定化システム(動き検出器を必要とし、オーバーサイズのイメージセンサーと組み合わせて使用するときにのみまずまずの結果を得ることができる)のいずれかをとってきた。その中でコニカミノルタは、最新のカメラの開発において手ぶれ問題を解決するのにユニークな挑戦を行っている。同社は、コスト高を招くオーバーサイズのセンサーの代わりに、ピエゾ素子を用いてトランスデューサからのフィードバックに同期してセンサーの位置を移動させる可動ブラケット上にセンサーを固定している。
 オリンパスの「E-1」カメラもセンサーを移動させるシステムを採用しているが、狙いは別の問題を解決することにある。同社が発表したカメラの「スーパーソニックウェーブ・フィルター」という覚えやすい名前は、可動の透明な膜がちりから画像を保護していることにちなんでいる。この膜は超音波振動子に結合しており、カメラの電源投入サイクルの間に振動してちりを振るい落とし、粘着テープが落ちたちりを捕らえる仕組みだ。
 シグマのカメラ「SD10」は、レンズの焦点面の外側に置かれて画像品質をほとんど損なうことのない、透明でパッシブなダストシールド(ちり除け)を用いるという単純な方法でFoveon社のセンサーを保護している。
 長い間伝えられてきたCMOSセンサーの利点は、増加の一途をたどる通常のロジック回路やメモリー回路をセンサーと同じチップ上に集積化することにより、高機能化が達成できるということであった。複数経路の雑音検出および除去、欠陥画素の補償、カラーの補完、自動ホワイトバランス、自動露光計算、および画像の拡大と縮小などを含む、ほとんどの画像処理の作業は現在では別のチップ上で行われるようになっている。しかし、最近発表された多くの学術論文は、これらの機能を処理するためにセンサー上で画素ごとにプロセッサーを配置することの実現可能性を議論している。また、いくつかのメーカーも、このような概念をベースとしたテストチップを試作している。将来、このようなチップの実用化に向けて、資金を援助するところも必ず現れるだろう。

用語解説 / 会社情報
【CIF】
Common Intermediate Format 352×288画素、携帯電話機用ディスプレイの解像度の標準仕様
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【VGA】
Video Graphics Array
640×480画素
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*1)
日本ではローパスフィルターと呼んでいる。
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【ASA】
American Standards Association
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【DIL】
Double Internal Lens
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【VPS】
Variable Pixel Size
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