今回の話は、私が米アリゾナ州ツーソン市の米レイセオン社を訪問したときの出来事である。私の講義の後、聴講者の1人でデジタル技術者のホセ・ガティーレ氏が私のところに来て、私がなぜ彼のプリント基板のすべてのグラウンド層を、ビア・ホールを敷き詰めて縫い合わせるように接続するように指示したのか知りたいと言ってきた。同氏は、ビアで縫い合わせるように接続することが、何の役に立つのか直感的に理解できるような簡単な答えを、今後の仕事のために知りたがっていたのだ。
私はメモ用紙に、コネクターを取り付けた2枚のプリント基板の図を描いた(図1)。同氏はこの簡単な図で、2枚のプリント基板のグラウンド面を相互に接続する必要があることを理解し、クロストークを低減するために多数のグラウンド端子を設けていることを知った。彼はまた、過去の経験から、信号が高速化すればするほど、多数のグラウンド端子が必要なことも理解したのだ。
次に、メモ用紙をコネクターの接続が垂直になるように折り曲げ、コの字型にした(図2)。コの字型の上下の水平部分が、積層構造のプリント基板の上層と下層を表しているわけだ。彼は折り曲げた紙を見ると目を輝かせた。私はこの垂直接続がビアを表すことを説明した。つまり多層構成では、ビアはまさに図1のコネクター端子としての働きをしているのだ。違いは大きさが小さくなったことだけである。ビアは非常に小さいので、それらに伴なうクロストークの影響は、超高周波(すなわち高速の立ち上がり時間と下降時間)でのみ現れるが、なお注意を要する。
定量的には、3D(3次元)のスケーリング・ルールがコネクターとビアの振る舞いを決める。無損失の回路の場合には、3次元方向すべてについて物理的サイズを1/10に縮小すると、速度が10倍になるだけで、元の回路と厳密に同じ動作をする新しい回路が得られるのだ。
例えば、端子の長さが通常のユーロ・コネクター寸法の0.6インチ(約15mm)のコネクターで、立ち上がり/降下時間が5nsの信号を伝送する場合には、クロストークを抑制するのに必要な端子数の信号対グラウンド比はおよそ10対1となる。この寸法を1/10に縮小して、ビアの長さを0.063インチ(約1.6mm)にし、10倍の速度(500psの立ち上がり/下降時間)で動作するようにする場合も、ビアのクロストーク量を抑制するために必要なビア数の信号対グラウンド比は10対1と、やはり同じになる。
ホセ氏はまったく驚いたと口を開けてにっこり笑った。相似関係にある事象を例に用いることで、最初は難しいと思われた新しい課題を、初めて体験する技術者に対して身近で直感的な形に表現することができた。それは私にとって簡単には忘れられない講義であった。
(ハワード・ジョンソン*1)) |