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designideas
2004年12月号
広帯域シングル・エンド信号を差動信号に変換

ランダール・カーバー 米アナログ・デバイセズ社
Randall Carver Analog Devices, Inc.
 単一電源で動作する差動入力のA-D変換器に、シングル・エンドの信号を直流(DC)結合するのは難しい。シングル・エンド信号を差動信号に変換するのと同時に、信号の電圧振幅の中央値を接地電位から電源電圧の半分(VS/2)へシフトする必要がある。また、偶数次の高調波とコモン・モード雑音を打ち消すように、A-D変換器の差動入力同士をバランスさせなければならない。
 さらにこの信号変換を、直流のバイアス電流が信号源に流れ込んでしまわないように実行することが要求される場合もある。12〜14ビット分解能と高いダイナミック・レンジを備えるA-D変換器で広帯域の信号を処理する場合、信号変換のための回路はかなり複雑になってしまう。広帯域アンプを利用すればこうした課題はほぼすべて解決できる。ただし、広帯域アンプは通常、交流(AC)結合で用いる必要がある。
 そこで、信号変換回路に直流帰還ループを外付けすることでこの課題を解決する方法を紹介する。信号通過帯域の低周波数側を直流まで広げられるという利点もある。基本的な原理は簡単なレベル・シフト回路である(図1)。電源電圧(VS)と信号源の間に同じ値の抵抗を2個直列に接続することで、信号の電圧振幅を1/2に減衰させるとともに、VS/2の直流バイアス電圧を重畳する。レベル・シフト後の信号は、2個の直列抵抗の接点(センター・タップ)からバッファーを介して取り出す。このバッファーの出力信号は、単一電源VSで動作する回路で処理できる。図1では信号源に直流バイアス電流が流れ込まないようにするため、信号源と負電源電圧(−VS)の間に、前述の抵抗と同じ値の抵抗を2個直列に接続して挿入した。
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 図2は、図1の考え方を応用した回路である。正負2つの電源電圧(±VS)を高精度電源の±VDCで置き換えた。VDCと−VDCは、接地電位を中心とした電位差が常に等しくなるように、一方の電圧が変化するともう一方の電圧も変化する。また図2では、レベル・シフト用の4個の抵抗を2組用意して差動信号に対応した。
 VDCと−VDCは次のようにして生成する。すなわち、差動アンプIC(IC1)の正負2つの出力を同じ値の抵抗を介してオペアンプIC(IC2B)に入力し、コモン・モード・レベルを算出する。さらに同じオペアンプICを利用して、コモン・モード・レベルからA-D変換器の基準電圧出力(3番ピン)である2.4Vを差し引き、両者の差分を求める。この差分を増幅し、フィルタリングしてVDCとする。さらにオペアンプICの残りの1回路(IC2A)でこれを反転させ、−VDCを作り出す。
 直流帰還ループの利得は約1040である。従ってIC1の差動出力におけるコモン・モード・レベルを、A-D変換器の基準電圧の1/1040、すなわち2.4V/1040=2.3mVの範囲にまで合わせ込める。直流帰還ループを外付けで用意したため、IC1のコモン・モード・レベル設定用のVOCMピン(10番ピン)に電圧を印加する必要はない。VOCMピンはコンデンサーを介して接地電位に接続し、IC1に搭載された直流帰還パスが機能しないように設定しておけばよい。
 レベル・シフト用の抵抗に240Ωと220Ωを使ったため、分圧比は1.09:1になる。従って±VDCの大きさは±2.4×((1.09+1)/1.09)=±4.6Vに抑えられる。高い同相モード信号除去比(CMRR*)を確保し、さらに信号源への直流バイアス電流の流入を最小限に抑えるため、直流帰還ループの構成部品に高精度の部品を採用した。IC2は±5V電源で±VDCを生成できるように、出力電圧を電源電圧いっぱいまで振れる品種を選んだ。このほかの部品は5V電源で動作する。
 抵抗RGの値によってA-D変換器への入力段回路(フロント・エンド)全体の利得を設定できる。フロント・エンドの利得が0dBのとき、図2の回路の−3dB帯域幅は1GHzを超えるほど広い(図3)。このほか、設定した利得に応じて帰還抵抗RFを調節し、差動出力信号のバランスをとる必要がある。表1に、さまざまな利得に対するRGとRFの代表値を示した。64.9Ωの抵抗は図1の回路の入力インピーダンスを50Ωに整合させるために設けてある。28Ωの抵抗は差動アンプICから見た差動入力のインピーダンスを等しくする役割を果たす。
 シングル・エンド出力の信号源のほか、差動出力の信号源にも対応できる。28Ωの抵抗を64.9Ωの抵抗に置き換え、その64.9Ωの抵抗とレベル・シフト用の2個の240Ω抵抗の接続点に、差動出力信号の負出力側を入力すればよい。この場合、帰還抵抗RFは不要である。
 今回紹介した回路を使えば、差動アンプICの優れたひずみ特性を生かすことができる。このため、12ビットあるいは14ビット分解能のA-D変換器を、ダイナミック・レンジの劣化を最小限に抑えながら駆動することが可能である(図4)

用語解説 / 会社情報
【CMRR】
common mode rejection ratio
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