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2004年12月号
実験室で使える表面実装型部品のリワーク手法

プリント基板の開発段階では、搭載した半導体チップを取り外したり交換したりといった作業、いわゆるリワークが必ず発生する。リワーク専用装置を利用できない実験室のような環境では従来、はんだごてを使ってこのリワークを実施してきた。ところが表面実装型パッケージを採用した半導体部品では、はんだごてによるリワークが難しいことが多い。そこで、ヒート・ガンを使った熱風加熱によるリワーク手法を紹介する。表面実装型部品のリワークを低コストで実現できる。

トム・マシューズ*1) ティモシー・トローニ*2) 米ナショナル セミコンダクター社
Tom Mathews Timothy Toroni National Semiconductor Corp.
 より小さな容積により高度な機能を集積する――こうした小型携帯機器の進化を陰で支える技術の1つに、高密度実装に向けた表面実装型の半導体パッケージがある。例えば小型のチップ・スケール・パッケージ(CSP*)が挙げられよう。CSPに代表される小型パッケージは、携帯電話機やPDA*をはじめとした最新の携帯型機器の実現に大きく寄与している。半導体部品の実装面積を削減することで、同じ面積のプリント基板により多くの機能を搭載できるようにしたからである。
 最先端の半導体パッケージは、プリント基板の実装メーカーにおける製造コストだけでなく、半導体部品メーカーにおけるコストも抑えられるように設計されている。パッケージ・サイズの究極的な限界はシリコン・チップ自体のサイズである。前出のチップ・スケール・パッケージはこの限界にほぼ到達しているといえよう。
 プリント基板の実装を手掛けるほとんどのメーカーは、最先端の半導体パッケージを扱えるような製造ラインを整えている。ところが、電子機器の開発に携わるエンジニアが利用可能な実験室の設備は事情が異なっている。すなわち実験室の設備では、最先端パッケージに封止された半導体部品をプリント基板から取り外したり交換したりする、いわゆる「リワーク」作業は難しい。
 確かに、CSPやLLP*TSSOP*などの最先端パッケージに対応したリワーク専用装置はすでに市販されている。ただしこうした装置の多くは特定用途向けだったり、大型だったり、使いこなすのが難しかったりする。また、価格が3万米ドルかそれ以上と高価な装置もあり、実験室の設備予算では手が届かないことが多い。そこで本稿では、低コストで実現可能な代替手法を紹介する。このリワーク手法を使えば、最先端パッケージの取り外しや交換といった作業を実験室で行える。
 現在、プリント基板上に搭載されている一般的な半導体パッケージには、はんだごてを使った従来のリワーク方法では対応できないものがある(図1)。特にトラブルの原因になりやすいのはラミネートCSPやLLP、およびmicro SMD*パッケージなどである。はんだ接合部がパッケージの裏面にあって、直接目視することも触ることもできないからだ。これに対しTSSOPやSOIC*パッケージは端子がプリント基板の表面に露出している。こうしたパッケージにも、今回紹介するリワーク手法は有効である。

リワークは避けて通れない

 エレクトロニクス業界において、「リワーク」は今や禁句である。製造ラインのマネジャーはこの言葉を聞くとうんざりした顔を見せる。製造ラインにおいてリワークが必要であるということは一般に、その製造プロセスに重大な不具合が存在することを意味しているからだ。開発部門の実験室でも同じである。「リワーク」と聞いて嫌な顔をするエンジニアは多い。現在では最新のシミュレーターを駆使することにより、最初に試作したプリント基板でも完全に動作すると期待されているからである。
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 実際には、どんなに慎重を期した開発プロジェクトであってもある程度のリワークが必要になる。端子数の多いパッケージのリワークは高価格の専用装置に任せることもできよう。ただし練習さえすれば、低コストのリワーク手法で、端子数が多く、端子間間隔の狭い(ファインピッチの)パッケージのはんだ付けが可能である。
 それでは、プリント基板から半導体パッケージを取り外し、もう一度はんだ付けする最も簡単な方法は何だろうか。もし実験室が製造ラインと同じ場所にあるとしたら、製造ラインに装備された高価格のリワーク専用装置を使う方法が有効である。しかし最近は、開発部門の実験室が製造ラインと同じ場所にあることはほとんどない。北米では実際に、製造ラインの多くがアジア地域やメキシコの工場に移管されている。このため製品ライン対応のリワーク装置を実験室用に購入し直す企業もある。はんだペーストのスクリーン印刷や熱風(ホット・エアー)の温度管理、真空チャックによる部品の吸着などの機能や、はんだ付けのために部品の位置決めを光学的に実行する機能を備えたリワーク装置である。確かにこうした装置は製造ラインには不可欠であろう。ただし本当に実験室にも必要なのだろうか。本稿で紹介する手法を使えば、わずか数100米ドルの装置を使って最新の表面実装パッケージのリワークが可能になる。

低コストのリワーク手法

 ここで紹介するリワーク手法は、開発部門の実験室では十分に実用的である。ただし品質を保証する必要がある製品ラインでこの手法を使うことは、半導体メーカーが推奨していない場合があるため注意が必要だ。用意するものは、ヒート・ガンとRMA*(弱活性ロジン)系の液状フラックス(ボトルまたは注射器型容器入り)、細い糸はんだ(直径が0.38mm程度のヤニ入り糸はんだが適当)、フラックス除去剤、ピンセットである。ピンセットは部品を配置したり位置を調整したり、あるいは揺さぶったりするために使う。このほか、これらの道具に熟達するための練習時間をいくらか確保する必要がある。
 最適なヒート・ガンを選ぶことが重要である。市販のヒート・ガンのほとんどは、熱収縮加工(シュリンク)や、塗料のはく離用に設計されている。プリント基板上のリワークを想定すると、こうしたヒート・ガンでは出力される熱量と風量(エア・フロー)が大き過ぎ、また熱風が吹き付ける面積も大き過ぎる。「ウェラー*」製のヒート・ガンは表面実装型パッケージのリワークに適している。主に熱収縮加工に向けた製品であるものの、射出面積が小さい低速のエア・フローを実現しているからである。エア・フローの射出面積が大きいとプリント基板の広範囲を加熱してしまう可能性が高い。また高速のエア・フローはプリント基板に載っている部品を吹き飛ばしてしまうことがある。
 前述の道具に加えて、熱風をプリント基板に当てる時間を計測するためのストップウオッチと、リフロー温度をチェックするのに使う低価格の非接触式赤外線温度計、プリント基板の温度をチェックするための熱電対を用意しておくとよい。ただし、リワークをうまく行うために温度測定が不可欠というわけではない。また、実験室レベルのリワークではリフロー温度を厳密に管理しなくてもよい場合もある。本稿では、温度測定に米プロテック・テスト・アンド・メジャメント社*のデジタル・マルチメーター「506」を使用した。価格は200米ドル程度である*3)。測定範囲が−20〜1200℃のKタイプの熱電対が付属する。
 チャート記録用のソフトウエア・ツールを使えば、時間ごとの温度変化(いわゆる温度プロファイル)をチャートに記録できる。今回はマルチメーターに付属するソフトウエア・ツールを利用した。RS-232Cインターフェースを介してパソコンに測定データを取り込める。このほか米テクトロニクス社*のカーブ・トレーサー「177/D1」を使って、リワーク後の半導体パッケージがプリント基板と電気的に接続されているかどうかの試験を実施した。

基板から部品を取り外す

 はんだごてによるリワークの難しい半導体パッケージが数多く使われる現在でも、多くのエンジニアは愛用のはんだごてをまだ手放せないでいる。はんだごてが有用な道具であることに変わりはない。ただしその重要性は低下しつつある。表面実装型部品のメーカーは熱風加熱(ホット・エアー)を利用したリワークを推奨している。端子数の多い部品を比較的簡単に取り外せるからだ。実際に部品を取り外すときの手順は以下の通りである。
@プリント基板を約2〜3インチ(5〜8cm)の距離からヒート・ガンで加熱する。部品を基板から吹き飛ばしてしまわないように、取り外したい部品の真上から熱を加える。
Aはんだが溶融するまで約40〜60秒待つ。このときヒート・ガンを近づけ過ぎないように注意する。ヒート・ガンを近づけ過ぎるとプリント基板を不均一に加熱してしまうからである。
Bピンセットで部品を持ち上げる。このとき、決して無理に引き上げてはならない。はんだが完全に溶融するまで待つこと。
C部品を取り外したプリント基板のパッドにはんだブリッジができている場合のみ、はんだ吸い取り線(ソルダー・ウィック)でパッドを清掃する。部品を元の場所に搭載し直す際には、パッドに残っている適量のはんだをそのまま利用する。パッドの清掃のためにはんだ吸い取り線を使う場合には、プリント基板上のパターンに過大な熱負荷を与えないように注意する。

部品の取り付けは比較的難しい

 熱風加熱(ホット・エアー)でプリント基板から部品を取り外すことは比較的容易である。部品をプリント基板に取り付ける作業もそれほど難しくはないが、取り外しに比べれば技能と練習が必要になる。熱風加熱を注意深く使用すれば、プリント基板に与える熱負荷を最小限に抑えられる。このため部品の取り外しや交換作業を複数回にわたって実施することが可能だ。いったん部品を取り付けた後、短絡(ショート)や開放(オープン)といった不具合が発生しても、もう一度やり直すことができる。
 図1に示したような表面実装型部品をプリント基板に搭載するときには、必要に応じ、テープを使ってプリント基板を作業テーブルに固定しておく。リワーク作業中にプリント基板がずれないようにするためである。加熱によってプリント基板が熱くなるので、作業テーブルの天板はフォーマイカなどの耐熱性合成樹脂が望ましい。高価な静電気対策マットを敷いてある場合は特に注意してほしい。熱電対を使って温度計測を行う場合には、プリント基板上のリワーク個所の近くに熱電対のプローブをテープで固定する。
 続いてプリント基板上のパッドに少量のはんだめっきを施す(図2)。このとき、先に部品を取り外したときのはんだがパッドに残っている場合には、そのまま残しておく。ただし、はんだブリッジがある場合には、はんだ吸い取り線を使って取り除いておく必要がある。
 次に、プリント基板上のパッドと部品裏面の端子にフラックスを塗布する。フラックスは目で見て確認できる程度に薄く塗っておけば十分である(図3)。パッドの上に部品を載せて、真上から目視で位置を調整しながら、部品を静かに揺すって所定の位置に合わせる(図4)。またこのとき、部品の1番端子が正しい位置にあることを確かめ、搭載方向を間違えないようにする。ほとんどの表面実装型部品は端子同士の間隔が狭い。それでも実験室におけるリワークでは、目視による位置決めで十分に実用に耐えられる。
 部品を取り外す場合と同様に、プリント基板上のリワーク個所を約2〜3インチ(5〜8cm)の距離からヒート・ガンで加熱する。しばらくこの状態を維持し続ける。このときヒート・ガンを近づけ過ぎると、部品を吹き飛ばしてしまう可能性があり、また、はんだ付けのためにも加熱が速過ぎてしまう。部品の真上から熱風を当てれば、部品がプリント基板から吹き飛ばされるのを防止できる。
 およそ40秒後には、融解したはんだに部品が沈み込み始める。溶融したはんだの表面張力と沸騰したフラックスによって、部品が正しく位置決めされる。ただし、ピンセットを使って部品を静かに揺すったりするなど、若干の位置調整が必要な場合もある。
 引き続き熱風を20〜30秒間当て続ける。熱風によって部品が吹き飛ばされてしまう場合には、クリップを折り曲げた小型の押さえ治具を用意して、それを部品にテープで固定すればよい(図5)。ヒート・ガンとリワーク個所の距離を十分に確保しておけば、押さえ治具を使わなくても済むはずだ。このほか、より簡便な方法として、ピンセットで部品を押さえてもよい。
 部品の位置決めが完了したら熱風の射出を止めて、プリント基板をゆっくりと冷ます。また、フラックス除去剤を使って余分なフラックスを取り除く。さらに必要に応じて、電気的な短絡(ショート)や開放(オープン)が発生していないかの試験を実施する。

温度プロファイルの測定も可能

 ここで紹介したリワーク手法は、ストップウオッチを片手にはんだの様子を目視で確認しながら作業を進めれば、実用に十分な信頼性が得られる。また、温度プロファイルをきちんと測定すれば、製造ラインのはんだリフロー炉が採用しているはんだ付けプロセスを忠実に再現できているかどうかを確認することも可能である。ここで「温度プロファイル」とは、はんだ付けを行う際の温度と時間の関係を示したチャートのことである。図6に示した温度プロファイルは、前出のプロテック社製デジタル・マルチメーターに付属しているソフトウエア・ツールと熱電対を使って測定したものだ。
 ヒート・ガンを使用する今回のリワーク手法では、プリント基板上のパッドに直接はんだめっきを施しておくほか、はんだペーストを利用することもできる。注射器型容器(シリンジ)に詰めたはんだペーストを注意深く塗布するか、あるいはマスクを使ってはんだをスクリーン印刷する。リワークのようにプリント基板の一部分に対してのみスクリーン印刷を行う場合は、使い古しのスクリーン・マスクを再利用できる。リワーク対象の部品に対応したはんだパターンをはさみで切り出して形成し、反対にはんだを載せたくない部分はカプトン・テープなどの耐熱性マスキング・テープで覆ってしまえばよい。
 はんだペーストを使用する方法は、パッドに直接はんだを載せる方法よりも手間がかかるものの、リワークの仕上がりは比較的良好になることが多い。ただしはんだペーストは、人体に吸収されやすい微小の鉛粒子を含んだ有害物質である。このためはんだペーストを使用する場合は、取り扱いに十分注意し、メーカーの警告に従うべきだ。ゴム手袋の着用が強く推奨されていることが多い。
 製造ラインの一部では現在、無洗浄フラックスが採用されている。一方、今回のリワーク手法では、RMAタイプのフラックスを使い、フラックス・メーカーの推奨する洗浄を実施することで最良の結果が得られる。リワーク作業を行ったプリント基板は、蒸気洗浄機あるいはスプレー・タイプのフラックス除去剤を用いて洗浄する。フラックス除去剤はフラックスを溶解させて洗い落とすので、プリント基板の下にごみ箱を置いてフラックス除去剤をスプレーすること。余分なフラックスを取り除いておかないと、腐食やデンドライト成長*、あるいはその両方によって、プリント基板に不具合が発生する可能性が高くなってしまう。

リワーク後のプリント基板を試験する

 リワーク作業が成功したかどうかを確認する最も一般的な方法は、プリント基板に電源を供給して、正しく動作するか調べることである。このとき正しく動作しない場合はどうすればよいだろうか。試作段階のプリント基板では、リワーク個所以外の評価が十分に進んでいないために、正しく動作しない原因がリワークした部品にあるかどうかの判断が難しい。そこで、簡単な試験を実施すれば、リワークした部品の各端子の電気的な接続を確かめられる。また、隣接する端子同士がはんだブリッジによって短絡(ショート)していないことも確認可能である。
 こうした試験は、半導体部品のほとんどが静電気放電(ESD*)保護用のダイオードをグラウンド(接地)端子を除く各端子に備えていることを利用する。具体的には、リワークした部品の各端子に対応したプリント基板のパッドをカーブ・トレーサーで当たっていく(図7)。こうすれば各パッドにダイオードが接続されているかどうか、すなわち端子とパッドが確実にはんだ接合されたかどうかを調べられるわけだ。
 同様の試験はデジタル・マルチメーターを使っても実施できる。ただし、カーブ・トレーサーを使用した方がより詳細な試験を行える。また、試験時に流す電流の最大値を容易に制御できるという利点もある。一般に、試験電流は10mA未満に抑えるべきである。試験する部品に永久的な損傷を与えてしまわないようにするためだ。
 通常はカーブ・トレーサーのコレクタ電圧出力をオフにしておいて、部品の信号端子とグラウンド端子の間に内蔵されたダイオード(図7のD2におよそ1mAの電流が流れるまで、コレクタ電圧をゆっくりと上げていく。この1mAは、部品とプリント基板の電気的接続を確認するために十分な大きさの電流である。
 製造ラインに向けた「ネイル・ベッド(bed-of-nails)」式試験装置のほとんどは、部品の信号端子とグラウンドの間のダイオード(D2)の存在を検出することで導通を確認している。このことから、ダイオード検出による試験方法が、安全性が高くかつ効果的な手法として定着していることが理解できよう。
 カーブ・トレーサーよりも低価格の代替方法として、「ダイオード・テスト・モード」を備えたデジタル・マルチメーターを利用することもできる。ただしデジタル・マルチメーターでは、部品に注入される試験電流の大きさを確認できないという問題が存在する。ほとんどの場合、ダイオード・テスト・モードは10mAのダイオード・テストを行う。カーブ・トレーサーを利用すれば、より詳細な解析が可能である。電流-電圧(I-V)特性曲線を思い出してみよう。曲線の傾きは試験電流の関数である。このため、デジタル・マルチメーターの抵抗測定モードは利用できないのだ。比較的旧型のカーブ・トレーサーはそれほど高価ではない。前出のテクトロニクス社の177/D1であれば、1000米ドル以下で中古品が手に入る。

測定結果をどう読むか

 リワークを行った部品がプリント基板上に単独で存在していることはまずあり得ない。ほかの部品と組み合わせた「回路」の一部として存在していることがほとんどである。このため試験方法が複雑化してしまう。もし手元に「良品」と判断できるプリント基板があれば、リワークを実施したプリント基板と良品のプリント基板に対して同様の試験を実施して、各試験ポイントに対するI-V特性曲線を比較してみればよい。
 ただし当然ながら、試験対象とする部品端子以外の回路要素(例えば図7では「そのほかの回路要素」)の中に、グラウンドへ直接接続されているものが存在する場合には、試験対象の端子をこの方法で試験することはできない。試験対象の端子とグラウンドの間に挿入されたダイオード(図7のD2がオン状態において低インピーダンスになるためだ。このダイオード以外にグラウンドへの低インピーダンス経路が存在しても、ダイオードD2を検出してしまう。
 また、試験中にプリント基板に電源電圧(Vcc)を印加すると、試験対象の端子と電源の間に挿入されたダイオード(図7のD1の存在を検出できる。D1は、試験対象の端子への印加電圧がVccよりも数100mV高くなるとオン状態になる。Vccを印加していない場合には、カーブ・トレーサーの出力がダイオードD1を介して試験対象の部品に電源を供給しようとするため、ダイオードD1のI-V特性曲線の屈曲部(降伏電圧)はVccより低い電圧になる。この試験では主にダイオードD2に注目してほしい。電源電圧を供給していないときの振る舞いを比較的予測しやすいからだ。
 図8は、テクトロニクス社のカーブ・トレーサー177/D1を使って測定したI-V特性の例である。電源電圧を供給したかどうかで特性が大きく異なることが読み取れる。グラウンド側のダイオード(D2)に着目すれば、プリント基板に電源を供給していなくてもリワークした部品の検証が可能である。図8では試験対象の部品として、一般的な標準論理ゲートIC「74HC00」(NANDゲート)を使った。これと同様の手法で、ほとんどすべてのデジタルICやアナログIC、高周波ICを試験できる。こうしたICはESD保護用のダイオードをほぼ確実に内蔵しているからである。
 リワークした部品とプリント基板が電気的に接続されている場合には、グラウンド側のダイオードD2の特性が観測される。このため、電源電圧をプリント基板に供給しない状態で試験を実施する方が簡単で望ましい。ただし、電源電圧を供給した状態における出力信号端子は例外である。
 この試験の際にはプリント基板の回路図を手元に置いておこう。試験対象の端子以外の回路要素がグラウンドに直接接続されていないことや、ダイオードD2と同様の振る舞いをするような並列接続されたダイオード素子が存在しないことを確認するためである。

目視検査も活用する

 カーブ・トレーサーを利用した電気的な試験のほか、場合によっては目視による検査も活用できる。例えば、SOICパッケージに封止した部品は確実に目視で検査可能だ。CSPやLLP、BGA*などのパッケージでは、限られた範囲の目視検査のみが可能である。顕微鏡やルーペを使って、プリント基板の斜め方向あるいは横方向から目視する。このほか、はんだ接合状態を視覚的に確認する方法として、マイクロフォーカスX線検査装置も利用できる。ただし、この装置は非常に高価であるため、実験室はもちろんのこと、通常は製造ラインへの導入も難しい。
 リワークによる不具合を発見した場合の対処方法は、熱風加熱を利用してもう一度部品を取り除き、新しい部品に取り替えることである。本稿で紹介したリワーク方法はプリント基板上の銅はくパターンに与える負荷が小さい。このため、プリント基板からパッドがはく離してしまわない限り、何回かリワーク作業をやり直せる。
 不完全なはんだ接合を解消するために、プリント基板上のパッドやそのパッドに接続する配線パターンを加熱する方法もある。はんだが融解してうまい具合に端子とパッドが接続されるかもしれない。ただしこの方法を使うと、パッドや配線パターンに過大な熱負荷が加わる可能性がある。従って、部品自体に熱風を加えて加熱し、ピンセットで部品を軽く揺すってやる方法がより安全であろう。
 リワークの確実性だけを考えれば、製造ラインで使うようなリワーク専用装置を使用することが望ましいと言えよう。ところが実際には、こうした専用装置を試作のプリント基板用に借りることが難しかったり、実験設備として購入するには価格が高過ぎたりといった問題がある。そこで今回紹介した低コストのリワーク手法を使えば、端子が隠れて見えないような最新の表面実装型部品を取り外したり交換したりする作業を、実験室レベルの実用に耐え得る精度で実現できる。

用語解説 / 会社情報
*1)トム・マシューズ氏
トム・マシューズ氏は現在、米ナショナル セミコンダクター社のスタッフ・フィールド・アプリケーション・エンジニアを務めている。米パデュー大学で工学修士号を取得した。アナログと高周波回路において15年以上の経験を有している。
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*2)ティモシー・トローニ氏
ティモシー・トローニ氏は現在、米ナショナル セミコンダクター社のアプリケーション・エンジニアを務めている。米パデュー大学で工学学士号を取得した。
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【CSP】
chip scale package
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【PDA】
personal digital assistant
携帯型情報端末
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【LLP】
leadless lead-frame package
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【TSSOP】
thin shrink small outline package
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【micro SMD】
Micro Surface Mount Device
米ナショナル セミコンダクター社独自のウエハー・レベルCSP(WLCSP)。詳細はパッケージ情報を掲載した同社の日本語ホームページで閲覧できる。アドレスは下記の通り。
http://www.national.com/JPN/packaging/
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【SOIC】
small outline integrated circuit
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【RMA】
rosin mildly activated
弱活性ロジン
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【ウェラー】
Weller
はんだ付け工具やはんだ除去工具などの製品ブランド。米クーパー・インダストリーズ社(Cooper Industries, Inc.)の一部門であるクーパー・ハンド・ツールズ(Cooper Hand Tools)が手掛けている。ウェラー製品に関する情報は下記ウエブ・サイトで閲覧できる。
http://www.cooperhandtools.com/brands/weller/index.cfm
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【米プロテック・テスト・アンド・メジャメント社】
PROTEK Test and Measurement
オシロスコープやデジタル・マルチメーターといった汎用測定器を手掛ける米国企業。ホームページ・アドレスは下記の通り。
http://www.protektest.com/
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*3)
製造メーカーである米プロテック・テスト・アンド・メジャメント社のホームページに掲載された希望小売価格は169米ドル(2004年10月末時点で)。
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【米テクトロニクス社】
Tektronix, Inc.
オシロスコープなどを得意とする大手計測器メーカー。ホームページはhttp://www.tektronix.com/。なお、カーブ・トレーサー「177/D1」の製造および販売はすでに中止している。
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【デンドライト成長】
dendrite growth
金属の析出が樹枝状に成長すること。
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【ESD】
electrostatic discharge
静電気放電
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【BGA】
ball grid array
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