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designideas
2004年11月号
クロック信号が不要なラッチ回路

ロバート・モスト 米ダウ コーニング社
Robert Most Dow Corning Corp.
 複数のスイッチのうち1個だけをラッチしたい場合、通常は論理ICを使ってラッチ回路を実現する。オーディオ・ミキサー・コンソールやビデオ信号のセレクター装置など、人間が直接スイッチを操作する機器によく使われる回路である。ところが、ハイファイ・オーディオ信号や高精細ビデオ信号などを扱う高精度のアナログ・システムでは、論理ICを駆動するためのクロック信号が問題になる場合がある。クロック信号に重畳した雑音がアナログ信号に結合してしまう可能性があるからだ。図1の回路を使えば、クロック信号を使わずに複数個のスイッチのうち1個だけをラッチできる。スイッチは任意の数に増設可能だ。さらに、どのスイッチがラッチ状態にあるかを視認できる機能も備えている。
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 電流モード・スイッチの出力切り替え(電流ステアリング)によってラッチ動作を実現した。複数のスイッチ(スイッチ1、スイッチ2、スイッチ3、…)のうち、いずれかのスイッチを押すと、nチャンネルJFET*「BF256C」が電流シンク回路として機能し、約5mAの電流を引き込む。5mAの電流値は回路中のサイリスター「TCR22」1個分の保持電流に相当する。この電流により、操作したスイッチに接続してあるサイリスターがオン(導通)して、陰極(カソード)端子の論理レベルを高レベルに引き上げる。さらに陰極端子に接続したLED*を点灯する仕組みである。
 いったんオン状態に設定されたサイリスターは、ほかのスイッチが押されるまでラッチ状態を維持する。すなわち陰極端子の出力論理を高レベルに、LEDを点灯状態に保つ。ほかのスイッチを押すと、今度はそのスイッチに接続したサイリスターがオンして、それまでラッチ状態にあったサイリスターをオフ(停止)する。このように1個のスイッチだけをラッチ状態にできるのは、JFETの引き込む電流を、複数のサイリスターを同時にオンさせられない大きさに設定してあるからである。
 この回路構成では、サイリスターの陰極同士を絶縁するためのダイオードが必要である。このダイオードとして図1のようにLEDを使用すれば、絶縁機能のほかに、ラッチ状態のスイッチを視覚的に表示する機能を実現できる。また、サイリスターの陰極端子の論理出力は、アナログ・スイッチや機械式リレーといった部品を駆動するのに利用可能だ。
 スイッチの増設は簡単である。モーメンタリー・スイッチ*と1.5kΩの抵抗、サイリスター、LEDを追加するだけだ。ラッチ状態を電流で制御するため、スイッチ間の配線が長くなっても問題は生じない。例えば、各スイッチを異なる部屋に配置してもよい。
 電源電圧を投入した直後の初期状態では、すべてのサイリスターはオフ状態である。図1では、「オール・リセット」用のスイッチを設けた。このスイッチを押すと、サイリスターに供給されている保持電流をすべて引き抜いてしまう。こうしてオン状態のサイリスターをオフ状態に設定し、ラッチ状態を解除する役割を果たす。
 JFETは異なる品種でも構わない。ただし、使用するJFETのドレイン電流がサイリスター1個当たりの保持電流にほぼ等しくなるように、R1の値を変更する必要がある。
 複数のスイッチを同時にラッチする回路も容易に実現できる。複数のサイリスターを同時にオンできるようにJFETのシンク電流を設定すればよい。例えば、2個のスイッチを同時にラッチしたい場合には、8m〜10mA程度に設定する。シンク電流の大きさをこれ以上に設定すると、3個のスイッチを同時にラッチしてしまう可能性があるので注意してほしい。図2の回路を使えば、同時にラッチ可能なスイッチの数を手元で切り替えられる。nチャンネルJFETとR1からなる電流シンク回路をこの回路に置き換えればよい。

用語解説 / 会社情報
【JFET】
junction field effect transistor
接合型電界効果トランジスタ
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【LED】
light emitting diode
発光ダイオード
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【モーメンタリー・スイッチ】
momentary switch
押しボタン型スイッチなどで、ボタンを押し下げている間だけ動作状態を維持するスイッチを指す。自動復帰型スイッチとも呼ぶ。
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