前回(EDN
Japan、2004年9月号、p.30)は、直列終端された伝送線路でのバイパス・キャパシターの効果について述べた。今回は伝送線路の末端を並列終端した場合について考察する。
基本的なトーテム・ポール出力回路を考える(図1)。並列終端された伝送線路を駆動している。電源(CCC)とグラウンドの両方に対して同じ値の終端抵抗を対称的に接続した(対称分割)、いわゆるテブナン終端回路である。最初に、バイパス・キャパシターC1を接続していない状態を考える。トランジスタ・スイッチBはオン状態であり、シンク電流が伝送線路からスイッチBに連続的に流れ込んでいる。シンク電流の値は伝送線路の特性インピーダンスをZ0とすると−(1/2)×(CCC/Z0)で表せる。このとき伝送線路の論理レベルは低レベルである。
時刻t1でスイッチBをオフにする。するとスイッチBに流れ込んでいたシンク電流が止まる。同時にスイッチAをオンにすると、スイッチAからソース電流が伝送線路に流れ出す。このソース電流の大きさは(1/2)×(CCC/Z0)である。スイッチAとスイッチBの同時スイッチング動作によって生じる電流変化の大きさはCCC/Z0になるわけだ。この動作によって、伝送線路の論理は高レベルに遷移する。その後、スイッチAをオフにして、スイッチBをオンにすると、シンク電流が再びスイッチBに流れ込み、論理は再び低レベルに戻る。
スイッチBに流れ込んだシンク電流は、パッケージのインダクタンス成分LGを通ってプリント基板のグラウンドに達する。スイッチBがオフすることでシンク電流の流れが急に止まると、インダクタンスLGが起こす反作用により、時刻t1においてICチップ上の点G1に電圧の乱れ(バウンス)が発生する。同時刻にチップ上の点V1にも、スイッチAがオンすることにより点G1と同様の電圧変動が起こる。スイッチング動作による電流変化の大きさと、立ち上がり時間、伝送線路のインピーダンスが、直列終端の場合と同じだとすると、図1のテブナン終端回路に生じるバウンスの大きさは、直列終端回路のバウンスと同じになる。
次に、この終端回路の点V1と点G1の間にバイパス・キャパシターC1を取り付けてみる。ところが直列終端と異なり、バウンスの低減効果は生じない。点G1と点V1の過渡電圧が同じ大きさで、かつ同一方向に変化しているため、両点間に過渡的な電位差が発生せず、キャパシターに電流が流れないからである。
今度は、バイパス・キャパシターを取り除き、同じ出力回路をもう1つ追加して差動ペアを作ってみる。差動回路は、2つの出力回路がお互いに反対のスイッチング動作を行う。
もし、差動回路の一方のスイッチAから伝送線路に流れる電流が増加する割合と、追加したもう一方の出力回路のCCC側のスイッチに流れていた電流が減少する割合が同じならば、インダクタンスLVに流れる過渡電流が互いにキャンセルし合うため、点V1のバウンスは起こらない。同様に点G1でもバウンスは起こらない。実際には完全にバウンスを消滅させることは難しい。それでも大幅に減少させる効果はある。
今度は別の点に注目してみよう。ICパッケージの端子には流れない、チップ内部で消費される電流がある。「コア電流」である。コア電流はスイッチング動作のたびに点V1と点G1でお互いに反対方向に作用するバウンスを生じさせる。チップのコア部にある電源線とグラウンド線の間をバイパス・キャパシターでつなぐと、このコア電流によるバウンスを軽減できる。
(ハワード・ジョンソン*1)) |