シリアル・リンクの雑音はジッターを引き起こす。回路の雑音が増えたときにジッターがどのように増加するかは、データ波形の坂道のような傾きに依存する。
例えば1Vppの信号において、立ち上がり時間と降下時間を200psとする。信号が遷移するごとに、最大で5×109V/秒という傾き(dV/dt)の波形を作る。これは(1V)/(200ps)=5×109V/秒で求まる。
信号にピーク・ツー・ピーク振幅が最大ΔVppの雑音が加わるとしよう。入力データ波形のゼロ・クロス点に誘起されるピーク・ツー・ピーク・ジッターΔtppは、ΔVppをデータ波形の傾き(dV/dt)で割った値に等しい。
この例で、雑音のピーク・ツー・ピーク振幅を0.1Vと仮定する。この雑音はデータ波形のゼロ・クロス点を最大20ps、あるいは±10ps動かす。これは(0.1V)/(5×109V/秒)=20psから求められる。
基本的なジッターの関係から、雑音がある場合は波形の傾きが急なほどジッターは小さく、波形の傾きが緩くなるほどジッターが大きくなる。このことは多くのシステムで、一般的に成り立つ。
以降の解析では、レシーバーは200psの波形エッジをひずみなく伝送できるものと仮定する。ただし実際には、ひずみなく伝送できるとは限らない。干渉を抑えるために周波数帯域幅を制限する場合があるからだ。なお完全にジッターを解析するにはトランシーバーの入力端子における波形だけでなく、内蔵のデータ・スライサーへ実際に入力される波形も評価する必要がある。
差動ペアのスキューとジッター
それでは本稿の主題に移ろう。「差動ペアの一方の信号が遅れる差動スキューの場合にジッターはどうなるのか」である。図1で左上の波形Aと波形Bは、差動レシーバーの(+)端子と(−)端子の信号を表す。差動システムでも、雑音とジッターの関係は先述と同様に成立する。しかし差動モードあるいはオッド・モード(odd
mode)のいずれかで波形の傾きと雑音を論じなければならない。2つのモードを混ぜてはならない。本稿では、(A+(−B))/2で定義されるオッド・モードを採用する。
オッド・モードの信号を視覚的に表現する手法は、信号Aと信号−Bの平均を求めることである。差動スキューがない場合(図1の右上)は、信号Aと信号−Bはぴったりと重なるので、平均の傾き(オッド・モード・スロープ)と信号Aおよび信号−Bの傾きは同じになる。
信号波形−Bが右にずれることによって差動スキューが加わる(図1の右下)。平均の傾き(オッド・モード・スロープ)は小さくなる。傾きが小さくなると、ジッターが生じやすくなる。差動システムで差動スキューを厳しく制限する理由の1つがこれである。
立ち上がり時間および降下時間の10%に相当する差動スキューにより、信号の遷移に必要な時間は10%増大する。この結果、受信波形の傾きは10%減少し、雑音によるジッターの発生しやすさが10%増える。
(ハワード・ジョンソン*1
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