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designideas
2004年8月号
複数電源の立ち上がり特性を制御する回路

ディルク・ゲルケ ドイツのテキサス・インスツルメンツ社
Dirk Gehrke Texas Instruments Deutschland GmbH
 FPGAやASIC、DSPといった大規模LSIチップは現在、数多くのシステムに採用されている。通常こうしたLSIを駆動するためには、複数の電源電圧が必要になる。コア電圧と入出力(I/O)電圧の2つを必要とするLSIが多い。一般にコア電圧はI/O電圧よりも低くなる。こうした複数の電源電圧をLSIに供給する際に、各電源電圧をどのように供給し始めればよいかはLSIごとに異なっている。このため、使用するLSIに適した電源供給順序を実現する回路が不可欠である。
 図1は、単一の入力電圧から2系統の電圧出力を生成する電源回路である。回路構成に若干の変更を加えることで、2通りの電源供給開始方法に対応できる。同期整流スイッチとしてMOS FETを内蔵した降圧型DC-DCコンバーターICを2つ使用した。5Vの入力電圧から、LSIのI/O電圧に向けた3.3V出力をIC1で作り出し、コア電圧に向けた1.5V出力をIC2で生成する。
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 第1の電源供給方法は、レシオメトリック*に2つの出力電圧を立ち上げる方法である。ここでレシオメトリックとは、2つの電源出力が同時に立ち上がり始め、同時にそれぞれの設定出力電圧に達することを意味する。この動作を実現するためには、図1において青色で示した部品(R3)を残し、赤色で示した回路部分(R6、Q1、C11、R5)を取り除く。
 レシオメトリック動作は、2つのDC-DCコンバーターICに単一のソフト・スタート用コンデンサー(C14)を共有させることで実現可能である。このように接続したコンバーターICに入力電圧を与えると、各コンバーターICの出力電圧が同時に立ち上がる。図2にレシオメトリック動作時の出力電圧測定波形を示す。IC1とIC2の出力電圧が同時に、それぞれの設定値である3.3Vと1.5Vに到達していることが分かる。
 ソフト・スタート用コンデンサーを接続するピン(SSピン)は、2つの機能を備えている。1つは、コンバーターICを待機状態に設定したり、待機状態から起動したりする機能である。ただし図1ではこの機能を利用していない。この機能を実現するためには、オープン・コレクタのバイポーラ・トランジスタまたはオープン・ドレインのFETをC14とともにSSピンに接続すればよい。
 バイポーラ・トランジスタまたはFETがオンするとSSピンが接地電位に接続され、コンバーターICをオフ状態に保つ。バイポーラ・トランジスタまたはFETがオフするとSSピンは開放状態になる。するとコンバーターICは直ちに、内蔵した5μAの電流源でC14を充電し始める。C14には2つのコンバーターICから合計で10μAの電流が流れ込む。C14の充電電圧がコンバーターIC内部のしきい値電圧である1.2Vに達すると、コンバーターICが起動して電圧出力を開始する。
 SSピンのもう1つの機能は、コンバーターICが起動してから電圧出力を始めるまでの時間(遅延時間)を設定することである。2つのコンバーターICを接続した場合の遅延時間はC14×(1.2V/10μA)で求められる。さらに遅延時間が経過した後、出力電圧が設定値に達するまでの時間(ソフト・スタート時間)はC14の静電容量に比例して決まり、C14×(0.7V/10μA)となる。ただし実際のソフト・スタート時間は、この計算値よりもいくらか短くなる。コンバーターICが動作を開始した直後は、コンバーターIC内部で設定された出力電圧立ち上がり時間に従って動作するためである。
 図1の回路で実現できる電源供給方法のうち、第2の方法は、2つの出力電圧が同一の立ち上がり波形を描く方法である。この動作を実現するためには、図1の回路に赤色で示した部品を取り付ければよい。青色の部品も接続しておく。図3に出力電圧の測定波形を示した。IC1とIC2の出力電圧は途中まで同一の立ち上がり波形で高まり続ける。そしてIC2の出力電圧が設定値(1.5V)に達するとほぼ同時に、IC1の出力電圧も設定値(3.3V)に達する。
 この動作では、IC2がマスター側コンバーターとなる。IC2の出力電圧はR14とR12によって1.5Vに設定されている。一方IC1は、IC2によって制御されるスレーブ側コンバーターとして機能する。IC1の出力電圧はR8とR3によって1.5Vに定められる。レシオメトリック動作の場合と同様に、2つの出力電圧は同じ立ち上がり速度で高まり始め、設定値である1.5Vに同時に到達する。
 ここからの動作はレシオメトリック動作の場合と異なる。2つの出力電圧が1.5Vに達するとすぐに、IC1の出力電圧を最終的な出力電圧値である3.3Vまで高める必要がある。このためQ1を導通させて、R6がR3と並列になるように接地電位に接続する。出力電圧の設定値を3.3Vに変更するわけだ。R6の値は次のようにして求めればよい。

 ここでコア電圧(VOUTCORE)=1.5V、R8=27.4kΩ、IC1の内部バンドギャップ基準電圧(VREF)=0.891VであることからR3=40.2kΩになる。このときR3とR6を並列接続した抵抗値をRXとすれば、I/O電圧(VOUTI/O)はR8とRXによって設定できる。

 この式でVOUTI/O=3.3Vとすれば、RX=10.22kΩと計算できる。


 ここにR3=40.2kΩを代入すると、R6=13.7kΩと求められる。
 図1の回路に5Vの入力電圧を印加すると、2つのコンバーターICが同時に起動して、同時に出力電圧を生成し始める。マスター側コンバーターであるIC2の出力電圧が初期設定値(1.5V)の90%に達すると、オープン・ドレイン出力のパワーグッド出力ピン(PWRGDピン)がオープンになる。するとPWRGDピンの電位は直ちに入力電圧と同じ電位まで立ち上がる。R4を介して入力電圧にプルアップされているからだ。この立ち上がり信号がQ1に達し、Q1を導通させる仕組みである。
 ここでR5とC11は遅延回路として機能する。この遅延回路の時定数によって、パワーグッド信号が立ち上がってからQ1がオンするまでの時間が決まる。Q1のしきい値電圧VGSTHは1.6Vである。ゲート電極の電圧がしきい値電圧VGSTHを超えるとQ1がオンして、R3と並列になるようにR6を接地電位に接続する。この動作によってIC1の出力電圧設定値が変化して、I/O電圧(3.3V)まで立ち上がる。なお、MOS FETであるQ1のオン抵抗は10Ω程度である。このオン抵抗が回路の特性に影響を与えることはない。IC1の出力電圧を設定する抵抗値がオン抵抗に比べて十分に大きいからだ。
 図1の回路では、2つのコンバーターICが同じスイッチング周波数で動作する。IC2はマスター側コンバーターで、スイッチング周波数を700kHzに設定してある。IC1に入力電圧を与えると、まずIC2のスイッチング周波数より約10%低い、630kHz程度のスイッチング周波数で動作を開始する。IC2が動作し始めると、IC1はSYNCピンを介してIC2と同期をとる。ダイオードD1はSYNCピンを負の電圧スパイクから保護するために取り付けた。
 なお、2つの電圧出力間にショットキー・ダイオードを挿入すれば、入力電圧を印加していないときにも出力間の電位差を400m〜600mVに保つことが可能である。陰極(カソード)をI/O電圧に、陽極(アノード)をコア電圧に接続する。

用語解説 / 会社情報
【レシオメトリック】
ratiometric
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