すべてのシステム設計は、ブロック・ダイヤグラムから始まる。ブロックが機能を示し、ブロック間の相互接続が信号の流れを表現する。
ブロック間の相互接続を流れる信号の伝送速度や周波数帯域幅、プロトコル、信号振幅などをブロック・ダイヤグラム中に明記しておけば、ブロック間の相互接続を相互干渉のない接続ごとにまとめ、いくつかのグループに分割できる。例えば3.3VのTTLバスと、250mVのLVDSシリアル・リンクを考えよう。これらの信号は振幅が大幅に違う。当然、同じグループには入れづらい。両者をプリント基板にレイアウトするときに配線パターンを近づけ過ぎると、クロストークによって振幅の大きなTTLバスが振幅の小さいLVDSシリアル・リンクに悪影響を与える。
グループ分けの際には、雑音に対する許容度の違いも考慮する必要がある。アナログ・ビデオ信号の場合、信号振幅(ピーク・ツー・ピーク)が約1Vとかなり大きくても、クロストークに十分注意しなければならない。極めて小さな信号干渉によって生じる画像の劣化を人間の目は識別できるからである。
信号振幅や周波数帯域幅、プロトコルが似ている相互接続を同じグループにまとめるべきだろう。そして実際のレイアウトでは、グループ内の信号同士のクロストークが許容値に収まるように配線間隔を決定する。さらにグループ間では、大電力のグループが小信号のグループに干渉しないよう、クロストークの量を確認する必要がある。
雑音をきちんと管理するためには、雑音をどのように分離するかを示したダイヤグラムを作成する。雑音を分離するためのレイアウトを粗く見積もるためだ。システム設計におけるブロック・ダイヤグラムと似た手法である。雑音分離用のダイヤグラムではすべてのグループに対し、相互接続を通過する信号の数と種類を示しておく。図1に、どのような信号がどこに存在するかを色分けして表示した。
信号グループ間の分離はさまざまな方法で実行できる。例えばクロストークを−60dB程度に抑えればよい場合は、同じ配線層である程度の間隔を確保して配線すれば十分である。クロストークをさらに減らしたいときは、内層に電源/接地プレーンを備えた基板の両面に配線を振り分けたり、電源プレーンと接地プレーンに切り込みを入れたり、プリント基板を分割したり、さらには金属きょう体を分割したりする。EMI対策技術者が、こういったクロストークの調査を助けてくれる。
同相モード電流が接地経路を巡回することによって起こる雑音が、問題の大半を占めている。この雑音はほかの雑音よりも大きいからである。従って雑音分離を完ぺきにするには、信号経路と同相モードの接地電流をきちんと示していなければならない。このためには、意図的に設けた接地経路だけでなく、意図していない接地経路も考慮しておく必要がある。意図していない接地経路は寄生容量によって生じる。2個の接地領域を分離したくとも、そこには必ず寄生容量が存在し、低インピーダンスの経路を形成する。この結果、大きな結合が生じてしまう。例えば金属きょう体に近接した接地プレーンは、簡単に寄生容量を生じる。そして1GHzにおいて1Ω未満と低いインピーダンスで金属きょう体と接地プレーンは結合する。
雑音を分離する作業では、電源プレーンを忘れてはならない。電源プレーンは雑音を伝送し、電源プレーンに隣接した信号配線と簡単に結合してしまう。電源プレーンも寄生容量によって意図しない信号経路を生じ、回路全体に影響を及ぼす。
優れた雑音分離用ダイヤグラムは、雑音を管理するためのすべての情報を含んでいる。多様な雑音と干渉、EMIを理解し、これらを防ぐのに役立つ。
(W.マイケル・キング*1)) |