図1にスキューの測定系を示す。差動スキューは、上部のパスにおける遅延から下部のパスにおける遅延を差し引いた値に等しい。すなわち差動スキューtskew=t1+t3+t5−(t2+t4+t6)である。全体のスキューは、ケーブルやプローブ、被測定デバイスおけるスキューに依存する。従って、前述の式をケーブルなどの同じ部品ごとに書き直すと、tskew=(t1−t2)+(t3−t4)+(t5−t6)となる。
多くの計測機器は自動校正機能を備える。ケーブルの遅延を自動的に校正し、スキューを補償する。測定系のスキューを補償するにはまず、被測定デバイスを取り外す。上部のパスでは点bと点cを直結し、下部のパスでは点xと点yを直結する。遅延(t1+t5)が遅延(t2+t6)よりも長ければ、計測機器は自動的に、測定系に補償用の遅延を挿入する。スキューを取り除くのではなく、補償用の遅延時間Δt=t1+t5−(t2+t6)を下部のパスt6に追加するだけである。被測定デバイスの2つのパスは結合しておらず、独立に動作すると仮定する。この場合、補償後のスキュー測定の結果は常に正しくなるはずである。
パスを交差させる
ここで、上部パスの点cおよび下部パスの点yでパスを交差させたらどうなるだろうか。信号x(t)は信号発生器の反転側から出発する。下部のパスにおける遅延時間t2とt4が加わり、交差部を経て遅延時間t5が加わる。ここで新たにスキューを求めると、交差ありのスキューtcrossed=(t2−t1)+(t4−t3)+(t5−t6)となる。元のスキュー(tskew)と交差ありのスキュー(tcrossed)を足して半分にすると、点cおよび点y以降のスキューを抽出できる。
このスキューにはケーブルの後半部分と受信器に組み込まれている補償用スキューが含まれる。元のスキュー(tskew)と交差ありのスキュー(tcrossed)の差の半分を求めると、点cから前の部分のスキューを抽出できる。このように上部パスと下部パスをさまざまな地点で交差させてスキューを測定すると、測定系の各部のスキューを求めることができる。
次に、点cと点yでの交差をそのままにしておき、点bと点xでもパスを交差させる。こうして測定したスキュー(tdoublecross)と元のスキュー(tskew)の平均を求めると、測定系のスキュー((t1−t2)+(t5−t6))だけを抽出できる。またtdoublecrossとtskewの差の半分を求めると、被測定デバイスのスキューを取り出せる。こういった交差接続は、多段のカスケード接続システムではスキューの蓄積を測る基本的な手法となる。
自動補償の落とし穴
被測定デバイスが変圧器のような結合度の高いデバイスの場合、スキューの補償機能が深刻な問題を引き起こす。図1でt2、t5、およびt6をゼロ、t1はゼロではないと仮定する。この場合、自動的に補償用スキューΔt=t1がt6に追加される。この状態で点bと点c、点xと点yをそれぞれ直結すると、スキューの測定結果はゼロになる。ここでスキューが完全にゼロの変圧器を被測定デバイスとする。完全にバランスした変圧器は差動信号をそのまま通すものの、同相信号は通さない。このため点cと点yにおける差動信号は同相モードを含まず、差動スキューがゼロの信号になる*1)。
すると変圧器は完全でも、補償用スキュー(Δt)を含む測定系は−Δtをスキューとして表示してしまう。もちろんこれは正しくない。結合度が極めて高い差動システムのスキューを測定するときに、自動的にスキューを補償するシステムに頼ってはならない。
差動信号間の結合度が高いシステムでは、スキューの測定を開始する前に、測定側と受信側のケーブルで別々に遅延時間を測定し、スキューをゼロにする必要がある。測定系のケーブルをどの地点で交差しても結果が変わらなくなったとき、測定系は正しくセットアップされたと分かる。
(ハワード・ジョンソン)*2)
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