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designfeature
2004年6月号
カラーTFT液晶
ディスプレイの選び方(前編)



ロブ ダウテル*) 米オール・アメリカン・セミコンダクター社
Rob Dautel All American Semiconductor, Inc.
 現在、パソコンやデジタル・スチル・カメラ、携帯型テレビなどのディスプレイは通常、カラーTFT*液晶ディスプレイが搭載されている。しかしこれらはディスプレイを搭載する機器のごく一部に過ぎない。実際には、電卓や時計から家電製品にいたるまで膨大な機器がディスプレイを備える。そしてそれらの多くは、モノクロの液晶ディスプレイを搭載している。
 昨今、こういった分野でもカラーTFT液晶ディスプレイを検討するメーカーが増えてきた。カラーTFT液晶ディスプレイの価格が低下し、手の届く範囲になってきたためだ。
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 技術者の多くは、モノクロで単純マトリクス方式*の液晶ディスプレイを組み込んだ機器の設計経験がある。しかし、カラーTFT液晶ディスプレイのようなアクティブ・マトリクス方式*のディスプレイを扱った経験は少ない。彼らにとってアクティブ・マトリクス型ディスプレイを選択し、周辺回路を設計することはモノクロの場合に比べ、かなり複雑で手強い部類に入るようだ。
 カラーTFT液晶ディスプレイを選択する場合、まず考えるべきことは、本当に必要なのかどうかである。その際、何よりも留意すべき点は、カラーになることで追加されるコストである。モノクロの液晶ディスプレイを使って設計すれば大幅にコストを節約できる。液晶ディスプレイそのものが安価であるだけでなく、インターフェースや制御が簡単で使いやすい。またハードウエアへの負荷が少なく、ソフトウエアも複雑にならずに済む。カラー・ディスプレイはピクセルあたり3色(赤、緑、青)を処理するのに対して、モノクロ液晶ディスプレイは1色を処理するだけでよいからである。
 なお、モノクロは必ずしも白黒を指しているわけではない。バックライトと液晶材料を変えることで、白黒、黄、緑、青をはじめとしてさまざまな中間色のディスプレイを構成できる。
 単純マトリクス型のカラー液晶ディスプレイという選択肢も存在する。設計仕様によっては、単純マトリクス型カラー液晶ディスプレイの画質はカラーTFT液晶ディスプレイと比べて見劣りしないレベルにある。カラーTFT液晶ディスプレイと単純マトリクス型カラー液晶ディスプレイのどちらかを選ぶ際には、応答速度と視野角についても考慮する必要がある。カラーTFT液晶ディスプレイはほぼ180度近い視野角を備えるのに対し、単純マトリクス型カラー液晶ディスプレイの視野角は徐々に改良されつつあるとはいえ、通常は70〜80度しかない。
 液晶ディスプレイは液晶層と、プラスチック、ガラスなどの材料で作られた1枚または複数の偏光層などで構成される(図1)。2枚の偏光層を同じ偏光方向にそろえると、光を通すことができる。2つの偏光層を偏光方向が互いに直交するように並べると、光は遮断される。液晶は動的な光のシャッターとして機能する。液晶分子セルに電圧が加えられるとセルは方向を90度変える。これにより液晶層の下にある偏光層の偏光方向によって光を通すか遮断するかが決まる(下記の「液晶ディスプレイにおける光の反射方式」を参照)。
 単純マトリクス型液晶の場合、液晶分子セルはコンデンサーのように動作する。セルは充電された後、放電しながら元の状態にゆっくりと戻る。そのためセルの状態を素早く変化させることができず、高速に変化する画像を制御するのには向いていない。一方、カラーTFT液晶ディスプレイでは液晶分子セルを駆動するのにトランジスタを使用している。この方法は複雑でコストが高くなるものの、液晶分子セルを高速に制御できる。したがってカラーTFT液晶ディスプレイならばフル・モーション・ビデオ表示が可能だ。しかし、単純マトリクス型液晶ディスプレイの場合は、メーカーにもよるが8〜15フレーム/秒より速い動作になると画像がぼやけ始める。
 ただし、これらの要素だけで単純マトリクス型カラー液晶ディスプレイの採用をあきらめないでほしい。ディスプレイを検討する際には、あらゆる選択肢について調査する必要がある。例えば、屋外での使用を想定した携帯型情報端末の場合、日当たりのよい場所でも見やすいことが要求される。ディスプレイの選択はエンジニアリング上の仕様から決められるのと同じ程度に、マーケティング部門からの要求条件によって決められることが少なくない。ディスプレイは製品の顔であり、製品そのものの印象を変えるほどの影響力を備える。ディスプレイを選択する場合、それが単純マトリクス型かアクティブ型かに関係なく、ディスプレイを実際に見て判断する必要がある。そのために、ディスプレイ・メーカーや販売代理店の協力を得ることは重要なことである。現在、ほとんどのディスプレイ・ベンダーは、自社のディスプレイの品質をユーザーが確認できるようなデモンストレーション用システムを用意している。VTR*DVD*プレーヤーとディスプレイを接続し、ビデオ画像を表示させて実際に目で見て確認できる。

画面寸法や画素数に注意する

 カラーTFT液晶ディスプレイを選択する場合に考慮すべき第1の項目は、表示画面の寸法である。寸法の表記方法からして、単純マトリクス型液晶ディスプレイとカラーTFT液晶ディスプレイでは異なることが多い。単純マトリクス型ディスプレイの場合、表示画面の縦と横の長さを示すのが一般的だ。しかし、カラーTFT液晶ディスプレイの場合は、対角線の長さを寸法表記に使用する。例えば、モノクロの単純マトリクス型液晶ディスプレイの画面寸法は縦92mm×横122mmと表記されるが、カラーTFT液晶ディスプレイでは5.7インチ型と記述されることになる(5.7インチは概算値)。
 また機器の機械的な仕様を設計する際、モノクロのディスプレイを後でカラーに変更する計画があるかどうかまで考えた方がよい。カラーTFT液晶ディスプレイの場合、画面寸法の種類がモノクロのそれに比べると少ない。
 また過去に製品化されたものでも、用途や需要によっては製造を打ち切られてしまうことがある。画面寸法によっては該当するディスプレイがなくなってしまうかもしれない。実際、携帯電話機のように市場の変動が激しい用途の場合、注意が必要だ。新しい携帯電話機の開発によって、現在採用しているディスプレイが陳腐化した場合、ディスプレイの需要が年間で数100枚〜数1000枚に減ったとしても、ディスプレイ・メーカーが製造を打ち切らないよう保証させておく必要がある。このような状況は機器を開発している途中の段階でも起こり得る。
 普及しているディスプレイの大きさの変化や生産ラインの構成により、大型のディスプレイが割安になる場合もある。例えば10.4型のカラーTFT液晶ディスプレイが8.4型よりも価格が安いという逆転現象が起きる可能性がある。この理由には10.4型ディスプレイの用途がノート・パソコン以外にも拡大したことや、10.4型の面取り効率が高い製造ラインが多いことが挙げられる。また、需要が増えることで高い歩留まりを実現できる。
 カラーTFT液晶ディスプレイの画素数についても注意されたい。一般に表示面積が小さいディスプレイの場合は目の分解能に限りがあるため、ディスプレイにそれほど高い画素数は要求されない。例えば、6インチ以下のディスプレイの場合、VGA(640×480画素)以上の画素数であることは少ない。3インチ型未満の小型ディスプレイの大半はQVGA(320×240画素)以下の画素数である。一方、パソコン用の大型ディスプレイの場合は、XGA(1024×728画素)以上が一般的だ。
 一部では、特別な画素数を備えたカラーTFT液晶ディスプレイが存在する。480×234画素や、320×96画素といったディスプレイで、ビデオ・カメラ、車載機器、ラック・マウント機器などの用途に向けたものである。
 画面寸法や画素数に加えてアスペクト比(画面の縦横比)も重要である。カラーTFT液晶ディスプレイのほとんどが3対4のアスペクト比で製造されているが、16対9のアスペクト比のものもある。また、正確に3対4や16対9ではないがこれらに近いアスペクト比のTFTパネルも製造されている。

バックライトを選ぶ

 次に輝度とカラーTFT液晶ディスプレイに使われるバックライト、サイドライトおよびフロントライトについて考えてみよう。本稿では、これら3つの光源をすべて「バックライト」と呼ぶことにする。(なお輝度の単位(nit)については下記の「画面の明るさの単位」を参照)。
 最も一般的なカラーTFT液晶ディスプレイのバックライトは冷陰極蛍光ランプ(CCFL*)である。CCFLの原理はオフィスや家庭で一般的に使用されている蛍光灯と同じである。このランプは小さく、比較的使い易いためカラーTFT液晶ディスプレイの白色光源として適している。また交換も容易だ。CCFLはカラーTFT液晶ディスプレイに限らず、カラーおよびモノクロの単純マトリクス型液晶ディスプレイでも一般的に使われている。
 カラーTFT液晶ディスプレイの画面寸法と輝度(nit)の高さに応じて、搭載するCCFLの本数が決まる。高輝度のディスプレイになると10本以上のCCFLを使用する場合もある。CCFL管は300〜750Vの高電圧を必要とする。電流値は2m〜7mAである。このためCCFLを使用する際、ユーザーは回路の中にCCFLインバーター・モジュールを追加しなければならない。このモジュールは簡単な電圧変換機能からソフト・スタート、ディミング(輝度調整)、温度補償機能までさまざまな機能を備えている。価格は数米ドルから25米ドル程度まで幅広い。
 CCFLは蛍光管であるため、動作温度に制限がある。CCFLは低温動作の場合、フリッカーや輝度の劣化が生ずる。一方、高温動作では寿命が短くなる。そのため動作温度の保証範囲が広いモバイル機器や車載機器といった用途の場合、CCFLを使ったディスプレイ設計が難しくなることがある。
 CCFLは数1000時間の寿命を持ってはいるが、時間が経てば燃え尽きたり輝度が落ちることがある。また、CCFL管として使われているガラスが振動や落下によって壊れる可能性もある。このような問題があるため、最近ではCCFL部分だけを交換可能なディスプレイを提供するメーカーが増えてきている。カラーTFT液晶ディスプレイ全体を交換するよりもCCFL部分だけを交換した方が経済的かどうかは、ユーザーがカラーTFT液晶ディスプレイを使用する期間によって判断が異なる。一般にカラーTFT液晶ディスプレイ全体を交換する方がコストが低い例として次の3つが考えられる。@ユーザーがシステムをグレードアップするまでの数年間だけ使用する場合、A予備のCCFL管を用意することがかなりのコスト高になる場合、BCCFLを交換するための人件費が高すぎる場合である。
 例えば5.7インチ以下の小さなカラーTFT液晶ディスプレイの場合、LED*によるバックライトの選択肢もある。LED技術でカラーTFT液晶ディスプレイの光源に不可欠な白色光を出せるようになったのはごく最近のことである。LEDはCCFLに比べて動作温度範囲が広いことや、機械的な耐久性に優れていること、電源がシンプルであることなどいくつかの長所を備える。ただし白色LEDは比較的新しい技術であり、現時点ではまだコストが高い。
 エレクトロルミネッセンス(EL*)パネルはディスプレイのバックライトとしても使われる。モノクロ液晶ディスプレイを使用している設計者の一部はELパネルに詳しい。ELパネルは価格が高いが、EL材料、印加電圧および駆動周波数によって緑から黄色、そして青まで変化する柔らかな光を発生する。発光色の範囲が限られるため、カラーTFT液晶ディスプレイのバックライトとして使用するには適していない。また別の問題もある。ELパネルはLEDやCCFLよりも寿命が短い。これは長時間の発光によって発光強度が低下してしまうためだ。また、CCFLと同様の問題でもあるが、ELを駆動させるのに高周波、高電圧が必要であることもデメリットである。
――次回に続く。
液晶ディスプレイにおける光の反射方式

 カラーTFT液晶ディスプレイの画面寸法と画素数を決定した後で、設計者はディスプレイに取り付ける光源を検討する必要がある。液晶ディスプレイは、自らは発光しない。液晶材料を通過する光を制御しているにすぎない。これは単純マトリクス方式でもアクティブ・マトリクス方式でも同じである。液晶材料の背面に偏光フィルムを貼り付けた後、光を照射することにより、初めて画像として見ることができる。偏光方式には透過型、半透過型、反射型の3つのタイプがある。どの方式を採用するかによってディスプレイの光源のタイプが決まる。
 透過型ディスプレイの場合、通常CCFLまたはLEDのバックライトを使用する。バックライトからの光は背面の偏光フィルムとガラス基板を通過する(図A-1)。透過型の場合、偏光フィルムは透明であるため、パネルの前面からディスプレイに入る光とバックライトの光がぶつかり合うことになる。その際、前面からの外部光が明るすぎるとディスプレイの像がぼやけて見えにくくなる。そのため、透過型ディスプレイは、屋外などの周囲が明るい場所での使用には向いていない。高輝度のバックライトを使うことが考えられるものの、ディスプレイのコストが跳ね上がってしまう。従って、明るい場所で使用する場合には半透過型または反射型のディスプレイが適しているといえる。
 半透過型ディスプレイは半透明の反射板付きの偏光フィルムを使用する(図A-2)。この偏光フィルムはバックライトからの光を透過させる一方、ディスプレイの前面から入射してくる光を反射してバックライトからの光を強める。反射率を高める製造方法については、ディスプレイ・メーカーがさまざまな角度から研究を続けている。今では、屋外の太陽光の下でも見やすく、また室内や曇り空の場合でもバックライトからの光を使って十分によく見えるレベルに達している。
 反射型ディスプレイはバックライトを使用しない(図A-3)。ディスプレイ背面の偏光フィルムは鏡の役割も果たす。ディスプレイ前面から入射してくる光を反射する。このタイプは屋外の太陽光の下や屋内でも明るい場所などで使用する場合には有効である。このタイプのディスプレイには光源としてサイドライトやフロントライトが追加されることもある。サイドライトとフロントライトの位置はおのおのディスプレイの横、前になる。基本的な役割はバックライトと同じだが、ディスプレイ全体の照明を補強するという意味合いが強い。光源からの光は周囲光と同様に液晶層を通過して反射板で反射され、再び液晶層を通って前面に戻される。このとき、ディスプレイ全体に光が均等に当たるようにライトガイドを組み込むこともある。
 ユーザーがどの方式のディスプレイを採用すべきかは、使用条件によって異なる。また太陽光、屋内の照明、そのほかの周囲光といったさまざまな光の環境条件下で、要求される視認性のレベルによっても変わってくる。
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画面の明るさの単位

 カラーTFT液晶ディスプレイの明るさ(輝度)を表すにはニト(nit)という単位が用いられる。1nitは1平方メートルあたり1カンデラ(1cd)の明るさに相当する(cd/m2)。これは、光源からの垂直な平面上で測定した場合である。nitについて議論する場合、あなたは「それはどのくらいの明るさか」と尋ねるかもしれない。残念ながら、カラーTFT液晶ディスプレイを取り扱ったことがない限り、答えられないだろう。
 nitは定量的ではあるが、人間の主観が若干入っている部分もある。ある画面を見て、薄暗いディスプレイだという人もいれば、色がきれいだという人もいるだろう。参考値を挙げると、ノート・パソコン用カラーTFT液晶ディスプレイの輝度は300〜400nitsである。
 カラーTFT液晶ディスプレイの輝度は、わずか数nitsから数100nitsまで幅広く分布している。反射型ディスプレイの多くは低輝度である。反射型ディスプレイは、それ自体が発光しておらず、サイドライト、フロントライトおよび周囲光によって輝度が変化する。そのためnitという形で数値化できない。サード・パーティーの中には、カラーTFT液晶ディスプレイの補助光源を専門とするメーカーもある。コストは上昇するものの、補助光源を使うことにより輝度を1000nits以上まで高められる。
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用語解説 / 会社情報
ロブ・ダウテル(Rob Dautel)氏*1)
ロブ・ダウテル(Rob Dautel)氏はオール・アメリカン・セミコンダクター社のフィールド・アプリケーション・エンジニアである。現在、製造ラインのエンジニアリング・サポートを担当している。
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【TFT】
thin film transistor
薄膜トランジスタ。
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【単純マトリクス方式】
液晶ディスプレイの駆動方式の一つ。格子状にX軸電極とY軸電極を配置し、XとYの2方向から電圧をかけて交点の液晶(画素)を駆動する方式。液晶はX軸方向の配線とY軸方向の配線にはさまれるように各交点に並んでいる。単純マトリクス型液晶ではSTN(super twisted nematic)方式とDSTN(dual-scan super twisted nematic)方式が代表的である。
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【アクティブ・マトリクス方式】
液晶ディスプレイの駆動方式の一つ。単純マトリクス型液晶と同様の構造を持ち、格子状に配置したX軸電極とY軸電極の2方向から電圧をかけて交点の液晶(画素)を駆動する。これに加えて、各画素ごとに「アクティブ素子」を配置したもの。アクティブ素子はX軸方向の配線の電圧によってオン状態とオフ状態が切り替わる。代表的なアクティブ・マトリクス型液晶としてはTFT(thin film transistor)方式とMIM(metal in metal)方式がある。
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【VTR】
video tape recorder
ビデオ・テープ・レコーダー
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【DVD】
digital versatile disc
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【CCFL】
cold-cathode fluorescent lamp
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【LED】
light emitting diode
発光ダイオード
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【EL】
electro-luminescence
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