両腕を前方にまっすぐ伸ばす。左右の手のひらがそれぞれ信号a、信号bを表しているとしよう。手のひらの上下方向の位置が各信号の電圧に相当する。この状態で両腕をお互いに反対方向に上下させる。この動きは、1対の差動信号の挙動を示すことになる。
左右の手のひらの高さの差が、信号ペア(a,b)の差動成分を、手のひらの上下位置の平均が同相成分を表す。
同相成分を分かりやすく説明するために、長さ3フィート(約91.4cm)の棒を想像する。この棒の中点に印を付ける。棒の両端をつかんで、左右の腕を互いに逆方向に上下させる。棒の中点は常に、左右の手のひらの平均に位置する。この中点の動きが、信号ペアの同相成分に相当するのである。そして棒の傾斜が、差動成分になる。
棒の中点を空間内の1点に固定したまま、動かないように注意しながら両腕を正確に反対方向に上下できれば、同相成分のない完全な差動信号を発生させていることになる。誰かに棒の中点を動かないように固定しておいてもらえば、完全な差動信号を描くことができるだろう。ただし同時に、誰かの助けなしに完全な差動信号を発生させることがいかに難しいかが分かる。両腕の振幅がわずかに違っても、あるいはタイミングが少しずれただけでも、同相成分が発生してしまう。
同相成分に注意
電気回路の場合、信号ペア(a,b)の同相成分には特に注意する必要がある。差動成分に比べると同相成分の方が、はるかに大きな電磁放射やクロストークを発生するからだ。
信号のスキューと、同相モード信号振幅の関係はかなり容易に導ける。信号aと信号bの振幅が同じで、わずかなスキューであるΔtだけ、一方が遅れているとしよう。同相モード信号c≡(a+b)/2は次の式で表現される。
微積分が得意な読者は、Δtが十分小さい場合に右辺の分子は信号aの時間微分da/dtとΔtの積で近似できることを容易に理解するだろう。
ただしこの近似は、信号の立ち上がり時間よりもΔtがはるかに小さい場合に限って成り立つ。
信号aを微分した値が最大のときに、同相モード信号cは最大値をとる。信号振幅の10%から90%までの立ち上がり時間をtr、信号振幅をΔνとすれば、a(t)の微分のピーク値をΔν/trで近似できる。同相モードの式を整理することにより、同相モード信号のピーク値として次式が得られる。
この式は、信号aはゼロからΔνまで、信号bはΔνからゼロまでスイングすると仮定している。従って差動信号(a−b)は+Δνから−Δνまでスイングする。すなわち差動信号のピーク・ツー・ピーク振幅は2Δν、差動信号のピーク振幅はΔνである。そして奇数モード(odd
mode)信号(差動信号の半分として定義される)の振幅はΔν/2である。
同相モード信号のピーク振幅を、差動信号のピーク振幅Δνに対するパーセンテージとして考える。またスキューΔtを、立ち上がり時間trに対するパーセンテージとして定義する。このように定義すると、次のように表現できる。「20%のスキューによって、おおよそ10%の同相モード成分が生じる」。
図1 スキューによって同相モード成分が発生
(ハワード・ジョンソン)*1)
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