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designideas
2004年5月号
フォース/センス接続でオン抵抗の影響を除去

スティーブン・ウッドワード 米ノース・カロライナ大学
Stephen Woodward University of North Carolina
 アナログ回路を設計していると、デジタル制御で利得を設定する機能が必要になることが多い。例えば、トランスインピーダンス・アンプを利用して電流を電圧に変換する回路を考えてみる。デジタル制御でトランスインピーダンス・アンプの利得を切り替えられるようにしたい。
 この場合、アナログ・マルチプレクサーICを使うのが常とう手段である。すなわち利得設定用の帰還抵抗をいくつか用意し、マルチプレクサーICの端子に1つずつ接続しておく。必要な利得に応じてマルチプレクサーICの内部接続をデジタル制御で切り替えることで、帰還抵抗の値を変化させて所望の利得に設定する仕組みである。
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 ところがこの方法では、マルチプレクサーICのオン抵抗によって利得誤差が生じてしまう。今回は、帰還抵抗の接続方法を工夫することで利得誤差が発生しないようにするアイデアを紹介する。具体的な回路例を図1に示した。この回路ではオペアンプIC(IC1)がトランスインピーダンス・アンプとして機能する。オペアンプIC用帰還抵抗の切り替えにはアナログ・マルチプレクサーIC(IC2)を使う。ここまでは、通常の回路構成と変わらない。
 工夫した点は帰還抵抗の接続方法である。通常の接続方法では、オペアンプICの出力ピン(IC1の6番ピン)をマルチプレクサーIC経由で帰還抵抗に接続するとともに、電流-電圧変換を施した出力信号として後段にそのまま出力する。この接続方法では、マルチプレクサーICのオン抵抗が問題になる。帰還抵抗に対してオン抵抗が実効的に直列接続されてしまうからである。図1のように帰還抵抗の値が数100Ω以下と比較的小さい場合には、利得誤差が大きくなってしまう。
 例えば、図1で使用したマルチプレクサーICのオン抵抗は、使用条件によって100Ωを超えてしまう。このときオン抵抗は、用意した帰還抵抗のうち最も小さい100Ωの抵抗値にほぼ等しい。従って、100Ωの帰還抵抗を選択した場合には、マルチプレクサーICのオン抵抗によって100%の利得誤差が生じることになる。
 この対策として、帰還抵抗の値を大きくする方法がある。ただしこの方法は、高周波領域での特性が必要な回路には使えない。RC時定数による遅延時間が大きくなるためだ。遅延時間が増大した結果、電流-電圧変換した信号にピーキングやリンギングなどを生じてしまう。最悪の場合は回路全体が発振状態に陥ることもある。
 そこで図1では、通常の接続方法の代わりにフォース/センス接続を採用した。トランスインピーダンス・アンプの利得がマルチプレクサーICのオン抵抗によって変化しないようにできる。具体的には4入力1出力のマルチプレクサーを2回路使う。オペアンプICの出力を後段に直接接続せずに、第1のマルチプレクサー回路で選択した利得設定用抵抗の「フォース」端(マルチプレクサーICの12番ピン、14番ピン、15番ピン、11番ピン側)から、第2のマルチプレクサー回路経由で後段に接続する。「センス」出力端(マルチプレクサーICの3番ピン)に接続した負荷(2kΩの抵抗と390pFのコンデンサー)が十分に大きいと、オン抵抗による利得誤差は無視できる。
 図1において、トランスインピーダンス・アンプへの入力信号は、液体窒素で冷却した低温のテルル化カドミウム水銀(HgCdTe)赤外線検出器である。赤外線検出器の周辺には高確度バイアス回路とプリアンプ回路を配置した。この赤外線検出器は赤外線スペクトロメーター(分光計)によく利用されている。特にフーリエ変換型スペクトロメーターによく使われる。広範囲の光波長に応答でき、雑音が小さいという特徴があるからだ。また、電気的な応答速度は1MHzを超えるほど高い。
 図1の回路では、フォース/センス接続利用の利得設定回路によってトランスインピーダンス・アンプの利得を1〜64倍(36dB)に変えられる。このほかにも工夫を盛り込んだ。赤外線検出器の動的バイアス回路(Q1、Q2)や、スイッチ(S1、S2、S3)の開閉で利得を1〜128倍(42dB)に設定できる回路などである。電流-電圧変換した信号の通過帯域は200kHz程度を確保した。雑音特性は入力換算雑音が約700nV(rms値)と小さく、入力換算雑音密度が最大1nV/√Hzと低い。雑音を低減できたのは、トランスインピーダンス・アンプ(IC1)に低雑音オペアンプIC「LT1028」を採用したからである。
 さらに、マルチプレクサーICの制御信号用インターフェースも工夫した。制御信号線から雑音が侵入することを防ぐために、シュミット・トリガー・インバーターIC(HCT14)を利用したバッファー回路を設けてある。このバッファー回路は、利得設定用の制御信号線に重畳された雑音がマルチプレクサーICに入り込むのを防止する役割を果たす。
 一般に、デジタル信号線に重畳された雑音は、コンピューター制御の高利得アナログ回路で原因不明の故障を引き起こす原因になっている。雑音の侵入を防止する回路を用意しておかないと、容量結合によって雑音がアナログ信号ラインに簡単に入り込んでしまう。このため図1の回路例のような工夫が必要である。

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