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2004年4月号
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シャノンは語る
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シャノン*1)は、情報化時代の先駆者として知られている。彼は、帯域が制限されている通信チャンネルの情報伝送能力はチャンネルの周波数帯域幅とチャンネル内の信号対雑音比(SN比)によって決まると述べた。受信信号電力をS、雑音電力をN、チャンネルの帯域幅をB(Hz)とした場合、シャノンの有名な理論*2)は、デジタル通信チャンネルの伝送容量C(単位はビット/秒)の最大値を与える次式を導いている。
この式は、デジタル信号を伝送するバックプレーンによく当てはまる。通常のバックプレーンは、トランシーバーのパッケージやボードのレイアウトでクロストーク対策を十分にとっているのであれば、SN比を決める主要因はコネクター内部のクロストークになる。一般にコネクターのクロストークは、信号周波数が高くなるにつれて増大する。システム動作速度が高まり、数Gビット/秒の高速領域に突入すると、クロストークが増加してSN比が劣化し、バイナリー・ビットによる伝送が困難になる。
このため多くのバックプレーン設計者がこの困難に立ち向かっている。数Gビット/秒までは動作するものの、10Gビット/秒前後からは急速に動作性能が低下する。低損失のプリント基板材料やデジタル適応等化技術を利用してシステムを再設計すれば、シンボル間干渉を軽減できるものの、クロストークの問題は解決されない。こういった状況に陥った場合、シャノンの式は問題を解決する方法があることを示している。
最初に、システムが動作しなくなる原因を考える。クロストークが大きいシステムでは、信号電力Sを増やしても問題解決にはならない。雑音電力Nも増えてしまうからだ。混んでいる酒場で客同士が大声で話をしているにもかかわらず、すぐ隣にいる人の話し声さえ聞き取りづらいという状況に似ている。
多値レベルの符号化を利用
それではどうしたら良いのだろうか。まず、性能の高いコネクターを採用することである。コネクター・メーカーは常に、高速で(つまり帯域幅Bの大きい)、しかもSN比の高いコネクターの開発に務めている。優れたコネクターを使用すれば、周波数帯域幅をある程度は広げられるだろう。ただし実際には、コネクター・ピンやビア・ホール、パッド、プリント基板の厚さといった物理的な形状によって周波数の上限が決まる。半導体チップ製造技術の微細化とは異なり、これらの物理的な寸法はそれほど小さくできない。このため、プリント基板の構造を含めた斬新で抜本的な改善が施されない限り、高密度バックプレーン用コネクターのデータ伝送速度は10Gビット/秒を大きくは超えられないと予測する。
それではほかの解決策は何だろうか。それは、クロストークを実質的に低減する(SN比を高める)ことだ。物理的な寸法によって決まる帯域の制限から抜け出すために、シャノンが考え出した方法である。先に述べた式によると、高いSN比が実現できれば、帯域幅Bを少しは制限しても構わない。従ってクロストークを抑えれば、コネクターの伝送容量を大幅に改善できる。例えばクロストークが十分に小さければ、16レベルのPAM(pulse
amplitude modulation)を使用して実効的なデータ伝送速度を4倍に高められる。この手法はトランシーバーを変更しなければならないものの、実行可能であることは確かだ。多値レベルのPAMシステムの大きな利点は、現行のプリント基板を生かしつつ、次世代の高いデータ伝送速度に対応できることである。
通信技術者は過去、トランシーバーを変更するコストがチャンネルの帯域幅を改善するコストよりも低い場合は、多値レベルの符号化を採用してきた。その結果、現在はさまざまな長距離伝送と高速伝送に多値レベルの符号化が採用されている。このトレンドは双方向の電気通信が開始された1885年に始まり、その後はQAM電話モデム、無線モデム、衛星通信用モデム、DSLおよびLANトランシーバーへと続いてきた。これらの通信インターフェースはまず単純なバイナリー伝送で始まり、それから、より効率的で複雑な伝送方法へと変化した。半導体チップであるASICのゲート単価が極めて低くなっていることとバックプレーンのハードウエア・コストが急騰していることを考慮すれば、バックプレーンにも多値レベルの符号化技術を導入する時期に来ている。
(ハワード・ジョンソン)*3)
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| 用語解説 / 会社情報 |
*1)クロード
E. シャノン(Claude Elwood Shannon)
1916年生〜2001年没。現在のデジタル通信技術の基礎を築いた。 |
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*2)参考文献
Shannon, C. E., "Communication in the Presence of
Noise," Proceedings of the Institute of Radio Engineers,
vol.37, no.1, Jan. 1949, pp.10-21. |
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*1)ハワード・ジョンソン(Howard
Johnson)氏
同氏は、「High-Speed Digital Design」と「High-Speed Signal Propagation」の著者。オックスフォード大学などで、デジタル・エンジニアを対象にしたテクニカル・ワークショップを頻繁に開催している。ご意見は、次の電子メール・アドレスまで。www.sigcon.comまたはhowie@sigcon.com。 |
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