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designideas
2004年3月号
1セル乾電池で白色LEDをフラッシュ点灯

アンソニー・スミス 英サイテック社
Anthony Smith Scitech
 1セルのアルカリ乾電池で駆動する携帯型機器などは、非常に低い電圧で動作できるように設計しておく必要がある。一般に、白色LED*の順方向電圧は3〜5Vであるため、公称電圧が1.5Vのアルカリ乾電池1セルで駆動するのは難しい。1Vといったより低い電圧では、白色LEDの駆動はさらに難しくなる。
 今回は、1Vと低い電源電圧で白色LEDをフラッシュ点灯(点滅)させる回路を、個別半導体素子で実現する方法を紹介する(図1)。この回路を使えば、RC時定数によって設定した周期で白色LEDの点滅駆動が可能である。玩具やセキュリティー機器、小型ビーコン装置などのほか、1セル乾電池でフラッシュ点灯を利用したい機器に応用できる。
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 図1において、トランジスタQ1とQ2、および抵抗R3とR4、R5は簡単なシュミット・トリガー*回路を形成している。このシュミット・トリガー回路と抵抗R1、R2、およびコンデンサーC1によって白色LEDのフラッシュ点灯を制御する。
 トランジスタQ4、Q5とインダクターL1、さらにそれらの周辺部品は昇圧回路として機能する。この昇圧回路は、1セル乾電池の端子電圧VSを白色LEDの駆動に十分な電圧まで高める役割を担う。トランジスタQ3は昇圧回路の動作を、シュミット・トリガー回路によって決まる周期でオン/オフするスイッチとして機能する。
 昇圧回路の動作を理解するため、次のように仮定しよう。すなわちトランジスタQ3は完全にオンしており、Q4のエミッタ電圧は電池から供給される電圧VSにほぼ等しくなっている。このときQ5には、Q4とR8を介してバイアス電圧が印加される。バイアス電圧が印加されるとQ5がオンして、インダクターL1を介して電流ILを引き込み始める。ILが立ち上がる際のスルー・レートは、VSとL1の値でほぼ決まる。ILが立ち上がる間、LED1に加えてこれに直列接続したダイオードD1は逆方向にバイアスされている。
 インダクターL1に流れる電流は、ピーク値ILPEAKに達するまで増え続ける。ILPEAKに達すると、Q5は電流の増加に対応できなくなる。するとL1にかかっている電圧の極性が反転する。この結果、いわゆるフライバック電圧*が発生する。フライバック電圧によって、LED1の正極の電位はVSよりも高くなり、LED1とD1を順方向にバイアスできるようになる。
 同時に、フライバック電圧はC3およびR10を介してQ4のベース端子にも供給される。これによってまずQ4がオフし、続いてQ5がオフする。この状態では、インダクターL1に流れる電流ILはL1とLED1、D1を循環することになる。L1に蓄積されていたエネルギーが減少するにしたがってILは減少し、最終的にはゼロになる。するとL1にかかっている電圧の極性が再び反転する。この変化はC3を介して直ちにQ4に伝わり、Q4はオンする。続いてQ5がオンすると、L1を流れる電流が再び増加し始める。こうして最初の状態に戻り、同じ過程を繰り返す。
 昇圧回路の発振周波数は、VSとL1、R8の値で決まるQ5の順方向電流利得や、LED1の順方向電圧などによって決まる。図1に示した回路では、発振周波数は50k〜200kHzになる。この周波数で、ピークがILPEAKの電流パルスがLED1に印加される。電流パルスは1秒当たり数1000回もLED1に供給される。このため、LED1は連続的に点灯しているように見える。
 シュミット・トリガー回路とその周辺部品は、低い周波数の発振器を構成している。この発振器で昇圧回路をオン/オフする。この動作を理解するため、Q1がオフでQ2がオンしていると仮定しよう。ここでQ2の順方向電流利得がかなり大きいとすれば、ベース電流の影響を無視できる。すなわちQ2のベース電圧VB2は、VSの値と、R3とR5からなる抵抗分圧器の分圧比によって決まる。図1に示したR3とR5の抵抗値では、VSが1VのときにVB2は約800m〜900mVになる。
 VB2がこの値のときは、R4に約300m〜400mVの電圧がかかる。この結果、Q2のコレクタ電流は、R4が20kΩの場合に少なくとも15μAになる。Q2のコレクタ電流がQ3のベース端子を駆動して、Q3を飽和させる。すると昇圧回路がオンしてLED1を点灯させる。LED1が順方向にバイアスされると、C4はある電位VPに達するまで充電される。ここで、VPはVSよりもダイオード1個の電圧降下分だけ高い電位である。
 C4に続いて、タイミング調整用に設けたコンデンサーC1が、R1を介して充電される。充電時の時定数は主に、VPとR1、R2、C1の値によって決まる。R1とR2の抵抗値の比を適切に設定しておけば、Q1のベース電位VB1はVB2(シュミット・トリガー回路の上側しきい値電圧VTUにほぼ等しい)よりも高くなる。この結果Q1はオンになり、Q2はオフになる。この時点でQ3もオフになり、昇圧回路の動作は停止する。こうしてLED1を消灯する。
 LED1が消灯するとVPは急速に低下し始め、C1は放電を開始する。この放電の時定数は、主にQ1のベース電流とR2、C1で決まる。LED1は、VB2がシュミット・トリガー回路の下側しきい値電圧(VTL)に達するまで消灯状態を維持する。VB2がVTLを下回るとQ1がオフになり、Q2がオンする。すると昇圧回路が再び動作を開始し、LED1を点灯する。R1、R2、およびC1の値を十分に大きくしておけば、LED1は長い周期でフラッシュ点灯する。例えば、R1とR2の値をそれぞれ約1MΩ、C1の値を1μF以上とすれば、1秒よりも長い周期で白色LEDを点滅させられる。
 ただし、R1とR2は、前述のようにQ1のベース電圧VB1を設定するための抵抗分圧器としても機能する。このためR2の値はR1よりも十分に大きくしておく。C1が充電されたときに、VB1がシュミット・トリガー回路の上側しきい値電圧よりも確実に高くなるようにするためである。この点にだけ注意しておけば、所望の点滅周期を得るためのR1とR2、C1の値は実験によって容易に見つけられる。
 VPの値はC1の充放電に大きな影響を及ぼす。さらにVPの値は、電池の端子電圧VSによって変化してしまう。ただし、VB2の値もVPと同様にVSによって変化する。このため、VPのVS依存性はある程度相殺される。それでもなお、白色LEDの点滅周期と点灯時間/消灯時間の割合(デューティー比)は、1セル乾電池の端子電圧が低下するにしたがって若干変化してしまう。
 例えば、R1が2.2MΩ、R2が10MΩ、C1が1μFとする。VSが1.5Vのとき、点滅周期は約1.92秒、デューティー比は66%である。VSが1Vに低下すると、点滅周期は約1.33秒と短くなり、デューティー比は44%に下がる。シュミット・トリガー回路の下側/上側しきい値電圧であるVTL/VTUは、VSが1.5Vのときに約0.7V/約1.2Vで、VSが1Vになると約0.6V/約0.8Vに低下する。
 白色LEDの発光強度は順方向電流の平均値に比例する。従って発光強度は、インダクターL1を流れる電流のピーク値ILPEAKと白色LEDを流れる電流パルスの持続時間によって決まる。L1が飽和しない限り、ピーク電流の値はQ5が対応できるコレクタ電流の最大値に大きく依存する。VSが一定の場合には、コレクタ電流の最大値はQ5の順方向電流利得に依存する。また、R8の値もコレクタ電流の最大値に若干影響を与える。
 R8を適切に選択すれば、VSが低くなった場合にも十分な発光強度を得られる。実験でR8の値を変化させて、採用する白色LEDの発光強度を最大にできる値を選択すればよい。ただしピーク電流は、VSが最大値のときに白色LEDの最大定格電流を超えないように注意する。
 L1の値はそれほど重要ではない。100μ〜330μH程度の値を選択すれば良好な性能と効率を得られる。トランジスタの品種も重要ではない。試作した回路では、電流利得が中〜高程度の汎用小信号デバイスを使って十分な動作特性を得られた。可能であれば、Q3とQ4、Q5は低飽和型トランジスタを用いるのがよい。C2は回路を動作させるのに必須の部品ではないが、Q2のベース端子におけるスイッチング雑音を抑えるのに役立つ。
 C4の主な役割は電荷を蓄えることである。LED1点灯時に、C1を充電するための電圧源となるVPを安定に保つ役割を果たす。充電電流はそれほど大きくない。このためC4の値はかなり小さくできる。10nFが適当であろう。注意が必要なのはC4の接続方法である。Q5のコレクタ端子にかかるフライバック電圧を整流用ダイオード経由でC4に印加する接続方法は使わない。図1に示したように、C4は必ずD1とLED1の結線部に接続する。
 この接続方法を使う理由は、第1に、VSからL1とR1を通ってQ1のベース端子に至る経路の途中に白色LEDを配置できるからである。通常、白色LEDには最小でも3V程度の順方向電圧がある。この順方向電圧による電圧降下分を利用することで、前述の経路によってQ1がオンしてしまうことを防止できる。こうしないと、白色LEDが消灯したまま回路の状態が固定されてしまう可能性がある。
 第2に、VPはVSよりダイオード1個の電圧降下分だけしか高くならないからである。すなわち、C1の充電電流を一定とすると、R1の値を小さくできる。
 昇圧回路のオン/オフは、Q4のベース電流を供給/遮断することでも制御できるように見えるだろう。もしそれが可能であるならばQ3は不要になる。しかし、Q4のベース電流を制御する方法は発振の恐れがあるので使えない。いったん昇圧回路を動作させると、Q4のベースに直流バイアスを印加しなくても、帰還電流がC3とR10を経由してQ4のベースに戻ってくることで発振状態が維持されてしまう可能性がある。このため、昇圧回路をオン/オフするために採用できるのは、図1のようにQ3を制御する方法だけである。
 試作した回路では、VSが0.9Vという低い値でも回路が始動し、白色LEDの点滅を維持できた。ただしこの電圧では白色LEDの発光強度は弱かった。VSを1.5Vに設定すると白色LEDは良好な発光強度を示した。さらにVSを1Vに下げても実用的な発光強度を確保できた。

用語解説 / 会社情報
【LED】
light emitting diode
発光ダイオード
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【シュミット・トリガー】
Schmitt trigger
入力信号の論理値の高/低を判断するしきい値が2つあるデジタル回路。単安定マルチバイブレーターなどによく用いられている。入力信号を高レベルと判断するしきい値(上側しきい値)と、低レベルと判断するしきい値(下側しきい値)がある。
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【フライバック電圧】
fly-back voltage
インダクター(誘導性負荷)に流れる電流を急激に変化させることで発生する高電圧のこと。
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