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designideas
2004年2月号
低コストで構成できるモーター制御回路

アンソニー・スミス 英サイテック社
Anthony Smith Scitech
 永久磁石を用いた簡単な直流モーターは基本的な部品である。その用途はさまざまで、玩具やサーボ制御、バルブ・アクチュエーター、ロボット、車載電子機器などに組み込まれている。これらの用途においてモーターは、搭載した機器が動作の終点に達するまでは一定方向に回転させ、そして終点に達すると自動的に回転を止める必要がある。マイクロスイッチ*を使えば動作の終点でモーターを止められるが、大きさや重さ、さらにコストが問題になる場合が多い。特に、低コストの携帯型機器ではマイクロスイッチを採用することが難しい。
 図1は、低コストで構成可能なモーター制御回路の例である。マイクロスイッチの代わりに電流検出を利用してモーターの回転を止める。3〜9Vの電源電圧で動作するように設計してあり、消費電力は非常に小さい。従って、電池で駆動するモーター搭載機器に適している。
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 回路の動作を理解するために、次のように仮定する。すなわち、相互接続したフリップフロップICのIC1AとIC1Bはいずれもリセット状態で、データ入力端子(D端子)の論理値は高レベルとする。このときデータ出力端子(Q端子)の論理値は低レベルである。このため、Hブリッジ回路のトランジスタQ1〜Q4はすべてオフである。従って、モーターはアイドル状態にある。
 フォワード(順方向)・スイッチを一瞬だけ閉じると、IC1AはQ端子の論理値を高レベルに設定し、その状態を保持する。するとQ端子に接続したトランジスタQ2がオンする。この動作によってQ3にバイアスがかかり、モーターは順方向に回転し始める。回路の状態は保持されており、IC1BのD端子への入力は低レベルのままである。このため、リバース(逆方向)・スイッチを閉じてもHブリッジ回路の動作に影響を与えない。モーターは順方向に回転を続ける。
 モーターの電機子電流によって、電流検出用抵抗RSENSEに電圧降下VSENSEが発生する。この電圧降下を比較器IC(IC2)を使って検出することで、電機子電流の増加を検出できる。比較器ICは、非反転入力端子(IN+端子)にかかるVSENSEと、反転入力端子(IN−端子)の基準電圧を比較する。通常動作時は、VSENSEはIN−端子の電圧よりも低い。従って比較器ICの出力端子(OUT端子)の論理値は低レベルになる。
 IN−端子の基準電圧は、比較器ICの基準電圧出力を使って作り出す。今回採用したIC2は基準電圧出力端子(REF端子)から1.182Vのバンドギャップ基準電圧を出力できる。これを抵抗R5、R6で分圧して、IN−端子の基準電圧を設定する。
 モーター搭載機器の動作が終点に達すると、モーターの電機子電流は急激に増加する。同時にVSENSEも増大する。比較器ICはVSENSEの増大を検出し、OUT端子の論理値を高レベルに設定する。するとフリップフロップICのIC1Aはリセットされ、Q端子の論理値が低レベルに戻る。この結果トランジスタQ2とQ3がオフし、モーターの回転が止まる。
 この状態では、IC1BのD端子の論理値は高レベルになっている。このため、リバース・スイッチを閉じることでIC1BのQ端子を高レベルに設定できる。IC1BのQ端子が高レベルになると、Hブリッジ回路の反対側のトランジスタ、すなわちQ4とQ1がオンする。するとモーターは逆方向に回転を始める。
 このときIC1AのD端子は低レベルに保持されるので、フォワード・スイッチを閉じてもHブリッジ回路の状態は変化しない。つまりモーター搭載機器の動作が先程と反対側の終点に達するまで、モーターは逆方向に回転し続ける。動作が終点に達すると、順方向回転の場合と同様に、比較器ICが電機子電流の増加を検出し、IC1Bをリセットしてモーターの回転を止める。
 モーターの回転を止めるしきい値はRSENSEとR5およびR6、REF端子のバンドギャップ基準電圧によって決まる。RSENSEの抵抗値は数Ω以内にする。モーターが正常な負荷条件で回転している際のVSENSEを小さくするためである。VSENSEを小さくしておけば、実質的にすべての電源電圧をモーターに供給できる。その結果、Q2とQ4のゲート・ソース間電圧を可能な限り大きくできる。R5とR6は300kΩよりも大きい値に設定する。こうすると比較器ICのREF端子にかかる負荷を小さくできる。雑音の多い環境で使用する際には、IN−端子をデカップリングする必要が生じる。
 RFとCFはフィルターである。2つの目的で導入した。1つはRSENSEにかかる電圧を平滑化するためであり、もう1つはモーターが回転を始める際に突入電流の発生を防ぐためである。RFとCFの値はそれぞれ100kΩ、100nFが適当である。ただし、これらの値は用途によって最適値が異なる。このため、実験によって確かめた方がよい。また、C2とD5、およびR7は、比較器ICのOUT端子の論理値を電源投入時に高レベルに設定する役割を果たす。
 Hブリッジ回路に使用する4つのトランジスタはすべて、モーターに最大の電流を供給した際の飽和電圧がなるべく低いものを選ぶ。Q1とQ3はコレクタ・エミッタ間の飽和電圧(VCE(SAT))が低いものを使用する。Q2とQ4はMOSFETを使う。最小動作電圧においてもエンハンスメント・モードで動作するものを選ぶ。使用するMOSFETの品種によっては、スプリアス発振を防止するため、各ゲートに直列に抵抗を挿入する必要がある。
 R2とR3の抵抗値は、電源電圧を最も低くしたときにQ1とQ3のベースを適切に駆動できるものを選ぶ。用途によっては、Q1とQ3をpチャンネルのMOSFETに置き換えられる。ただし、R2とR3の抵抗値はかなり大きくなる可能性がある。フリーホイール・ダイオードのD1〜D4は、モーターの回転を止める際にモーターの逆起電力によって発生する電流を整流するために不可欠である。また、C1はモーターのブラシによって発生する雑音を抑制する。
 この回路は、モーター静止時に消費されるアイドル電流が非常に小さい。このため、電池で駆動する機器に最適である。9V単一の電源電圧で動作する実験用基板を使って静止時の消費電流を測定したところ、わずか9.5μAだった。
 図1の回路を変更すれば、スイッチを閉じている間だけモーターを順方向または逆方向に回転させる制御が可能である。ただし、比較器ICの出力をスイッチでオン/オフするという単純な方法ではこの制御は実現できない。この方法では、モーターの回転を瞬間的にしか止められないからである。そこで、図1の回路と同様に、比較器ICの出力を保持する仕組みが必要になる。4つのNORゲートで構成した論理回路を追加することで実現した。図2が回路例である。図1と同様に比較器ICの出力でフリップフロップICのリセット端子を制御する。ただし、Hブロック回路は追加したNORゲートICのIC3BとIC3Dを使って制御する必要がある。
 この制御回路を使うと、モーターはフォワード・スイッチを閉じているときだけ順方向に回転する。スイッチを開くとモーターの回転は止まる。スイッチを閉じている間は、IC3AがIC1BのD端子の論理値を低レベルに保つ。このため、フォワード・スイッチを閉じている間にリバース・スイッチを閉じてもモーターの回転に影響を与えない。
 ただし、いったんフォワード・スイッチを開けば、リバース・スイッチを閉じることでモーターを逆方向に回転させられる。この場合も、モーターはスイッチを閉じている間だけ回転を続ける。リバース・スイッチを閉じている間は、フォワード・スイッチの動作はモーターの回転に影響を与えない。これは、この回路の構成が対称形であることから理解できるだろう。モーターの回転方向がどちらでも、モーター搭載機器の動作が終点に達すると比較器ICがフリップフロップICをリセットし、モーターの回転を止める。

用語解説 / 会社情報
【マイクロスイッチ】
microswitch
スナップ・アクション機構を備えた接点をケースで覆い、その外部にアクチュエーターを取り付けた小型スイッチ。接点間隔は1.0mm前後と小さい。
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