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designideas
2004年2月号
電源シーケンス制御を低コストで実現する回路

セド・ジャクソン 米イクエーター・テクノロジーズ社
Said Jackson Equator Technologies, Inc.
 マイクロプロセッサーやFPGAなどは、コア部と入出力部に異なった電源電圧を供給しなければならないことが多い。これらのLSIを使用する際には、複数の電源電圧を供給するシーケンスを厳密に制御する必要がある。LSI内部で寄生的に発生する電流や、それによるラッチ・アップなどを防止するためである。
 ソフト・スタートやシャットダウン・モードなどの機能を備えた電圧レギュレーターICを使えば、電源シーケンスを制御できる。ただし、こういった機能を備えない電圧レギュレーターICと個別半導体を組み合わせる方法もある。この方法を採用すれば、同じ機能を低コストで実現できる可能性がある。
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 今回は、米イクエーター・テクノロジーズ社*1)の信号処理LSIに対する電源シーケンスを米リニアテクノロジー社のスイッチング・レギュレーターIC「LTC3701」(IC1)を使って制御する例を示す。図1は、5Vの入力電圧(VIN)からLSIの入出力部用電源(3.3V)とコア部用電源(VCORE)の2つの電源電圧を生成する回路である。あらかじめ設定しておいたシーケンスで電源電圧を供給したり、電源回路全体を待機状態に設定したりする機能を実現した。この回路を使えば、リニアテクノロジー社のアプリケーション・ノートに示された回路例に比べてスイッチング・レギュレーターICの安定性を高められる。汎用のFPGAやマイクロプロセッサーなどの電源回路として応用可能である。
 IC1は外付けしたスイッチング素子を2チャンネル制御できる。生成する電圧値は独立に設定可能で、その精度は非常に高い。部品コストが低いため、民生機器で採用しやすい。ただし、一般的なスイッチング・レギュレーターICに搭載されているソフト・スタートやシャットダウン・モードなどの機能は備えていない*2)
 そこで図1では、トランジスタを3つ追加して、電源シーケンスの制御とシャットダウン(待機状態設定)機能の両方を実現した。追加したトランジスタはQ3、Q4、Q5である。いずれも安価に入手できる。これらを使って、スイッチング・レギュレーターICの2つのITH/RUN端子(ITH/RUN1とITH/RUN2)にかかる電圧を制御する。ITH/RUN端子は、スイッチング・レギュレーターIC内部の帰還ループに外部補償回路を接続するために使う。この端子を接地電位に接続すると、スイッチング・レギュレーターICを待機状態に設定できる。
 SLEEP端子を使って、外部から回路全体の状態を制御する。実際には、外付けのマイコンからTTL/CMOS互換信号をSLEEP端子に印加すればよい。SLEEP端子を開放状態にするか、約1.5Vより高い電位にプルアップすると回路全体を待機状態に設定できる。
 LSIに電源電圧を供給している状態で回路を待機状態に設定すると、まずQ3がITH/RUN1端子を接地電位に接続し、コア部の電源電圧(VCORE)を切断する。するとVCOREは接地電位に向かって低下していく。VCOREが約0.8Vを下回ると、Q4が導通しなくなる。同時にQ5のゲート電位は、この回路への入力電圧である5V(VIN)まで引っ張り上げられる。この結果、Q5によってITH/RUN2端子が接地電位に接続され、3.3Vの供給は停止する。こうして回路は待機状態になる。この状態ではVCOREと3.3Vの供給は両方とも停止したままだ。
 回路を待機状態から回復させるには、SLEEP端子を約0.8Vより低い電位にプルダウンすればよい。待機状態から戻ると、次に示すシーケンスで電源電圧を供給し始める。まずQ3が導通しなくなる。するとIC1に内蔵した電流源によって、ITH/RUN1端子の電圧が上昇する。続いてVCOREを生成するためのスイッチング・レギュレーター回路が動作し、設定した電圧値までVCOREが上昇する。図1では1.2Vに設定した。VCOREが約0.8Vより高くなると、Q4が導通する。これによりQ5はオフし、ITH/RUN2端子の電圧が上昇する。こうして3.3Vの電圧が供給される。
 このように、この回路はVCOREの電圧値を利用してQ4とQ5を制御する。従って、3.3Vの電圧は必ず、VCORE電圧がある一定の電位に達した後でLSIに供給され始める。今回の回路例では、2つの電源電圧が両方とも供給され始めるまでに要する時間は約4msである(図2)
 回路の構造は対称形である。このため、2つの電源電圧に対するシーケンスは簡単に入れ替えられる。つまり、Q4のベースにVCOREの代わりに3.3Vを接続し、さらにQ3とQ5のドレインの接続を入れ替えればよい。こうすれば、コア部の電源電圧より先に入出力部の電源電圧を供給する必要があるLSIに、この回路をそのまま利用できる。R1の値を変更すれば、最小1Vまでのコア部用電源電圧を生成できる。コア電圧を約1Vより低くする場合には、R9の値を変更する。Q3とQ5は、より安価に入手できる「2N2007」を使ってもよい。ただしその場合は、IC1のITH/RUN端子への負荷容量を若干大きくする必要がある。C2とC6は位相補償用コンデンサーであり、低調波発振*を防止するのに非常に有効である。
 この回路はQ3とQ5のゲートとドレイン、ソースそれぞれの静電容量によって、ループ・フィルターの安定性を増加させている。さらに電源投入時に2つの電圧が立ち上がるタイミングをずらして、電源への突入電流を低減している。つまり、突入電流の発生時刻をずらし、バイパス・コンデンサーに2つの電源電圧による突入電流が同時にかかるのを防ぐ。電源供給能力は入出力部用(3.3V)が最小2A、コア部用(VCORE)が最小3.5Aである。

用語解説 / 会社情報
*1)
ホームページはhttp://www.equator.com/
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*2)
2003年12月末現在、米リニアテクノロジー社のホームページに掲載されたデータ・シートには、ソフト・スタート機能を搭載していると記載してある。
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【低調波発振】
sub-harmonic oscillation
低調波発振については米リニアテクノロジー社のアプリケーション・ノートを参照。日本法人であるリニアテクノロジーのホームページからPDF形式で入手できる(アプリケーションノート19、LT1070デザイン・マニュアル、p72)。PDFファイルのアドレスは下記の通り。
http://www.linear-tech.co.jp/application_note/jp_pdf/jan19.pdf
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